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平成十七年九月三十日受領
答弁第一号

  内閣衆質一六三第一号
  平成十七年九月三十日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員吉井英勝君提出アスベスト(石綿)対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員吉井英勝君提出アスベスト(石綿)対策に関する質問に対する答弁書



(一)について

 「特殊健康診断指導指針について」(昭和三十一年五月十八日付け基発第三百八号労働省労働基準局長通達。以下「三十一年通達」という。)においては、特殊健康診断の実施を使用者に勧奨すべき「有害な又は有害のおそれある主要な作業」として「けい肺を除くじん肺を起し又はそのおそれある粉じんを発散する場所における業務」における「石綿をときほごす場所における作業」等の作業を掲げていることから、昭和三十一年当時において、これらの作業が有害なもの又は有害のおそれのあるものであるとの認識はあったが、その有害性についての認識は、飽くまでもじん肺の一種である石綿肺を念頭に置いたものであった。
 また、三十一年通達における石綿に係る作業についての検診項目は「胸部の変化」であり、検査方法は「エックス線直接撮影」である。三十一年通達による石綿に係る作業についての特殊健康診断は、じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)の制定に伴い同法に基づくじん肺健康診断に移行するまでの昭和三十一年から昭和三十五年までの間、毎年約二千人から約三千人の労働者が受診し、そのうち約四パーセントから約十一パーセントの労働者に何らかの異常の所見があった。
 さらに、三十一年通達による特殊健康診断の結果等も踏まえ、昭和三十五年に制定されたじん肺法において、石綿をときほぐす作業等の粉じん作業について、定期的にじん肺健康診断を実施すること等の措置が事業者に義務付けられた。

(二)について

 昭和四十六年四月に、旧特定化学物質等障害予防規則(昭和四十六年労働省令第十一号)において、作業環境中の有害物等の発散を抑制するための局所排気装置の設置を義務付け、石綿粉じんに関する性能要件を定めるまでの粉じん防止対策に関しては、旧労働安全衛生規則(昭和二十二年労働省令第九号)第百七十三条において粉じんの発散する作業場における発じん対策を包括的に規定するとともに、「じん肺法に規定する粉じん作業に係る労働安全衛生規則第百七十三条の適用について」(昭和四十三年九月二十六日付け基発第六百九号労働省労働基準局長通達。以下「四十三年通達」という。)により、局所排気装置を通常設置する必要のある作業場として石綿をときほぐしする等の石綿に係る作業場を示し、対策を講じてきたところである。
 さらに、昭和四十一年から昭和四十五年にかけて、有害物質について業務上疾病の大幅な増加が見られたことなどを踏まえ、労働省において労働環境技術基準委員会を設置し、昭和四十五年十二月から昭和四十六年一月にかけて石綿を含む有害物質の規制について技術的な検討を行った。同委員会の報告書において、有害物質へのばく露濃度を数値基準を示して規制する手法について、「有害物等による障害を防止するには、作業環境内の有害物等の発散を抑制することが重要」であり、「抑制の濃度の値としては、当面、日本産業衛生協会が勧告する許容濃度の値を、これに定めてないものについては、米国労働衛生専門官会議(ACGIH)等で定める値を、それぞれ利用することが適当」とされたことを受けて、右に述べたとおり、旧特定化学物質等障害予防規則を制定し、局所排気装置の石綿粉じんに関する性能要件を定めたものである。

(三)について

 御指摘の海外での症例が何を指すのか明らかではないが、海外及び国内での知見等も踏まえ、粉じん対策としての石綿対策については(一)について及び(二)についてで述べた対策等を行っており、また、がん原性に着目した石綿対策の強化については、昭和五十年の特定化学物質等障害予防規則(昭和四十七年労働省令第三十九号)の改正により石綿等の吹付け作業を禁止する等の措置を行っていた。

(四)について

 「石綿取扱い事業場の環境改善等について」(昭和四十六年一月五日付け基発第一号労働省労働基準局長通達)においては、石綿によって中皮腫が発生するとの説があること等について言及しているが、一方、昭和四十六年一月二十一日に労働省労働基準局長に提出された労働環境技術基準委員会の報告書においては、石綿は労働衛生上の対策を講ずべき有害物には含められたが、がん原性のある物質に含められていなかったことから、昭和四十六年当時においても、石綿のがん原性についての知見は確定していなかったと考えている。
 石綿のがん原性については、昭和四十七年に国際労働機関及び世界保健機関の国際がん研究機関がそれぞれ石綿のがん原性を認めたことにより国際的な知見が確立したものと考えており、労働省としても、その頃に石綿のがん原性を認識したものと考えている。
 なお、御指摘の労働省労働基準局長通達のうち、四十三年通達は、旧労働安全衛生規則第百七十三条に基づき粉じん抑制のための局所排気装置を通常設置する必要のある作業場として石綿吹付け作業場等を示したものであるが、当該通達は、石綿の粉じんによるじん肺を予防する目的で発出されたものであって、石綿により肺がんや中皮腫が発生するものとの認識の下で発出されたものではないと考えている。

