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平成十九年四月二十四日受領
答弁第一八〇号

  内閣衆質一六六第一八〇号
  平成十九年四月二十四日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員細川律夫君提出第一六六国会に政府が提出した労働契約法案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員細川律夫君提出第一六六国会に政府が提出した労働契約法案に関する質問に対する答弁書



一の1について

 意味するところは、同一であるものと考える。

一の2について

 本年三月十三日に国会に提出した労働契約法案(以下「法案」という。)の第一条においては、「労働契約の成立及び変更」について規定している法案第二章の内容をより分かりやすく示すことが適当であると考えたことから、「労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係」という文言にしたものである。

一の3について

 御指摘の法案第一条の文言は、法案第二章の内容を表しているものであることから、同条の当該文言が同章の規定の解釈に影響を与えるものではなく、労働契約の内容については、同章の規定に沿った解釈がなされるものと考える。

一の4について

 御指摘の「契約内容が法律、労働協約、就業規則の最低基準効、又は、当事者間の合意のいずれにも基づかずに決定されること」の意義が必ずしも明らかでないが、契約の一方当事者が法律上認められた形成権を行使することにより、契約内容が変更されることがあると承知しており、例えば、借地借家法(平成三年法律第九十号)第三十二条の規定により建物の借賃増減請求権を行使した場合がこれに該当するものと考える。

一の5について

 御指摘の事項については、承知していない。

一の6について

 法案第一条の「労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係」という文言に関しては、一の3についてで述べたとおりであり、法案第二章は、判例法理に沿った内容であることから、御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。

二の1について

 意味するところは、同一であるものと考える。

二の2について

 労働契約は、その締結後に労働契約の内容が変更されることもあり得るが、労働契約の内容が変更された場合であっても、その変更された内容について労働者の理解を深めることが重要である。しかしながら、「締結された労働契約の内容」という文言では、締結の際に理解を深めればよく、変更後の労働契約については理解を深める必要がないと誤解されるおそれがあると考えたことから、法案第四条第一項においては、「締結し、又は変更した後の労働契約の内容」という文言を用いたものである。

二の3から5までについて

 本年一月二十五日に厚生労働大臣が労働政策審議会に対し諮問した労働契約法案要綱(以下「諮問要綱」という。)の第三の二における御指摘の文言については、法案第六条及び第八条の規定により合意によって決定された労働契約の内容のほか、法案第七条及び第十条によって決定された労働契約の内容も含むものであり、法案第四条と内容が異なるものではない。

二の6について

 労働契約の内容の変更については、法案第八条から第十条までの規定が適用されるものであって、法案第四条はそれらの規定の特例を定めたものではないため、同条が法案第八条から第十条までの規定の解釈に影響を与えるものではなく、法案第四条の規定により、御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。

三の1について

 意味するところは、同一であるものと考える。

三の2について

 法案第五条は、判例を参考に、使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約に付随して当然に安全配慮責任を負うことを規定したものであり、これを示す表現として、「労働契約により」という文言を用いるものである。これについては、諮問要綱第三の五においても、同様の趣旨により「労働契約に伴い」という文言を用いていたところであるが、「労働契約に伴い」では、その意味するところが適切に表現できていないと考えたことから、「労働契約により」という文言を用いることとしたものである。

三の3から6までについて

 諮問要綱の「労働契約に伴い」という文言の意味内容については、御指摘のとおりである。また、法案第五条に規定する使用者の安全配慮責任の根拠としては、「使用者と労働者との間の労働契約の締結」のみで足り、「配慮に関する労働契約上の合意」を必要とするものではないと考えており、諮問要綱と内容が異なるものではない。したがって、御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。

四の1について

 意味するところは、同一であるものと考える。

四の2について

 諮問要綱第四の一の(二)における「就業規則を労働者に周知させていた場合」という文言では、いつの時点から「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」という効果が生ずるのかが定かでなく、法案第七条においては、法的効果が発生する時点を明確にする必要があるため、「就業規則を労働者に周知させた場合」という文言に改めたものである。

四の3から5までについて

 諮問要綱第四の一の(二)における「就業規則を労働者に周知させていた場合」という文言を用いた場合には、どの時点から「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」という法的効果が生じるのかについては明らかでないものの、新たに就業規則が制定されて、その周知がなされた場合も含まれると考える。
 また、法案における御指摘の文言についても、新たに就業規則が制定されて、その周知がなされた場合も含む趣旨であり、法案において新たな内容を盛り込んだものではない。

