衆議院

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昭和四十七年七月十二日提出
質問第四号

 直面する内外の諸問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十七年七月十二日

提出者  大野 潔

          衆議院議長 (注)田 中 殿




直面する内外の諸問題に関する質問主意書


一 田中総理の所信表明について
  国民世論の最低支持率に表現される佐藤政治への不信と失望の中で田中政権が誕生した。当然のこととして佐藤政治からの脱却が田中政権の至上の使命である。
  田中総理は、山積する内外の諸問題について、所信を表明し国民の不安を取り除くべきであつた。何故それを行なわないのか、その理由を明らかにせよ。
  国会で野党の要求を無視しながら院外で政策論を語る田中内閣の態度は国会無視もはなはだしいものであるがどう思うか。
二 B52沖繩緊急着陸について
 1 今回の沖繩へのB52の緊急着陸はかつて例のない二十九機にものぼり、しかも新型機である。
   台風避難とはいえ、このような重大な問題が外務省への一ぺんの通報によつて容易に行なわれるということは納得できない。
 2 これは日米安保の事前協議制度の形骸化を示すものである。これを認めるならば既成事実の積み重ねによつてもはやB52の日本基地への移駐を妨げることはできなくなるであろう。政府は再びこのようなことのないことを米側に明確に約束をとりつけるべきである。
 3 政府は事前協議の洗い直しを行なうと述べてきたが、これに対する基本的な考えを明らかにせよ。
三 米軍基地整理縮小撤去について
  沖繩国会において非核・基地の整理縮小の国会決議が行なわれたが、米軍基地の整理縮小が具体的に進展していない。とくに沖繩基地については長期固定化の様相が伺えるのはきわめて遺憾である。さらに米軍基地のベトナム戦争への協力の実態は明らかである。
  政府はこれらの点に対し、どう対処されようとしているのか明らかにされたい。
四 第四次防計画について
  政府の手で行なわれている自衛力の整備という名の軍事力増強政策は、国際緊張を高め、他国の不信をもたらしていることは周知のことである。
  また先の国会における第四次防予算先取り、シビリアン・コントロールの無視の重大な失政に対する反省が伺えないことはきわめて不満である。
  田中内閣は、第四次防計画について改めて国際情勢と今後のわが国の安全保障のあり方を再検討すべきであると思うが、その考えはあるか。
  とくに、新社会発展計画の改定も示されていない現在、防衛のみ先行させることは不当であるのではないか。
  さらにシビリアン・コントロールのあり方についていかなる姿勢で臨もうとしているのか明らかにされたい。
五 日中国交回復について
 1 田中内閣が日中国交回復問題に対して前向きの姿勢を示していることはわが党としても評価したい。
   しかし新政権として本来、この重要な外交課題に対しては、国会における所信表明を通じ国民の前に明らかにすべきであるにもかかわらず、これを拒否していることはきわめて重大であり、国会の審議を軽視しようとするものである。
 2 日中国交回復のための政府間交渉のためにはあくまでも政府がこれまで明らかにされてきた日中復交三原則をわが国の態度とすべきである。政府はこの三原則を認めるのかどうか明確にされたい。とくに日台条約の取り扱い、台湾の帰属に対する政府の見解を明らかにせよ。
 3 田中総理またはこれに代わるべき政府要人がこの三原則をもとに、本年中に中国を訪問し、日中国交回復のための政府間交渉を行なうべく中国首脳と話し合うべきであると思うが、その考えはあるかどうか。
六 日ソ関係について
 1 北方領土返還・日ソ平和条約の締結に関する政府の基本的態度(返還を求める領土の範囲も含む)とその見通しをどのように考えているのか。また漁業の安全操業についての方針を明らかにされたい。
 2 日ソ漁業問題及び経済協力についての基本方針を示されたい。
七 朝鮮問題
  先の南北共同声明にも伺えるように朝鮮問題は新しい段階にきている。そこで政府は次の点について明らかにされたい。
 1 国連における朝鮮民主主義人民共和国のオブザーバー参加を無条件に認めることに賛成するか。もしできないとするならばその理由は何か。
 2 一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明における韓国条項は、取り消すべきではないか。田中内閣はこの韓国条項は現在もなお生きているという考えなのか。
 3 日朝関係の改善について政府はどのような態度で臨もうとしているのか。具体的に明らかにされたい。
   わが党と朝鮮民主主義人民共和国側との共同声明にそつてこれを行なうべきと思うがどうか。
八 円対策について
  ポンドの変動相場制移行から端を発したスミソニアン体制の危機は、一応回避されたが、現在の小康状態は永続的なものではないと考える。
  したがつて、この状態のなかで、円対策を具体的に実施すべきであるが、いかなる対策を実施するのか明らかにせよ。
  わが党は、(1)大幅減税による景気浮揚を図ること(2)社会保障を拡充すること(3)生活関連の社会資本を充実すること(4)公害対策に全力を上げること(5)政府ベースによる開発途上国援助を積極的にすすめること等の措置を緊急に講ずべきであると思うが、政府の見解を問う。
九 社会保障の中期計画について
