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平成十六年十二月十日受領
答弁第七〇号

  内閣衆質一六一第七〇号
  平成十六年十二月十日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員中村哲治君提出改正出入国管理及び難民認定法の運用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員中村哲治君提出改正出入国管理及び難民認定法の運用に関する質問に対する答弁書



一の(一)、(二)及び(四)について

 法務大臣が行う出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)に基づく難民の認定とは、難民の地位に関する条約(昭和五十六年条約第二十一号。以下「難民条約」という。)所定の各種義務を履行するために、その前提として当該外国人が難民条約第一条及び難民の地位に関する議定書(昭和五十七年条約第一号。以下「難民議定書」という。)第一条に規定する難民に該当することを認定するものである。他方、国連難民高等弁務官事務所(以下「UNHCR」という。)が行う難民の認定は、UNHCRによる自主帰還、第三国定住、種々の物的援助等の各種保護を必要とする者を国連難民高等弁務官事務所規程所定のUNHCRの権限の及ぶ対象者として認定するものであり、難民条約所定の保護を与えることを目的とする法務大臣による難民の認定とは、目的及び対象を異にするものである。
 したがって、UNHCRが難民として認定を行った者について、必ずしも法務大臣による難民の認定が行われるというわけではなく、また、UNHCRによって認定されたという事実のみをもって、入管法に基づく退去強制事由に該当する者の収容や退去強制令書の執行に影響を及ぼすものではない。
 また、入管法による難民認定手続と退去強制手続は別個・独立の手続であることから、難民認定申請をしている者であっても、退去強制事由に該当する場合は、入管法の規定に基づき収容の上退去強制手続が行われることとなり、単に難民認定申請者という事実をもって当然に仮放免をすることとはならない。
 なお、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(平成十六年法律第七十三号)第二条の規定の施行後においては、難民認定申請者に対して、同条の規定による改正後の入管法(以下「改正入管法」という。)第六十一条の二の四の規定により仮滞在の許可を認めることとしており、また、仮放免の運用に当たっては、仮放免を請求する被収容者の情状、仮放免の請求の理由となる証拠その他諸般の事情を総合的に考慮し、その弾力的な運用を実施しているところであり、御指摘の「参議院附帯決議」を踏まえ、引き続き的確な運用に努めてまいりたい。

一の(三)について

 御指摘の「UNHCRの主張」については、UNHCRが作成した二千三年七月付けのアフガニスタンの情勢及びアフガニスタン人の国際的保護に関する文書において、同趣旨の見解が示されているものと承知している。

二の(一)について

 被収容者の診療記録の開示については、厚生労働省が策定した「診療情報の提供等に関する指針」(以下「指針」という。)を踏まえ、被収容者から申出があれば、当該被収容者に開示する等適切な措置を講じることとしており、指針に定められたもののほか、現時点においては、被収容者の診療記録の開示に関する基準や条件を定めたものはないが、その開示を含むより適切な診療情報の提供の在り方について今後検討してまいりたい。

二の(二)について

 被収容者の診療記録については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)に基づく開示請求があった場合においては、その請求者が被収容者本人であるか否かにかかわらず、一般に、同法第五条第一号に規定する個人に関する情報に該当し、同条又は同法第八条の規定により不開示又は当該開示請求を拒否することとなるものと考えられるが、他方、二の(一)についてで述べたとおり、被収容者本人又はその法定代理人等から診療記録の開示の求めがあった場合には、指針を踏まえ、インフォームド・コンセントの理念から当該診療記録の開示等の措置を講じることとしている。
 なお、被収容者の診療記録の開示の許否の判断については、指針に定められた開示を求め得る者の範囲や開示の基準等を踏まえ個別の事例ごとに検討されることとなるが、今後とも、被収容者と医療従事者等との信頼関係を確保し、もって収容施設における適切な医療の実現を図ることに努めたい。

二の(三)及び(三−一)について

 平成十四年度及び平成十五年度の二年間において、被収容者からの診断書交付の求めに対し、それを拒否した事例はあるが、いずれの事例も、診断結果と異なる内容の診断書の作成を求められたことによるもの等、正当の事由があったものと承知している。
 したがって、これらの事例はいずれも医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十九条第二項に違反したものとは考えておらず、これを理由に医師に対する処分を行ったことはない。

二の(四)について

 被収容者の診療に際しては、語学研修等を通じて相当の語学能力を有する職員が基本的に介在し、病状や提供する医療の内容の説明等において医師と患者との間に誤解が生じることがないよう適切に対応しているが、被収容者が特殊な言語しか理解できないような場合には、外部の通訳を依頼して、確実な意思の疎通の確保に努めている。

