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昭和三十四年二月二十四日提出
質問第三号

 酪農振興基金の業務運営に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和三十四年二月二十四日

提出者  春日一幸

          衆議院議長 加(注)鐐五(注) 殿




酪農振興基金の業務運営に関する質問主意書


 酪農振興基金は、牛乳の生産と消費とは、乳業の特性上一時的に季節的あるいは地域的な不均衡の発生が免がれがたいのみならず、酪農業の発展とともに需給の不均衡が激化し、ために生乳取引の混乱を来たしてきた折柄、たまたま昭和三十二年に加糖乳製品に対する砂糖消費税免税の撤廃措置に伴い、これによつて生ずる財源をもつてなんらかの酪農安定措置を講ずべきであるとの意見に基き、酪農安定対策の一環として昨年四月公布、五月施行を見た酪農振興基金法に基いて設立されたものであり、その目的とするところは、生乳取引の改善に資するため乳業者及び生乳の生産者の経営の維持安定の所要資金につき、これらの者が金融機関に対して負担する債務を保証して、その融通を円滑にすることにあるこというまでもない。
 従つて基金の業務運営は、右設立の本旨に従い、忠実、適正かつ迅速に行われるべきものと考えるのであるが、基金の業務運営の現状にはこの点はなはだしく適切を欠くものがあるやに見えるのは遺憾にたえない。
 ついては、次の諸点に関する政府の所信ないしは所見を詳細に明らかにせられたい。

一 設立の本旨に即する業務運営の根本方針の確立
  基金は、国の酪農安定対策の一環として、特に酪農業者を対象として設けられた信用補完制度であつて、この意味において通常の中小企業に対する信用補完制度とは同日に談ずべきではない。
  すなわち通常の中小企業に対する信用補完制度が原則として金融ベースに立脚して運営せられるのに対し、本基金は金融ベースを全然無視するわけではないが、積極的にこれを補完し、むしろ政策金融の推進に重点を置いて、これを運営するのがもつともよく設立の本旨に適合するゆえんというべきである。
  従つて基金は、主として中小乳業者等の金融を円滑に行うため、金融機関に積極的に保証を与えることを業務運営の根本方針として確立し、またこの根本方針に基いてその機構及び業務方法を整備刷新すべきものと考えるがどうか。
二 保証契約締結手続の改善
  酪農安定対策上基金に負荷せられた使命の重大性にかんがみ、従来金融ベースから除外されていた中小乳業者等の信用を補完し、進んでこれを金融ベースに乗せるため、基金自ら保証の要否を査定し、保証限度額を決定すべきが至当である。
  従つて保証契約締結の手続としては、原則としてまず農林当局が事前審査を行つて特認を与え、基金はこれに基いて査定を行い、その結果を金融機関に通知して、金融機関から被保証人からの書類を基金に送付された上、保証契約を締結することにすべきものと考えるがどうか。
三 基金の余裕金運用方法の改善
  基金の余裕金は、基金の使命にかんがみ、極力金融機関の貸出意欲を助長刺戟し、かつは基金の業務運営を円滑にするため、原則としてこれを金融機関に預託するのが適切妥当の措置と考える。
  しこうして預託の方法としては、たとえば基金の業務預託率は二十パーセントとし、それ以上は指定預託とすることにより、金融機関との間の緊密な連繋とその積極的協力を確保することができると考えるがどうか。
  なお、基金が現在余裕金の運用を食糧証券の購入に充てている理由はどこにあるのか、またこれをすみやかに金融機関への預託に切り替える意思があるかどうか。
四 担保徴求についての方針
  信用保証に際しては、原則として担保を徴求することと思うが、実情に応じ特に必要と認めるときには無担保の例外的取扱をなす意思があるかどうか。
  また担保徴求の主体は基金とし、融資手続上及び金融機関に求償権行使を委託する都合上、便宜担保徴求事務を金融機関に代行させることとするのが、本基金制度の性格上きわめて適切妥当と考えるがどうか。
  なお設備資金に対する担保物件の掛目は建ち上り担保の八十パーセントとし、運転資金については融資保証額の二パーセントを連帯積立させ、協同組合をして共済制を行わさせることが実情に即する措置と考えるがどうか。
五 保証業務の早急実施
  乳業設備は冬季行うを常識とし、本年二、三月に金融を得なければ一年の遅延と等しい結果に終るので、設備転換資金については、建ち上り担保をもつて二月中に半額、三月末の設備完成時期までに残り半額を融資し得るよう、農林当局において積極的に保証業務促進の措置を採るべきものと考えるがどうか。
  また運転資金については、乳製品を主とする者一箇月半、市乳を主とする者一箇月の資金量を、原則として無担保で直ちに融資し得るよう保証をなすべきものと考えるがどうか。
六 設備転換資金貸出遅延の理由
  農林当局においては、昨年十一月中旬設備転換希望中小乳業者を東京に召集し、個々にわたり詳細にその設備内容を調査したにもかかわらず、特認保証に効果ある可否の結論を決定しないでじんぜん時日を徒過し、また中小乳業者が本年早々設備明細書を基金並びに融資先金融機関に提出したにもかかわらず、今日までなんらこれに対する措置が採られていないのは、農林当局及び基金のはなはだしい怠慢と考えるがどうか。
七 免責条項適用の緩和
  過去における経過にかんがみるときは、中小乳業の設備転換は本来昭和三十二年の加糖乳製品に対する砂糖消費税免税の撤廃措置と併行して行われるべきのものであつたにもかかわらず、酪農振興基金法の制定を見たのは昨年四月であり、同法は五月十六日に施行されたにもかかわらず、基金が設立されたのは遙かに遅れた十一月十日であり、事情のいかんはともあれ、政策効果を減殺したこと実にはなはだしいものがあるといわざるを得ない。この間中小乳業者の困窮は慢然と看過され、ために中小乳業者は自主的努力によつて後日の基金保証を期待して設備転換資金の調達をつながざるを得なかつた実情にあるのである。これひとえに基金の発足が著しく遅延したことに基因するものであり、中小乳業者の責任に転嫁させるべき筋合のものではない。
  従つて業務方法書の第二十五条の免責条項にかかわらず、やむを得ざる経過措置として、これら旧債借換資金についても、直ちにこれを保証するのが当然かつ至当と考えるがどうか。

 右質問する。





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