衆議院

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昭和六十二年九月十二日提出
質問第三二号

 AT車の暴走に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十二年九月十二日

提出者  草川昭三

          衆議院議長 原 健三郎 殿




AT車の暴走に関する質問主意書


 私は、本年七月十六日の衆議院予算委員会において、オートマチックトランスミッション搭載車(以下「AT車」という。)の暴走問題を取り上げた。その際、運輸省は、初めて車自体に欠陥がありうるとの見解を明らかにした。更に、中曽根総理も「科学的に原因を徹底的に究明することが安全の確保並びに運転者の安全あるいは名誉に関して大事なことであると思いまして、運輸省等を通じまして徹底的な原因の解明に努めるようにいたします」と答弁し、暴走原因解明に積極的な姿勢を示した。しかし、去る八月十日付の報道によると、警察庁は、昨年起きたAT車の死亡事故「十一件」について再調査したところ、構造上の原因なしとの結論を出したという。この警察庁の調査結果は、徹底的な原因究明を表明した先の総理答弁を踏まえたものとはいい難い。もとより私は、構造上から見てAT車が暴走するはずがないということは理解する(最近メーカーから部品の欠陥が報告されているものもある)が、それが暴走しているから問題であり、当局の徹底究明を求めるのである。
 本件に取り組む政府の姿勢を改めて確認するとともに、ドライバーの人権を守る立場から以下の質問をする。

