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昭和五十七年八月二十日提出
質問第二七号

 建設業についての許可基準見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十七年八月二十日

提出者  瀬崎博義

          衆議院議長 福田 一 殿




建設業についての許可基準見直しに関する質問主意書


 去る三月三十日、建設大臣は中央建設業審議会(中建審)に対し、「建設業許可制度のあり方について」の調査審議を依頼した。その理由として「行政管理庁の『規制行政の簡素合理化に関する総合調査結果報告書』により、建設業の許可制度には改善の必要が認められるとされ」たことを挙げ、同審議会にこの報告書を資料として提出した。
 現行の許可制度は、昭和四十六年の法改正により、それまでの登録制を廃止し、建設業を営もうとする者は原則として許可を受けなければならないこととして導入されたものであるが、この十年間で建設業界と国民の間に広く定着してきた。今回の建設業許可制度の見直しは、制度変更の対象となる業者が、業界の圧倒的多数を占める四十数万の中小零細業者であるだけに、建設業界のみならず社会全体に極めて大きな影響を及ぼすことは明らかである。
 私は、事の重要性にかんがみ、建設委員会で取り上げて質問する一方、建設省・行政管理庁への申入れの機会等を通じて許可制度見直しの問題点を指摘してきた。とりわけ、建設省を中心とした一昨年来の動きに加えて、行管庁の「総合調査結果報告書」が出るに及び、多くの中小零細業者の間には、今日の建設不況と重なつて許可制度見直しの動向に大きな不安が広がつている。私はこうした状況にかんがみ、次の諸点について質問し、各項目についての具体的かつ詳細なる答弁を求めるものである。

