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平成十六年十二月十七日受領
答弁第七二号

  内閣衆質一六一第七二号
  平成十六年十二月十七日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員山花郁夫君提出平成十六年十一月二十六日付け政府・与党合意文書「三位一体の改革について」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山花郁夫君提出平成十六年十一月二十六日付け政府・与党合意文書「三位一体の改革について」に関する質問に対する答弁書



一について

 お尋ねの「三位一体の改革について」(以下「合意文書」という。)は、地方六団体が平成十六年八月二十四日に取りまとめた「国庫補助負担金等に関する改革案」(以下「地方案」という。)を真摯に受け止め、地方とも協議を重ねた上で、平成十六年十一月二十六日に、政府・与党で合意し、取りまとめたものである。合意文書は、お尋ねの国庫補助負担金改革、税源移譲及び地方交付税改革のいずれについても、地方案をいかす形で取りまとめられていると考えている。なお、合意文書については、地方六団体も、平成十六年十一月二十六日の国と地方の協議の場において、これを受け止める旨の意思表明をしているところである。

二について

 小泉内閣総理大臣は、平成十六年九月三日の閣僚懇談会において、「地方からの改革案を真摯に受け止め、関係各大臣は、改革案の実現に向けて率先して、責任を持って、全力で取り組み、平成十七年度予算に最大限、いかしてもらいたい。」と明確に指示しており、その後、平成十六年十一月十二日の政府主催全国都道府県知事会議でも同旨の発言をしている。お尋ねの小泉内閣総理大臣の発言は、こうした指示に沿って関係各大臣が地方案の実現に向けて取り組むよう重ねて明らかにしたものである。

三について

 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇四」(平成十六年六月四日閣議決定。以下「基本方針二〇〇四」という。)において、「平成十八年度までの三位一体の改革の全体像を平成十六年秋に明らかに」することとしているのは、平成十七年度以降の地方の財政運営上の必要から、適切な時期に、その全体像について、その時点で明らかにできる内容を関係者に示すという趣旨である。合意文書においては、この趣旨を踏まえ、この時点で明らかにすることができる内容について明示している。

四について

 基本方針二〇〇四においては、「三位一体の改革の全体像を・・・年内に決定する」こととしており、その趣旨に沿った対応をすることとしている。なお、国庫補助負担金改革の工程表等の内容である平成十七年度における国庫補助負担金改革等については、平成十七年度予算として閣議決定を行うこととしている。

五について

 平成十六年度において措置した所得譲与税及び税源移譲予定特例交付金が基本方針二〇〇四における「税源移譲は概ね三兆円規模を目指す。」との記述に係るおおむね三兆円規模に含まれることについては、基本方針二〇〇四の閣議決定の段階で合意している。

六について

 合意文書においては、国庫補助負担金について、三兆円程度の廃止・縮減等の改革を行い、税源移譲について、おおむね三兆円規模を目指すとともに、地方交付税の改革を行い、あわせて、国による関与・規制の見直しを行うこととしている。これにより、地方が自らの支出を自らの権限、責任、財源で賄う割合を増やし、より自らの創意工夫と責任で政策を決めることができるようにし、地方の自立を促進することができるようにするものである。

七について

 税源移譲の対象となった各補助事業に係る国庫補助負担金について、人件費等の義務的性格の強い部分については原則として必要額の全額を税源移譲し、それ以外の部分については八割程度を目安として税源移譲することとしている。

八について

 「担保する仕組み」は、地方が、「補助負担金の廃止・縮減によって移譲された事務事業」について、例えば、法令や補助金交付要綱等によって全国一律の手法等で実施されていた事務事業を、地域の実情に応じた手法等をもって、創意工夫をいかしたより効果的、効率的な形で実施することができるようにするなど、「地方団体の裁量を活かしながら」執行できる仕組みとして検討するものであり、「真に住民に必要な行政サービスを地方が自らの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大する」ことに資するものであると考えている。したがって、お尋ねの二つの文は両立するものであり、また、いずれかに重きが置かれたものではない。

