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平成十九年六月十五日受領
答弁第三六八号

  内閣衆質一六六第三六八号
  平成十九年六月十五日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員保坂展人君提出拷問等禁止委員会最終見解のうち、刑事司法・刑事拘禁と入管手続などに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出拷問等禁止委員会最終見解のうち、刑事司法・刑事拘禁と入管手続などに関する質問に対する答弁書



一について

 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(平成十一年条約第六号。以下「拷問等禁止条約」という。)第十七条1の規定に基づいて設置された拷問の禁止に関する委員会(以下「委員会」という。)に政府が提出した第一回政府報告の検討を踏まえて委員会が二千七年五月十六日及び同月十八日の会合で採択したいわゆる最終見解(以下「最終見解」という。)については、法的拘束力を有するものではないが、その内容等を十分に検討した上、政府として適切に対処していく必要があると考えている。

二の(一)について

 我が国の刑事司法制度の下では、限られた身柄拘束の期間の中で、被疑者の取調べその他の捜査を円滑かつ効率的に実施しつつ、被疑者とその家族、弁護人等との接見の便にも資するためには、全国にきめ細かく設置されている留置施設に被疑者を勾留することが現実的であり、代用刑事施設制度は、このような観点からみて、現に重要な役割を果たしていると考えてきたところである。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号。以下「刑事収容施設法」という。)においては、代用刑事施設制度を代替収容制度とした上、留置施設に係る留置業務に従事する警察官は、その留置施設に留置されている被留置者に係る犯罪の捜査に従事することを禁じる旨を明文で規定し、一般の方を委員とする留置施設視察委員会の設置を規定するなどの制度的改善を加えており、現段階で刑事収容施設法を改正することは考えていない。代替収容制度については、今後、取調べを含む捜査の在り方や刑事手続全体を検討する中で検討すべきものと考えている。

二の(二)について

 留置施設においては、被留置者に対し、おおむね月に二回、留置業務管理者の嘱託する医師が健康診断を行い、また、被留置者が負傷し、又は疾病にかかっている場合は、公費により速やかに医師等の診療を受けさせるなどしているところであり、引き続き、被留置者が適切な医療を迅速に受けることができるようにしてまいりたいと考えている。
 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)は、すべての被疑者に弁護人選任権を保障しているところであり、これに加え、すべての被疑者を対象に国選弁護制度を拡大することについては、いわゆる司法過疎地域の状況や公的資金の導入に伴う国民の負担等を考慮して、慎重に検討すべきものと考えている。
 現在の刑事訴訟の実務上、適正な取調べによって得られた被疑者の供述が事案の真相を解明する上で極めて重要な役割を果たしていることにかんがみると、取調べに際して弁護人の立会いを認めることについては、限られた被疑者の身柄拘束期間の中で迅速に捜査を遂げて実体的真実を追求する必要があること等を考慮しつつ、広く刑事訴訟制度全体の枠組みの中で慎重に検討すべきものであると考えている。
 いわゆる検察官手持ち証拠のすべてを弁護人に開示することについては、関係者の名誉・プライバシーの侵害、罪証隠滅、証人威迫等の弊害が生じる場合があり、さらに、国民一般からの捜査への協力を得ることが困難になるおそれがあるので、相当ではないと考えている。

