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平成元年六月十九日提出
質問第三〇号

 米空軍F16の超低空飛行訓練に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年六月十九日

提出者  児玉健次

          衆議院議長 田村 元 殿




米空軍F16の超低空飛行訓練に関する質問主意書


 一九八二年の日米合意に基づき、八四年、三沢基地に米第五空軍第四三二戦術戦闘航空団が配属された。八五年四月からF16ファイティング・ファルコンの配備が開始され、八七年七月には五〇機の配備が完了、第一三、第一四飛行中隊が編成された。
 三沢基地には「思いやり予算」によるF16用のシェルター、二、二〇〇戸の米軍家族用住宅の建設、核戦略に欠くことのできない通信施設も完備された。
 また、八七年十月には三沢基地を防衛する第二〇一基地防空隊も配備、日米両軍の共同使用基地の特徴を最大限に生かした部隊配備が終わり、「槍の穂先」の役割を担うF16核攻撃部隊の本格的な猛訓練が行われている。三沢の対地攻撃機F16は北海道、東北北部における低空による急旋回、急上昇など傍若無人の訓練を繰り返し、猛烈な低空訓練による衝撃音の被害、墜落事故や民間空港への緊急着陸など地域住民に恐怖と怒りをまき起こしている。いま、北海道、東北の多くの自治体で超低空訓練の即時中止を求める決議が行われるなど、住民の反対運動が急速に広がっている。
 三沢基地のF16は一昨年三月に八戸沖海上で墜落し、昨年九月に岩手県川井村山中で墜落したが、川井村の場合、小学校から約五キロメートル、一番近い民家からわずか一キロメートルしか離れていなかった。一歩間違えると大惨事になるものであった。
 西ドイツでは低空訓練中の米軍F16が住宅地に墜落し大惨事を引き起こしている。
 F16は八七年一年間だけでも一四機墜落し、一〇万時間当たり六・六八機墜落したことになる。従って総飛行時間一四、九七〇時間に一機墜落したことになる。三沢基地のF16は、飛行訓練時間(一機当たり年間飛行二四〇時間)から客観的に計算して、一年間に一機墜落する計算になる。三沢基地のローバー指令官は、各自治体が再三、低空飛行訓練中止の申入れを行ったのに対し、「F16は実戦的に飛ばなければ強くなれない。対地攻撃訓練の目標は道路、鉄道、橋、レーダー基地、ダムなど」と表明、自治体から低空訓練中止要請があり、墜落事故の原因が不明であっても猛訓練を続行している。
 アメリカと軍事同盟を結んでいるスペインは核攻撃機F16(七二機)の退去を要求し全面撤退が行われた。いま、日本政府の態度が厳しく問われている。
 以下、国民生活を脅かす無謀なF16の超低空訓練について質問する。

