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平成三年九月二十五日提出
質問第五号

歯科材料の製造認可基準と保険導入手続き及び補綴技術料に関する質問主意書

提出者  新村勝雄




歯科材料の製造認可基準と保険導入手続き及び補綴技術料に関する質問主意書


 人口の高齢化が進むなかで、国民の歯科医療要求はますます切実になっており、とりわけ高齢者においては義歯をはじめとする補綴物の需要が高まっている。政府・厚生省はこれらの補綴物の素材である歯科材料の安全性・有効性に細心の注意を払い、患者が安心して良質の歯科医療が受けられるよう努めなければならない。
 しかし、歯科材料については、昭和五十六年に突如保険に導入されたポリサルフォン義歯のごとく、製造の認可基準や保険導入の手続きが不明朗なものもあり、厚生省のたびたびの国会答弁などにも拘らず、歯科医療関係者の不信感は未だに根強いものがある。
 一方同義歯に比べて通常使用されるレジン義歯等の保険点数はあまりにも低く、採算割れといった現象もあるという。このため歯科医師は良心と経営の狭間で苦悩を深め、歯科技工士に至っては、将来展望が持てずに他業種に転職する者が相次ぐなど、ゆゆしき事態が進行している。
 これらは歯科医療関係者の問題にとどまらず、歯科医療の根本に係わる重大な問題である。政府は、厚生行政に対する信頼を回復し、歯科医療関係者が安心して働ける環境をつくり、もって国民歯科医療を充実させていく責務がある。
 以上の観点から、左記の点についてお答え願いたい。

一 中央薬事審議会の中にある歯科用調査会には、歯科材料の安全性・有効性を審査するためのどのような具体的審査基準があるのか。
二 歯科用調査会は中央薬事審議会の一専門部会であり自ずと権限が制約されると考えるが、歯科材料の場合はこの歯科用調査会だけで製造の承認をしている。中央薬事審議会の権限を無視するものであり、法的にも問題があるのではないか。
三 歯科材料の製造承認に当たっては専門学会への諮問を義務づけるべきと考えるがどうか。
四 昭和五十五年六月三十日付薬発第八五二号「医療用具の製造又は輸入の承認申請に際し添付すべき資料について」によると「承認申請時に添付すべき資料のうち主要な部分は原則として日本国内の専門の学会において発表され、又は学会誌若しくはこれに準ずる雑誌に掲載され、若しくは掲載されることが明らかなものでなければならない」とあるが、少なくとも学会誌等にも掲載されていない未発表のものについては申請自体を認めないなど厳格に処理すべきと考えるがどうか。
五 薬事法に定める医療用具の保険導入に際しては、その医療用具が臨床上安全かつ有効で、あまねく普及していることが最低条件と考えるがどうか。
六 昭和六十二年二月十九日付保発第九号「医療用具と体外診断薬の保険導入ルール」というものがあるが、これ以前にも保険導入のルールがあったのか。
七 また前記保発第九号によれば「審査の結果、保険診療上の有効性に関し明確な立証があったと認められない場合は、保険導入しない」とあるが、「明確な立証」とは具体的にどのような場合をさすのか。
 また、昭和五十六年六月に保険導入されたポリサルフォン義歯の場合は、当時のルールに照らして問題がなかったと言えるのか。
八 ポリサルフォン義歯の保険導入に当たって、厚生省は「学術団体である日本歯科医師会と相談して決めた」と答弁し、また日本歯科医師会が専門学会である日本補綴歯科学会に事前に諮問しておらず、同学会が導入に疑問を抱いていることに関しては「日本歯科医師会の内部問題」と答弁してきた。しかし、導入に当たっては入念な審査を行うのが当然であり、専門学会への諮問を怠った厚生省の責任は重大である。この点についての見解はどうか。
 また、今後もこうした方式で新素材を保険導入することはあるのか。
九 昭和五十六年六月から平成二年までのポリサルフォン義歯の総請求件数を年度別又は年次別に明らかにされたい。またレジン義歯の総請求件数についても同様に明らかにされたい。
十 現在全国で歯科技工所は何件あるのか。そのうちスルフォン義歯を扱う歯科技工所は何件あり、全国的に見てどのような分布になっているのか。
十一 現在零細歯科技工所が経営困難に陥り、廃業や転職が進行している事実はご存じか。その一方スルフォン義歯はある程度の設備投資が必要と言われ、その結果歯科技工所間の格差が進み、零細技工所は一層厳しい状況に追いやられることも予想される。スルフォン義歯の設備投資の金額及び零細技工所の将来見通しについての認識を明らかにされたい。
十二 厚生省はスルフォン義歯を導入する際、従来のアクリルレジン義歯に比べ技工料金が高いので点数を二倍にしたと説明しているが、一般に義歯の料金は技工料金を目安にして決めているとの理解でよいか。
十三 技術の進歩及び普及等により将来スルフォン義歯の技工料金が下がった場合は、保険点数を下げることもありうるのか。
十四 老人が医療を受ける場合、まず通院そのものが大変ということがある。歯科については義歯の修理やリベースといった治療のため何回も足を運ばざるを得ず、かなりの負担になっている。したがってなるべく簡便に修理やリベースができる義歯床が望ましいが、そうなるとスルフォン義歯よりもアクリルレジン義歯の方が操作性に優れており、スルフォン義歯自体の有用性が問われてくる。どう考えるか。
十五 千葉県の歯科医師が行った技工料金の調査によると、アクリルレジン義歯とりわけ部分床義歯については、歯科医師が保険請求できる値段よりも技工料金が高く、いわゆる逆ざやになっている。厚生省としてはこうした実態を把握しているか。
十六 適応症が限定され頻度の少ないスルフォン義歯には高い点数、日常頻度の高いアクリルレジン義歯は低い点数が付けられているが、これでは患者のためというより医療費削減のためと言われても仕方ないのではないか。なぜ、使用頻度の少ないスルフォン義歯に固執されるのか、その真意を明らかにされたい。
十七 また、これらのアクリルレジン義歯を始めとする補綴の点数が低く押さえられていることから、歯科医師はもとより、義歯等の発注を受ける歯科技工所の経営も厳しくなっており、歯科技工士に至っては廃業や転職も相次いでいるという。今後高齢化社会が急速に進み、義歯等の補綴物の需要がますます高まるなかでこうした現状は一刻も早く改善されなければならないと考える。
 次回診療報酬の改定に当たって中医協に対し補綴の技術科を適正に評価するよう厚生省が責任をもって諮問すべきと考えるが、その意思はあるか。

 右質問する。





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