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令和六年三月二十二日受領
答弁第五九号

  内閣衆質二一三第五九号
  令和六年三月二十二日
内閣総理大臣 岸田文雄

       衆議院議長 額賀福志郎 殿

衆議院議員阿部知子君提出脳死臓器移植の拡大を目指す医療政策の転換に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員阿部知子君提出脳死臓器移植の拡大を目指す医療政策の転換に関する質問に対する答弁書


一の1について

 御指摘の「これらの事例」の詳細を把握しておらず、また、御指摘の「これらの事例が示しているように誤っている可能性が否定できないこと」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。いずれにせよ、御指摘の「脳死とされうる状態」の診断については、「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)」(平成九年十月八日付け健医発第一三二九号厚生省保健医療局長通知別紙。以下「臓器移植法運用ガイドライン」という。)や平成二十二年度厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別研究事業による「臓器提供施設における院内体制整備に関する研究」において作成された「法的脳死判定マニュアル」(以下「法的脳死判定マニュアル」という。)等に基づき行われているものと承知している。

一の2について

 前段のお尋ねについては、御指摘の「診断の誤りによって提供に至らなかったケース」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。いずれにせよ、御指摘の「脳死とされうる状態」の診断については、一の1についてで述べたとおり行われているものと承知している。また、後段のお尋ねについては、御指摘の「コーディネーターによる臓器提供の選択肢提示」及び「その後生存して」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、お尋ねの「日本臓器移植ネットワークの発足以降」について網羅的に把握していないが、「コーディネーター」による臓器提供に関する患者家族への説明については、公益社団法人日本臓器移植ネットワーク(以下「日本臓器移植ネットワーク」という。)によると、平成二十八年から令和二年までの間に、七百四十五名の患者家族に行われているものと承知している。

二の1について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「臓器保護目的の患者管理」の「処置」については、御指摘の「令和三年度厚生労働科学研究費補助金「五類型施設における効率的な臓器・組織の提供体制構築に資する研究 ドナー評価・管理と術中管理体制の新たな体制構築に向けて」」において、例えば、「脳死患者においては、心血管系における自律神経系の求心性神経応答や視床下部下垂体の機能が消失し、その結果として血行動態の不安定化が認められる。このような脳死特有の生理学的変化を理解した上で管理を行う必要がある」とされ、呼吸や血圧等の管理に係る処置が示されている。

二の2について

 お尋ねについて、御指摘の「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」において、延命措置についての選択肢については、御指摘の「「脳死とされうる状態」で臓器提供をしない選択をした場合」か否かにかかわらず、「何れを選択する場合も、患者や家族らに十分に説明し合意を得て進める」こととされており、御指摘の「人工呼吸器や循環作動薬などを打ち切」るか否かも含め、「患者や家族らに十分に説明し合意を得て進め」られるものと承知している。

二の3について

 御指摘の「長期脳死」及び「脳不全患者であっても脳以外の臓器機能が維持されていれば長期に生存できること」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

二の4について

 御指摘の「法的脳死判定」が行われる前の患者に対して、患者の全身状態を維持するために必要な呼吸や血圧等の管理に係る処置のように、救命治療をはじめとする一般の患者に対しても行われる治療等を目的とした処置であり、かつ、臓器移植を医学的に適正に実施する上で必要と認められ、結果的に「臓器保護目的」に資する処置は行われており、また、患者の個別具体的な状況に応じて処置の内容の変更等が行われる必要があることから、必ずしも御指摘のように「「救命治療から臓器保護目的」に切り替わるタイミングは、法的脳死判定後であるべき」とは考えていない。

三の1について

 御指摘の「臓器提供施設連携体制構築事業」は、令和五年七月六日に開催された第六十四回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会における、「要配慮個人情報やプライバシー、医療専門職の守秘義務」を踏まえて事業を実施すべきとの指摘等を踏まえ、家族への説明をした上で、患者の医療情報をより適切に取り扱うことが見込まれる臓器提供の経験が豊富な施設に限って当該情報を共有する事業であるところ、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)や御指摘の「医療倫理」にのっとり、患者の医療情報を取り扱うこととしており、御指摘の「臓器提供数を増やしたいという目的のために、なし崩しに法の理念を変え」るものではない。

三の2について

 お尋ねについて、御指摘の「臓器提供施設連携体制構築事業」を開始した令和元年度から令和四年度にかけて、当該事業に参加している医療機関の数は九十二機関から百二十九機関へと増加し、これに伴い、当該医療機関における脳死下での臓器提供の件数についても十七件から五十三件へと増加しており、当該事業は、全国における当該件数の増加に寄与しているものと考えている。

