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平成十六年八月十日受領
答弁第一七号

  内閣衆質一六〇第一七号
  平成十六年八月十日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員平岡秀夫君提出消費税の総額表示方式の義務化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員平岡秀夫君提出消費税の総額表示方式の義務化に関する質問に対する答弁書



一について

 消費税及び地方消費税は、事業者を納税義務者とし、取引の各段階でその売上げに対して課税されるが、消費税額及び地方消費税額の合計額(以下「消費税額等」という。)に相当する額は、コストとしてその取引に係る資産又は役務の価格に織り込まれて、最終的には消費者に転嫁されることが予定されている税である。したがって、個々の取引に際して事業者が消費者から受領する消費税額等相当額は、資産又は役務の価格の一部を構成するものであり、このような税の性格や仕組みからすれば、消費者に対する価格の表示に際しては、最終的な支払総額である消費税額等相当額を含めた価格(以下「税込価格」という。)が表示されること(以下「総額表示」という。)が望ましいと考えられる。
 しかしながら、消費税の創設時においては、この種の税が我が国になじみの薄い税であり、転嫁についての事業者の不安や便乗値上げについての消費者の懸念があったことなどから総額表示は義務付けず、価格表示の方式の選択については、各事業者にゆだねることとされたところである。このため、これまでの価格表示については、消費税額等相当額を含まない価格(以下「税抜価格」という。)の表示が多く見受けられる状況にあった。
 この結果、価格表示を巡っては、消費者にとって、税抜価格の表示では最終的な支払総額が分かりにくい、あるいは税抜価格の表示の店と税込価格の表示の店が混在し、価格の比較がしづらいというような問題が生じていた。また、我が国の消費税と同様の付加価値税制度を採用する英国、ドイツ、フランスなどの国における消費者に対する価格表示は、付加価値税額相当額を含めた支払総額を表示することが法令等で義務付けられている。このような状況を踏まえ、税制調査会の消費税創設以降の累次の答申において、消費者に対する価格表示の在り方については総額表示が望ましい旨の指摘がなされてきたところである。
 このため、平成十五年度税制改正において、消費税制度が創設から十四年程度を経過し、国民の間に定着してきたことを踏まえ、中小事業者に対する特例措置の見直し等と併せ、総額表示を義務付けることとしたところである。
 以上のとおり、総額表示は消費者の利便に資するものであり、総額表示の義務付けを円滑かつ着実に実施していくことが消費税制度に対する国民の理解を深める上で重要である。多くの事業者においては値札やレジスターシステムの変更など円滑な実施に向けた必要な準備を進め、本年四月一日以降総額表示を適切に実施しているものと考える。また、二についてで述べるとおり、総額表示の義務付けにより、消費動向全体に大きな影響を与え、デフレの促進を招いているとは考えていない。
 したがって、政府としては、総額表示が我が国社会に着実に定着していくよう、今後とも取り組んでいくことが重要であると考えており、その改廃を含めて制度を見直すことは考えていない。

二について

 総額表示の義務付けは、税込価格の表示を求めるものであり、税抜価格で表示されていた場合における消費者の支払総額(税抜価格に消費税額等相当額を加えた金額)の変更を求めるものではない。また、従来の税抜価格の表示を総額表示に変更した場合においても、引き続き従来の税抜価格を併せて表示することも可能である。
 政府としては、事業者及び消費者に対し、総額表示の義務付けの趣旨及び内容等について理解が深まるよう広報等に取り組むとともに、事業者間取引において、総額表示の義務付けを契機として優越的地位の濫用により不当な値引き要請等がある場合については、五についてで述べるとおり厳正に対処しているところであり、総額表示の義務付けに起因して、御指摘のように従来に比べて転嫁が困難になり、又は値引きをせざるを得なくなるという事態が生ずることのないよう努めているところである。
 したがって、総額表示の義務付けにより、消費動向全体に大きな影響を与え、物価の引下げやデフレの促進を招いているとは考えていない。
 また、これらを踏まえて事業者及び消費者の動向を勘案し、平成十六年度政府経済見通しにおいては、総額表示の義務付けは消費者物価指数に影響を与えないと判断した。
 なお、総額表示の義務付けの実施による影響や業界からの意見・苦情・要請については、主な小売業者の団体からは、売上げに目立った影響はなかったとする意見等がある一方、売上げの減少の要因として総額表示の義務付けを挙げる意見等もあると聞いている。いずれにせよ、事業者の売上げは様々な要因によって左右されることから、総額表示の義務付けにより、小売業者が値引きをせざるを得なくなったとする事例、売れなくなったとする事例又は小売業者の売上げに与えた影響について把握することは困難である。

