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昭和五十四年五月二十四日提出
質問第三二号

 「日本国との平和条約第十九条」に関する再質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十四年五月二十四日

提出者  岩垂寿喜男

          衆議院議長 (注)尾弘吉 殿




「日本国との平和条約第十九条」に関する再質問主意書


 本年三月三日、質問第九号をもつて日南興業株式会社の特殊な債権問題について政府の見解を求めたところ、三月十三日内閣衆質八七第九号をもつて答弁があつたが、更に次のとおり質問する。

一 答弁書において「また、政府としては、「日本国との平和条約」によつてかかる措置がとられたことに関し、当該請求権を有していた者に対して国が補償を行う法律上の責任はないとの立場に立つている。かかる立場は、最高裁判所の判例(昭和四十三年十一月二十七日大法廷判決及び昭和四十四年七月四日第二小法廷判決)の趣旨とも合致するものと考えられる。」というが、「法律上の責任はない」とする法律はいつ成立した、何という法律か明示願いたい。
二 政府が引用された前述の最高裁判決にある二つの事件とも、我が国が平和条約を締結する前に既に戦争のため、又は占領行為のため当該国によつて実体権若しくは基本権並びに請求権は没収又は否認されていたもので、条約締結時には我が国が放棄できる実体権又は請求権は存在していなかつた、強いて存在していたとすれば外交保護権であつたと承知している。
 1 従つて、これら二つの事件に対して我が国が放棄したものは外交保護権だけではなかつたかどうかお答え願いたい。
 2 前述の判例にある事件は、戦争のため又は占領行為のため当該国によつて財産若しくは生命を奪われ、加害者がその請求権を否認しているもので、「我が国の責任外」つまり我が国憲法の適用外(予想外)で起きたもので、我が国の法律を適用する余地のない問題のため補償責任はないという内容の判決ではなかつたかどうか御回答願いたい。
 3 「当該請求権を有していた者」に対して何故「当該請求権を有していなかつた者」に対する判例の趣旨が合致するのかお答え願いたい。
 4 引用された前記二つの判例にある事件は日南の事件同様
  (1) 戦争若しくは占領行為とも直接関係のないものであつたかどうか。
  (2) 私経済取引契約上起きたものかどうか。
  (3) 日南がP.X.自動車修理工場の経営で稼いだ回収済み$外貨は、INVISIBLE EXPORT(貿易外収入)として日本政府が収得しているが、このような内容を有していたものかどうか。
  (4) 日南の契約相手である米軍補給廠が日南に対する支払いを延滞していた局面の時でさえ、日南は憲法の適用を受けて種々徴税されたが、同様な措置を受けるような性格のものであつたかどうか。
  (5) 日南に対する補給廠の債務は、日米両政府の公式機関である日米合同委員会で十分に調査検討の上両国政府代表が確認する署名をしており、また、この日南の債権に対する請求権は米国政府が認めておるのであるが、これと同様な基本権があつたかどうか。
  (6) 日南の債権に対する請求権は、日本国が平和条約で放棄したので日南に対する米当局のすべての未払債務は責任免除された、従つて放棄した日本政府に責任があると米国政府が主張しているように、「日本政府の責任内の問題」であつたかどうか等について明確なる御回答を願いたい。
 5 戦争とも関係のない、また債務者の米国政府も認めている日南に対する合衆国当局のすべての未払債務は、日本政府が平和条約で免責したために日南は米国政府に対して請求できなくなつている。つまり、「日本政府の請求権放棄行為によつて」生じたこのような損害が何故に日本政府に責任がないのか、その法律的根拠を明示願いたい。また、戦争に関連して相手国によつて奪われた生命財産、相手国の一方的行為によつて生じた損害、日本政府が加害者でない事件に対する判決が何故に日南のように日本政府が加害者である事件と同じであるのか、最高裁の判例を引用された責任上からも是非明確な御回答を願いたい。
三 また、日南の請求権問題について「昭和四十九年九月二十四日東京地方裁判所が言い渡した判決が確定したと承知している。」とのことなるも、この判決で示された日本国としての結論は、平和条約上の米国政府の主張と根本的に相違すると考えられるので、次の事項について見解を明らかにされたい。
 1 前記東京地裁において日本国(政府)が
  @ 「平和条約第十九条(a)項は、日本国民の請求権自体を放棄したものではないと解すべきである。」
  A 「日南が主張するアメリカ合衆国に対する損害賠償請求権は、平和条約第十九条(a)項で放棄された請求権には含まれないと解すべきである。」
  B 「日南の請求権は私法的取引契約から生じた損害賠償請求権と解されるから、これが第十九条(a)項の適用を受けないことは明らかである。」と主張したのに対し、米国政府は「日南の請求権は平和条約第十九条によつて明確に放棄されている。」と述べて日本政府と完全に相反する主張をしている。
   どちらの国の主張が正しいのか御回答願いたい。
 2 また、国(日本政府)は「しかし、かりに原告(日南)の主張のように、平和条約第十九条(a)項がこの種の私法的取引に基づく請求権までも放棄したのだとすれば、それはまさに平和条約締結当時に於ける……敗戦国として連合軍総司令部の完全な支配下にあつたわが国としては、平和条約締結に際してこのような条項すらも承認せざるを得なかつたのであり、これによる原告の損害は、広義の戦争損害の一種として、憲法第二十九条第三項の適用の余地のない問題というべきである。」と主張しておられる。
