衆議院

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昭和四十七年十一月四日提出
質問第二号

 「復帰」後の沖繩問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十七年十一月四日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 (注)田 中 殿




「復帰」後の沖繩問題に関する質問主意書


 政府は沖繩の「施政権返還」は「核ぬき・本土なみ返還」であるとさかんに宣伝してきた。ところが、五月十五日以後の沖繩の現実は、これまでの政府の主張がいかに欺瞞にみちたものであるかを具体的に明らかにしている。すなわち日米沖繩協定及び関連諸とりきめの発動、日米安保条約と地位協定にもとづいて沖繩県民の土地を強奪し、米軍の侵略基地の存続を保障すると同時に、自衛隊の配備を強行するなど、平和で豊かな沖繩を願う県民の願いを真向からふみにじつている。「復帰」後四度目、しかも百三機というB52戦略爆撃機の大挙飛来、原潜「寄港」、軍事演習と米軍人による凶悪犯罪の激増、さらに致死性毒ガスが依然として米軍基地内に貯蔵されている事実の判明など、沖繩基地は一段と侵略的に強化されてきているのが現実である。政府はこの現実を、「安保条約のたてまえからやむを得ない」とか、「黙認」の態度をとることによつて、米軍の行動に協力加担している。また政府は豊見城、嘉手納、美里、読谷などの地主に土地強制使用を一方的に通告し、県民の財産を不法にも強奪している。さらに、政府は沖繩の消費者米価を五年間特別措置ですえ置くという約束を破つて値上げしようとしており、振興開発を口実に公害産業や観光大資本などの進出による土地投機を野放しにするとともに、労働者に対してはその権利を圧迫し、既得権を奪いとろうとする姿勢を強めている。このようななかでB52戦略爆撃機の大挙飛来、毒ガス貯蔵、自衛隊の強行配備に対する県民の怒りが燃えあがり、生活と権利を守るたたかいは大きく広がつてきている。
 そこで以下、私は沖繩と本土の米軍基地を撤去させ、安保条約を廃棄し、アジアの平和と日本の真の独立・中立をかちとり、生活と権利を守るためにたたかつている沖繩県民と本土国民多数の声を代表して、最近の沖繩問題をめぐる政府の諸施策および基本的態度について質問する。

