質問本文情報
平成四年十一月九日提出質問第三号
渡邉廣康・東京佐川急便元社長から金丸信前衆議院議員への五億円献金に係る政治資金規正法違反事件に関する質問主意書
提出者 松浦利尚
渡邉廣康・東京佐川急便元社長から金丸信前衆議院議員への五億円献金に係る政治資金規正法違反事件に関する質問主意書
渡邉廣康・東京佐川急便元社長から金丸信前衆議院議員への五億円献金に係る政治資金規正法違反事件は、去る九月二十五日、金丸氏が上申書を東京地検に提出、これを受けて、九月二十八日、東京地検が略式起訴を行い、翌九月二十九日、東京簡裁が罰金二十万円の略式命令を出したが、検察、金丸氏の双方より十月十三日までに正式裁判の請求がなかったため、十月十四日、金丸氏の有罪が確定したところである。
しかし、本事件の捜査、処理にあたった検察の姿勢に対しては国民世論は言うに及ばず、札幌高検検事長をはじめとして、検察内部からも批判と疑問の声が公然と上がっている状況である。本来、厳正公平、不偏不党であるべき検察が、今回、金丸氏に対してとった一連の措置は、我が国憲法が謳っている法の下の平等の原則を犯し、法治国家の根幹を揺るがすもので断じて看過できないものである。また、社会の悪と不正を剔抉し、正義をまもる最後の砦として、検察に寄せる国民の期待と信頼を裏切ったことは、検察の存在意義そのものすら否定されかねないものであり、その責任は極めて大きいと言わざるをえない。
検察は、この際、法と捜査に対する国民の信頼を速やかに回復するためにも、その批判と疑問にこたえる義務と責任があると思われる。
よって、次の事項について答弁を求める。
二 献金された五億円の趣旨、背景及び使途等事件の全容を解明するためには、金丸氏本人に対する事情聴取が不可欠だったにもかかわらず、上申書の提出のみで略式起訴を行った経緯とその理由を明らかにされたい。
三 刑事訴訟法第四百六十一条の二第一項には「検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確かめなければならない。」と略式手続の説明等を規定しているが、本事件においては、金丸氏に対する略式手続の説明告知及び略式手続によることについての異議の有無の確認が、正規の手続きに基づいて行われたかどうか。
四 去る十月十六日、ジャーナリズム研究家・中村泰次氏が刑事訴訟法第五十三条第一項本文の「何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。」との規定に基づき本事件の訴訟記録の公開を求めたが、検察によりこれを拒否されたところである。同条但し書きの「訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。」との規定によると思われるが、拒否した理由を具体的に明らかにされたい。
五 刑事訴訟法第五十三条第一項本文は、被告事件終結後の訴訟記録の公開を規定しているが、国政調査権の発動により、本事件に関する訴訟記録の提出要求があった場合には、これに応じなければならないと思われるがどうか。
また、訴訟記録の提出ができないとすれば、国政調査権に基づく提出要求を拒否するに足るだけの「訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるとき」とはいかなる場合を言うのか具体的に明らかにされたい。
右質問する。