一 警察庁は、昭和六十一年中のAT車による交通死亡事故九百四件のうち、事故原因がペダルの踏み違いとして計上されている十一件について事故発生時の捜査等の状況を再調査したという。その結果、事故原因は、いずれもブレーキとアクセルの踏み違い、あるいはブレーキ操作不確実によるものとした。(警察庁資料「昭和六十一年中におけるAT車による交通死亡事故」による。以下「警察庁資料」という。)
  一方、運輸省は、交通安全公害研究所に対しAT車の車両構造の原因究明についての試験を依頼し、年度内に中問報告を取りまとめようとしている。こういう段階において警察庁が結論を出すことは性急すぎるのではないか。この調査では、事故車そのものの解析実験や再現テスト等が行われたのかどうか、その経過を含め具体的に明らかにされたい。
二 八月十日の報道によると、「急発進事故が、問題になつているオートマチック車(AT車)について警察庁が昨年起きた死亡事故のうち欠陥問題が取りざたされた十一件について再調査した結果、いずれもブレーキ操作が不確実だつたなど誤操作が原因と判明した」とある。ところが、警察庁より私に提出された「警察庁資料」によると、そのうち三件は現在も審理中等となつており報道された数字とくい違いがある。この三件の事故は、この報道以後、フォルクスワーゲン社から日産自動車を経て運輸省に報告された欠陥部品搭載車によるものではないのか。この際「数字のくい違い」の理由と三件についての事故発生日時、概要及び車種名を明らかにされたい。
三 本年七月三十日の衆議院交通安全対策特別委員会において葉梨国家公安委員長は、「(前略)構造上の欠陥があるかもしらぬという疑いがあつた場合、地方の陸運局の技官がおられるでしようし、それで対応してもわからないというようなときには、それこそ運輸省の中央の専門家にまたいろいろな調査を仰くということも考えたらいいのではないかと思います」とAT車暴走事故の原因解明に慎重な答弁をしている。
  「警察庁資料」にある昭和六十一年八月二日に東京の環状七号線で起きた事故は、すでに車両が廃車処分となり運転者も服役中であり、新たな実地調査等ができないにもかかわらず、運転者の操作ミスと結論づけた根拠は何か。先の国家公安委員長の答弁の主旨を踏まえるのならば一層慎重な対応が必要と考える。当局の見解を求める。
四 前記の環状七号線で発生したいわゆるAT車暴走事故で、当事者であるドライバーの主婦は、三人を死亡させ、五人に重軽傷を負わせたとして東京地裁に起訴され、禁固二年の実刑判決を受け、現在服役中である。この事件に対し、本年一月三十一日付で「交通傷害致死事件における検察官の再審請求を要望する請願書」が最高検察庁に対し提出されている。
  この請願書では、運転していた主婦が、暴走中にサイドブレーキを引くなどして、適切な行動をしていた点が指摘されている。それは、取調べに当たつた警察官が作成した六十一年八月十二日付の実況見分調書の記載及び同八月四日付のブレーキ系統検査報告書の証拠写真から判断でき、それによれば「サイドブレーキは、最上段まで引き上げられていた」とある。更に、それが運転中に引き上げられた証明として、「サイドブレーキドラムに、僅かに変色が生じていた」としている。当局は、かかる請願書が提出されていることを承知しているか。
五 前記の事例以外に、当局に対し再審を望む請願書は出ているのか。出ているとすれば、それはいつ発生し、どの車種によるいかなる事例か明らかにされたい。
六 七月三十日の衆議院交通安全対策特別委員会において内田警察庁交通局長は、AT車の死亡事故に関連し、ペダルの踏み違い等操作ミスのものが十一件、この外に発進時の急発進によるものが十一件あると答弁している。ここでいう発進時の事故十一件の事故発生日時・概要及び車種名を明らかにされたい。
七 更に、同委員会で同交通局長は、AT車の急発進・急加速による事故原因の調査について、「基本的には、事故が起こつた場合、そもそも事故に構造上の問題がなかつたか、それはいわゆる整備不良という問題もあるわけですが、そういつたものがないかどうか、必ず現場検証をやる警察官が見るわけでございます。問題があれば陸運局の方に来てもらう、さらにはそれぞれの県警の科学捜査研究所へ持ち込むようなケースもあり、段階に応じて対応しているところでございます」(要旨)と答弁している。これについて次の各項目について答えられたい。
 1 これまでAT車の暴走事故は運転者の操作ミスとして扱われてきた。現場の警察官が、再現性のないこの種の事故に対してどのような基準で操作ミスとの判断をくだしてきたのか、その根拠を明らかにされたい。
 2 当局は、警察官に対しAT車の構造上の問題点を判断するためにいかなる教育を行つているのか、カリキュラムの内容を具体的に明らかにされたい。
 3 これまで現場の警察官の検証では原因が究明できずに県警等の科学捜査研究所へ持ち込まれたAT車事故は何件あるのか。
八 運輸省は、交通安全公害研究所においてAT車の急発進・急加速について車両構造上の原因究明のために試験調査を行うと聞く。実車実験に使用される車種名及び車種選定の理由を明らかにされたい。
九 本年三月までに運輸省に寄せられたAT車の急発進等に関する百七十八件の報告以後、新たに報告及び苦情として寄せられた件数を車種別、暴走形態別に明らかにされたい。
十 AT車暴走事故で送検された運転者が、その後の捜査で車自体に問題があることがわかり起訴されないことがあるが(暴走事故で、歩行者に重傷を負わせ、業務上過失傷害と道路交通法違反の疑いで、東京地検に書類送検されていた被疑者が、九月四日までに「嫌疑不十分」として不起訴処分になつている)、この場合メーカーの責任は免れるものではないと思うが、当局の見解を明らかにされたい。
十一 構造や部品に欠陥の疑いのあるAT車により暴走事故が発生した場合、警察としてはどのような調査、テストを行うのか。また、解析実験及び再現テスト等が行える体制はできているのかどうか併せて明らかにされたい。
十二 報道によると、最近、西独・フォルクスワーゲン社は、日産自動車を経て運輸省に対し同社のAT車「サンタナ」のアイドル回転制御装置(西独・VDO社製。この部品はアウディ一〇〇にも搭載されているという)に欠陥があることを報告したとされている。「サンタナ」は、昭和五十九年より日独提携で生産されたが、たびたび急発進等が指摘されていたという。そこで六十年七月に同部品は改良され、申出のあつた者には部品の交換が行われてきたと聞く。しかし、その後も同様のトラブルが続き、本年一月、再度同部品を改良したというが、この間の経過を説明されたい。また、二回も回転制御装置が交換されていたとすれば、当然リコールの対象になるものと考える。これまでリコールが行われなかつた理由は何か、明らかにされたい。
十三 AT車の暴走事故に関し、その原因が運転者等の操作ミスではないとして、保険会社が保険金(自賠責・任意保険、対人・対物・自損を問わず)の支払いを拒否した事例は何件あるのか。

 右質問する。



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