一 田中総理は十月三十一日の衆議院本会議で、日本共産党不破哲三議員の「米軍自身の資料により現在も沖繩の米軍基地内に致死性の毒ガスが貯蔵されている事実がある」という質疑に対して、「沖繩の毒ガスは昨年五月に撤去が確認されている」と答弁しているが、具体的な指摘には何一つ答えていない。あらためて具体的答弁を求めるものである。
二 十月三十日に召集された沖繩の臨時県議会は、自民党議員も含め全会一致で「米軍基地の総点検に関する意見書」を採択した。意見書は「毒ガス兵器と核兵器の有無を明確にし、県民の疑惑と不安を除去させるため、米軍基地の総点検をし、その結果を公表する」ことを政府に強く要請している。
  これは沖繩全県民の要求である。政府は当然、この要請に答えるべきであると思うが、その意志があるかどうかうかがいたい。
三 県民と多くの国民は沖繩の米軍基地に、毒ガスと核兵器が貯蔵されているのではないかという深い疑惑と不安をいだいている。この疑惑と不安を晴らす方法は米軍基地への立入り調査と総点検以外にないと考える。政府は責任をもつて国民の生命と安全を守るために、国民の納得のいく方法で基地の立入り検査と総点検を実施すべきであると考えるが、実行する意志があるかないかうかがいたい。また、この立入り検査と総点検の実施は、国の主権を守ることにもなると思うがどうか。
四 十月二十六日午後から翌二十七日にかけ、沖繩の嘉手納基地にB52戦略爆撃機が大挙して飛来した。これは平和を願う県民の感情をすべて無視し、ふみにじつたものであり、国民への挑戦である。政府は、「緊急避難は人道上やむを得ない」として、人道に反するニクソンのベトナム侵略に協力して、今後もB52戦略爆撃機の飛来を認めるのか。また、米軍側から通告があれば、横田基地など本土の米軍基地への飛来を認めるつもりなのか。
五 また、安保条約第六条に関する事前協議条項の「配置における重要な変更」に違反するのではないか。
六 九月はじめに田中首相はニクソン米大統領とのハワイ会談で、日米安保条約の「円滑かつ効果的な実施」を約束した。車両制限令の改定、今回のB52戦略爆撃機の大挙飛来容認などにみられるように、「円滑かつ効果的な実施」というのは安保条約を超憲法的なものと考え、アメリカの要請には効果的に答えるが、日本国民の要求を拒否することを意味すると思うがどうか。
七 十月十二日に開かれた沖繩県中部市町村長会は、保守革新をとわず十四市町村が全会一致で「中部地区の経済発展に基地は必要ない。」として、中部地区の軍用地の返還、嘉手納飛行場の民間への開放を求める決議を採択した。中部地区は沖繩の米軍基地が集中しており、従前から米軍基地は経済復興や開発、土地計画をすすめていくうえで最大の障害になつていることが指摘されてきた。これらの要求は、那覇市隣接市町村会でも出されている。政府はこの際、沖繩の各市町村のみならず県の要求をとりあげ、米軍基地開放について強力な対米折衝をおこなうべきであると思うがどうか。それともこの当然の要求もまた、安保条約の円滑、かつ効果的な実施に反するとして拒否するのか。
八 政府は昭和四十七年度予算に、在日米軍基地の固定資産税として十一億円あまりを計上しているが今年度の米軍基地の固定資産評価は、どのような方法でおこなつたのか、明らかにせよ。
九 沖繩の中部市町村会では「市町村の固定資産評価方法で、厳密に調査すれば、中部だけで税額は十一億円をはるかに上まわる」とみている。資産評価には当該市町村も立ちあわせるべきであると思うがどうか。
十 私は沖繩における公用地等の暫定使用法に全面的に反対するものであり、その不当な発動に断固抗議するものである。ところが、さる八月十二日に、那覇防衛施設局が豊見城村と、同村地主に同法の適用を通告したなかに、米軍基地の金網の外にあり、米軍も使用しておらず、住民の出入りも自由におこなわれていた墓地四基がふくまれている事実が判明した。
  墓地の所有者はもとより、村民は「自分の祖先の墓参りもできないのか」と憤激している。私の抗議に対して、那覇防衛施設局銅崎局長は「とりあつかいを検討したい」と答えたが、その後、どのように検討されているか明らかにされたい。また、あらためて、同法の撤廃を要求するものである。
十一 「復帰」後五カ月余経過しているにもかかわらず、沖繩の軍用地契約拒否地主に対して、補償費(政府は地料といつているが)を払つていない。
  政府はいつまで個人の財産をただ使いするのか。ただちに、全地主に補償費を支払うべきである。また、契約拒否地主に対する脅迫まがいの各戸訪問による説得をやめ、地主の意志を尊重せよ。明解な答弁を求める。
十二 政府は、軍用地使用の契約に応じた地主に対して「協力感謝金」として、計十億円の支給を閣議で決定しているが、これは地主に対する明らかな差別ではないか。
  いうまでもなく、過去において米軍による沖繩県民の土地取得は、不法不当なものであつた。したがつて、長年にわたる全地主の心理的、経済的苦痛は同様のものである。にもかかわらず、あえて国政の上で地主を両分して差別するということは、憲法の基本である平等の精神に反するものであると考える。憲法には「公共の用のため正当な補償による私有財産の取得」と明記されている。政府が憲法の精神をふみにじり、あえて差別待遇を強行することは断じて許されないと思うがどうか。また、「協力感謝金」の支給をやめ、補償費をただちに支給せよ。
十三 沖繩は「復帰」後、日米安保条約にもとづく米軍の特権保持、国内法のじゆうりんなど全面占領中とさほど変わらない実態が続いている。しかも、それを政府が積極的に擁護しているとみられる点が数多くみうけられる。以下、若干の問題について政府の見解をおたずねしたい。
 (1) 国道三三一号線、約三キロの米軍による不法占拠問題
     「復帰」後、国道三三一号線に指定された旧軍用道路三号線は、県民の強い開放要求にもかかわらず、いまだに開放されていない。
     米軍当局は、米軍基地の「保安」をいいがかりに、開放をしぶつているといわれ、那覇防衛施設局は「年内に解決したい」といつているが、開放は実現されていない。道路法第五条第一項第一号には、きわめて明確に、国道とは「国土を縦断し、横断し、または循環して、都道府県庁所在地その他政治上、経済上又は文化上特に重要な都市を連絡する道路」と規定されている。したがつて、国の最も重要な道路である。このような道路が、米軍の軍事目的によつて封鎖されていることは断じて許されない。法的にも許されない不法行為であると思うがどうか。