  (1) この政府主張は政府自ら強調した1の@、A及びBと相反するものである。どの主張が正しいのかお答え願いたい。
  (2)イ 総司令部の完全な支配下(占領下)での裁判、徴税等も我が国憲法の適用外で行われたのかどうか。
     ロ 平和条約は、我が国の意思に反して総司令部の脅迫のもとに締結された(無効の)もので憲法第九十八条第二項の適用外ということなのかどうか。
     ハ 平和条約締結の数時間後に締結された日米安全保障条約も我が国憲法の適用外のものかどうか、「総司令部の支配下」を理由に「我が国の承認行為による日南の損害」を戦争損害として憲法の適用外であると主張した国(日本政府)の責任上、国民にわかるように御回答願いたい。
     ニ 平和条約は、国権の最高機関である国会で承認されている。我が国が合法的に承認したことに伴う義務は、国内法に基づいて、当然に果たすべきであるにかかわらず、占領からの解放という大目的の利益を受取つてしまうと、それを得るための一条件(代償)は総司令部のせいにするとあれば、これは正に国際的詐欺と言わざるを得ない。国(日本政府)の主張は現実を全く無視したものであると共に、独立国としての品位を著しく傷つけ我が国の信用を大きく失墜するものであるので取消すべきではないか。お答え願いたい。
 3 更に国(日本政府)は、「原告(日南)の損害を戦争損害の一種とみるべきことは、原告と補給廠との契約の実態を考察すれば、一層明らかとなる。すなわち、原告主張の契約は、それが私法的基礎の上に締結されたとはいつても、やはり広い意味で占領軍の占領目的遂行のための一手段であつたことは否定できない。契約の背後に強大な占領軍の権力があつたことは、契約書の内容、体裁自体からも看取される。」と主張しておられる。前記2及びこの日本政府の主張に対し米国政府は、「日本国と締結した平和条約第十九条によつて、日南に対する合衆国当局のすべての未払債務は免責された。そういう事情からして、日南は放棄された請求権の対価に対して償還請求を日本政府に要求するより仕方がない。放棄によつて生じる問題は完全に日本政府の責任である。日本政府と日本国民との問題である。」と述べ全く相反するものである。
  (1) どちらの国の主張が正しいのか御回答願いたい。
  (2) 日本政府は「戦争損害」を主張されたが、いつ、米軍若しくは米国政府は、詐欺横領を働いたのか、明確な御回答を要求する。
      米軍補給廠が、日南をだまして私法的取引契約を締結して、P.X.自動車修理工場の経営で大勢の米軍人、軍属並びにその家族から日南に稼がせた財産を、占領行為を理由に没収又は日南の財産に対する請求権を否認して日南に損害を与えない限り、つまり、米軍補給廠が私法的取引契約を悪用して詐欺横領を働かない限り、戦争損害にはならないものである。従つて、このような日本政府の主張は事実を歪曲すると共に、米軍の名誉と米国の威信を著しく傷つけると同時に我が国の信用を大きく失墜するものであるので、是非とも明確な御回答を願いたい。
  (3) 日本政府のこのような主張は、日南の請求権を放棄した日本政府自らの責任を米軍に転嫁する誠に卑劣極まる行為であり、日南の権利を害する意図のもとに虚偽の事実を主張して裁判所と日南を欺罔する不正な行為ではないか、お答え願いたい。
     イ もし国(日本政府)が前記1の@、A及びBで主張したように、日南の請求権が平和条約第十九条(a)項の適用を受けないなら、国(日本政府)には関係のない、責任もない問題で国が被告となることもなく、また日本の国内裁判所には裁判管轄権もなく、従つて、東京地方裁判所で判決が確定することもないはずではないか。
     ロ これに相反して国(日本政府)が日南の請求権を放棄したならば、これは放棄した日本政府の責任問題であることは法律以前の常識であり、米国政府が「完全に日本政府の責任範囲に属する問題」であると主張しているとおりである。従つて、当然に放棄した責任を果たすべきではないか。
     ハ 米軍補給廠の契約違反(契約履行態度)に関しては、日南からの提訴を受理した日米合同委員会で十分に調査検討して両国代表が署名した勧告書が証明するとおり、契約条項に基づいた日南に対する補給廠の補償債務を認めているのである。また、補給廠は米国政府が平和条約第十九条(a)項の請求権放棄条項に気付くまで債務の一部を日南に支払つているのである。残りの未払債務の支払いを中止したのは、国(日本政府)が条約で免責したからである。
       日南の請求権を日本政府が放棄したため、日南は長年にわたつて物心両面の被害を現に被つているのは争いのない事実である。これについて見解を求める。
  (4) 私法的取引契約で(戦争損害になるような)戦争若しくは戦争関連行為はあり得ないし、このような日本政府の主張は全く非常識で前代未聞のものであると同時に上述の事実関係、日米合同委員会の決定、米国政府の主張並びに日本政府が全く内容の違う別件の最高裁判例を悪用したこと等が証明するとおり、日本政府の主張は明らかに虚偽であるので独立国の体面からも取消すべきではないか、お答え願いたい。

 右質問する。





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