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昭和五十二年三月二日提出
質問第一〇号

 「取引相場のない株式」の相続税法上の評価等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十二年三月二日

提出者  春日一幸

          衆議院議長 保利 茂 殿




「取引相場のない株式」の相続税法上の評価等に関する質問主意書


 中小企業はこれまで日本経済の発展を支えてきたのであり、これからも日本経済の発展のために重要な役割を担うことが期待されていることは多言を要しない。ところが、そのほとんどが中小企業法人の株式と言つてもさして過言でない「取引相場のない株式」の相続税法上の評価が過大であるため、相続税の負担が重圧となつて中小企業における事業の継続が困難となるという問題が最近続出している。
 このような事態を放置することは、中小企業の健全なる育成を図るという国の政策目的に反するのみならず、税制理論上からも首肯しがたいところである。
 ついては、次の諸点に関し政府の見解を承りたい。

一 「取引相場のない株式」が被相続人の主宰していた同族会社の株式、すなわち、自社株である場合にあつては、被相続人がその株式の圧倒的多数を有しているのが、中小企業大多数に共通の実態である。
  このことは、被相続人の個人財産はその大部分が自社株で構成されていることに多くの場合つながるのであり、その自社株が相続税法上どのように評価されるかということが、その中小企業の死活の問題とならざるを得ないのは見易い道理である。
  同じく中小企業でありながら、相続税法上、個人企業の場合には企業財産は資産の種類ごとに各別に評価されるのに対し、法人企業の場合には自社株として企業財産の全体が一括評価されることとしているのは、課税の公平を失することとなると考えるがどうか。
二 被相続人が営々として事業を発展させてきたような場合には、その同族会社の内容は充実し、その自社株につき、「相続税財産評価に関する基本通達」で定める類似業種比準方式、類似業種比準方式と純資産方式との併用方式、純資産方式の三つのうちのいずれが適用されるとしても、その持株の一株当りの価額が何千円というような破格の額に評価されることとなることは、決して珍らしくないのが実情である。
  仮に一株当りの価額が五千円と評価される株式を被相続人が一〇万株持つていたとすると、株式だけで五億円という途方もなく大きな額に達するのであり、この一例をもつてしても、かくては多くの場合企業財産の相当部分を処分するのでなければ、相続税を納付することができないこととなるものと考えるがどうか。
三 相続税法上、株式を含む大部分の財産については、相続による取得の際における時価によるべき旨が定められている(第二十二条)。
  ところで、時価とは一定時の市価を意味し、また、市価とは商品が市場で売買される値段を意味するものであるから(岩波書店「広辞苑」による)、およそ時価という以上、その資産には市場性、流通性、換金性が相当程度具有されるものでなければならないと考える。
  しかるに、同族会社の自社株は、市場性、流通性、換金性が極めて乏しく、これを換金して相続税の納税資金を捻出することは極めて困難であり、その意味で経済的にはその価値が極めて低いものと言わなければならないと考えるがどうか。
四 前記のとおり、時価というのは、客観的な交換価値を示す価額でなければならないことは言うまでもないところであり、すなわち、一株当り何千円という株式の評価は、それがその価格で売れるという前提があつて始めて成り立つのであつて、そのような価格で売れないことが分り切つているものを一株当り何千円にも評価し、それを基礎として相続税額を算定し、金銭で納付することを求めることは、はなはだしい矛盾撞着であり、不合理の極みであるのみならず、中小企業の後継者に到底堪えることができない負担を強いるものであるというほかはないと考えるがどうか。
五 同族会社の自社株は、「取引相場のない株式」であるから、「売却できる見込のない有価証券」ということで物納が許可されないものと考えられるがどうか(相続税法第四十二条第二項ただし書、相続税法基本通達第二百二十八条)。
  もしそうだとすれば、税務当局自らが「売却できる見込のない有価証券」と認めている自社株に関する現行の評価方法には、根本的に誤りがあると考えるがどうか。
六 以上のように、中小企業は相続税の面から全く実情にそぐわない不当な取扱を受けているのであるが、このような事態をこのまま放置することは社会正義を維持発展させるために到底許されることではない。
  よつて、現行のこのような取扱は速やかに是正され、中小企業の健全なる育成が図られるような相続税の取扱を確立すべきであると考えるが、政府はこの問題についてどのような解決を図ろうとする所存であるか。

 右質問する。





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