 (2) 私の調査で、沖繩本島の辺野古弾薬貯蔵所から、中部の具志川市昆布棧橋まで「爆発物」と標示して、白昼公然と弾薬輸送がおこなわれている。しかも米軍とその請負い業者は、火薬取締法に規定されている届け出義務をふみにじり、公安委員会に何らの手続きもしていない。
     政府は、ただちに実情を調査し、不法なこの弾薬輸送をやめさせるべきである。政府は日本国民の立場にたつて毅然たる態度で対米折衝する腹があるか、おたずねする。
 (3) 政府は去る十月九日、参議院沖繩及び北方問題に関する特別委員会での日本共産党春日正一議員の沖繩での米軍水道料金問題、水源池問題の質疑に対して、本名開発庁長官が「大いに関心をもつている。私なりに検討したい。」と答弁している。検討したのなら、その結果を具体的に明らかにされたい。
 (4) 具体的な問題を一つ提起する。伊江島の湧出(わじー)という水源池は、いまだに米軍が占拠している。そのために伊江村の水道事業運営の財政負担は大きく、全体的にも高いといわれている。一方、那覇市の料金(八立方メートルまで三百八円、一立方メートルますごとに四十七円)の約二倍の一立方メートル当たり七十円になつている。また村の水道用取水口を海面近くに設けることを余儀なくされているため、海水を汲みとつてそのまま配水する事故も発生している。
     政府はただちにこの実態を調査し、米軍に対して断固たる処置をとるべきである。その意志をうかがいたい。
     私の調査で、また伊江島のみならず、奥間レストセンター、恩納のナイキ基地、米陸軍病院、松田キャンプハーディなど、十一の米軍基地が沖繩の水源池を不法占拠し、占領当時と同じように水を強奪使用している。水道法にもとづいて今までのただ使いを許さず、損害賠償を要求すべきであると思うがどうか。
十四 沖繩県民の圧倒的多数は、沖繩への自衛隊配備に一貫して反対してきた。それは自衛隊の配備が沖繩の日米共同管理、日米軍事同盟の強化、さらには県民の民主的な運動を弾圧するものであるというだけでなく、軍隊のもつ狂暴な本質に対する危惧でもあつた。
   十月二十九日未明に発生した自衛隊員による婦女暴行未遂は、その危惧が現実のものとなつた事件である、県民の激しい怒りをかつている。私は怒りをこめて抗議するとともに、現在沖繩に配備されている自衛隊の撤去を強く要求する。
十五 去る九月に発生した米兵ベンジャミンによる栄野川さん射殺事件は、沖繩県民をはじめ日本国民の間に大きな憤激をまきおこした。
   屋良沖繩県知事が、遺族と県民を代表して犯人の即時ひき渡し、遺族への完全補償、事件の徹底究明を骨子とする抗議文を、在日米軍司令部のグラハム司令官に送つたのは当然のことであつた。これに対しグラハム司令官は、十月三十一日、屋良知事あてに書簡による回答を送り、次のように述べている。
   「……米軍が沖繩県民に対して非常に沢山の暴力的犯罪をおこなつてきたと告発しているが、これは明らかに公明を欠くものであり、単に政治的理由でなされたものだ。公平に言えば米軍人、軍属は、しばしば沖繩県民による暴行や強盗などの重大犯罪の犠牲者にされてきたことを認識すべきである」というものである。
   この暴言は、平和と自由を口ずさみながらベトナム人民を皆殺しにし、戦争を強行しているニクソン政権の、ヒトラーに勝るとも劣らない人道と道義に反する態度をあらわすものであり、天人ともに許されないものである。法と正義と人道をまもり、政府は、アメリカ陸海空軍総司令官であるニクソン大統領とグラハム書簡に抗議し、取り消しを要求し、その責任を追及することができるか。
十六 那覇市は開放された同市与儀ガソリンタンク跡地の国有地を小学校用地として確保するため、政府に国有地の無償譲渡を申請していたが、このほど沖繩開発庁沖繩総合事務局から、「国有地を小学校用地として無償譲渡することは、法律上不可能である」と回答があり、那覇市と学校関係者、父兄にショックをあたえ、怒りをまきおこしている。無償譲渡が拒否されたことについて、多くの那覇市民と父兄は「与儀のガソリンタンクは、那覇市と住民のねばりづよい開放要求の運動で、復帰前に軍用地が開放されたものである。法律上無償譲渡はできないということだが、那覇市の実情や沖繩の特殊な事情を考慮するなら、国として何らかの措置はできるはずだ」と話しているが、政府はこの市民の声、要求に応える意志はないのか。与儀ガソリンタンクは、開放前は無償で米軍が使用していたものである。米軍には無償で、しかも長期にわたつて使用させながら、国民の教育を高めていくための学校用地には、無償譲渡できないというのか。
十七 政府は、沖繩県久米島における去る大戦での大量虐殺事件、いわゆる鹿山事件の犠牲者のなかで、補償もれになつた遺族の方々に早い機会に補償すると言明したが、いつ、どんな方法で、補償を実施するのか明らかにしていただきたい。
十八 沖繩基地の労働者は「復帰」後、間接雇傭制に移行して以来、占領下でたたかいとつた労働基本権すら一つひとつ奪い取られつつある。全軍労は、九月十五日、解雇撤回などを要求して、ハチマキ闘争を決行した。これに対し米軍は五千八百八十三人の組合員を対象に、総額千百六十四万三千八百円、一人当たり平均千九百七十五円の賃金カットという無法な報復攻撃を加えた。これは、労働基本権のじゆうりんであり、生活権に対する不法不当な処置である。政府は、解雇反対、賃金カット反対、賃金の全額支払い、労働基本権擁護の労働者の要求を実現するために、強く対米折衝することができるか。
十九 沖繩のキビ作農家は、四十七―四十八年、キビ価格、甘藷糖買入れ価格の引き上げを要求している。これは、農家の死活に関する重大な問題である。
   政府は、キビ作農家の要求、トン当たり前期より千三百三十円アップの八千百円のキビ生産価格を保障するか。具体的方針を明らかにされたい。
二十 沖繩の消費者米価を、特別措置の法令の原則にしたがつて五カ年間すえ置くことを確約できるか、明確な答弁を求める。

 右質問する。



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