質問本文情報
平成二年十一月六日提出質問第七号
福島第二原発三号機原子炉再循環ポンプBの使用前検査に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成二年十一月六日
提出者 長谷百合子
衆議院議長 櫻内義雄 殿
福島第二原発三号機原子炉再循環ポンプBの使用前検査に関する質問主意書
一九九〇年一一月五日、一年一一ヵ月ぶりに調整運転を開始した福島第二原発三号機の再循環ポンプケーシングについて、すでに質問主意書を提出しているが、その後新たな知見を得、通産大臣による使用前検査の合格手続において、重大な違法性が認められるので、それについて質問する。
二 東京電力は、通産省告示第五〇一号「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準」(以下「技術基準告示」という。)第五条第一項第五号の放射線透過試験、超音波探傷試験をどちらも行わなかった理由として「通産省から指示されなかったから」としている。また、それを指示するかしないかは、通産省の裁量権の範囲であるとも答えている。この通産省の裁量権は、法、省令、告示のどこに規定されているのか。
三 仮に裁量権があったとして、ケーシングの損傷状態を推定し、試験を行う必要がないと判断するには、事故時にケーシングに加えられた衝撃を工学的に計算しなければいけない。事故時にケーシングに加えられた衝撃は一平方ミリ当たり最大何キログラムと解析されたのか。
四 ケーシングの材質であるSCS一六Aの最少降伏点は一平方ミリ当たり二一キログラムである。これを超える衝撃が加えられていれば、最低限でも金属内部に歪みが残されていると考えられる。歪みを残したままの再使用は、安全確保上問題があるのではないか。
五 そもそも今回の改造修理後、技術基準告示を満たすような放射線透過試験や超音波探傷試験は技術的に可能だったのか。放射線透過試験、超音波探傷試験それぞれについて説明をいただきたい。
六 ケーシングの設計上の最少肉厚九二ミリは、技術基準告示第七三条第二項に規定される計算上必要とされる最少肉厚七七・四ミリより一四・六ミリも厚く作られている。必要な肉厚と設計寸法がこれほど掛け離れている理由は何か。
七 九二ミリという最少肉厚は、技術基準告示第五条第一項第五号に合格できなかった場合に第七三条第二項に規定される計算上必要とされる最少肉厚九一・三ミリときわめて符合しているが、これはただの偶然か。
八 もともとケーシングは、技術基準告示を満たすような放射線透過試験や超音波探傷試験は、仮に行えても合格は出来ないのではないかという疑念を持つが、当該ケーシングは一度でもどちらかの試験に合格したことはあるのか。
九 その合格証明書は通産省に提出されているか。
一〇 その合格証明書は何年の何月何日に出されているか。試験の方法、試験の実施者、実施場所は何と記載されているか。
一一 技術基準告示第五条第一項第五号に規定する放射線透過試験、超音波探傷試験を行わなくてよいとする法的根拠、それが通産省の裁量権であるとした場合の判断の根拠となる工学的解析結果、このケーシングが技術基準告示第五条第一項第五号に規定する放射線透過試験もしくは超音波探傷試験に合格しているという証明、この三つが満たされなければ通産大臣がケーシングの使用前検査に下した合格の判断は違法となる。まず合格の判断を変更し、当該ケーシングについて十分な検査を行うか、思い切って交換という手段を講じるべきではないか。
右質問する。