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平成二十八年五月二十四日受領
答弁第二七五号

  内閣衆質一九〇第二七五号
  平成二十八年五月二十四日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員鈴木貴子君提出「児童虐待防止」政策における政府の見解及び認識等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員鈴木貴子君提出「児童虐待防止」政策における政府の見解及び認識等に関する質問に対する答弁書



一について

 御指摘の「国際人権団体等」及び「子どもの権利条約等」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号。以下「児童虐待防止法」という。)等について、児童の権利に関する条約(平成六年条約第二号。以下「権利条約」という。)第四十三条1の規定に基づき設置された児童の権利に関する委員会(以下「委員会」という。)から権利条約に違反しているとの指摘は受けていない。

二について

 御指摘の「殺人罪との境界領域」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の宮下厚生大臣(当時)の答弁については、児童虐待は「犯罪的行為に準ずるもの」であることを指摘したものであるところ、児童虐待防止法第二条に規定する児童虐待(以下「児童虐待」という。)を受けた児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)の範囲を現行制度以上に限定することについては、児童虐待を受けた児童に対して、必要な保護が図られなくなるおそれがあるため、適切ではないと考えている。

三について

 お尋ねの「平成二十七年度に発生したすべての事案」については把握していない。
 後段のお尋ねについては、児童相談所の職員が、労務提供先における虐待行為について、公益通報者保護法(平成十六年法律第百二十二号)に規定する要件を満たして公益通報した場合には、同法による保護の対象となる。

四及び五について

 「児童相談所運営指針」(平成二年三月五日付け児発第一三三号厚生省児童家庭局長通知)では、一時保護は原則として子どもや保護者の同意を得て行う必要があるが、子どもをそのまま放置することが子どもの福祉を害すると認められる場合には、この限りでないものとしており、「緊急性があり、一時保護が短期であることを例外適用の要件」とはされていない。

六及び十二について

 御指摘の「一時保護」及び「親子間の面会・通信を全部制限(禁止)する処分」については、児童を適切に保護する観点から、必要な期間行うことが適当であると考えているが、現在、国会に提出している児童福祉法等の一部を改正する法律案附則第二条第二項では、政府は、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第八項に規定する要保護児童を適切に保護するための措置に係る手続における裁判所の関与の在り方について、児童虐待の実態を勘案しつつ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとしており、御指摘の「意見」も踏まえつつ、検討してまいりたい。

七について

 前段のお尋ねについては、平成十二年十二月の教育改革国民会議報告や、平成十五年三月の中央教育審議会答申等を踏まえて改正された教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第十条第一項において、家庭教育について、「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする」と規定されているところである。
 後段のお尋ねについては、お尋ねの「児虐法第二条と民法第八百二十二条との関係」の意味するところが必ずしも明らかでないが、児童虐待は、子の利益のため子の監護及び教育に必要な範囲内で行われる行為ではないため、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十二条の規定による懲戒には含まれない。

八について

 委員会に政府が提出した第三回政府報告の検討を踏まえて委員会が二千十年六月十一日の会合で採択したいわゆる最終見解(以下「最終見解」という。)の第六十二項の内容については承知している。お尋ねの「この国連見解に即して我が国の学校を指導すること」の意味するところが必ずしも明らかではないが、学校においては、在籍する児童生徒を、児童相談所に送致する権限は有していない。

九について

 児童虐待防止法第六条第一項では、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかにこれを通告しなければならないとされており、児童虐待の事実が必ずしも明らかでなくとも主観的に児童虐待であると認識した者は同項の規定による通告義務を負っており、こうした通告については、児童虐待防止法の趣旨に基づくものであれば、結果として児童虐待の事実がない場合にも、そのことによって刑事上及び民事上の責任を問われることは基本的にはないと考えている。