二の(五)及び(六)について

 御指摘の「患者の権利に関するWMAリスボン宣言」については、任意の団体である世界医師会による宣言であると承知している。
 被収容者の医療については、被収容者処遇規則(昭和五十六年法務省令第五十九号)第三十条等において被収容者がり病した際における措置等を定めているほか、被収容者に対する適切な診療を確保するため、収容施設内の医師等の診療体制を整備するとともに、外部の医療機関と適切な協力関係を維持することに努めているが、お尋ねの「収容施設に訪れる医師による診察」については、入管法の定めるところに従い、保安上の支障の観点から制約されることとなるものと考える。
 また、被収容者を外部の医療機関において受診させる場合には、被収容者の病状、医療機関の診療科目及び診療体制等のほか、保安上の支障の観点も踏まえて受診先を判断することが不可欠であり、必ずしも被収容者の要望にこたえる義務はないものと考える。

二の(七)について

 西日本入国管理センター所長が茨木保健所に対して、御指摘のような内容の回答をした事実はない。

二の(八)の(ア)について

 新たに収容される者については、その全員に対して入所時の健康診断を実施しているわけではないが、入所手続時の健康状態に関する質問等によってその健康状態を把握しており、診療が必要と認められる者に対しては、入所直後に収容施設等の医師による診療を実施することとしている。
 また、収容後においても、被収容者の健康状態について常に留意し、必要と認める場合には、医師の診療を受けさせる等適当な措置を講じているところであり、今後とも、診療体制の整備に一層努める等適切に対処してまいりたい。

二の(八)の(イ)について

 被収容者処遇規則第八条は、被収容者の健康管理の責任を負う施設の長として、新たに収容される者の健康に留意し、必要な医師の健康診断等を受けさせることを義務付けたものであり、当該施設の長が医療行為を行うことを前提とした規定ではない。
 なお、一般論として申し上げれば、健康診断の必要性の判断は、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある「医行為」に該当しないため、医師でない者が当該行為を業として行ったとしても医師法第十七条に違反するものではないと考える。

三の(一)について

 難民調査における通訳者を選任する際には、履歴書の審査や面接等を実施することにより、適正な通訳者の確保に努めるとともに、入管法第六十一条の二の三第二項の規定による質問に際しては、通訳者の話す言葉が申請者に十分に理解されていることを確認しつつ、当該調査を実施している。また、当該調査における申請者の供述を録取した調書を作成するに当たっては、出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和五十六年法務省令第五十四号)第五十七条第二項の規定により、申請者に対し、その録取した内容を通訳者を介して読み聞かせ、誤りがないことを十分に確認させた上で署名をさせるとともに、当該通訳者にも署名押印させることとしているところであり、これらの措置により通訳の適正を担保している。

三の(二)の(ア)について

 御指摘の「衆議院附帯決議」を踏まえ、UNHCR及び日本弁護士連合会以外にも、各種団体に難民審査参与員の推薦を依頼している。しかしながら、現時点において、推薦をいただけるかどうかについて判断を求めているところであり、当該団体名を明らかにすることにより、難民審査参与員の人選等に当たり影響を与えるおそれがあるため、これを明らかにすることは差し控えたい。

三の(二)の(イ)について

 難民審査参与員については、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者のうちから任命することとされているが(改正入管法第六十一条の二の十第二項)、御指摘のとおり、出身国の人権状況を含めた一般情勢、難民条約及び難民議定書等の解釈、供述を含む各種証拠の評価手法等に関する知識が求められることから、適宜、各国又は国際機関が作成した各種報告書、難民条約等に関する各種資料、過去の裁判例等必要な情報を提供するとともに、個別に難民審査参与員から要請があれば、改めて必要な情報を収集した上、提供することを考えている。

三の(二)の(ウ)について

 御指摘の点について特に基準を設けることは予定していないが、難民審査参与員の任命に当たっては、公正・中立な立場の団体等に推薦を依頼していることのほか、特定の外国との経済的・外交的利害関係の有無を的確に把握することにより、難民審査参与員の中立性・独立性の確保を図りたいと考えている。

三の(二)の(エ)について

 難民審査参与員に対しては、各国の人権状況を含めた一般情勢並びに難民条約及び難民議定書等の解釈に関する諸資料のほか、難民認定申請に対する一次審査の段階を含め、それまでに申請者から提出された資料及び難民調査官による調査結果等を提供するとともに、難民審査参与員が必要と認める情報については、改めて収集した上、提供することを予定している。

三の(二)の(オ)について

 御指摘のとおり、出身国の人権状況に関する広範な資料を収集し、蓄積した上、その日本語訳を作成することが必要であると考えている。これまでにも、外務省、外国政府、UNHCRその他の関係機関はもとより、一般書籍、報道、インターネット等から必要な情報を収集し、蓄積しているところであるが、今後、難民審査参与員からの要請にこたえることができるよう、より広範な資料の収集及び蓄積に努めてまいりたい。



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