二の(三)について

 平成十九年六月八日現在、留置施設視察委員会の委員を任命している都道府県公安委員会(道警察本部の所在地を包括する方面以外の方面にあっては、方面公安委員会。以下「公安委員会」という。)のうち、弁護士会が推薦した弁護士を留置施設視察委員会の委員に任命しているものは、岩手県公安委員会、宮城県公安委員会、秋田県公安委員会、東京都公安委員会、茨城県公安委員会、群馬県公安委員会、埼玉県公安委員会、神奈川県公安委員会、山梨県公安委員会、長野県公安委員会、静岡県公安委員会、岐阜県公安委員会、愛知県公安委員会、三重県公安委員会、京都府公安委員会、兵庫県公安委員会、奈良県公安委員会、鳥取県公安委員会、島根県公安委員会、徳島県公安委員会、香川県公安委員会、愛媛県公安委員会、佐賀県公安委員会、長崎県公安委員会、宮崎県公安委員会、鹿児島県公安委員会及び沖縄県公安委員会であり、右に述べた以外のものは、北海道公安委員会、函館方面公安委員会、旭川方面公安委員会、釧路方面公安委員会、北見方面公安委員会、栃木県公安委員会、千葉県公安委員会、滋賀県公安委員会、大阪府公安委員会、和歌山県公安委員会、山口県公安委員会及び高知県公安委員会であると承知している。
 また、留置施設視察委員会の委員については、各公安委員会において、人格識見が高く、かつ、留置施設の運営の改善向上に熱意を有する者のうちから適当と認められる者を任命する必要があると考えている。

二の(四)について

 公安委員会は、都道府県警察の民主的運営を保障するため、住民の良識を代表する合議制の機関として置かれ、第三者的な立場から、都道府県警察を管理するものであり、公安委員会によって、刑事収容施設法に基づく不服申立てに対する審査等は、適切に行われると考えている。

二の(五)について

 現在、法制審議会において、被収容人員の適正化を図るとともに、犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から、刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について審議がなされ、その中で、保釈の在り方についても検討がなされているところであり、政府としては、今後の議論の推移を見守ってまいりたいと考えている。

二の(六)について

 警察庁においては、都道府県警察に対し、保護室を積極的に整備するよう指導しているところであり、都道府県警察においては、厳しい財政状況の下、保護室の整備に努めているものと承知している。

二の(七)について

 委員会の審査に当たっては、必要な情報を提供し、誠意をもって説明したところであり、委員会から最終見解の第十五項で指摘された事項については、関係省庁においてその内容等を十分に検討し、適切に対処してまいりたい。

三の(一)について

 現在の刑事訴訟の実務上、適正な取調べによって得られた被疑者の供述が事案の真相を解明する上で極めて重要な役割を果たしていることにかんがみると、取調べの全過程について録音・録画を義務付けることについては、被疑者と取調官との信頼関係を築くことが困難になるとともに、被疑者に供述をためらわせる要因となり、その結果、真相を十分解明し得なくなるおそれがあるほか、取調べ中における組織犯罪に関する情報収集や関係者の名誉・プライバシーの保護に支障を生ずるおそれがあるなどの問題があるので、慎重な検討が必要であると考えている。

三の(二)について

 取調べ時間について法的な規制を設けることについては、捜査の流動性や事件の多種多様性にかんがみると、その現実的妥当性には疑問がある上、現在でも、被疑者に過度の負担を掛けることがないよう十分配慮されており、このような法的な規制を設ける必要性はないと考えている。

三の(三)について

 刑事訴訟法上、強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑いのある自白は証拠とすることができないこととされており、御指摘のような改正を行う必要はないものと考えている。

三の(四)について

 委員会の審査に当たっては、必要な情報を提供し、誠意をもって説明したところであり、委員会から最終見解の第十六項で指摘された事項については、関係省庁においてその内容等を十分に検討し、適切に対処してまいりたい。

四の(一)について

 刑事施設においては、死刑確定者の身柄を確保するとともに、その者が心情の安定を得られるように留意する必要がある。このため、刑事収容施設法第三十六条は、死刑確定者の処遇は、原則として、昼夜、単独室において行う旨を定めるとともに、死刑確定者が心情の安定を得るため有益と認められる場合には、他の被収容者との接触を許すことも可能である旨を定めているのであり、これを改正する必要はないと考えている。
 また、執行の日時を死刑確定者に対し相当期間前に事前に告知する取扱いは、当該死刑確定者の心情の安定を害することが懸念されるとともに、かえって過大な苦痛を与えることにもなりかねないと考えられること等により、適当でないと考えている。