三について

 総額表示の義務付けの対象となる事業者においては、値札等の変更やパソコンソフトの入替えなどのコストが生じたと考えている。

四について

 すべての事業者の実施状況を把握することは困難であるが、主な小売業者の団体からは、多くの会員企業において総額表示が適切に実施されていると聞いているところである。
 政府としては、関係団体等の協力を得ながら、総額表示の義務付けの対象となる事業者が本年四月一日までに値札の切替え等の対応を円滑に実施できるよう、広報、相談等を通じた支援、指導等を行ってきたところであり、本年四月一日以降においても総額表示の義務付けに伴う対応を行っていない事業者に対しては、指導等を通じて適切な対応が行われるよう取り組んでいるところである。

五について

 総額表示の義務付けに伴い、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)に違反する不当な値引き要請等の優越的地位の濫用が行われることのないよう、公正取引委員会において、平成十五年十二月に独占禁止法及び関係法令上の考え方を公表し、これを小売業者及び納入業者に周知したところである。
 さらに、小売業者と納入業者との取引における優越的地位の濫用について把握するため、約四千の小売業者及び納入業者に対するアンケート調査を平成十六年二月に実施し、その調査結果を同年三月に公表したが、同調査において納入業者から問題点の指摘が多かった小売業者に対しては、ヒアリング調査を実施し、改善を求めたところである。また、総額表示の義務付けに伴う優越的地位の濫用について、具体的な端緒に接した場合には速やかに事件審査に着手することとしており、平成十六年七月末日までに十三件について注意を行ったところである。このように総額表示の義務付けに伴う優越的地位の濫用に対しては適切に対処してきているところであり、引き続き監視に努めてまいりたい。

六について

 中小事業者からの税務に関する相談については、従来から、全国の商工会議所及び商工会において相談及び指導が行われている。また、中小事業者からの独占禁止法等に関する相談については、全国の商工会議所及び商工会において相談を受け付ける体制が整備されているほか、公正取引委員会及び中小企業庁において、小売業者と下請事業者との取引について下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)に基づく調査、指導改善等を行ったところであり、今後とも同法に違反する行為が認められた場合には厳正に対処することとしている。さらに、平成十五年度及び十六年度予算において、中小事業者が総額表示の義務付け等の消費税制度の改正内容について理解し、これに円滑に対応できるよう、全国の商工会議所、商工会、中小企業団体中央会及び商店街振興組合における講習会の開催、税務相談の実施、パンフレット及びポスターの作成及び配布等のための措置を講じている。平成十五年度においてこれらの措置に要した費用は、約二十九億六千百万円と見込まれる。
 税制については、平成十五年度税制改正において、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例やIT投資促進税制が措置されており、総額表示の義務付けに伴い中小事業者がレジスターを買い換える場合やレジスターシステムのソフトウェアを入れ替える場合にもこれらの措置が利用できることとなっている。なお、これらの税制措置は、幅広い中小事業者の様々な設備等に適用されていることから、その適用件数のうち総額表示の義務付けに伴うものを把握することは困難である。
 融資については、政府系金融機関において各種貸付制度を整備し、資金繰りが苦しい中小事業者への資金供給の円滑化を図っている。なお、個々の中小事業者の借入れには様々な資金の使途が含まれていることから、これらの融資のうち総額表示の義務付けに伴うものを把握することは困難である。
 政府としては、これらの施策は、中小事業者による総額表示の円滑な実施に役立っているものと考えている。

七について

 政府としては、総額表示の義務付けに当たり、その趣旨や表示方法の内容等について、事業者向けの説明会を開催するとともに、各種媒体を活用した広報や相談等を実施するなど事業者及び消費者の理解が深まるよう対策を講じているところである。
 また、総額表示の義務付けの実施直後においては、一部の事業者において、システム変更の誤り等によりいわゆる「消費税の二重取りミス」が発生し、その後速やかに適切な対応がなされたと聞いている。なお、その後において同様のトラブルが他に生じているとは聞いていない。



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