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昭和四十九年六月三日提出
質問第三八号

 公共用地下水源地帯における土壤凝固剤の注入に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年六月三日

提出者  金瀬俊雄

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




公共用地下水源地帯における土壤凝固剤の注入に関する質問主意書


 新東京国際空港公団(以下「空港公団」という。)は、成田空港暫定パイプラインの埋設に当たり、健康被害が発生するおそれのある薬液注入工法を実施し、千二百トンにも上る危険な土壤凝固剤(尿素系及び水ガラス系)を成田市の市営水道の地下水源地帯に打ち込んだものである。既にいくつかの違法(農地法違反、消防法違反、その他)を重ねてきた空港公団(今井栄文総裁)は、とうとう刑法第百四十四条及び第百四十六条相当の行為をなすに至り、これらは、事態の今後の推移によつては、同法第百四十二条及び第百四十三条にも該当することになろう。既に去年の公害対策並びに環境保全特別委員会において土井たか子委員から暫定パイプラインの埋設される予定の根木名川周辺は、軟弱地盤地帯であり、かつ、成田市の市営水道の地下水源地帯であると指摘されていたものであり、かかる事実は、空港公団も十分承知していたはずである。人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律によれば、事業活動に伴つて人の健康に係る公害を生じさせる行為等は、公害防止の見地から犯罪であるとなし、処罰規定がもうけられているのである。さて、空港公団は、成田市及び千葉県の不十分な「水質調査」の結果に基づき、五月二十九日より暫定パイプラインの埋設工事を再開した。去る五月二日に出された建設次官通達に表現の不十分さがあり、更に千葉県等による読みちがえがあると思われ、これらが安全性解明を不徹底なものとしたまま現状を容認し、工事再開を許容ならしめていると思われるので、この間の事情及び責任の所在を明らかにすべく以下質問する。