四の(二)について

 裁判所は、犯罪事実の認定についてはもとより、被告人に有利な情状についても、慎重な審理を尽くした上で死刑判決を言い渡しているものと承知しており、最終的に確定した裁判について速やかにその実現を図ることは、死刑の執行の任に当たる法務大臣の重要な職責であると考えている。仮に再審の請求や恩赦の出願を死刑執行の停止事由とした場合には、死刑確定者が再審の請求や恩赦の出願を繰り返す限り、死刑の執行をなし得ず、刑事裁判を実現することは不可能になり、相当ではないと考えられる。
 刑事訴訟法上、死刑の言渡しを受けた者が心神喪失の状態にあるときは、法務大臣の命令によって執行を停止するものとされているところ、死刑の言渡しを受けた者が心神喪失の状態にあるかどうかについては、適切に判断がなされており、御指摘のような改正を行う必要はないものと考えている。

四の(三)について

 刑事訴訟手続においては、三審制の下で有罪の認定、刑の量定等について上訴が広範に認められ、また、死刑事件では必ず付される弁護人にも上訴権が付与されており、現に、死刑判決がなされた多数の事件で上訴がなされている状況にあること等にかんがみれば、御指摘のような制度を設ける必要はないものと考えている。
 また、平成九年から平成十八年までの十年間に確定した死刑判決中、高等裁判所の判決又は決定を経ていないものの数は、平成九年零件、平成十年一件、平成十一年零件、平成十二年二件、平成十三年一件、平成十四年零件、平成十五年から平成十七年まで各一件、平成十八年二件であり、高等裁判所の判決又は決定を経たが、最高裁判所の判決又は決定を経ていないものの数は、平成九年から平成十一年まで零件、平成十二年一件、平成十三年零件、平成十四年から平成十六年まで各一件、平成十七年零件、平成十八年一件である。

四の(四)について

 裁判所は、犯罪事実の認定についてはもとより、被告人に有利な情状についても、慎重な審理を尽くした上で死刑判決を言い渡しているものと承知しており、最終的に確定した裁判について速やかにその実現を図ることが重要であると考えており、御指摘のような制度改正は相当でないと考えている。

四の(五)について

 再審請求事件の弁護人等と死刑確定者との面会に職員の立会いを付した実例があることは承知しているが、その件数は承知していない。承知している実例において立会いを付したのは、刑事収容施設法第百二十一条の規定に基づくものである。
 また、御指摘の刑事収容施設法第百二十一条等は必要な規定であり、改正すべきものとは考えていない。

五の(一)について

 刑事施設における過剰収容状況の解消のため、これまで、収容棟の増築工事等により、収容能力の拡大に努めてきたところである。
 また、現在、法制審議会において、被収容人員の適正化を図るとともに、犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から、刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について審議がなされているところであり、政府としては、今後の議論の推移を見守ってまいりたいと考えている。

五の(二)について

 御指摘の第二種手錠が導入された平成十五年十月一日から平成十八年十二月三十一日までの間、全国の刑事施設における第二種手錠の使用事由別の件数は、平成十五年は、暴行のおそれ十件、自殺のおそれ二十一件、平成十六年は、暴行のおそれ六十件、自殺のおそれ九十一件、平成十七年は、暴行のおそれ百二十五件、自殺のおそれ百五十三件、平成十八年のうち平成十八年法律第五十八号による改正前の刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(同年五月二十四日施行)の施行前は、暴行のおそれ五十六件、自殺のおそれ七十七件、同年のうち同法施行後は、自身を傷つけるおそれ百十二件、他人に危害を加えるおそれ五十九件、刑事施設の設備、器具その他の物を損壊するおそれ八件である。
 第二種手錠に係る事実の申告及び苦情の申出の件数に係るお尋ねについては、統計がなく、把握していない。

