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平成元年十月二十三日提出
質問第四号

 有害・医療等の廃棄物の適正処理に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年十月二十三日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 田村 元 殿




有害・医療等の廃棄物の適正処理に関する質問主意書


 最近、千葉県内や埼玉県内で処理しきれないごみを青森県まで運んでいたことがわかり、問題になっている。また、有害廃棄物が適正処理されないままドラム缶づめで福島県内に不法投棄されたり、大量の医療廃棄物の処理を取扱い許可のない処理業者に委託した福岡県内の病院が摘発されるなど、ごみ問題が深刻になっている。
 有害廃棄物の排出量は、通産省の資料によると年間約八十五万トンで、うち約五十四万トンが事業者や処理業者によって減容化され、約十一万トンを再生利用、約十九万トンを埋立処分、約千四百トンを海洋投入処分される。しかし、今後とも生産・経済活動の進展の中で、合成化学物質等を含む廃棄物がこれまで以上に排出される可能性がある。環境庁の「有害廃棄物対策研究会中間報告」では、「有害化学物質の環境への排出ルートとしての廃棄物対策の重要性が増している」と指摘されている。
 医療廃棄物の排出量は、関係者によると一日約二百七十二万トンと推計され、そのうち約百六十三万トンを一般廃棄物、約百九万トンを産業廃棄物として処理されているとみている。しかし、医療施設から発生する医療廃棄物は、B型肝炎等ウイルス性疾患による二次感染を防止するため、注射器、検体容器等に使い捨てタイプが普及し、発生量も増大している。六十三年度から厚生省が適正処理の検討を始めている。総務庁もまた、「医療廃棄物の処理に関する地方監察」を行い、「病院等における医療廃棄物の管理体制の確立」等の改善意見を提起している。
 また、建設残土の発生量は、首都圏(一都三県)で五千二百万立方メートルに達し、三八・二%を内陸処分地、三二・八%を海面埋立地、一三・八%を工事現場に処分している。しかし、オフィス床の需要増等による工事量の増加、建築物の地下空間の利用促進に伴い建築工事からの発生量が増加している。建設省の「総合的建設残土対策研究会中間報告」では、「長期的視点にたって、首都圏をこえる広域的、計画的な残土利用策についても検討する」としている。
 八九年の「警察白書」によると、廃棄物処理法違反の態様別検挙状況は、総件数三、一六八件のうち、不法投棄が二、二五五件、委託基準違反が六二九件、無許可処理業が二五四件などとなっている。また、その「警察白書」では、不法投棄の五九・五%が山林、原野に投棄されたことを示すとともに、「大都市圏を中心として、建設工事及び解体工事に伴って生じた建設廃材や木くず等の産業廃棄物の大規模な不法処分事犯が目立った」と指摘している。
 今日、有害・医療等の廃棄物の不法投棄など深刻なごみ問題を引き起こしている根本原因は、大企業の利潤追求を第一義とする資源の大量消費・浪費政策の推進にある。さらに政府が、「民活」路線による都市計画や建築規制の緩和など大企業本位の都市づくりや公共事業を進め、廃棄物を増大させる一方、有害廃棄物の排出事業者責任の明確化や建設残土の処理規制など廃棄物処理の抜本的な対策を怠っていることである。
 私は、昨年十二月に「建設残土及び廃棄物の処理に関する質問主意書」を提出した。その際も述べているが、国は産業廃棄物の不法投棄や不適正な処理から国民の生活環境を保全するため、不法投棄に対する行政措置(現状回復命令等)、処理業者の許可要件、排出事業者の責任の明確化、汚染された工場敷地内土壌の適正処分、最終処分場の基準の見直し(止水工事等)等の法的整備を早急に図るよう強く要請している。
 有害・医療等の廃棄物の不法投棄や不適正処理による地下水汚染や悪臭等地域住民の生活及び自然環境の破壊から国民生活を守るため、有害・医療等の廃棄物の適正処理対策は、ますます緊急を要すると考える。
 従って、改めて次の事項について質問する。