四について

 御指摘の「あらゆる情報」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「ご家族に提示する文書「ご家族の皆様にご確認いただきたいこと」」を公開するか否かも含め、患者家族等への適切な情報提供の在り方については、一義的には、日本臓器移植ネットワークにおいて適切に検討されるべきものと考えているが、厚生労働省としても、御指摘のように「可能な限りご家族の冷静な判断に資するよう、」必要な情報は公開されるべきと考えており、日本臓器移植ネットワークと連携しながら、公開する情報の内容も含め、適切に検討してまいりたい。

五の1及び2、六、七並びに九について

 御指摘の「脳血流の消失」については、令和四年度厚生労働行政推進調査事業費補助金厚生労働科学特別研究事業による「現在の脳死判定基準で脳死判定が困難な事例における脳死判定代替法の確立に向けた研究」(以下「令和四年度厚生労働行政推進調査事業研究」という。)において、「様々な理由で法的脳死判定の脳幹反射の評価ができない場合においても、脳血流の停止の確認・・・で、脳死判定が可能である」とされ、令和五年十一月十五日に開催された第六十五回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会で確認された「脳死判定における補助検査に関する作業班の検討結果」(以下「作業班検討結果」という。)において、「現在の法的脳死判定では、@深昏睡A瞳孔が固定し、・・・径が左右とも四ミリメートル以上であることB脳幹反射の消失C平坦脳波D自発呼吸の消失の全ての状態が確認されることが求められているが、眼球損傷や鼓膜損傷、高位脊椎損傷によりA及びBの確認が困難な場合が存在する。そのような場合には、確認できる項目はすべて確認した上で、CT血管造影法等で脳血流の消失を確認することで、法的脳死判定が可能であると考えられる。なお、小児においても当該方法の導入は可能と考えられる」とされたこと等を踏まえ、臓器の移植に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和五年厚生労働省令第百五十三号)による改正後の臓器の移植に関する法律施行規則(平成九年厚生省令第七十八号。以下「施行規則」という。)第二条第二項第六号の規定により、臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号)第六条第二項の判定(以下「法的脳死判定」という。)に当たって、眼球損傷、鼓膜損傷又は高位脊髄損傷により施行規則第二条第二項第二号に掲げる瞳孔の状態又は同項第三号に掲げる脳幹反射の消失の状態の確認ができない場合にあっては、脳血流の消失の状態を確認するとともに、同条第五項の規定により、法的脳死判定に当たっては、聴性脳幹誘発反応又は脳血流の消失を確認するように努めるものとしたところである。また、令和四年度厚生労働行政推進調査事業研究においては、「脳血流の停止を確認する画像検査に関してはCTAが最も選択されるべき検査法と評価」されているところ、作業班検討結果においては、当該脳血流の停止を画像検査で確認できる状態を「脳血流の消失」と表現したものと承知している。さらに、令和四年度厚生労働行政推進調査事業研究及び作業班検討結果においては、御指摘の「「脳血流の消失」に相当する血流量」の数値については示されておらず、御指摘のように「法的脳死判定に採用を検討している検査は、脳血流量を数値として記録に残す検査」ではなく、また、「それらの数値は異なる検査間で比較できるもの」ではない。

五の3について

 お尋ねについては、令和四年度厚生労働行政推進調査事業研究及び作業班検討結果においては、御指摘の「「脳血流の消失」に相当する血流量」の測定が求められていないことから、お答えすることは困難であるが、令和四年度厚生労働行政推進調査事業研究においては、「脳死判定の脳血流補助検査として施行可能である画像検査」として、「@カテーテルを用いた脳血管撮影:(四 vessels DSA)ACTアンギオグラフィ(CTA)BCT灌流画像(CTP)CMRアンギオグラフィ(MRA)DMR灌流画像(MRP)ESPECT(一二三I−IMP)FSPECT(九九mTc−HMPAO)GSPECT(九九mTc−ECD)」が例示されている。

八及び十について

 御指摘の「五例」の詳細を把握しておらず、また、御指摘の「誤診」及び「脳の機能が不可逆的に廃絶した患者」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。いずれにせよ、法的脳死判定については、御指摘の「脳血流検査」のみによって行われるのではなく、各種の検査により行われるものであり、施行規則第二条第二項各号に掲げる状態が確認され、かつ、当該確認の時点から少なくとも六時間(六歳未満の者にあっては二十四時間)を経過した後に、当該状態が再び確認されることをもって行われるものであるところ、これらは、臓器移植法運用ガイドラインや法的脳死判定マニュアル等に基づき行われているものと承知している。

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