五の(三)について

 刑事収容施設法第六十二条第一項においては、刑事施設の長は、被収容者が負傷し、若しくは疾病にかかっているなどの場合には、速やかに、刑事施設の職員である医師等(医師又は歯科医師をいう。以下同じ。)による診療を行い、その他必要な医療上の措置を執るものとする旨を定め、また、被収容者の保健衛生及び医療に関する訓令(平成十八年法務省矯医訓第三千二百九十三号)第十条においては、刑事施設の長は、被収容者が負傷し、又は疾病にかかっている旨の申出をした場合には、医師等がその申出の状況を直ちに把握できる場合を除き、看護師又は准看護師にその状況を把握させ、当該看護師又は准看護師に診察の緊急性等を判断させた上で医師等へ報告させること、さらに、同報告を受けた医師等において診察の要否を判断することをそれぞれ定め、被収容者に対する適時適切な医療に努めているところである。

五の(四)について

 被収容者の健康を保持し、また、被収容者が疾病にかかった場合に適切な医療措置を講じることは、国の重要な責務であると認識している。
 刑事施設における医療を厚生労働省へ移管することについては、行刑改革会議においても、その効果には種々の疑問や問題点が考えられるとされたところであり、被収容者の日常生活全般を管理している刑事施設において、被収容者の健康管理や医療もその一環として、引き続き刑事施設の責任の下に提供することが適当であると考えているところである。
 法務省としては、もとより、刑事施設の医療の充実を図るためには、厚生労働省を始め関係機関の協力を得る必要があると考えており、これまでに、各刑事施設において、関係機関と医療に関する協議会を開催するなどして、関係機関からの協力を得ながら、医療体制の一層の充実が図られるよう努めているところである。

五の(五)から(七)までについて

 受刑者を昼夜の単独室処遇(以下「昼夜単独室処遇」という。)に付する決定及びその期間を更新する決定は、受刑者の所内における行状、性格、他の受刑者との人間関係、集団生活への適応の可否、施設内の保安状況等を総合的に勘案して行う必要があり、行刑実務に精通した豊富な経験に基づく専門的・技術的な判断が求められることから、刑事施設の長がこれを行っている。
 刑事施設においては、集団で作業を行う場所での就業を拒否し続け昼夜単独室処遇に固執する受刑者のほか、心身の健康状態等により集団での処遇が困難な受刑者等がおり、このような集団処遇になじまない受刑者については、昼夜単独室処遇を行わざるを得ないと考えている。こうした事情が解消した場合には集団処遇に戻すことにしているが、これらの事情が解消されないため、やむを得ず、昼夜単独室処遇が相当長期間継続せざるを得ない例もあり、昼夜単独室処遇の期間に上限を定めることは相当ではないと考えている。
 また、昼夜単独室処遇に付する決定及びその期間を更新する決定は、関係職員から成る審査会において慎重に検討し、必要に応じ、心身の状態に関する医師の意見その他本人の処遇に関する専門職員の意見等を聴いた上で、刑事施設の長により適切に行われているものと認識している。
 刑事施設においては、昼夜単独室処遇に付された者について、必要に応じ、職員が面接して集団処遇に移行する意思を持たせるよう努めたり、精神科医師による診察を実施するなど、昼夜単独室処遇を行わざるを得ない事情の解消に努めるなどしており、一律に御指摘の「評価及び処遇の見直し」を実施すべきものとは考えていない。

六の(一)について

 退去強制を受ける者が出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第五十三条第一項に定める国において拷問を受けるおそれがあると信ずるに足りる実質的な根拠があると判断されるような場合は、同条第二項にいう「前項の国に送還することができないとき」に含まれると解され、本人の希望により、同項各号に定めるいずれかの国に送還されることから、御指摘のような改正の必要性はないものと考えている。

六の(二)について

 難民の認定をしない処分等がされた場合には、入管法第六十一条の二の九の規定に従い、法務大臣に対し異議申立てをすることができることとされ、また、法務大臣は、当該異議申立てに対する決定に当たっては、学識経験者から任命された難民審査参与員の意見を聴かなければならないこととされており、難民認定における適正手続は保障されているものと考えている。
 また、難民不認定処分等を通知する場合には、行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第四十六条の規定に基づき、当該難民不認定処分等の相手方に対し、取消訴訟の提起等に関する事項を教示し、裁判を受ける権利等への配慮を行っていることから、御指摘のような「制度的な改革」を行う必要性はないものと考えている。