一 有害廃棄物の適正処理について
  今年八月、福島県いわき市内の旧炭鉱の廃坑から大量の廃油の不法投棄が発見された。いわき市内では昨年にも、牧場跡に大量の廃油入りドラム缶が不法投棄された。いずれも首都圏から運び込まれた有害物質を含んだ産業廃棄物である。排出企業から処理能力以上の廃棄物を受託した中間処理業者は、運搬及び処分の許可を得ていない業者に違法な委託を行い不法投棄させていた。トリクロロエチレン、鉛、銅、亜鉛などの有害物質を含んだ廃油は、廃坑からあふれ出し、下流の水田約二・二ヘクタールに被害を与えるとともに、地下水や土壌を汚染している。従って、
 1 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が規定している「一般廃棄物」の中に「有害一般廃棄物」の規定を新設し、廃棄する場合には有害廃棄物であることを表示するとともに、地方自治体が指示する分別排出に従うことを義務づけるべきではないか。
 2 産業廃棄物の処理は、法で「事業者は、廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と定めているが、事業者が行う有害廃棄物の処理実績をみると六割程度に止まっている。事業者が、企業責任で有害廃棄物の無排出化のための技術開発及び施設の整備、有害廃棄物の減量及び濃縮化等を実行するよう法的に義務づけるべきではないか。
 3 排出事業者は、廃棄物を許可を受けた処理業者に委託基準に従って委託した後、その廃棄物がどう処理されようといっさい責任を問われない。このことが、不法投棄を引き起こす根本的な問題である。排出事業者の処理責任が原則であることからして、廃棄物が最終処理されるまでの責任を明文化し、違反行為に対する罰則規定を強化するなど委託基準の見直しをすべきではないか。
   また、今年十月から試行している「産業廃棄物処理におけるマニフェストシステム(積荷目録制)」は、米国で実施しているように、その運用と報告を義務づけ、違反行為に対しては罰則を適用するなどして、不法投棄の防止及び廃棄物の不適正処理の防止の実効をあげるべきではないか。
 4 処理業者の中には、処理施設の費用がかさむなどから、低料金で処理能力以上の廃棄物を受託しているところがある。不法投棄や不適正処理を防止するため、処理能力以上の受託を規制することや適格性の厳格な審査体制など、処理業者の許可要件に関する法的整備をすべきではないか。
 5 有害廃棄物の埋立処分は、重大な地下水汚染の可能性を有していることから、PCB等の有害廃棄物の埋立処分の禁止又は制限、二重ライナーと浸出液収集システムの設置、漏洩検知システム及び埋立の立地規制など有害廃棄物の処分の基準及び最終処分場の技術上の基準を充実強化すべきではないか。
 6 不法投棄に対して、県及び所轄保健所が現状回復命令等の行政措置が的確に実施できるような法的整備と指導監視体制の強化のための援助措置を早急に図るべきではないか。
 7 不法投棄による有害廃棄物の除去処理と被害者の救済には、かなりの費用を伴うが、処理業者の大多数が中小・零細業者であったり、いわき市の処理業者のように事件後事実上倒産して対応が困難な場合もある。排出事業者の救済責任を明確にし、完全な救済措置を早急に図るべきではないか。
   米国では、有害物質に係る緊急な措置やいままで規制されてこなかった有害廃棄物埋立跡地に対策がとれるよう、必要な権限と基金を付与する総合環境措置・補償・債務法(スーパーファンド法)を制定している。有害廃棄物による土壌及び地下水汚染を引き起こし、人の健康が実際に脅かされ、またその可能性がある場合のため基金を創設し、有害物質の除去、被害の補償等が長期的に措置されるようにすべきではないか。
二 医療廃棄物の適正処理について