一 空港公団が暫定パイプラインの埋設工事のために使用した土壤凝固剤について
 1 使用した土壤凝固剤の商品名をすべて明示されたい。
 2 使用した土壤凝固剤の反応前の成分名について、主剤・助剤その他一切の添加剤を商品名ごとに明示されたい。そのうち劇物指定のものはどれか。
 3 これら土壤凝固剤が土壤に注入されたとき、土壤中における化学反応を介して形成される反応生成物及び残存物について、商品名ごとに化学的な根拠を添えて明らかにされたい。
 4 3にいう土壤中での高分子合成反応は、実験室的な理想的な化学反応の場合とどこが異なるか、土壤化学的根拠をそえて明らかにされたい。
二 空港公団が薬液注入工法を行うに当たつて環境アセスメント(事前調査)を怠つたことについて
  先の福岡県下でのアクリルアミド系土壤凝固剤による中毒事故の場合についても、結果的には不正確であつたにせよ、事前調査は一応行われているし、去年広島県下に起きた尿素系土壤凝固剤による事故に対しても、日本電信電話公社建設局長中久保卓治氏は、去る五月九日の公害対策並びに環境保全特別委員会において、福岡義登委員の質問に答えて「かねてから注入工事を行います際に、事前に井戸あるいは、地下水等を十分調査して水質検査をやつて危険と思われるようなところに対しましては、水道を敷設するというような措置を講ずるようになつていた。」と述べ、かかる事前調査を行うことは、土木建設事業において当然のこととしている。一方、薬液製造メーカーの指導に当たる通産省基礎産業局の説明によれば、かかる薬液には、特許、企業秘密、その他があり、薬液注入工法による施工の安全性についても、薬液自体に熟知している薬液メーカーが施工業者に直接指導することにより、現在までは安全確保がなされてきたとし、高分子注入剤メーカー会社が昭和四十八年六月十三日作成した「薬液取扱い上の注意」なる資料を提示された。
 1 空港公団は、薬液注入工法を実施するに当たり、なぜ、かかる「薬液取扱い上の注意」に基づく処置としてある事前調査(環境アセスメント)を行わなかつたのか。
 2 「薬液取扱い上の注意」によれば、尿素系土壤凝固剤(空港公団も使用)の使用に際し、現場の土質条件などによつて不均一な注入が起こり、注入液の一部や樹脂状固結物の一部が地下水その他に混入することも全くあり得ないとはいえないとして、その影響を調べるとあるが、空港公団は、この点についてどのように考慮してきたのか。
 3 「薬液取扱い上の注意」によれば、注入液が地盤中に注入され何らかの理由により固結しないで付近の井戸水等に混入する場合があるので、流入のおそれのある場合は仮設の水道管の敷設を行つてから薬液注入工法をおこなえとある。かかる仮設の水道管の敷設ということと、現在成田市又は空港公団が行つている又は計画している水道管の設置とはいかなる関係にあるのか。
 4 事前調査がなされていない場合、施工前の水質が確定せず比較の対象がないが一体どうするつもりか。
三 五月二日に通知された建設次官通達について
  この通達によれば、現在行われている薬液注入工法による工事は一切中止し、その再開は、周辺の井戸水の水質等を調査して、薬液による健康被害の発生のおそれがないことを確認した上で行うとされている。
 1 健康被害の発生のおそれがないことを確認する責任者は、事業主体又は施工主体であるとされるが、加害者が安全確認をすることにならないのか。その理由は何か。
 2 健康被害の発生のおそれがないことを確認するいわゆる安全性の確認は、五月十五日の運輸委員会での久保赳建設省都市局下水道部長の答弁によれば、井戸水の水質検査によつて当該物質、例えばアクリルアミドとか尿素系の薬液とか、それらが井戸水の中に混入しているかいないかを明らかにすること、繰り返していえば、使われた当該薬液がその井戸水に混入しているか、いないか。少しでも混入していれば、それは安全でないということになりますので、その確認であるとされている。
   建設次官の通達による安全確認とは、周辺井戸水の中に薬液注入工法による薬液及び関連物質が全く流入していないことを確認することであるとしてよいのか。
 3 建設次官通達による安全確認は、薬液そのものの人体への影響あるいは健康被害の度合については、言及していないとしてよいのか。例えば、この程度の微量ならば、安全であると判断できるというような薬液に対する安全基準までは言及していないとしてよいのか。水質汚染は絶対的に零でなければならないとしているとしてよいのか。
 4 建設次官通達は、安全確認のための周辺井戸の選定に関し、どのような条件を課しているのか。水質を検査すべき井戸の数、位置、深さの選定に関しては、安全確認を行う責任者の恣意にまかせきりなのか。
 5 建設次官通達による安全確認は、たまたま選ばれた井戸の水質を検査し、そのときの合否を判断するのが目的なのか。それとも、地下水系の汚染の状況を、選択された井戸を代表点として、これから推定するのが目的ではないのか。
 6 過日、成田市が周辺の井戸をわずか六か所(千葉県は十六か所)選んで、水質検査を行つたが、建設省はかかる調査を妥当とするのか。
 7 建設省は、かかる成田市及び千葉県の水質検査を地下水系の汚染状況の調査となりうるとしているのか。
 8 成田市及び千葉県は、五月二十八日凝固剤による地下水汚染に関し、薬液による影響はないと発表したが、建設省及び厚生省は、かかる件に関し相談を受けたか。また、その際どのような指示をなしたか。
 9 8についての建設省及び厚生省の責任の限界又は範囲は、それぞれ何か。
 10 成田市及び千葉県の水質検査では、不検出とはされているが、当該物質のうち零ではないものがある。かかる検査結果は、建設次官通達にいう安全確認に合格するものであるのか。その理由は何か。
 11 建設省は、成田市及び千葉県に地下水系全体の汚染状況を調査する能力があるとしているのか。その根拠は何か。かかる調査とは、単に与えられた水の水質検査を指しているのではないと思うがどうか。
四 薬液注入工法に関係する薬液の有害性について
  去る五月二十一日の閣議で土壤凝固剤アクリルアミドが劇物指定と決定された。土壤凝固剤には、アクリルアミドのほか、いくつかの劇物が含まれているものがある。
 1 アクリルアミドが劇物指定とされるのが、実害が出るまで遅れた理由は何か。また、責任はどこにあるのか。刑事責任は誰れが負うのか。
 2 尿素系土壤凝固剤でも、その主原液に遊離のホルムアルデヒドを一パーセント以上含むものがあるが、劇物指定とした方が取扱いに安全性がたかまつてよいのではないのか。
 3 ホルムアルデヒドの毒性について、厚生省では、どのような研究をしてきたか、また、現在しているのか。委託研究も含めてその全貌を明らかにされたい。
 4 厚生省は、薬剤の毒性について、いくつかの薬剤の共存による相乗効果についてどのように考えて、いるか。ホルマリンの場合はどうか。
 5 かつて主婦連の高田ユリ氏らが、ユリア樹脂製食器のホルマリンによる毒性を問題とし、その製造が禁止されるに至つたと聞くが、ホルマリンの毒性について、厚生省はどのように考えているのか。直接食器から溶出するホルムアルデヒドの許容限界はアセチルアセトン法の限界である〇・九PPMとしてよいのか。
 6 食品衛生法によれば、ケイ酸及びケイ酸ソーダは食品添加物としての使用は禁止されていると聞く。いかなる理由によるか。安全確認はなされていないとしてよいのか。
 7 建設省は、尿素系土壤凝固剤の毒性(有害性)についてどのような解釈、見解をもつているのか。その根拠は何か。
 8 建設省は、水ガラス系土壤凝固剤の毒性(有害性)についてどのような解釈、見解をもつているのか。その根拠は何か。ケイ弗化ソーダなる劇物が含まれているものもあると聞くがどうか。
五 地下水源と地下水の汚染の防止について
  建設省の昭和六十年における南関東地域での水需給予測によつても、三十パーセントの水が不足するとされており、南関東地域での水資源の確保(既存の水源の保全と新水源の開発)が、緊急の課題であることは誰れしもが認めることであろう。
 1 空港公団による土壤凝固剤使用により成田市の水源(周辺の浅井戸及び市営水道用地下水源)が汚染された場合、これらの水源にかわる水源を用意できるか。その根拠は何か。
 2 建設省は、薬液混入工法に対する問題の究明を図るため省内に建設技監を長とする検討委員会を発足させ、調査の基準及び施工の基準について既に検討中であると聞く。しかし、この委員会では、薬液の固まり方あるいは一度凝固した中での再出する問題は、別に学識経験者を中心とする委員会に委ねるとのことであるから、この省内委員会での結論にはおのずと限界がある。どのような限界があるとしているか。
 3 学識経験者を中心とする委員会で、凝固物の再溶出の問題を検討し、もし、一度凝固したものから再溶出することが明らかとなつた場合には、過去のものについても点検する必要があると久保赳建設省都市局下水道部長は答弁している。空港公団による土壤凝固剤も撤去の対象となりうる可能性があるとしてよいか。撤去対象とならないとするならば、その理由は何か。
 4 地下水汚染の防止を所管する行政庁がないということは一体どうしたことなのか。地下水源というものを有効で有用な水源とは考えていないからなのか。
 5 地下水汚染の防止は、専ら刑事罰のみに依拠するつもりなのか。
 6 刑法第十五章飲料水に関する罪にかかわる諸規定は、いつ、いかなる条件が成立したとき空港公団に発動されるのか。
 7 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律の諸規定は、いつ、いかなる条件が成立したとき、空港公団に発動されるのか。

 右質問する。





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