六の(三)について

 入国管理局の収容施設は、退去強制事由に該当する者を送還するまでの間、その身柄を確保しておくことを目的としており、当該施設の長の責任において処遇の適正を図ることが可能であり、あえて独立した審査機関を設ける必要はないと考えている。
 なお、入国管理局においては、被収容者の人権保護の徹底を期すとともに、被収容者の適正な処遇に資するため、平成十年以降、被収容者処遇規則(昭和五十六年法務省令第五十九号)の改正を行って、収容施設の長が巡視を行う際に被収容者から直接意見を聴取したり、意見箱の設置により被収容者から意見を聴取する制度を整備・運用しているほか、被収容者が自己の処遇に関して不服があるときは、当該収容施設の長に対し不服を申し出て、最終的には、法務大臣に対して異議を申し出ることができる不服申出制度を整備・運用している。

六の(四)について

 収容令書によって収容することができる期間は最大で六十日間とされているのに対し、退去強制令書による収容は、直ちに本邦外に送還することができないときに、被退去強制者の送還を確実に実施するために身柄を確保するとともに、被退去強制者の本邦における在留活動を禁止することを目的としており、収容期間に制限はない。
 他方、法務省においては仮放免制度を弾力的に運用し対応しているところであり、御指摘のような「改善・対応」は必要ないものと考えている。

六の(五)について

 委員会の審査に当たっては、必要な情報を提供し、誠意をもって説明したところであり、委員会から最終見解の第十四項で指摘された事項については、関係省庁においてその内容等を十分に検討し、適切に対処してまいりたい。

七の(一)及び(二)について

 精神保健指定医は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号。以下「精神保健福祉法」という。)に基づき、本人の意思によらない入院並びに入院中の者の身体的拘束及び十二時間を超える隔離(以下「身体的拘束等」という。)を必要とするかどうかの判定を行うこととされているが、精神保健指定医は、これらの職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者として、厚生労働大臣の指定を受けた者であり、精神保健福祉法及び精神保健福祉法に基づき厚生労働大臣が定めた基準に基づき、これらの職務を行うこととされている。また、緊急その他やむを得ない理由がある場合に精神保健福祉法第二十二条の四第四項に規定する特定医師の診察に基づき十二時間に限り行われる本人の意思によらない入院や、身体的拘束等以外の行動の制限についても、精神保健福祉法及び精神保健福祉法に基づき厚生労働大臣が定めた基準に基づき行うこととされている。
 また、精神科病院に入院中の者又はその保護者は、都道府県知事又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市の市長(以下「都道府県知事等」という。)に対して、入院中の者の退院や処遇の改善を求めることができることとされており、当該請求があった都道府県知事等は、精神医療審査会において、精神障害者の医療に関し学識経験を有する者、法律に関し学識経験を有する者及びその他の学識経験を有する者のうちから都道府県知事等が任命した委員により構成される合議体により審査を行わせ、その結果に基づき、退院や、処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じるなどしなければならないなど、人権に配慮した適切な医療及び保護が行われるために必要な制度が設けられている。
 さらに、精神保健福祉法第二十九条第一項の規定に基づく措置入院処分及び精神保健福祉法第二十九条の二第一項の規定に基づく緊急措置入院処分については、行政事件訴訟法に基づき、その取消しを求めて裁判所に訴えを提起することが可能であること、また、法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている者は、人身保護法(昭和二十三年法律第百九十九号)の定めるところにより、その救済を裁判所に請求することができることから、精神保健指定医の権限行使並びに本人の意思によらない入院及び行動の制限について、御指摘のような制度の改正を行う必要はないものと考えている。

