衆議院

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昭和四十九年七月二日受領
答弁第三八号
(質問の 三八)

  内閣衆質七二第三八号
    昭和四十九年七月二日
内閣総理大臣 田中(注)榮

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員金瀬俊雄君提出公共用地下水源地帯における土壤凝固剤の注入に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員金瀬俊雄君提出公共用地下水源地帯における土壤凝固剤の注入に関する質問に対する答弁書



一について

(1)及び(2) 新東京国際空港公団(以下「公団」という。)が使用した土壌凝固剤の商品名等は、次の表のとおりである。

新東京国際空港公団が使用した土壌凝固剤の商品名等


(3)及び(4) 土壌凝固剤の反応は、おおむね左記のとおりとされている。なお、土壌中においては、硬化剤である硫酸が中和されること及び温度が低いことにより、実験室における高分子合成反応よりも反応が若干遅くなることが知られている。

土壌凝固剤の反応

二について

 公団は、事前に薬液注入箇所についてボーリングにより土質、地下水位等を調べるとともに、付近の井戸の位置を調査した結果、付近の井戸を汚染するおそれはないと判断して薬液注入工事を実施したものである。
 また、千葉県及び成田市が付近の井戸を対象として行つた水質検査においても、水質の汚染は、検出されていない。
 なお、現在、成田市が水道管の敷設を行い、又は計画しているが、これは、薬液注入工事とは直接関係ない。

三について

 五月二日付け建設事務次官通知は、最近における福岡県新宮町の下水道工事の事例等にかんがみ、薬液注入工法に起因する健康被害の発生を防止するため、建設省所管の建設工事を実施する事業主体に対し、同工法により現在施工中の建設工事について、同工法の施工を一時中止し、その再開は周辺の井戸水の水質等を調査して、薬液による健康被害の発生のおそれがないことを確認した上で行うこと等を指示したものである。
 本通知による健康被害の発生のおそれがないことの確認は、事業主体がその責任において行うべきものであり、本通知による周辺の井戸水の水質等の調査についても個々の事例に応じ、事業主体の判断において、適切な範囲で実情に即して行うこととしているものである。
 千葉県及び成田市が行つた井戸水の水質検査は、地方公共団体としての立場においてなされたものであるが、厚生省は成田市及び千葉県からそれぞれ五月二十八日及び三十一日に、建設省は成田市から五月二十八日に、それぞれその行つた検査結果の概要について説明を受けている。

四について

(1) アクリルアミドについては、その毒性等について十分把握できなかつたこともあり、劇物指定が遅れたものであるが、今後は、関係各省間の連絡及び情報交換を十分行うことにより遺漏のないようにしてまいりたい。
    なお、アクリルアミドによる中毒事故に係る刑事責任については、具体的事案に応じて業務上過失傷害罪等の成否を検討することとなるが、例えば、過般の福岡県下でのアクリルアミド系土壌凝固剤による中毒事故に係る刑事責任についても、その有無及び所在につき現在福岡県警察において鋭意捜査中である。

(2) 毒物及び劇物取締法及び毒物及び劇物指定令による毒物又は劇物としては、現在、毒物又は劇物の原体及びこれを含有する製剤を対象としているが、御質問の尿素系土壌凝固剤の安全性の確保については、なお、今後とも検討してまいりたい。

(3) ホルムアルデヒドは、毒物及び劇物取締法による劇物として指定されているところであるが、一方繊維製品等の加工剤に起因して発生するホルムアルデヒドの人体に与える影響について、現在、主に経皮的毒性を中心に各種毒性試験研究を実施しているところである。

(4) 化学物質等の相乗作用等によつて生ずる毒性の問題については、現在の科学技術水準では十分に解明できない点も多く、今後の研究課題となつているところである。

(5) ホルムアルデヒドは、毒物及び劇物取締法による劇物として指定されているものであるが、合成樹脂製特にユリア樹脂製の食器等の場合には、これが溶出することがあるので、これら合成樹脂製の食器等については、食品衛生法に基づく食品、添加物等の規格基準により、必要な基準を定め、その溶出を規制している。
    この基準では、試験方法として、アセチルアセトン法による検出法を採用しており、対照液と試験溶液の濃淡を比較する方法によつている。

(6) 化学的合成品たる食品添加物は、必要最小限のものについて、その安全性が十分確認された場合に、その使用を認めるべきものと考えているが、けい酸及びけい酸ソーダについては、そもそも食品添加物としての必要性が認められないため、その使用を禁じているものである。

(7)及び(8) 尿素系土壌凝固剤は、主剤の中に尿素ホルムアルデヒド初期縮合物ときよう雑物としてのホルムアルデヒドとを含有しており、また、水ガラス系土壌凝固剤の中には、助剤として、劇物に指定されているけいふつ化ソーダを含むものがあると承知している。

五について

(1)及び(3) 公団による土壌凝固剤の使用により、成田市の水源が汚染されるおそれはないと考えているが、更に万全を期するため、随時、付近の井戸水の水質検査を行わせることとしている。

(2) 建設省においては、建設省所管工事に関し、薬液注入工法の調査、設計、施工及び水質の監視の暫定指針を定めるべく、省内に関係者からなる調査委員会を設けて検討中である。

(4)及び(5) 地下水は貴重な資源であることにかんがみ、従来から関係省庁において地下水の汚染防止に努めてきたところであり、今後とも関係省庁のそれぞれの分担に応じ、関係法令の趣旨の徹底、行政指導の強化等により、相協力して地下水の汚染防止に万全を期してまいりたい。

(6) 刑法第十五章「飲料水ニ関スル罪」の諸規定は、すべていわゆる故意犯を処罰しようとするものであるから、「人ノ飲料ニ供スル浄水」又は「水道ニ由リ公衆ニ供給スル飲料ノ浄水又ハ其水源」であることを知りながら、わざと、それを汚穢して用いることができないようにした者か、あるいは、これに毒物等を混入した者に対して適用されるのであるが、いずれにしても、刑法は、自然人に対してのみ適用され、公団その他の法人に対しては、いかなる場合にも適用されない。

(7) 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律は、故意又は業務上の過失により、工場又は事業場における事業活動に伴つて、人の健康を害する物質を排出し、その結果として、公衆の生命又は身体に対し、具体的に危険な状態を生じさせた者がある場合に、この者を処罰するとともにこの者が法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者であるときは、その法人又は人をも処罰することとしているのであるが、右の法律はもともと有害物質のいわゆるたれ流しによる公害を防止するために制定されたものであつて、土壌凝固剤をその物本来の用法に従つて土中に注入して使用するというような場合にまで拡張して適用することは困難であると思われる。

 右答弁する。


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