  わが国の社会保障水準は先進諸国とくらべて著しい低さを示している。社会福祉は急務である。われわれは七〇年代に福祉社会を建設するために、所得保障、福祉施設、医療制度を拡充する中期計画を早急に立て財政配分を優先することが重要であると考えているが、政府の具体的な方針を明らかにせよ。また国民所得に対する社会保障費の割り合いを十五パーセントに引き上げるべきだと思うがどうか。
十 年金制度の改正と年金の大幅引き上げについて
  現行の積立方式による年金支給は老齢年金として老人の生活を維持することは不可能である。
  現在の年金積立額からみて、財政方式を修正賦課方式に変えれば厚生年金、国民年金は月額三万円、老齢福祉年金は月額二万円を直ちに支給することが可能である。
  年金制度を改正し年金を大幅に引き上げることについてどう考えているか。
十一 難病対策について
  べーチェット、スモン等、難病はすべて国費で医療費を負担すべきだと考えるが、政府の方針を示されたい。
十二 消費者物価の安定について
   物価の高騰と不安定は国民生活を圧迫し、国民心理を不安にしている最大の政治問題である。また公共料金の値上りの家計負担は低所得者層ほど重い。佐藤内閣は物価対策に対して全く無策であつた。とくに政権交代期にまぎれて一連の公共料金のかけ込み値上げを認めたことは、今後の一般諸物価に及ぼす影響からも暴挙とさえいえる。
  1 田中内閣は公共料金に対する基本的な考えとして佐藤政権のとつてきた受益者負担の原則をとるのか、応能負担の考え方にたつて、抜本的な施策を講ずるかを明らかにされたい。
  2 農産物の価格補償の充実、生鮮食料品の流通機構の合理化、輸入物品の価格引き下げのための具体的な方策を明らかにされたい。
  3 管理価格を規制するための法的措置を実施すべきであるが、その具体的考え方を明らかにされたい。
十三 地価対策について
   地価高騰と土地投機の拡大は、社会資本の充実、田中総理の日本列島改造構想からも、物価問題からも最大の問題となる。地価抑制、投機の規制等に対する具体的な対策を明示されたい。
十四 年内減税について
   田中内閣は基本的な政策を国民生活の充実におくべきである。そのためには従来の大企業優先の経済政策を生活第一主義に改めるべきである。
   具体的には所得税の三千億程度の大幅減税を年内に断行すべきであり、同時に大法人課税の強化、さらに税負担の公平化を図るため輸出振興税制、企業に対する各種の特別償却等の廃止、交際費課税の強化等によつて租税特別措置の整理合理化を推進すべきであるがどうか。
十五 環境保全・公害防除対策について
  1 P・C・B汚染、微量重金属汚染、休廃止鉱山の総点検を直ちに実施する考えはあるか。
    また、汚染解消や有害食品・商品追放についての方針はどうか。
  2 公害被害者救済の充実について明示されたい。
  3 公害対策は法体系もまだ対応療法的な範囲を出ていない。環境保全基本法の早期制定が必要であるがどう考えるか。
  4 無公害生産システムの開発についてどう考えるか。
  5 都市緑化と全国土的な緑化対策が緊急重要な課題となつている。具体的方針を示されたい。
十六 住宅計画について
   第二次住宅建設五ヵ年計画を改定して、公共住宅六十パーセント民間自力建設四十パーセントにし、公共住宅を大量に建設するとともに居住水準を小世帯2LDK(八〇u)標準世帯3LDK(九五u)の目標にすべきであると考える。今後の政策を示されたい。
十七 災害対策について
   西日本をはじめ東北、関東地方を襲つた集中豪雨は多くの犠牲者をはじめ、家屋、農作物、公共施設等に甚大なる被害をもたらしている。その直接原因は、異常な降雨量にあることは勿論であるが、今後の防災対策に重要な問題を提起している。防災はすべての人為的災害であるとの基本的考えに立ち一貫した防災体制の確立に万全を期さねばならないと考える。
   そのため(1)早急に全国の急傾斜地崩壊危険地域の徹底的な総点検を実施して「ガケくずれ防止法」に基づく危険地域の指定を積極的に行ない、防護対策の万全を期すべきではないか。(2)また防災事業予算の優先配分が必要であるがどのように措置されるのか。(3)さらに、被害者に対する見舞金制度を法制化して実質的に生活の立ち直れる額の見舞金を国から支給すべきだと考えるがどうか。
十八 四十七年産米価格と農政の基本路線について
  1 四十七年産米の基本価格と予約制度についての具体的な方針とともに食管制度に対する今後の方針を明らかにされたい。
  2 経済政策の転換の中で、日本農業の位置づけをどうするのか、農政の基本路線を明らかにされたい。
十九 教育問題について
  1 大学教育の改革について、他の大学でも受講できる単位の互換制と私学助成を充実することについてどう考えるのか。
  2 国立大学に二部制を設けるべきであるが方針はどうか。
  3 義務教育は、副教材、参考書、給食ともに完全無償とすべきであるがどうか。
  4 奨学ローンを来年度にも実施するよう検討しているが、育英奨学制度については学生の生活費も加算した額に引き上げるべきだと考えるがどうか。
二十 政治資金規正法の改正について
   佐藤前総理は政治資金規正法改正を国民の至上命令といい、その実施を公約しながら、これを実施しなかつたことは国民に対する重大な欺瞞であつた。
   国民の政治不信を解消する道は政治資金規正法を最小限度で第五次選挙制度審議会の答申どおり改正することである。この線にそつた改正を行なうことを確約できるか。

 右質問する。





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