七の(三)について

 精神医療審査会は、精神保健福祉法に基づき、措置入院者及び医療保護入院者について精神科病院の管理者から提出される病状等に関する定期の報告等や、入院中の者又はその保護者からの退院や処遇の改善の請求の全件について審査を行うこととされていること、また、都道府県知事等は、精神医療審査会の審査結果に基づいて、退院や、処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じるなどしなければならないこととされていることから、独立した審査が担保されていると考えており、御指摘のような第三者機関を創設する必要はないものと考えている。

八の(一)について

 我が国においては、拷問等禁止条約第一条1に規定されている「拷問」に当たる行為については、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず、脅迫罪、暴行罪及び特別公務員暴行陵虐罪を含め、刑法等の法律の規定により処罰されることとなるので、御指摘のような改正を行う必要性はないものと考えている。

八の(二)について

 犯罪の成否は、法と証拠に基づき、個別具体的な事案ごとに判断されるべき事柄であり、一概にお答えすることはできないが、一般論としては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十五条の特別公務員暴行陵虐罪は、その主体を「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者」、「法令により拘禁された者を看守し又は護送する者」と規定しており、お尋ねの自衛隊員及び入国管理局職員がこれらに該当する場合には、同罪が成立することがあるものと考えられる。
 自衛隊員又は入国管理局職員が、特別公務員暴行陵虐罪で起訴され又は判決を受けた事例は承知していない。

九の(一)について

 拷問等に当たる一定の行為を刑事上の公訴時効制度の適用対象から除外すべきか否かについては、公訴時効制度の制度趣旨等を考慮し、慎重に検討すべきものと考えている。
 国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)に基づく損害賠償請求権の消滅時効等に関する規定については、十二の(一)についてで述べるように合理的なものであると考えている。

十の(一)について

 刑事施設の被収容者からの不服申立てについては、法務省において民間・各界の有識者からなる「刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会」を開催し、不服審査の公平性及び公正性を確保しており、留置施設の被留置者からの不服申立てについては、二の(四)についてで述べたように、第三者的な立場から都道府県警察を管理する公安委員会に対する不服申立ての制度が整備されているところである。
 また、独立性を有する人権委員会の設置を目的とする人権擁護法案を平成十四年三月に国会に提出したが、平成十五年十月、衆議院の解散に伴って廃案となったところ、同法案については、引き続き検討を行っている。

十の(二)について

 最終見解の御指摘に係る部分の趣旨は必ずしも明確ではないが、刑事収容施設法においては、審査の申請及び事実の申告をすることができる期間を制限しているところ、審査の申請は、被収容者の権利を制限するような刑事施設の長の措置に対する不服申立制度であり、問題とされる措置を早期に調査し、当該措置による権利・義務関係を早期に確定する必要があり、また、事実の申告は、刑事施設の職員による被収容者に対する違法又は不当な行為に対する不服申立制度であり、証拠の散逸のおそれ等の観点から、早期の申告を受けて調査を行う必要があることから、いずれの不服申立制度においても、申立期間を合理的に制限したものと考えている。
 なお、これら以外の不服申立制度である苦情の申出は、刑事施設内の処遇全般について苦情を申し出ることができ、申出期間は設けられていない。
 右に述べた審査の申請等の対象となる措置等の内容については、違法性又は不当性の有無を比較的容易に判断できる性質のものであり、また、申請等の方法も複雑なものではないことから、被収容者が不服申立てを行うか否かを自ら決めるのに困難を伴うことはないと考えており、また、被収容者が不服申立てを行うか否かを決めるに当たって外部との相談を禁じる規定はない。
 また、刑事収容施設法においては、審査の申請等の内容について、刑事施設の職員に秘密にすることができるように、刑事施設の長に必要な措置を講ずることを義務付けるとともに、刑事施設の職員には、審査の申請等をしたことを理由として、その者に対する不利益な取扱いをすることを禁じており、これらの規定にしたがって適正に対応しているところである。
 国家賠償法に基づく国家賠償請求についての消滅時効等については、十二の(一)についてで述べるとおりである。

