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昭和六十二年三月三十一日提出
質問第二八号

 採卵養鶏の無断増羽規制に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十二年三月三十一日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 原 健三郎 殿




採卵養鶏の無断増羽規制に関する質問主意書


 今日、採卵養鶏農家は、卵価低迷が長期化するもとで著しい経営困難に直面している。この卵価低迷の最大の要因は、商社や飼料メーカーなど農外大企業等が、国の行政指導に基づく鶏卵計画生産を無視して大規模な無断増羽を繰り返し、鶏卵の生産過剰を恒常化させてきたことにある。
 特に昨年来、関西の大手鶏卵問屋である阪神鶏卵(株)のグループは、「赤玉一千万羽計画」を展開し、各地で大規模な無断増羽を強行している。このような横暴を許すならば鶏卵の計画生産は有名無実化し、現に生産の七割を担つている家族労働を主体とした農家養鶏は壊滅的打撃を受けることは必至である。
 また、利潤追求を第一義的課題とする農外大企業等に生産の集中が進むことは、国民の大事なたん白供給源である鶏卵の安定的供給を長期的に保障することにも反するものである。
 従つて、農外大企業等の無断増羽を規制し、養鶏農家の経営を守り、国民への鶏卵の安定供給を図る立場から、以下質問する。

一 阪神鶏卵グループは昨年九月、愛知県渥美町に十六万羽の養鶏場建設を地元養鶏農家の強い反対を無視して着工、今年一月には、島根県羽須美村に四十万羽飼養可能な養鶏場建設を進めている。
  愛知県の無断増羽について、農水省畜産局長は「無断増羽にならない形で考えていくよう現在強力な指導を進めている」(衆農水委昭六一・一二・一一)と述べた。ところが、現在既に十二万羽の無断増羽が行われている。
  一体、政府はどのような指導を行つてきたのか。阪神鶏卵(株)に対して直接指導したのかどうか。また、島根県についても政府は「強力な指導をする」と繰り返しているが、愛知県の二の舞にならないという保証があるのか。
二 阪神鶏卵グループは、京都府においても瑞穂町北久保地区で三万羽規模の赤玉の種鶏場建設を進め、既に一万五千羽飼養されている。種鶏一羽から少なく見ても年間百羽のヒナ供給が可能で、種鶏三万羽で三百万羽というヒナの大供給基地となる。
  政府は、この種鶏場で生産された種卵がどのようなルートでヒナとしてどこの採卵養鶏場に供給されるのか把握しているのか。この種卵が無断増羽につながる可能性が極めて強いと考えるがどうか。
三 京都府では同じ瑞穂町の井脇地区で既に五万羽規模の無断増羽をしている阪神鶏卵グループの農場が、本年夏完成予定で鶏舎五棟の建替工事を進めている。鶏舎は愛知県や島根県と同じ一棟四万羽飼養で、五棟すべてが採卵鶏とすれば二十万羽の無断増羽となる。
  京都府全体の羽数枠が八十五万羽のところに、一挙に二十万羽もの無断増羽が強行されれば、需給上重大な混乱が生ずることは明らかである。政府はこの事実を承知しているか。承知しているとすれば、具体的にどのような対策をとるのか。
四 阪神鶏卵グループの場合、鶏舎や資金面はチクサン総合リース(株)が、原種鶏はテトラクロス(株)が、販売面は阪神鶏卵(株)とビックウェイグループが担当するなど、鶏卵の生産から販売までの全面的な組織体制をとつて「一千万羽計画」を進めている。
  従つて、このような農外大企業の無断増羽に対し、@卵価安定基金からの排除といつても効果がなく、A配合飼料価格安定基金からの排除も大規模購買者の有利な取引実態から効果が小さく、B補助事業や制度資金からの排除も初めから対象外で無関係と、従来の対策では限界があると考えるがどうか。
五 農外大企業の無断増羽を規制するため、以下具体的に質問する。
 1 無断増羽を元から絶つため、飼料の製造・販売業者に対し、無断増羽者への供給をカットするよう指導を強めるべきではないか。
   「鶏卵の計画生産の推進について(運用方針)」(昭五六・九・二一付)に、「指導に従わない企業に対しては、所要の措置を講ずる」とあるが、所要の措置とは何か。少なくとも指導に従わない企業に対して、企業名の公表、輸入飼料の政府売渡しの規制等の措置をとるべきではないか。
 2 採卵用ヒナの供給について政府は、畜産局長通達「鶏卵の計画生産の改善強化について」(昭六〇・七・三〇付、以下「改善通達」という。)に基づき出荷先別の羽数を報告させるなどの指導をしている。しかし、ヒナの前の種卵の段階でチェックしなければ効果がない。この点で、種鶏飼養羽数をチェックし、種卵の出荷先の報告を義務付けることが必要ではないか。
 3 全国の無断増羽数は、六十一年五月調査で千二百万羽となつている。この調査は、「改善通達」で、飼養羽数十万羽以上の鶏卵生産者に対しては原則として地方農政局、特に必要がある場合は本省畜産局職員が同行することになつているが、農政局別に何ヵ所同行したのか、明らかにされたい。
 4 羽数調査の徹底は計画生産の大前提である。鶏舎の規模や飼料・ヒナの供給量等から判断し、大規模な無断増羽業者については政府自らが立入調査し、無断増羽分の削減を徹底すべきではないか。
   また、羽数枠の見直しに当たつては、無断増羽者が得をし、正直者が損をすることがあつてはならない。政府の基本姿勢を明らかにされたい。
 5 政府の行政指導にも従わず、公然と無断増羽を強行する農外大企業の横暴に対しては、法による規制が不可欠ではないか。
   既に我が党は昭和六十年に、資本金十億円以上の農外大企業の採卵養鶏分野における新たな事業開始を禁止する、それ以外の農外企業の場合、一定規模以上に開始又は拡大する場合は、大臣等の許可制とする等の法案を提案している。また国会においても、「養鶏を農業の一部門として位置づけ、農民が生産意欲をもつて取り組める基本的な養鶏政策を確立すること」という国会決議(衆農水委、昭五三・六・一四)がなされている。
   これらの点を踏まえて、農家養鶏の分野を守るため、大企業等の養鶏分野への進出を規制する法制定を検討すべきではないか。

 右質問する。





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