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答弁本文情報

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令和三年五月十四日受領
答弁第一一五号

  内閣衆質二〇四第一一五号
  令和三年五月十四日
内閣総理大臣 菅 義偉

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員阿部知子君提出エネルギー基本計画見直しにおける原発の発電コスト検証に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員阿部知子君提出エネルギー基本計画見直しにおける原発の発電コスト検証に関する質問に対する答弁書


一について

 政府の発電コスト検証において、各電源の発電コストについては、専門家による議論に基づき、モデルプラント方式を採用し、試算の考え方や織り込む費用を整理しており、「原発の発電コストを恣意的に低く見積もる」との御指摘は当たらないものと考えている。また、政府としては、「エネルギー基本計画」(平成三十年七月三日閣議決定)に記載されているとおり、「東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが原点であるという姿勢は一貫して変わらない。」という方針であり、「「安全神話」へと逆戻りするおそれがある」との御指摘は当たらないものと考えている。

二の1について

 平成二十七年の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会長期エネルギー需給見通し小委員会発電コスト検証ワーキンググループ(以下「平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループ」という。)において、原子力発電の設備利用率を七十パーセントと設定しているが、これは、発電所が通常の運用をした時の発電コストを検証するという趣旨で、過去三十年間の実績の平均を踏まえて設定された数値であり、専門家による議論がなされた結果、妥当とされたものであることから、「過大評価」との御指摘は当たらないものと考えている。

二の2について

 政府としては、令和三年三月から、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会発電コスト検証ワーキンググループ(以下「令和三年発電コスト検証ワーキンググループ」という。)において、各電源の発電コストについて審議中であり、その結果が出ていないため、現時点でお答えすることは困難である。

三について

 原子力事業者は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の発生を契機とした規制強化に対し迅速かつ最善の安全対策を講じており、これに係る追加費用が発生している。このため、令和三年発電コスト検証ワーキンググループにおける原子力発電の発電コストの試算でも、平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループの結果を踏襲し、こうした状況を踏まえ、安全対策に係る費用については、原子力事業者の直近の見積りを基に、追加的安全対策費として、モデルプラントの建設費に算入する。

四の1について

 追加的安全対策費については、平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループが平成二十七年五月に取りまとめた「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告」(以下「平成二十七年報告」という。)において、追加的安全対策費の内訳の各項目に共通して「既存の配管設備の改造や防潮堤の設置など、新規制基準があらかじめ明らかであれば、設計・計画の最適化によっては省くことができる費用がある。そうした費用については、モデルプラントに計上する必要のない費用として慎重に特定し、計上する費用の対象から除く。」とされている。令和三年発電コスト検証ワーキンググループにおいて、経済産業省が示した当該各項目の考え方は、平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループの結果を踏襲し、原子力事業者から聴取した結果を基に示したものである。

四の2について

 政府の発電コスト検証においては、専門家による議論に基づき、合理的な見積りが可能な費用を用いて発電コストの試算を行っており、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故後の新規制基準(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)及び同法の規定に基づく原子力規制委員会規則等に定める基準)を踏まえて、原子力事業者が行う安全対策に係る費用を基に発電コストの試算を行っている。

四の3について

 政府の発電コスト検証は、各電源間の比較等を目的として行われているが、専門家による議論に基づき、各電源の発電コストに共通して、地方公共団体の予算は計上しておらず、「過小評価」との御指摘は当たらないものと考えている。

五の1について

 平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループにおいて、専門家による議論に基づき取りまとめられた平成二十七年報告において、「共済方式の算定根拠については、追加的安全対策によって事故発生頻度が低減することとなるため、各国規制機関や国際機関における安全目標の相場や、安全対策実施後のリスク評価の改善幅(五千二百炉・年に一回→一万二千百炉・年に一回:約二・四分の一に低下)を総合的に勘案し、十分に保守的に見積もって、二千十一年コスト等検証委員会の「二千炉・年」の半分の「四千炉・年」とする。」とされており、「恣意的」との御指摘は当たらないものと考えている。

五の2について

 お尋ねの「二〇一六年の東京電力改革・一F問題委員会が示した二十一・五兆円」は、政府が、被災者・被災企業への賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉等のための所要資金について、一定の蓋然性を有するものとして示したものである。
 「二十一・五兆円」に、廃炉における燃料デブリ等の取り出し以降に生じる廃棄物の処分、中間貯蔵後の除去土壌等の最終処分等に要する資金は含まれていない。これは、燃料デブリの性状や分量等、最終処分される除去土壌等や処理後の濃縮物の性状、放射能濃度等が明らかでない段階では、費用を合理的に見積もることは困難なためである。

六について

 高レベル放射性廃棄物の最終処分に係る費用については、研究開発の結果、高レベル放射性廃棄物の最終処分の概念の検討成果等を踏まえて、現在の知見に基づき、最終処分の標準的な工程や技術的な条件をもとに合理的に算定したものである。
 なお、御指摘の「安全の確保の規制」については、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(平成二十七年五月二十二日閣議決定)において、「原子力規制委員会は、概要調査地区等の選定が合理的に進められるよう、その進捗に応じ、将来の安全規制の具体的な審査等に予断を与えないとの大前提の下、概要調査地区等の選定時に安全確保上少なくとも考慮されるべき事項を順次示すことが適当である。」と明記している。

七について

 御指摘の「政府は「世界一の規制基準」という虚構を振りかざしてきたが、地震大国日本における原発の耐震基準の基となる基準地震動は、近年の地震の実績を下回っていることが近年明らかになってきている。従って炉心損傷頻度や大規模放出頻度など事故発生確率は上がっている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループの検証では、事故リスク対応費用の算出に当たって、国際的な安全目標として炉心損傷頻度や大規模放出頻度が一万炉・年から百万炉・年に一回と設定されていることや、確率論的リスク評価を総合的に勘案し、十分に保守的に見積もり四千炉・年に一回事故が起きた場合に対応することを想定した試算を行っている。今回の検証の想定については、令和三年発電コスト検証ワーキンググループにおいて、各電源の発電コストについて審議中であり、その結果が出ていないため、現時点でお答えすることは困難である。

八について

 モデルプラント方式は、事業開始から終了までのライフサイクル全体を評価するものであり、将来稼働を開始するプラントの発電コストを評価するのに適した方法として、国際社会において広く用いられている試算方法である。
 このため、令和三年発電コスト検証ワーキンググループにおいても、将来のエネルギーミックスを検討するという目的に適したモデルプラント方式の試算を採用している。

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