  今年五月に福岡県内で、産業廃棄物の保管や処理、一般廃棄物の取扱い許可を持たない産業廃棄物処理業者に、大量の医療廃棄物の処理を委託していた医療法人が摘発を受けた。この事件をきっかけに、総務庁九州管区行政監察局が福岡県内の二十の医療施設、十三の廃棄物処理業者を対象に実態調査を行った。その結果、@使用済み注射器、点滴針を堅牢な容器に入れず、ビニール袋等に入れて排出しているなど使用済み注射器等の管理、廃棄に適切を欠くものがみられた、A産業廃棄物の収集運搬を無許可業者に委託しているなど産業廃棄物の保管、処理に適切を欠くものがみられた、B廃掃法の規定による帳簿の整備や変更届の提出が履行されていないなど適切を欠くものがみられたとしている。
  また、昨年八月、四国行政監察支局は香川県内の十六の病院、二の衛生検査所、十二の処理業者について実態調査を行っている。その結果、@最終保管場所において、使用済みの注射針を堅牢とは認められない容器に入れるなど保管方法について改善を要すると認められるところ七病院、レントゲン廃液を合併処理浄化槽に流入させているなどの処理方法が不適切となっているところ五病院、産業廃棄物処理業の許可を受けていない処理業者に注射針等の処理を委託するなど処理業者の選定が不適切となっているところ七病院、A許可を受けずに営業を行っている処理業者が二業者、許可の範囲を超えて営業を行っている処理業者が三業者、産業廃棄物を一般廃棄物の最終処分場に搬入しているもの四業者となっている。従って、
 1 総務庁の実態調査でも明らかなように、厚生省が六十二年に医療関係廃棄物の適正処理について指導した後も、医療施設では、使用済み注射針等の管理、廃棄に適切を欠き、無許可業者に委託するなどの廃棄物の保管、処理に適切を欠いている。医療廃棄物の処理の実態がほとんど分かっていない現在、医療廃棄物の種類と量、分別保管及び処理処分の状況、処理業者の処理状況等の全国的な実態調査を実施すべきではないか。
 2 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が規定している「一般廃棄物」の中に「医療一般廃棄物」の規定を新設し、廃棄する場合には地方自治体が指示する分別排出に従うことを義務づけるべきではないか。
   また、医療機器メーカーなどに有害廃棄物、廃プラスチック等の引き取り義務を課し、むだなごみを出さない合理的な製品の研究開発を進めさせるべきではないか。
 3 人に感染の恐れのある廃棄物は決して院外に排出してはならない。とりわけ、有害廃棄物、血液、血餅、滅菌廃プラスチック等を院外に排出しないことである。院内で焼却可能な廃棄物は焼却し、焼却できない廃棄物は分別保管の後適正に処理することである。しかし、医療廃棄物の適正処理のためのマニュアルを策定している医療施設はほとんどなく、それが使用済み注射針による事故などを発生させている。改めて使用済み注射針の適正処理を医療機関に指導するとともに、医療廃棄物の処理に係るガイドラインを早急に策定し、病院等における医療廃棄物の管理体制を確立すべきではないか。
 4 医療廃棄物が一般廃棄物に混入して処理されているのは、医療廃棄物を専門に取り扱っている処理業者が少なく、一般・産業の両方の許可を得ている産廃業者が医療廃棄物を事業系一般廃棄物の処理ルートにのせて処理しているからである。従って、処理業者に対して自ら焼却処理施設を設置することや許可されている焼却処理施設を受入先として確保するなど処理業者の許可要件の見直しを図るべきではないか。また、許可を受けずに営業を行っている処理業者の排除や許可の範囲を超えて営業を行っている処理業者の規制など不法投棄を未然に防止する措置を図るべきではないか。
 5 排出事業者の処理責任の原則から、焼却処理施設など適正処理体制を確保する責務があり、総合病院等には医療施設内に中間処理施設(焼却、破砕、無害化処理等の施設)の設置を義務づけ、医院等の小規模医療施設には、共同管理の中間処理施設の設置を指導するとともに、中間処理施設の技術的基準を建築基準法等で定めるべきではないか。
   中間処理施設の設置の義務づけに当たっては、一定程度の基準以上の施設に対して、建設費補助又は低利融資の制度を図るべきではないか。
 6 行政監察局の実態調査からも、産業廃棄物処理業者の許可を受けていない処理業者に廃棄物を委託する医療施設がかなり多いことが明らかである。従って、医療施設に対して、法の委託基準を遵守するよう改めて指導するとともに、処理業者まかせにせず、業者の許可内容の確認・処理・処分状況の把握など排出事業者としての責任を明文化し、違反行為に対する罰則規定を強化するなど委託基準の見直しをすべきではないか。