九について

 国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しについては、所得税及び個人住民税において、税源移譲とあわせて、税率構造、諸控除等の見直しを行うことを想定しているが、その具体的な内容については、今後、検討することとしている。これは、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」(平成十五年六月二十七日閣議決定。以下「基本方針二〇〇三」という。)において「平成十八年度までに、・・・必要な税制上の措置を判断」すること等を通じて推進することとしている「包括的かつ抜本的な税制改革」の一環と位置付けられるものである。また、個人住民税の抜本的見直しの内容については、地方の意見、税制調査会の答申、与党の議論等を踏まえて、政府において、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の改正案として取りまとめたいと考えている。

十について

 お尋ねの合意文書の記述は、二千十年代初頭に国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を実現するため国と地方の双方が納得できる形で歳出削減に努めるべきであるという考え方を示したものである。基本方針二〇〇四における「国の歳出の見直しと歩調を合わせて、地方の歳出を見直」すとの考え方を修正したものではなく、国の歳出の見直しの歩調とは切り離して地方の歳出の見直しを行うという趣旨ではない。

十一について

 現在、地方交付税の基準財政収入額には、各地方団体の地方税等の収入見込額の七十五パーセントを算入しているが、税源移譲による増収見込額について七十五パーセントを算入することとした場合、基準財政収入額に算入されない二十五パーセントの額は、各地方団体の財政力の差に応じて一般財源の収入額に差を生じさせることとなる。今回の税源移譲は、国庫補助負担金の廃止・縮減に伴う財源として移譲されるものであり、三位一体改革を円滑に進めるために、各地方団体の財政力の差が拡大しないよう、確実に財源調整を行う必要があることから、税源移譲による増収見込額については、基準財政収入額に算入する割合を当面百パーセントとすることとしたものである。

十二について

 地方財政計画については、毎年度、閣議決定をしているところである。
 しかしながら、地方財政計画の歳出項目においては、決算との乖離が生じているので、平成十七年度以降、これを是正し、より一層の適正化を行う必要があると認識しており、今後、このような方向に沿って、具体的な改革の内容を検討していくこととしている。

十三について

 決算を早期に国民に分かりやすく開示するとともに、平成十七年度以降、地方財政計画の歳出項目における決算との乖離を是正し、より一層の適正化を行った上で、中期地方財政ビジョンを策定することとしている。今後、このような方向に沿って、具体的な改革の内容等を検討することとしている。

十四について

 麻生総務大臣の提案も含めて、「不交付団体(人口)の割合の拡大」に向けた改革を検討することとしている。また、「不交付団体(人口)の割合の拡大」とは、市町村に係るものである。今後、このような方向に沿って、具体的な改革の内容等を検討していくこととしている。

十五について

 地方交付税の基準財政需要額の算定に当たっては、地域の実情を反映させるために適用する補正係数の削減を進めること等により、国の関与の廃止・縮減に対応した算定方法の簡素化・透明化に引き続き取り組むこととしている。また、「算定プロセスに地方関係団体の参画を図る」ことについては、今後検討してまいりたい。

十六について

 日本国憲法第二十六条第一項及び教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)第三条の規定により、教育を受ける機会は、すべての国民にひとしく、能力に応じて与えられなければならないものとされており、特に義務教育は、日本国憲法第二十六条第二項及び教育基本法第四条等の規定により、無償とすること等とされている。
 義務教育制度について「根幹」とあるのは、義務教育の実施において重要な原則となる、教育の機会均等、その水準の維持向上及び無償制のことである。

十七について

 「権限移譲」とあるのは、国民健康保険制度について、国から都道府県に対して財政調整権限の一部を移譲し、都道府県に、当該都道府県内の市町村間の財政を調整する権限を付与することである。

十八について

 「国の関与の必要のない小規模事業等については、廃止・縮減等を行う。」とあるのは、「地方分権推進計画」(平成十年五月二十九日閣議決定)において、国庫補助負担金の整理合理化の観点から、「既に設定された国庫補助金ごとの採択基準については、その引き上げを図る」としていること、基本方針二〇〇三の「(別紙二)国庫補助負担金等整理合理化方針」において、「住民に身近な生活基盤の整備等に係る国庫負担金については・・・採択基準の引上げ等を図り、地方の単独事業に委ねていく」としていることなどを踏まえたものであり、こうした方針に沿って国庫補助負担金改革を進めていくという趣旨である。

