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昭和五十四年十二月十一日提出
質問第七号

 溶融塩炉の開発に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十四年十二月十一日

提出者  貝沼次郎

          衆議院議長 (注)尾弘吉 殿




溶融塩炉の開発に関する質問主意書


 溶融塩炉については次のような特長があると聞いている。
@ 核燃料の原料となるトリウムはウランの数倍と埋蔵量が多く、しかも偏在していないので容易にまた安定した供給が期待できる。
A 核燃料が液状になつている。固体燃料炉の場合、多額の費用と手間をかけて燃料体を成型加工し、安全性を確保するための厳格にして繁雑な検査が行われる。また燃料の種類や濃縮度が変わると、それに適合するように炉心構造を変えるなど非常に手数がかかる。
  溶融塩炉の場合は、燃料が均質な液体となつて循環するので、炉心構造を変えることなく、燃料の濃度を調節するだけでウラン二三三でもウラン二三五でもまたプルトニウムでも燃料に使えるし、さらにこれらのものを混合しても使えるので、費用も手間もかからない極めて便利で経済的な炉である。
B 核燃料である溶融塩が循環する一次回路内は常圧(一気圧)であるから、例えば回路に穴が開いても在来炉のように噴出することはないし、水や空気と激しく反応することもない。また、にじみ出た溶融塩は融点が五百度であるから容易に冷えて固まり、飛び散ることはないので安全である。
C 運転しながら燃料を追加したり、除去したりできる。また、炉の構造が極めて単純であり、単純なるが故に故障が少ないなどから、数年に一回止めるだけでよく極めて稼働率が高い。
D 循環中の核燃料の一部を分流させて、いわゆる「再処理」することができるので、別に「再処理工場」を建設する必要はないので経済的である。
E トリウムを核燃料に混ぜることによつて増殖炉にもできる。そしてトリウムを完全に燃焼できるので燃料の利用効率が極めて高い。また、プルトニウムを燃やすことができるので核拡散防止上有利である。
F 在来炉で最も恐れられている一次回路の破断による一次冷却水の喪失に伴う核燃料の熔融事故は、溶融塩炉では燃料が当初より熔融しているので起こりようがない。故障が起こると全燃料が重力によつて地下のタンクに落とされて安全が保たれる。逆に燃料の流れが止まると炉心の温度は上昇するが、核の反応は負となつて核分裂が止まるので暴走することはない。
G 得られる温度が七百度と高いので熱効率は四四%と高い。また、発電のみならず化学工業の熱源としても使えるという有利な炉である。
H 炉材の特殊合金ハステロイNの腐食が問題となつていたが、改良型ハステロイが完成し解決した。
 アメリカでは、原子爆弾との関連で軽水炉が優先して開発されたが、溶融塩炉のこうした数々の特長に関心がもたれ、今後八年の予定で二十五万キロワットの実証炉を建設し、その後六年で百万キロワットの溶融塩増殖炉を建設しようとして、我が国に呼び掛けてきたことがある。
 次にエネルギー政策上から考えた場合
@ 今世紀末に高速増殖炉が開発されてウランの利用効率が高まつたとしても、いずれはウランも涸渇するものであり、トリウムを燃やせる溶融塩炉の導入を考えておかなければならない。
  電力中央研究所の高橋氏の試算によれば、今世紀末に高速増殖炉が導入されても、丁度その頃から原子力発電の電力供給に占める割合が落ち始める。そのため、今世紀末を目指して溶融塩炉の導入が必要であるとしている。
A 溶融塩炉は技術的には各部分の研究は終わつており、問題点はすべて解明され、実用化を目指して開発を待つばかりの段階であると言われている。高速増殖炉は未解決な問題がまだ多く残つており、これのみに頼つて溶融塩炉を不要とするのは誤りである。
  まして、核融合炉は基礎物理の段階であり、高速増殖炉よりなお一層不確定要素が多く、これらの研究・開発が行われていることを理由に溶融塩炉の開発を不要とするのは危険である。
B 軽水炉、高速増殖炉から核融合炉へつなげていくという原子力開発路線が我が国の主流となつており、それ以外の炉の開発は資金や人材の面で困難であるという説があるやに聞いているが、それは必要となれば解決できない問題ではない。
C 溶融塩炉の実用炉完成には二十年かかると言われている。今世紀末に実用化するためには直ちに開発にかかる必要がある。
 以上述べてきた理由から、我が国においても、重大な関心をもつて溶融塩炉の開発に直ちに取り組むべきであると思うが、次の二点について政府の見解を伺いたい。

一 溶融塩炉について政府はどう考えているか。
二 直ちに、溶融塩炉の実験炉の建設をスタートさせるべきであると思うがどうか。

 右質問する。





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