十の(三)について

 御指摘のような「詳細な統計データ」については、作成しておらず、提供することはできない。
 今後、御指摘のような「詳細な統計データ」については、その作成の必要性を含めて検討してまいりたい。

十の(四)について

 刑事施設視察委員会は、刑事施設を視察し、その運営に関し意見を述べるものであり、その対象は、施設の運営全般に及んでいる。したがって、同委員会は、職員の不適正な職務執行が疑われる事案について刑事施設の長に必要な情報の提供を求めるなどして調査を行うことが可能であり、行刑運営の透明性を確保するなどの同委員会に期待される役割に照らし、調査する権限が不十分であるとは考えていない。
 また、「刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会」は、行刑改革会議の提言を踏まえ、公権力による人権侵害等を対象とした独立性を有する人権救済機関が設立されるまでの間の「暫定的かつ事実上の措置」として、法務省において開催されているものである。同提言においてもその事務局は法務省内に置くものとされているところ、同事務局は、矯正の事務を取り扱う矯正局からの独立性を担保するため、法務省大臣官房秘書課に置かれている。

十一の(一)について

 都道府県警察学校における初任科、初任補修科及び部門別任用科、管区警察学校における巡査部長任用科及び警部補任用科並びに警察大学校における警部任用科のカリキュラムは、職務倫理、法学、基本実務、専門実務等の教授種目で構成されており、これらの授業においては、警察官に対し、人身の自由を始めとする基本的人権の尊重や適正な捜査手続、ストーカー対策、配偶者からの暴力対策、児童虐待対策等の女性及び子どもを守る活動等に関する内容が盛り込まれた教材を活用して、人権に関する教育を行っている。

十一の(二)について

 法の執行に従事する職員については、その所属する各機関において、計画的に実施されている研修その他の機会で、御指摘のような人権に関する事柄を取り扱うほか、人権問題の専門家による講演会を実施すること等により、人権に関する教育を実施しているところである。
 例えば、警察官については、新たに採用された者や昇任した者に対する研修や各種の専門的な研修等において、被留置者の適正処遇、ストーカー対策、配偶者暴力対策及び児童虐待対策等に関する教育を行い、人権に配意した適正な職務執行の徹底に努めている。
 検察官については、基本的人権を尊重した検察活動を徹底するため、その経験年数等に応じて実施している各種研修において、国際人権関係条約及び刑事に関する国際協力、児童、女性の人権問題等の人権課題等をテーマとした講義を実施するなど、人権に関する理解の増進に努めている。
 裁判官については、裁判所において、裁判官の経験年数等に応じて実施している各種研修において、児童、女性の人権を含めた人権擁護及び国際人権に関するカリキュラムを実施し、裁判官の人権感覚及び国際人権基準についての理解を深めるよう努めているものと承知している。
 入国警備官については、基本的人権を尊重した退去強制業務を徹底するため、その経験年数等に応じて実施している各種研修において、人権に関する理解を深めるための講義を行っているほか、毎年開催される人権に焦点を当てた研修において児童や女性の人権等をテーマとするなど、人権意識の涵養に努めている。

十二の(一)について

 国家賠償法に基づく損害賠償請求権の消滅時効等については、同法第四条の規定により民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百二十四条の規定が適用されるところ、同条は、時間の経過により立証が困難となること等を考慮して被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年という時効期間を定めるとともに、被害者側の主観的事情により長期にわたり法律関係が確定しないことを防止するため不法行為の時から二十年という除斥期間を設けたもので、合理的な規定であると考えており、御指摘のような「時効の廃止ないし援用禁止」といった措置を採る必要はないものと認識している。
 また、国家賠償法の採用している相互主義は、我が国の国民に保護を与えない国の国民に我が国が積極的に保護を与える必要がないという衡平の観念に基づく合理的なものであることから、これを撤廃する必要はないものと認識している。

十二の(二)について

 拷問又は虐待の被害者については、例えば、医療機関においてリハビリテーションを含む医療を受けること及び障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)に基づく自立訓練等のサービスを受けることを想定している。



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