一 行政管理庁に対し質問する。
 1 「規制行政の簡素合理化に関する総合調査結果報告書」にいうところの「許可制によるものと登録制によるものとに区分して規制するとともに、当面、許可の適用を除外されている軽微な建設工事のみを請け負うことを営業する者の範囲を拡大する」との「改善」意見は、つまるところ、「許可を受けなければならない」(建設業法第三条)とした現行の全面許可制を、結果的に「許可」「登録」「無許可」の三ランク制に変更しようとするものではないのか。
 2 現行の許可制度では、許可を必要としない軽微な工事のみを行う業者でも許可を取得することを可能としている。これに対し、行管庁報告書に示された「改善」理由の説明の中には、「軽微な建設工事のみを行う業者は、許可の適用除外とされているが、これらの業者が許可を受けることまでも排除するものではないから、本来許可を要しないとされている小規模零細業者も……許可を取得している場合が多い」とか、「現行制度では、軽微な建設工事のみを請け負う小規模業者であつても、許可申請を却下することはできず、現行の許可制のままでは、いくら軽微な建設工事の範囲を引き上げても許可業者の減少につながらない」などと書き込まれているが、このことはある基準以下の軽微な工事のみの実績しか持たない業者が許可を取得しようとしても、それができないよう法的に規制しようとの意図のあらわれではないか。そうでないとすれば、こうした内容を報告書に挙げた理由は何か。
 3 行管庁の報告書はわずか六都府県を対象に調査したものでこれで全国四十七都道府県全体に共通した意見とはいえないのではないか。全国都道府県を代表する意見だというのなら、その根拠を示されたい。また、行管庁が対象に挙げたA、B、C、D、E、Fの六県とは、それぞれA=宮城県、B=東京都、C=埼玉県、D=富山県、E=京都府、F=山口県と推察するが、これに間違いがないかどうか。
 4 行管庁の対象とした六県について私が独自に聞き取り調査を行つたところ、行管庁の報告書の内容との間に大きな違いが見られ、行管庁が列挙した見直し理由そのものが成り立たないことが明らかとなつた。以下、さらに具体的に質問する。
  (1)行管庁の報告書では、調査対象の六県においてはそれぞれ業者指導の状況として、「書類審査に追われ、事実上立入検査等まで手が回らない。」、「立入検査等は……事務処理が多忙なため特に行なつていない。」などとしているが、私が同じ六県に直接問い合わせたところ、宮城県の場合、地方出先を通じて年間二百業者をサンプリングして現地立入調査を行つていると答え、富山県、山口県の場合も、新規に許可する業者についてはほとんど現地立入調査をやつていると答えている。報告書にはこうした事情が正確に反映されていない。この食い違いの理由を明らかにされたい。
  (2)行管庁の報告書では、建設業の許可事務の処理件数を県庁の担当職員一人当たりではじき出して事務量の膨大さを強調しているが、私どもの調査では、六県のうち富山県、山口県では、県庁の担当課へ書類が上がるまでに、土木事務所などの県内出先機関で厳正なチェックや、立入調査が行われてくるので県庁での事務量は少なくて済むということであつた。こうした実情を把握していたのかどうか。把握していたとすれば、一律に県庁職員一人当たりの平均値を出した意味は何か明らかにされたい。
  (3)行管庁の報告書では、「調査対象とした都府県、業界団体及び許可業者の中にも、登録制の導入等現行の許可制自体の検討が必要であるとする意見がある」と理由付けされているが、私の調査では、各県とも登録の話は初耳だとしながら、「安易な登録制導入などすべきでない。」、「現行で許可事務に追われているということはない。」、「現行の許可制の変更は中小業者の実情をみて慎重にすべきである」などと述べていた。何を根拠に都道府県が希望しているとしたのか明らかにされたい。また、登録制の導入などが必要であると答えたC県の担当者とは、どういう立場の人物か明らかにされたい。
 5 また、行管庁の報告書は、許可制度「改善」の理由として、多種多様な建設業者を「一律に許可に係らしめている現行制度は、必ずしも実情に即したものと思われない」と述べている。
   しかし、十年前それまで登録制だつたものを“実情に合わぬ”として全面許可制に変更したのは、外ならぬ政府自身であつた。今日、許可業者が五十万に達していることからも、現実に建設業者がその営業を維持していく上で、許可がいかに不可欠の条件であるかを物語つているのである。このことについては、行管庁も報告書において、法的には無許可でできる「軽微な工事のみを行う業者」までがほぼ全面的に許可を受けている事実を認めるとともに、その理由が@公共工事の指名は、事実上許可業者に限られていることA対外信用上許可が必要であることB元請け業者が国の指導を受けて下請けに対し許可取得を指導していることにあることをも認めているのである。しかも許可制実施は十年を経過し、現行許可制度は、「建設業者といえば許可を持つているもの」という社会的常識とともに定着をみているのである。
   こうした状況の下で、たとえ法的に無許可でできる仕事の範囲を拡大するとか、登録でできる仕事の範囲を限定しない措置をとつたとしても、現実の問題として、施主(発注者)が新しく登録あるいは無許可となつた業者に、現行の許可制度で許可を取得していたときと同じように信用して発注してくれると断言できるのか。実際には施工技術や能力になんの変化がないにもかかわらず、新しく登録あるいは無許可となつた業者は、何らかの欠陥があつたがために格下げされたと受け取られたり、許可業者よりは信用も技術も能力も低位の印象を持たれたりして、登録あるいは無許可でも十分できる仕事までが許可業者に発注される事態が起こつてくるのではないか。
   行管庁は、そこまで検討して「改善」意見を出したのかどうか。また、行管庁は、制度「改善」で現在の許可業者が登録あるいは無許可とされた場合でも、変わりなく仕事の取得は保証されるというのなら、その根拠を示されたい。
 6 また、業者団体が登録制の導入などの検討を希望しているという点についても、報告書に出てくる各県の建設業協会はいずれも各県内の最大手から中堅までの上位会社が入つており、県下全建設業者のうち一割程度が組織されているに過ぎない。許可制度変更の影響を直接受ける中小零細業者の声を完全に排除して、業者団体及び業者の意見を聞いたとか、業者も登録制を望んでいるなどとどうしていえるのか。
   行管庁は、中小零細業者の声を反映していない“片手落ち”の報告書であつたことを公式に認めるとともに、圧倒的多数を占める中小零細業者の意見を公平、正確に聴取し、総合調査結果報告書を訂正すべきと考えるが、行管庁の見解を示されたい。
二 建設省に対し質問する。
 1 中建審に対し建設業許可制度の見直しを依頼した際、見直し案について行政管理庁の報告書以外に添付した資料はあるのかないのか、明らかにされたい。
 2 行政管理庁の報告書だけしか提出されていないとすれば、いきおいそれが今回の見直しのたたき台になるのではないか。また、昭和五十五年十一月に開かれた全国都道府県建設業主管課長会議の席上出された意見及び五十六年十一月二十一日の我が党の申入れに対し、建設省計画局長が表明した「諮問の範囲は政令以下の事項、具体的には資本金または財産的基礎の引き上げと、無許可でできる工事の範囲の拡大」との見解が示されているが、これらの意見、見解と、行管庁の報告書との関係はどうなるのか。
 3 前回昭和四十六年の法改正の前提となつた昭和四十三年の建設大臣から中建審への諮問では、「建設業者の資質の向上と公正な取引秩序の確保を図り、もつて建設業の健全な発達を促進することが急務である。」と位置付け、それを受けて中建審では、「施行能力、資力、信用のない業者の輩出をもたらした原因は現行建設業法の軽易かつ画一的な登録制度にあることを注視し、これらを防止するとともに職別業者の専門化を促進する等建設業の近代化を図るため、現行登録制度を業種別許可制度に切りかえること」を答申している。
   すなわち、前回の法改正では、二年がかりの中建審での審議に基づいて建設省の責任で現行許可制度に切り換えたものを、わずか十年しか経ていないのに再び登録制を含む制度に戻そうという行管庁の「改善」意見を建設省が何の検討も加えずに、しかも登録制を廃止して許可制に移すことを提起した中建審に回付するということは、建設省として極めて無責任な態度ではないか。そうでないというのなら、建設省は昭和四十三年の中建審答申及び四十六年の法改正についてどう受け止めているのか、見解を示されたい。
   しかも、許可制に移行してようやく定着した段階で、これを政府が欠陥ありとして否定した登録制に戻そうということは、政府に対する国民の信頼を根底から覆す行為ではないか。
 4 行管庁の報告書は、建設業許可制度「改善」理由の第一に、行政事務簡素化の立場を強調しているが、建設省の場合は、あくまで建設業界と全建設業者の健全な発展という立場からこの問題をとらえるべきではないのか。建設省として行管庁の報告書内容をどうみているか、見解を示されたい。

 右質問する。





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