 7 使用済み注射針によるB型肝炎の医療従事者への二次感染や廃棄物収集職員への感染が大きな問題となっている。現在、公的医療機関の職員に対するB型肝炎感染防止対策としてのワクチン及びグロブミンの投与は、公費負担となっているが、民間医療機関及び地方自治体によっては経費負担の問題から実施していない状況がある。院内感染防止及び医療廃棄物適正処理の対策上からも、感染危険度の高い医療従事者と廃棄物収集職員に対して、感染防止措置を講ずるよう改めて指導すべきではないか。
三 建設残土の適正処理について
  今年四月、東京都は「東京都における建設残土対策について」と「建設残土の再利用促進調査」の報告書をとりまとめた。また、首都圏廃棄物対策協議会が六月、「首都圏における一般廃棄物(ごみ)処理の長期的な見通しに関する調査結果について」を公表した。これら二つの報告書をみると、羽田沖埋立地が一九九〇年に埋立が完了、また中央防波堤外側埋立地が九五年度まで廃棄物等の処分ができるかどうか危惧されていることから、中央防波堤沖の検疫錨地付近と葛西沖に新たな処分場を確保するとともに、首都圏からあふれでるごみ処理を他県に求める以外にないことを明らかにしている。建設省の「総合的建設残土対策研究会」中問報告でも、「臨海部における人工バリア、内陸部におけるスーパー堤防等の既存の建設事業、谷地等の埋立事業」に残土を利用するとともに、「長期的視点に立って、首都圏をこえる広域的、計画的な残土利用策についても検討する」としている。
  報告書は今後、広域的な処分の検討が必要としているが、実際はすでに広域的に処分され深刻なごみ問題を引き起こしている。首都圏の発生土量の内陸及び埋立の処分地は、六十二年度の東京都及び区市町村の発注工事残土の場合、東京都下四六・九%、他県五三・一%となっている。建設残土の処分は、建設事業の拡大とともに大都市周辺への依存がますます高まり、優良な農地及び林地つぶしによる自然環境破壊や建設廃材等の産業廃棄物を混入して処分する不法投棄等の社会問題となっている。従って、
 1 内陸地処分及び埋立処分によって、優良な農地及び林地つぶしや地下水等の水質・環境汚染を引き起こしている実態を全国的に調査し、河川の形状変更や泥の流出等が生じている箇所は、早急に現状回復等の措置を図るべきではないか。なお、林地については、知事許可の一ヘクタール以上と無許可の一ヘクタール以下を分けて調査すること。
 2 優良な農地及び林地や水源涵養地を保護するため、処理施設の立地規制、地質・地形等の環境アセスメント、住民の同意義務と立入検査権等の法的整備を図るべきではないか。
 3 建設産業の活動によって発生する建設残土の処理については、生活及び自然環境の保全上、新たな法的規制及びガイドラインの策定が早急に図られるべきではないか。
   とりわけ、ガイドラインの策定に当たっては、企業の排出者責任による建設残土の中間処理と再利用及び減量化を義務づけ、残土と汚泥の基準、土質選定基準、施工管理基準の設定に際して、生活・自然環境への考慮が欠けるものであってはならないがどうか。
 4 国等の公共工事は指定処分方式が原則となっているが、一定程度規模以上の民間工事についても指定処分制の実施を原則にするよう処分基準の見直しをすべきではないか。
 5 建設残土による一ヘクタール以下の民有林の開発行為について、国は森林法の地域森林計画制度の運用で保全できるとしているが、実際はほとんど実効性がない。従って、適切な運用ができるように制度の見直しを図るか、それとも一ヘクタール未満の民有林を建設残土の投棄に対する環境の保全及び災害の防止を図るため、特別な規制措置を行うべきではないか。
 6 建設残土等の産業廃棄物による水質汚染や河川の水質汚濁が高まっている現在、国の責務として水源の清潔保持のため、水道法に水源保護地域の指定等の規制措置を設けるべきではないか。

 右質問する。





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