十九について

 「地域再生の取り組みにおいても三位一体の改革に資するものとなるよう留意する」とあるのは、基本方針二〇〇四の「地域再生」に関する記述において、「「国から地方へ」「官から民へ」との考え方の下、地方の権限と責任を大幅に拡大するなど、「三位一体の改革」にも資する方向で、・・・取組を強力に推進する。」としていることを踏まえ、その趣旨を述べたものである。
 また、「地域再生の取り組みにおいても三位一体の改革に資するものとなるよう留意する」との文をお尋ねの場所に記載しているのは、地域再生の推進に資するような地域の視点からの補助金改革の中で、公共事業やその他の分野における交付金化の検討を進めていることを踏まえたものである。

二十について

 地方案における「歴史的、地理的、社会的事情等の特殊事情に鑑み、特定地域において講じられている補助制度に係る特例措置については、その趣旨を踏まえ必要な措置を講じるべきである」との記述を受け、沖縄等において講じられてきた補助制度に係る特例措置については、補助金の廃止・縮減や交付金化等を行う場合においても、これまでの特例措置の趣旨を踏まえ、国として必要な措置を講ずる旨を示したものである。

二十一について

 「国による基準・モニター等チェックの仕組み」は、「歳入・歳出の両面での地方の自由度を高めることで、真に住民に必要な行政サービスを地方が自らの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大する」という三位一体の改革の考え方を前提としつつ、地方が、「補助負担金の廃止・縮減によって移譲された事務事業」について、地域の実情に応じた手法等をもって、創意工夫をいかしたより効果的、効率的な形で実施することができるようにするなど、「地方団体の裁量を活かしながら」、特に必要な場合に、関係府省において基準等を設けてその実施状況を把握すること等を念頭に置いたものである。具体的な仕組みについては、今後検討することとしている。

二十二について

 合意文書において述べたとおり、「平成十七年度、平成十八年度は、地域において必要な行政課題に対しては、適切に財源措置を行うなど「基本方針二〇〇四」を遵守することとし、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する」こととしている。あわせて、「二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支黒字化を目指して、国・地方の双方が納得できるかたちで歳出削減に引き続き努め、平成十七年度以降も地方財政計画の合理化、透明化を進める」こととしている。その具体的な内容は、今後、予算編成過程等を通じて検討することとしている。

二十三について

 政府は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十七の五第一項及び第二項の規定に基づき、地方の財政状況に関する調査を毎年度行っており、「決算を早期に国民に分かりやすく開示する」の「決算」とは、この財政状況に関する調査の結果を指す。なお、この財政状況に関する調査の結果は、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第三十条の二の規定に基づき毎年度国会に報告する「地方財政の状況」(いわゆる「地方財政白書」)の基礎資料となるものである。

二十四の@について

 「概ね三兆円規模の税源移譲を目指す」とあるのは、合意文書の別紙一の二に掲げられている二・四兆円程度の税源移譲を実施するとともに、別紙一の三に掲げられた事項について、今後、検討を進めていくという趣旨である。

二十四のAについて

 税源移譲に伴う個別の地方団体ごとの影響額については、それを試算し、公表するか否かを含め、今後、検討することとしたい。
 また、合意文書の別紙二において、「税源移譲につながる改革」、「スリム化の改革」、「交付金化の改革」のそれぞれの合計額について概数を示しており、その詳細については、現在、精査を進めているところである。