四の6について

 御指摘の事案に関する判例の存在については、承知していない。

四の7について

 就業規則の制定前に労働者の労働契約の内容が何によって決定されていたのかは、個別具体的に判断されるものであり、慣行によって一律に労働条件が決まっていた場合もあれば、個別に労働者及び使用者が合意して労働条件を決定していた場合もあるものと考えられ、これらの場合にも法案第七条の規定は適用されるものである。
 この場合において、法案第七条本文と同条ただし書とのいずれが適用されることになるのかは、個別具体的な事情に照らして判断されるものであるが、御指摘の「従前の労働契約が定める労働条件を切り下げる」場合であっても、同条ただし書により労働者及び使用者の合意が優先されるときもあるものと考えるため、当然に御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。

五の1について

 従来の労働法学説及び判例による「出向」の概念において、労働者を出向させることにより出向元が出向先から経済的利益を得ることについて議論したものについては、承知していない。

五の2、3及び9について

 法案第十四条第二項に規定する「出向」を使用者が労働者に命じ、労働者を第三者に使用させて労働に従事させることは、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第四条第六項に規定する「労働者供給」に含まれると考える。
 したがって、出向が使用者により業として行われる場合には、職業安定法第四十四条が適用され、禁止されることから、出向の定義から業として行われるものを除く必要はないと考える。

五の4及び5について

 法案第十四条第二項の規定は、出向について、出向元である使用者、出向先である第三者及び出向する労働者の三者間の関係を定義したものであり、「(労働者と)第三者との間の労働契約」の成立要件を規定しているものではなく、いかなる場合に成立するのかに関しては、事案ごとに個別に判断されるものであると考える。

五の6について

 労働政策審議会労働条件分科会においては、「在籍出向」の定義自体についての具体的な議論はなされておらず、従来の労働法学説及び判例上の概念としての「在籍出向」を念頭に置いて議論がなされたものと認識している。

五の7及び8について

 出向をめぐる学説及び判例において、法案第十四条第二項と全く同様の「出向」の定義を示した例については承知していないが、出向は、「出向元会社の従業員である身分を保有しながら、すなわち休職という形のまま、出向先会社で勤務する雇傭状態であって、指揮命令権の帰属者を変更すること」とした最高裁昭和四十八年十月十九日第二小法廷判決や、「出向は、甲企業における従業員としての地位を保持したまま、乙企業においてその労務に従事させる人事異動」であり、「それを実現するためには、まず甲企業と乙企業において甲企業の従業員の出向・転籍を乙企業が受け入れること(および受入の仕方)についての合意(受入契約の締結)を必要とする」(菅野和夫著「労働法第七版」)とした学説が存在することは承知しているところであり、法案においては、できる限り多くの出向について同条第一項の権利濫用法理の保護の対象とする趣旨から、出向を定義したものである。

六の1及び2について

 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百二十八条において、契約期間途中であっても「やむを得ない事由」があるときは直ちに契約の解除をすることができる旨が定められているところであるが、契約期間の満了前の解雇事由を労働契約においてあらかじめ定めていた場合に、当該解雇事由に基づく解雇を有効に行うことができるのか否かは、裁判例においてもその判断は必ずしも統一されていなかったものと承知している。
 また、期間の定めのある労働契約について、契約期間の満了前の解雇をめぐる紛争を未然に防止する必要があることから、法案第十七条第一項において「やむを得ない事由がないとき」の取扱いを明確にすることとしたものである。

六の3から6までについて

 法案第十七条第一項は、「解雇することができない」旨を規定したものに過ぎないものであり、解雇の根拠自体を定めた規定ではないことから、使用者がその契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇しようとする場合においては、民法第六百二十八条がその根拠規定になるものであり、「やむを得ない事由がある」ことに関する証明責任は、使用者が負うものと解している。
 したがって、今般、法案第十七条第一項を設けたとしても、使用者が解雇を行う場合には、民法第六百二十八条は、従来どおり、解雇という効果を生じさせるための根拠規定となるものであり、そうした効果を生じさせるための要件である「やむを得ない事由がある」ことについての証明責任の分担に変更を加えるものではないと考えており、御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。
 また、法案第十七条第一項を設けることによって、「やむを得ない事由」の証明責任の分担に変更を加えるものではないことから、御指摘のような条文とする必要はないと考える。

七の1について

 法案第十四条及び第十五条は、出向の命令及び懲戒について、それらを使用者が行うことができる場合であっても、民法第一条第三項と同様に権利の濫用が許されないことを明らかにするとともに、権利の濫用に該当するか否かの判断に当たっての考慮要素を示すことにより、使用者が権利の濫用に該当する出向の命令及び懲戒を行うことを未然に防止し、もって出向の命令及び懲戒に係る紛争の未然防止等に資するようにするための規定である。

七の2について

 御指摘の「使用者の労働契約上の権利の発生又は行使を規制する条項」が何を想定しているのか必ずしも定かでないが、法案第九条等は、使用者の合理的な行動を促すこととなると考える。



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