一 低空飛行訓練によるF16の事故原因について
 (1) F16の八八年九月二十二日、八九年五月三十日の秋田空港への緊急着陸、八九年一月二十六日の函館空港への緊急着陸、八九年三月二十七日、千歳空港への緊急着陸の事故原因は何か。その詳細を明らかにされたい。
 (2) あわせてF16の八戸沖海上(一九八七年三月二十二日)、岩手県川井村山中(一九八八年九月二日)での墜落事故の原因についても明らかにされたい。
二 F16の三沢配備の目的、超低空飛行訓練の危険性について
 (1) 一九八二年十月の日米間合意に基づき、八七年七月、三沢基地にF16戦闘機五〇機の配備が完了、米空軍第四三二戦術戦闘航空団、第一三、第一四飛行中隊が編成された。F16が三沢基地に配備された軍事目的はなにか。
 (2) 八七年十月二十六日、米上下両院合同経済委員会国家安全保険経済小委員会でプロクシマイア委員長が同機の製造上の欠陥を厳しく指摘し、F16事故でパイロットの夫を失った未亡人がF16を「未亡人製造機」と批判した。
     米空軍検査安全センター(AFISC)発行フライングセーフィティ一九八八年五月号に、三沢基地司令マッカーシー中佐による「F16事故における人為的要因」という一文が掲載されている。それによると、八六機の墜落原因について、機体に起因するもの四〇機、うちエンジンの故障三二機、次に人為的要因四六機、その内訳はパイロットが操縦中に上下左右がわからなくなる空間識失調二〇機、重力加速のかけ過ぎ五機、操縦不能五機、空中衝突六機、その他一〇機(燃料切れ三機、バードストライク二機、離着陸失敗四機)との事実を中佐は明らかにしている。墜落原因のうち人為的要因によるものの多くがバートストライク、G過大、空間識失調、空中衝突、操縦不能などであり、中高高度での通常の飛行訓練ではほとんど発生しないものである。
     中高高度の通常飛行と、低空、超低空での急上昇、反転等を伴う飛行の安全性の違いはなにか。
 (3) 一昨年、昨年と北海道、東北の各地で強行されたF16の超低空飛行の実態は、低空を時速七〇〇キロメートル前後、地形に追随して上下、蛇行しながら目標を捕捉し、攻撃、反転を行うという危険なものである。超低空飛行訓練の目的は何か。また、この訓練の危険性をどのように考えているか。
三 低空飛行訓練と地位協定について
 (1) 三沢基地のローバー司令官は、一九八七年十一月の北海道全域で強行した低空訓練の後、十二月十七日の記者会見で「ご迷惑をかけた、申し訳ないと謝るしかない」と陳謝した。陳謝しなければならなかった理由はなにか。
 (2) 外務省は昨年二月の予算委員会で東中光雄委員の質問に対して、「米国軍隊が本来施設、区域で行うことを予想されている活動を施設、区域外で行うことは、この地位協定の予想していないところである」と答えた。F16の低空飛行は対地攻撃訓練であって、このような危険な訓練を「施設、区域外」の各地で強行することは、まさしく日米地位協定違反といわなければならない。政府は、F16の低空飛行訓練を地位協定のどの条項によって容認しているのか答えられたい。
 (3) 自衛隊には航空法第八十一条の最低高度制限規定、八十五条の粗暴な操縦の禁止規定、九十一条の横転や宙返りなど曲技飛行等の禁止規定、九十二条の航空機の姿勢を頻繁に変更する飛行など航空交通の安全を阻害するおそれのある飛行の原則禁止の規定が適用されている。ところが、米軍は航空法特例法によって、これらの規定は全部除外されている。特例法によって除外した地位協定上の根拠はなにか。
四 訓練の事前通知、被害補償について
 (1) ローバー司令官は、先に述べた記者会見で「これからは地元の三沢防衛施設事務所などを通じ事前に連絡したい」と述べ、低空訓練の事前通知を約束した。しかし、地元自治体への事前通知は行われていない。防衛施設庁、外務省にその後事前の連絡はあったのか。連絡があったのであればその年月日、内容を示していただきたい。
 (2) 米軍F16低空訓練による衝撃音等の苦情、事故の状況、被害補償の状況について、その件数、内容を明らかにされたい。
     また、未解決の被害補償についてどのようにするのか。
五 F16の撤去、低空飛行訓練の中止について
 (1) 昨年の衆議院予算委員会で、「米軍は全く自由に飛行訓練を行ってよいわけではなくて、わが国の公共の安全に妥当な配慮を払って活動すべきものである」と外務省は答弁した。北海道や札幌防衛施設局が、人口密集地帯や放牧地を避けるよう申入れを行ってきたが、それすら守られていない。
     米軍機の超低空飛行の危険性、爆音の被害に抗議して秋田県では六四市町村のうち六〇市町村が、北海道では二〇の市町村が低空飛行訓練反対の決議、意見書等を議決している。多数の人命にかかわる重大な事故が発生する前に、米軍に対して低空飛行訓練の即時中止と三沢基地のF16撤去を要求すべきであると考えるがどうか。

 右質問する。





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