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昭和五十六年二月二十一日提出
質問第一一号

 家内労働者(家内労働法にいう)の工賃支払の確保と社会保障問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十六年二月二十一日

提出者  金子満広

          衆議院議長 福田 一 殿




家内労働者(家内労働法にいう)の工賃支払の確保と社会保障問題に関する質問主意書


 全国で数百万人(昭和五十四年労働省調査百三十四万人、補助者を含むと百四十四万人、内九二パーセントが婦人)と推定される家内労働者は、我が国の産業構造の中で重要な位置を占めながら、その労働条件は他の雇用労働者と比較して極めて劣悪な状態に置かれている。
 専業的家内労働者は、従来保持していた商行為、生産計画も委託者に委ねられ、労働を提供することを前提に委託を受け、加工に従事し、労働の対価として受ける工賃で生計を維持している状態である。一方的工賃決定で低工賃に抑えられており、劣悪な作業環境で一日十二時間から十三時間という長時間労働を余儀なくされている。そのため家内労働者の健康をむしばみ、腰痛症、神経痛、視力低下など職業病ともいえる疾病に悩まされている。ところが、この家内労働者に対する社会保障は極度に不十分であり、事態はますます深刻になつている。
 しかも最近は、突然襲つてくる「仕事ぎれ」や作業量の減少、長期の半失業状態、倒産による工賃不払などが相次いで起こつている。そのため地場産業の中で長年にわたつて育てられてきた技能者が転職し、その後継者を生み出すことも困難にしている。
 私の住む東京都においても、台東区を中心とする東部一帯の靴、草履、鼻緒、サンダルなどの家内労働者の実際も例外ではない。
 家内労働法が制定されて十周年を迎えている今日、この法律の精神は生かされず、家内労働者の実態は、現行家内労働法の改善・見直しをすべきであることを痛感させている。
 そこで以下、家内労働法の改善と関連して、工賃支払の確保と社会保障の二点について具体的な質問をする。

一 家内労働法第六条には工賃未払に対する罰則規定はあるが経済的救済が規定されていない。このため委託者が倒産したりして工賃未払が生じた場合には他の法規による救済ということになり、民法第三百十一条第一項第八号による救済を受けるという見解もあるが、これは実情に合わない。最近、専業家内労働者の特定委託者に対する従属化はさらに進み、その工賃によつて生計のほとんどがまかなわれている。従つて、工賃については債務者の特定動産の上に先取特権を有するだけとせず、民法第三百六条により雇人の給料として債務者の総財産の上に先取特権を有するものとし、労働基準法の賃金と同様の保護を与えるべきであると考えるが、政府の見解はどうか。
二 家内労働法第五条は委託打切りの予告について努力規定のみで法的実効性がない。前述のように、家内労働者の特定委託者に対する従属化が進む中で委託打切りは解雇に等しい経済的打撃を与える。従つて、このような委託打切りに対しては労働基準法第十九条、第二十条、第二十一条の保護を与えるべきであると考えるがどうか。
三 最近、各地の地場産業を担つている中小零細企業が倒産し、家内労働者は仕事がなくなり、退職金もなく、未払工賃を抱えて窮地に陥つている。ところがあらかじめ雇用保険などに加入することもできず、労働者が現社会で生きていくために最低必要な社会保障を受けることができないまま放置されている。これは人道上からみても重大な問題である。
  家内労働者に対して直ちに雇用保険に加入する道を開くべきであると考えるがどうか。また、それに代わる休業補償制度を直ちに設ける必要があると考えるがどうか。
四 以上のような状況の中で「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づく「未払賃金の立替払事業」を家内労働者に対して直ちに適用することが必要であると考えるがどうか。
  倒産が相次ぐ中で家内労働者は、前述のように社会保障による救済を受けることもできず、困難な状況に置かれている。この場合、他の債権に優先して未払工賃の支払を直ちに受けなければ雇用保険も退職金もなく生活は即刻破綻する。
  委託者である企業が倒産し、事業主に支払能力がない場合の具体的救済措置として設けられた「未払賃金の立替払事業」の適用を最も痛切に必要としているのは家内労働者である。なおこの場合財源は、労働保険特別会計労災勘定が負担していることを考えて、少なくとも、労災保険特別加入を行つている家内労働者に対しては、論議の余地なく即刻適用してよいと考えるがどうか。
五 前述のように家内労働者に対して労災保険特別加入の道が開かれているが、昭和五十五年八月十五日現在で労働省が調査した資料によれば加入団体数が百八であり、加入者数は全国で四千三百六十九名、この内訳は委託者全額負担が六百七十七名、家内労働者全額負担が二千三百四十三名、委託者又は自治体が一部負担しているものが千三百四十九名であり、保険料について家内労働者が自分で全額負担しているものが半数を超えている。例えば東京都台東区では最近、保険料の一〇パーセント補助を決定したが、委託者負担や自治体の補助をさらに拡大し、労災保険加入について一層の促進を図ることが必要であると考えるが、政府の見解はどうか。
六 家内労働者の戸外事故についても労災保険は適用されるべきであると考えるがどうか。家内労働者は、名称としてむしろ在宅労働者というべきであり、委託者が基本的に原料、資材を搬入し、配集するものであるが、事実上、家内労働者が製品、資材の運搬に携わることも多い。この実態の中で、戸外で仕事に関係している中で生じた事故については、家内労働者に対しても労災保険を適用すべきであると考えるがどうか。
七 なお以上の諸点にかんがみ、家内労働法を実情に即して改善、見直すべきときであると考えるが、その点について政府の見解はどうか。

 右質問する。





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