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昭和四十八年十二月十一日提出
質問第二号

 沖繩国際海洋博覧会に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十八年十二月十一日

提出者  上原康助

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




沖繩国際海洋博覧会に関する質問主意書


 私は、去る九月十九日付で「復帰一年後の沖繩問題に関する質問主意書」を提出し、沖繩が当面しているいくつかの重要事項について政府の見解と施策をただしたが、そのいずれについても納得できる回答が得られなかつたことは、極めて遺憾である。
 ここに改めて、沖繩国際海洋博覧会に関し、その後の情勢の変化を踏まえて質問致したい。

一 政府は、前記の私の質問に対する十月十二日付の回答で、「海洋博は、沖繩の本土復帰記念事業の一環であり、本博覧会に関連して公共施設の整備を図ること等により沖繩経済社会開発を促進し、沖繩県民の福祉向上に大きく寄与するものであり、またこれは世界で初めて海洋をテーマとする国際博覧会であり、国の内外から大きく期待が寄せられている。従つて、政府としては海洋博の推進に全力を傾注する所存であり、これを延期若しくは中止する考えは全くない。」と言明している。また、国会における各委員会の論議の過程でも、海洋博の「延期・中止」は博覧会条約上の手続、制約などもあつてできないことを再三再四強調してきたのである。
  しかるに今回、石油問題がきつかけとなつて海洋博の延期・中止あるいは規模の縮小ということが政府として公式に検討されるという。政府のこのような態度のひよう変は、石油危機という憂慮すべき状況の変化があつたにしても内外に与える影響は、極めて大きいといわねばならない。とくに沖繩現地に与えた不安と動揺は深刻である。そこで政府は、最近の経済事情の変動、沖繩現地の状況などを踏まえて海洋博についての確固たる方針を改めてしかも早急に明らかにすべきである。
  延期があり得るのか、あるとすればその幅、規模の縮小があるのか、どの程度の縮小なのかなど、海洋博についての政府のこれからの基本的な考え方と方針を明らかにしてほしい。
二 海洋博に対する政府の姿勢、対処の仕方は、これまでも度々指摘されてきたとおり、たえず後手にまわつている。例えば海洋博関連事業の強引な推進によつて、本来最も優先されるべき県民の福祉施策が後回しにされ、異常なまでの物価の高騰、建築資材、労働力の不足、農業破壊、中小零細地場産業の圧迫など、はかり知れない打撃を沖繩の経済と社会に与えている。これら「海洋博デメリット」の解消については、国会においてはもとより、現地の各関係団体から幾度となく要求されてきたにもかかわらず、それらについては何ら手をつくさず「何が何でも海洋博を予定どおりやるんだ」となりふりかまわずに海洋博準備を進めてきたのがこれまでの経過であつた。にもかかわらず、この期におよんで石油問題を口実にあたかも沖繩側に選択を迫るかのような問題提起は、海洋博推進にあたつての政府の見通しの甘さ、計画が予定どおり進んでいない事実を隠ぺいしようとする責任転嫁ではないのか。
  政府は、その経過と事実を率直に認め、その反省の上に立つて対処策を講ずべきではないか。
三 海洋博に対する評価はすでに指摘したように批判と不満、不安が大半を占めているといつても言いすぎではない。とくに最近に至つては、その度合いが深刻になつてきている。反面、そのような状況下にあつても政府が海洋博はあくまでも当初計画のとおり推進するんだと言つた手前もあり、沖繩全体が海洋博を軸に動いてきたことは否定できない。従つて、海洋博の取扱いいかんによつては、沖繩経済の受ける打撃と県民生活へのなおさらの犠牲は、はかり知れないものがあると言わねばならない。
  今度こそ、海洋博推進のこれまでの方針を全般的に洗いなおし、県民生活に与えてきたデメリット、今後も予想される深刻な打撃を解消することを最優先にきめの細かい万全の対策を講じないと取り返しのつかない最悪の事態を招くであろう。なぜなら、多言を要するまでもなく、生活必需品の八割以上、その他の諸物資もその大半を本土から移入している離島県である沖繩は、諸物資の入手が困難となり、もの不足、物価上昇は本土以上にパニック状態をきたすであろうからである。
  石油危機がこうじて、本土からの船舶輸送がはかどらないとなれば、物資を海上輸送に全面的に依存する離島経済への影響は、はかり知れないものとなり、海洋博どころではなくなる可能性もある。
  従つて、政府が目下進めようとしている海洋博の再検討については、当然これらの事情も考慮に入れた県民の納得のいく具体策でなければならないと考えるが、そのような対策を可能と考えるか。
四 政府は、慢性化した物価高、インフレ、石油危機を乗り切るため、ようやく総需要の抑制を図る方針だという。また、公共投資の抑制繰延べ実施、不用不急の民間設備投資の抑制、旅行、観光、レジャーの自粛などは不可避の状況下にあり、そのことは海洋博にも大きく影響するものと考える。去る十一月二十六日におきた那覇市のホテル現場の事故に見られるように、海洋博目当の無謀な突貫工事によつて地域住民への被害、公共面においても大きな損失を与えつつあるのである。従つて、海洋博の開催は、国内的にも国際的にも当初計画とは、かなり変わつてこざるを得ないと見るが、政府はどのように考えるか。
五 海洋博は、沖繩と本土との格差の是正、社会資本の充実、生活と生産基盤整備ということが大きな目的の一つであつた。しかし、実際には既に幾度も指摘してきたようにその位置づけと方向性は完全に行き詰まつたと見なければならない。そして、石油危機は海洋博を含む今後の沖繩の振興開発計画、本土との格差の是正を進めていく方策の根本的な再検討を政府に迫るものだと考えるが、その点政府はどう考えているか。
  総需要の抑制、公共設備投資の繰延べ、抑制等を行うにしても沖繩の場合も本土と画一的、同様な条件でなされるとすると、本土との格差是正は百年河清を待つものとなろう。客観的にも、主体的にも沖繩は再び極めて重大な難関に直面しているとみなければならない。
  政府が真に復帰後の沖繩の県民の民生の安定、社会資本の充実、基盤整備を行い、本土との格差を一日も早く是正しようと考えているならば、このような時局であればこそ、政府の責任において、そのことにふさわしい対策と新たな施策を明確にし、県民と国民の要望にこたえるべきだと考えるが、政府の今後の沖繩振興開発計画に対する基本方針はどうか。
六 政府が、以上指摘した新しい情勢を踏まえて万全の対策と方針を真剣に考えず、体面にこだわつて海洋博を推進して行くならば、再三再四沖繩は大の虫を生かすために殺される小の虫になりかねない。海洋博をとり巻く諸情勢は極めて憂慮すべき事態に直面している。もし海洋博が当初の目的を達成する見通しが立たないなら思いきつてその開催を返上し、その理由を内外に率直に明らかにし、政府の責任において事後の対策を講ずることこそ賢明の策ではないか。十分な対策もないまま、国策によつて沖繩をこれ以上海洋博の踏み台にしてもらいたくない。今回の延期論を見てもわかるように、海洋博推進の権限と責任が政府にあることは明白である。事態をここまで追いこんだ責任はあげて政府にあるといつてよい。政府が、その責任は外にある。あるいは、この急迫する事態に対する具体策があるとするならばそれを明らかにされたい。

 右質問する。





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