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答弁本文情報

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平成二十三年七月二十九日受領
答弁第三三七号

  内閣衆質一七七第三三七号
  平成二十三年七月二十九日
内閣総理大臣 菅 直人

       衆議院議長 横路孝弘 殿

衆議院議員浅野貴博君提出東京電力福島第一原発事故による福島県はじめ各地域の畜産農家等への被害に対する政府の取り組み等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員浅野貴博君提出東京電力福島第一原発事故による福島県はじめ各地域の畜産農家等への被害に対する政府の取り組み等に関する質問に対する答弁書



一について

 平成二十三年三月の東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所の事故(以下「本件事故」という。)の発生以降、収集された稲わら等を給与された肉用牛であって、その肉について暫定規制値(原子力安全委員会が策定した「原子力施設等の防災対策について」に掲載されている「飲食物摂取制限に関する指標」中の値であって、当面、食品中の放射性物質の規制値とされ、これを上回る放射性物質が検出された食品については、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第六条第二号に該当するものとして取り扱うこととされているものをいう。以下同じ。)を超過する放射性セシウムが検出されるおそれがあるもののうち、市場に出荷されたものとして同年七月二十四日までに各都道府県から農林水産省への情報提供を基に把握した頭数の合計は、二千七百四十九頭である。

二について

 暫定許容値(平成二十三年四月十四日付けの農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長通知「原子力発電所事故を踏まえた粗飼料中の放射性物質の暫定許容値の設定等について」に規定する粗飼料中に含有される放射性物質の値であって、粗飼料を肉用牛等に給与する場合に、その肉等から検出される放射性物質の値が暫定規制値を超過しないと考えられる当面の目安として取り扱うこととされているものをいう。以下同じ。)を超過する放射性セシウムが検出された稲わらを給与した可能性がある肉用牛の肉については、関係地方公共団体において、その流通状況を調査するとともに、保管されている牛肉について放射性物質に関する検査を実施し、暫定規制値を超過する放射性セシウムが検出されたものに対しては、回収等の措置をとっているところである。
 また、これまでに放射性セシウムが検出された肉用牛の肉を数回摂取したとしても、それにより体内に取り込まれる放射性セシウムからの実効線量は、平成二十三年三月二十九日に食品安全委員会が報告した「放射性物質に関する緊急とりまとめ」において「食品由来の放射線曝露を防ぐ上でかなり安全側に立ったものである」とされている年間五ミリシーベルトよりも、相当程度低いものであり、お尋ねのような場合分けにかかわらず、健康への影響はないものと考えられる。

三について

 政府としては、全国の中央卸売市場における牛肉の取引結果を営業日ごとに集計しており、牛肉の価格動向の指標とされる東京都中央卸売市場食肉市場におけるA5規格の枝肉価格の平成二十三年七月十四日から同月二十四日までの平均価格については、東日本大震災発生前の同年三月一日から同月十日までの平均価格に比べ、約二割下落していると把握している。

四について

 福島県において飼養されている肉用牛については、平成二十三年七月十九日に、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第二十条第三項の規定に基づく原子力災害対策本部長による指示(以下「本部長指示」という。)により同県外への移動及びと畜場への出荷を差し控えるよう要請している状況にあるなど、被害が定まっていないこともあり、政府において、現時点で被害額については計算していない。

五について

 本件事故を踏まえた家畜の飼養管理に当たっての留意事項については、平成二十三年三月十九日付けの農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長及び生産局畜産部畜産振興課長の連名の通知「原子力発電所事故を踏まえた家畜の飼養管理について」(以下「連名通知」という。)により、農林水産省東北農政局消費・安全部長及び生産経営流通部長並びに関東農政局消費・安全部長及び生産経営流通部長を通じて、両地方農政局の管轄区域である青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県及び静岡県に対して、これら都県の畜産農家への周知を依頼したほか、畜産関係団体に対して、当該周知を依頼した旨及び連名通知の内容について情報提供するとともに、協力依頼を行った。加えて、連名通知の内容を農林水産省ホームページに掲載する等の方法により周知したところである。

六について

 農林水産省としては、農家に技術的な指導を行うに当たって一般的に行っている、五についてで述べた方法により周知をしていたが、結果として連名通知の内容を知らなかった農家から、暫定許容値を超過する放射性セシウムが検出された稲わらが流通したことを踏まえれば、稲作農家、稲わら販売業者等に対する周知にも力を入れるべきであったと考えている。

七について

 四についてで述べた本部長指示に基づく出荷制限を解除するための措置としては、福島県に対し、適切な飼養管理の徹底を前提に、本部長指示に基づく緊急時避難準備区域等においては全頭検査を実施することを、また、その他の地域においては、農家ごとに一頭以上について放射性物質に関する検査を実施し、その結果検出された放射性セシウムが暫定規制値を下回った場合のみ当該農家の出荷を認め、その後も定期的な検査を行うことを求めている。
 政府としては、関係地方公共団体が必要な検査が行えるよう協力していく考えである。

八について

 政府としては、消費者の信頼を確保するとともに牛肉の価格を安定させるためには、安全な牛肉しか流通させない体制を構築することが何より重要であることから、本件事故発生後に収集された稲わら等を給与された肉用牛の肉のうち既に流通しているものについては、その一部を民間団体が買い上げて焼却する仕組みを整える考えである。

九について

 東京電力において、平成十九年新潟県中越沖地震による東京電力の柏崎刈羽原子力発電所の運転停止に伴う厳しい収支状況により、平成十九年度分以降、役員に対して賞与は支払われていないと承知している。また、一般職社員に対しては、本件事故の発生後については、平成二十三年六月に昨年同期の半分以下の水準となる月額給与の一か月分の賞与を支給したと聞いている。

十について

 東京電力は、平成二十三年四月末以降、本部長指示に基づき出荷制限等を受けた農林漁業者の方々等に対して、仮払補償金の支払を進めているものと承知しており、「一時的なものを含めても、未だ何の賠償も行っていない」との御指摘は当たらない。

十一について

 政府としては、東京電力に対して、本部長指示に基づく出荷制限等により損害を受けた農林漁業者の方々に当面の必要な資金を可及的速やかに支払うよう促しているとともに、平成二十三年六月十四日に原子力損害賠償支援機構法案を国会に提出したところであり、大きな被害を受けている畜産農家を始めとした被害者の方々が迅速かつ適切な賠償を受けられるよう万全を期す考えである。また、「政府が代わりに一時的なものでも支払うべき」という御指摘については、議員立法として提案された平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案が、現在国会において審議中であると承知しており、その動向を見守って行く考えである。



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