二十四のBについて

 「義務教育費国庫負担金八、五〇〇億円程度の減額(暫定)」の「暫定」とは、合意文書の一(二)文教の項で定められているとおり、「平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得る」までの間の暫定措置という趣旨である。中央教育審議会では、合意文書に基づき、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するとの方針の下、費用負担についての地方案をいかす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について、今回の暫定措置も含め、幅広く検討することとなる。
 細田内閣官房長官と中山文部科学大臣との会談については、その内容を公表していないので、答弁を差し控えたい。
 また、細田内閣官房長官を始め関係閣僚間で「義務教育国庫負担金については、〇五年度に補助率を引き下げ、〇六年度に負担制度を廃止して一般財源化することでいったん合意した」との事実はない。

二十四のCについて

 国民健康保険制度における新たな都道府県負担の具体的内容については、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第七十二条の二第二項の規定に基づく保険基盤安定制度における国の負担分(保険者支援分を除く)を都道府県の負担とし、療養給付費等の一部を、都道府県が市町村間の財政を調整する財源として負担するものである。
 また、国民健康保険制度における都道府県負担の導入については、「健康保険法等の一部を改正する法律附則第二条第二項の規定に基づく基本方針」(平成十五年三月二十八日閣議決定)に基づく医療保険制度改革の動向を踏まえた恒久的措置と位置付けている。

二十四のDについて

 平成十七年中に検討を行うこととしている「生活保護・児童扶養手当に関する負担金の改革」については、国庫負担率の見直しを含む国と地方の役割や費用負担の在り方のほか、給付の適正化に向けた種々の改革を想定している。これらについては、「地方団体関係者が参加する協議機関」において検討を行うものである。

二十四のEについて

 「公立文教施設等、建設国債対象経費である施設費の取扱い」について、平成十七年中に検討を行い、結論を得ることとしているのは、建設国債対象経費について、財源が借金であり移譲すべき税源がなく、将来世代に便益が及ぶ点を勘案して例外的に公債発行が認められているなど赤字国債により財源充当されている経費とは性質を異にすることなどから税源移譲の対象とすることは不適当であるとする議論がある一方で、建設国債対象経費のうち施設整備関連の事業については、「公立文教施設費の取り扱いについては、義務教育のあり方等について・・・中央教育審議会の審議結果を踏まえ、決定する。」とされているように、建設国債対象経費以外の事業の在り方と密接に関連した検討が必要とされる場合があるのではないかとの議論や、全国各地において普遍的、経常的に実施されるものであり、相対的に地域偏在性が高いこと等の特性を有するその他の建設国債対象経費に比べて、一般財源化になじみやすいのではないかとの議論があることを踏まえ、整理したものである。

二十四のFについて

 「(三)その他」の項目を掲げているのは、「(一)」及び「(二)」に掲げた事項以外にも検討対象が当然あることを踏まえたものである。

二十四のGについて

 国庫補助負担金改革については、平成十六年度においておおむね一兆円程度の改革を行い、平成十七年度及び平成十八年度においては、合意文書の別紙二のとおり、二・八兆円程度の改革を行うこととしている。この結果、平成十六年度から平成十八年度までにおける改革額は、おおむね三・八兆円程度となる。また、税源移譲の額は、合意文書の別紙一のとおり、二・四兆円程度となっている。
 基本方針二〇〇三においては、「廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものについては、税源移譲する。」、「税源移譲は・・・個別事業の見直し・精査を行い、補助金の性格等を勘案しつつ八割程度を目安として移譲し、義務的な事業については徹底的な効率化を図った上でその所要の全額を移譲する。」としているところである。こうした点に照らせば、補助金等の廃止・縮減額と税源移譲額とに差が生じることが基本方針二〇〇三と整合的でないとは考えていない。

二十四のHについて

 「計上」とは、改革の全体像に「八、五〇〇億円程度の減額(暫定)」を盛り込むという意味である。
 税源移譲予定特例交付金として平成十七年度に交付する四千二百五十億円の各都道府県への配分方法については、「教職員給与費を基本として配分する」との四大臣と与党政策責任者による合意を踏まえ、今後検討してまいりたい。

二十五について

 国庫補助負担金のうち、今回廃止・税源移譲の対象としなかったものについて、「地方にはできない」と判断したものではない。

二十六について

 国と地方の協議の場については、運営の在り方や開催時期も含めて、今後の対応を検討中である。



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