十について

 御指摘の「児童福祉法第二十八条申立審判」については、家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第二百三十四条に規定する「都道府県の措置についての承認の審判事件」及び「都道府県の措置の期間の更新についての承認の審判事件」について、同法第二百三十六条第一項の規定に基づき、家庭裁判所は、原則として、児童を現に監護する者、児童に対し親権を行う者、児童の未成年後見人及び児童(十五歳以上のものに限る。)の陳述を聴かなければならないこととされている。また、同法第五十六条の規定に基づき、職権で事実の調査をし、かつ、必要と認める証拠調べをしなければならず、同法第四十七条の規定に基づき、当事者又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て、事件記録の閲覧等をすることができることとされている。家庭裁判所は、これらの規定に基づき、当事者及び利害関係人の手続保障を図りながら、適切に事件の処理をしているものと承知している。
 また、一時保護については、六及び十二についてでお答えしたとおり、政府は、児童福祉法第六条の三第八項に規定する要保護児童を適切に保護するための措置に係る手続における裁判所の関与の在り方について検討することとしており、御指摘の「意見」も踏まえつつ、検討してまいりたい。

十一について

 前段のお尋ねについては、御指摘の「弁護士接見禁止」の事実については承知していないが、児童福祉法第三十三条の二第二項の規定に基づき、児童相談所長は、一時保護を加えた児童について、監護、教育及び懲戒に関し、当該児童の福祉のため必要な措置を採ることができることとされている。後段のお尋ねについては、一時保護を加えた児童の心身の状況によっては、当該児童の保護者が選任した弁護士に面会することが当該児童の福祉を害することもあるため、御指摘の「意見」については、慎重な検討が必要であると考えている。

十三について

 児童相談所長が児童虐待を受けた児童の保護者に対して当該児童との面会又は通信の全部を制限した期間については把握していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

十四について

 十一についてでお答えしたとおり、児童福祉法第三十三条の二第二項の規定に基づき、児童相談所長は、一時保護を加えた児童について、監護、教育及び懲戒に関し、当該児童の福祉のため必要な措置を採ることができることとされている。
 また、「一時保護等が行われている児童生徒の指導要録に係る適切な対応及び児童虐待防止対策に係る対応について」(平成二十七年七月三十一日付け二十七文科初第三百三十五号文部科学省初等中等教育局長通知。以下「局長通知」という。)は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第四十八条第一項等の規定による指導等として、都道府県教育委員会等に対して、一時保護等が行われている児童生徒が児童相談所において相談・指導を受ける場合であって、当該児童生徒の自立を支援する上で当該相談・指導が有効・適切であると判断され、かつ、一定の要件を満たすときには校長は指導要録上出席扱いとすることができること等を示しているものである。また、局長通知においては、一時保護等が行われている児童生徒が学校に復帰した際、当該学校は児童生徒の状況に応じ補習等を実施し、小中学校における各学校の課程の修了や高等学校における単位の認定等を適切に行うことが望ましいこととしている。
 したがって、局長通知は「学習指導要領に基づく所定の期間・カリキュラムの教育をうけずとも児童生徒を出席扱いとすること等を認めることとする」ものではなく、かつ、一時保護等が行われている児童生徒の教育を受ける権利を侵害するものではないため、日本国憲法第二十六条の規定に反するものではないと考えている。

十五について

 お尋ねの「児童を管理する目的」の意味するところが必ずしも明らかではないが、児童福祉法第三十三条の二第二項又は第四十七条第三項に基づき、児童相談所長又は児童福祉施設の長は、一時保護所又は児童福祉施設に入所中の児童に対し、当該児童の福祉のために必要な措置として、児童相談所の児童精神科医による診断や児童精神科への入院等の適切な援助を行う場合があることは承知している。

十六について

 児童福祉施設に入所中の児童又は児童以外の満二十歳に満たない者(以下「施設入所児童等」という。)に親権を行う者又は未成年後見人がある場合においても、施設入所児童等を心身ともに健やかに育成する観点からは、児童福祉施設の長は、監護、教育及び懲戒に関し必要な措置を行うことが必要な場合もあることから、児童福祉法第四十七条第三項の規定は必要であると考えている。

十七について

 都道府県が、児童に対し、施設入所等の措置を採ってから一年程度経過した後であっても、当該措置を継続しなければ保護者が当該児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他著しく当該児童の福祉を害するおそれのある場合等もあることから、お尋ねの「意見」については、慎重な検討が必要であると考えている。

十八について

 最終見解については、法的拘束力を有するものではないが、その内容等を十分に検討した上で、政府として適切に対処していく必要があると考えており、最終見解で指摘された「独立した調査」については行っていないが、今後、「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト」(平成二十七年十二月二十一日子どもの貧困対策会議決定)に基づき、児童相談所の一時保護所について第三者評価の仕組みを設けるよう、検討してまいりたい。



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