衆議院

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平成元年十二月十三日提出
質問第一七号

 高層建築物の消防防災対策に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年十二月十三日

提出者  寺前 巖  安藤 巖

          衆議院議長 田村 元 殿




高層建築物の消防防災対策に関する質問主意書


 「建築計画・システムともに防災上安全性の高い建物」と言われた東京江東区の超高層マンション「スカイシティ南砂」の二四階から八月二十四日、火災が発生した。幸いにも数名の負傷者と一室の焼失だけで大惨事にはいたらなかった。しかし、この事故は、高層マンションの防災対策上でいくつかの問題点を浮き彫りにした。それは、@初期消火活動や排煙設備の作動が遅れた、A百平方メートルの防火区画が突破され、玄関や附室の防火扉が区画として機能しなかった、B防火扉が機能せず、廊下やエレベーター附室に煙が侵入した、C複雑な建築構造から消防隊の有効な消火活動が遅れた等が指摘されている。
 自治省消防庁の資料によると、一一階以上の高層建築物は全国で九、二九八棟あり、うち共同住宅は五、二八八棟となっている。また、建設省の資料によると、一一階以上の住都公団の高層住宅は全国で九七〇棟となっている。これら一一階以上の高層建築物からの出火件数は、八七年の一年間で五〇〇件にのぼっている。
 今日、国民の生命と財産を大規模災害や高層マンション火災などの危険にさらしている原因は、国民の生命と財産に対して消防防災上の十分な安全性を担保しないまま、規制緩和と大都市集中政策を推し進めたところにある。
 消防審議会は十月二十四日、消防庁長官に対し、東京都の高層マンション火災、米国サンフランシスコのロマブリータ地震などが相次いで発生していることから、科学消防力や震災対策の強化などに取り組むよう意見具申した。この意見の中で特に、「国においても、消防補助金の拡充に努めるなど、積極的な財政上の支援措置を講ずる必要がある」としたうえで、「高層建築物の増加等に対応するため、全国的に整備水準の低いはしご付消防自動車、化学消防自動車及び救助工作車の増強を図る」、「高層ビル火災等で極めて有効である、消防ヘリコプターの整備と活用を積極的に進める」ことなどを提起している。
 高層建築物の火災などから国民の生命と財産を守るための抜本的な消防防災対策は、緊急を要すると考える。
 従って、次の事項について質問する。

一 消防力の基準との対比における消防施設等の整備状況は八七年四月一日現在、はしご自動車六一・一%、化学消防ポンプ自動車五六・八%となっており、高層建築物の増加等に対応するためこれら整備の遅れた消防施設の増強を図るべきではないか。
  さらに、リゾート地域での高層建築物に対する消防体制が非常に遅れている。例えば、京都の宮津・与謝地方では、リゾート構想のなかで二〇階建ホテルなどが計画されているが、宮津・与謝消防事務組合にははしご自動車が一台もないという状況であり、リゾート地域での早急な整備を図る必要があるのではないか。
二 大規模災害や高層建築物火災などで救助活動に効果を発揮した消防ヘリコプターの増設を積極的に進めるとともに、今後ますます増加する超高層建築物に対して、ヘリポート設置を法的に義務付けるべきではないか。
三 「スカイシティ南砂」の火災のように、玄関扉や防火扉が防火区画としての信頼性が低かったことから、延焼遅延の機能をもった住宅用スプリンクラーの開発と普及が必要ではないか。当面、超高層住宅や高齢者住宅など危険性の高いところの設置を義務化すべきではないか。
四 「スカイシティ南砂」の連結送水管には常時水が入っておらず、消防車の到着と同時にブースターポンプ(加圧送水装置)で二四階まで水を押し上げた。送水時間が少なくてすむように、常時連結送水管に水を入れておくとともに、「高さ七〇メートル以上」の建築物に設置義務化されているブースターポンプの設置基準を厳しくし、高さ七〇メートル未満の建築物でも設置するようにすべきではないか。
五 ロマブリータ地震では、液状化等によって水道管も破裂し、地震対策用消防専用消火栓から水が出なかったと聞いている。我が国の消火栓は「つなぎの部分が不安」という消防関係者の指摘もあり、液状化危険地域での耐震性防火水槽の整備も遅れている。液状化に耐えうるような消火栓の補強、液状化危険地域での耐震性防火水槽の早急な整備が必要ではないか。
六 「スカイシティ南砂」の火災の場合、バルコニーが上階への延焼防止帯としての重要な役割を果たすとともに、ガラス類の落下防止や避難経路としての役割が明らかになった。しかし、高層住宅には、スパンドレル(腰壁)だけの棟もあり、今後高層住宅でのバルコニーの設置を義務化する必要があるのではないか。
七 「スカイシティ南砂」の火災では、防火扉が機能せず、廊下やエレベーター附室に煙が侵入したが、風圧には開かず、人間の力では開くというような防火扉の機能を改善する必要があるのではないか。
八 障害者、高齢者などの「災害弱者」の安全を確保するためには、これら「災害弱者」世帯の状況を十分把握して、緊急時に備えるとともに、共同住宅ではできるだけ低層階に入居できるよう指導すべきではないか。また、「災害弱者」のための通報、避難システムの設備や機器の開発や普及が必要ではないか。
九 超高層住宅になればなるほど、建築構造が複雑化し、消防消火活動が困難になっている。居住者に対して、バルコニーに避難の障害になる物を置かないなどの高層住宅の構造に相応した防災の周知徹底を図る必要があるのではないか。また、消防署に対しても、消防隊が迅速にアクセスできるように、管内の高層建築物について立入り調査等を行って、その構造や防火システムを十分に把握しておくとともに、複雑な高層建築物の消火訓練を十分に行えるような施設等を措置すべきではないか。
十 超高層建築物では、防災装備もより複雑化し、防火管理者が高度な専門性や判断力が求められる。現行の防火管理者教育や資格制度では不十分になってきており、より高度な専門性をもつ制度に見直すべきではないか。
十一 消防審議会の意見では「国においても、消防補助金の充実に努めるなど、積極的な財政上の支援措置を講ずる必要がある」と指摘されている。消防庁の予算は、八一年度予算をピークに毎年度削減され、八九年度には八一年度比で二九・八%減と落ち込み、最近の災害状況を踏まえた予算に程遠いものとなっている。大規模災害や都市化に対応できる消防体制・消防力を早急に整備するため、大幅な予算を確保すべきではないか。

 右質問する。



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