(五)について

 労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)に基づき、業務上、石綿にばく露したことにより原発性肺がん又は中皮腫が発症したとして保険給付の支給の決定(以下「労災認定」という。)を最初に行ったのは、厚生労働省において調査した限りでは、原発性肺がんについては千九百七十三年(昭和四十八年)、中皮腫については千九百七十八年(昭和五十三年)であり、千九百六十年代にこれらについて労災認定を行った事例はない。
 なお、昭和二十二年の同法施行以来、じん肺症について多数の労災認定を行っており、千九百六十年代においては約六千件の労災認定を行っている。じん肺症の一種である石綿肺についても千九百六十年代において相当数の労災認定を行った事例があると推定されるが、石綿肺として区分した集計を行っていないため、その労災認定の件数については把握していない。

(六)について

 三十一年通達は、当時の各都道府県労働基準局長に対して発出されたものであり、これに基づき、各都道府県労働基準局において、御指摘の作業も含め、同通達に掲げられている「石綿又は石綿製品を切断し又は研まする場所における作業」等に従事する労働者に対する特殊健康診断の実施等について指導が行われていたものと考えている。また、昭和三十五年からはじん肺法に基づくじん肺健康診断の実施が義務付けられ、さらに、昭和五十年からは特定化学物質等障害予防規則等において、石綿を製造し、又は取り扱う作業について特殊健康診断の実施が義務付けられたが、これらの特殊健康診断についてもその実施の徹底を図るよう当時の各都道府県労働基準局長に対して通達が発出されており、これらに基づく指導が行われていたものと考えている。

(七)について

 石綿の使用等の禁止措置については、例えばクロシドライト(青石綿)については、英国が昭和六十一年に全面禁止し、ドイツが同年、フランスが昭和六十三年に原則禁止したのに対し、我が国は平成七年に全面禁止としたが、行政指導等により平成元年には使用の実態がなくなっていたことを確認しており、ドイツ及びフランスでは禁止措置を講じた時点では依然クロシドライトの使用の実態があり、全面禁止としたのはそれぞれ平成五年及び平成六年であることにかんがみれば、実態面でみればドイツ及びフランスに遅れをとってはいないなど、我が国が諸外国に遅れをとっているとはいえない。なお、石綿の使用等の法的な禁止措置については、欧州諸国においては、我が国よりも早くから石綿を大量に使用し、多くの健康被害が発生していたという事情を背景として、独自の科学的検討に着手し我が国より早期に法的な禁止措置を実施している一方、我が国においては、国内における健康被害等の情報も少ない状況の下で、行政指導等により代替化を進めながら、国際労働機関、世界保健機関といった国際機関における勧告等を受けて法的な禁止措置の検討を行い、当該措置を講じてきたことから、欧州諸国との間に法的禁止措置の実施時期について違いが生じたものと考えられる。
 また、石綿に係る関係省庁の施策に対して、当該施策の所管省庁以外の省庁がどのような見解を有し、どのような影響を与えたのか等について、現時点において把握していることは、アスベスト問題に関する関係閣僚による会合において平成十七年八月二十六日付けで取りまとめられた「アスベスト問題に関する政府の過去の対応の検証」により公表しているところである。

(八)について

 クロシドライト(青石綿)については、昭和五十年に改正された特定化学物質等障害予防規則第一条の規定により、石綿を含む化学物質等について代替物の使用を努力義務とし、また、石綿の代替化の促進を内容とする「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推進について」(昭和五十一年五月二十二日付け基発第四百八号労働省労働基準局長通達)を発出するなど、監督指導を通じて石綿の代替化の促進を図ったこと等により、クロシドライトの使用は減少していき、昭和五十八年及び昭和五十九年に実施した実態調査においては、全国で十一の事業場でクロシドライトの使用が確認されたが、平成元年に石綿製品を製造する事業場を対象として監督を実施した際に、クロシドライトを使用する事業場が存在しないことを確認した。
 クロシドライトの使用等の法的禁止措置の実施については、右に述べた状況を踏まえ、平成元年に世界保健機関からクロシドライト及びアモサイト(茶石綿)の使用について禁止勧告が出されたことを受け、アモサイトの代替化の進展を待って、平成七年に労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)を改正し、アモサイトとともにクロシドライトの使用等を禁止したものである。

(九)について

 現時点において把握している限りでは、政府として御指摘のような住民検診についてその費用を負担したこと等の事実はない。

(十)及び(十一)について

 環境省においては、平成十七年七月からアスベストの健康影響に関する検討会を開催し、兵庫県及び尼崎市等の関係地方公共団体と連携して一般環境経由のアスベストによる周辺住民の健康被害に関する実態調査を進めているほか、厚生労働省においては、平成十七年八月から石綿に関する健康管理等専門家会議を開催し、石綿に係る健康管理の在り方について専門家による医学的な検討を行っている。政府としては、これらの結果等も踏まえ、アスベストによる健康影響に係る健診の必要性やその在り方等について検討する考えである。



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