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平成四年十二月七日提出
質問第一五号

被疑者との接見交通から見た狭山事件の問題点に関する質問主意書

提出者  和田貞夫




被疑者との接見交通から見た狭山事件の問題点に関する質問主意書


 被疑者との接見交通権は、人権を守るうえで重要な権利であり、被疑者と弁護人との接見は基本的に認められなければならない。しかし、実際には接見が不当に制限、禁止されている例も多く、国家賠償請求事件となっている場合もある。

一 検察官が意図的に被疑者と弁護人や家族との接見を妨害することは許されないが、被疑者と弁護人等との接見交通について現状はどうなっているか。
二 日本弁護士連合会などの指摘によれば、検察官が取り調べ中あるいは取り調べ予定を理由に、検察官が接見時間を『十五分間』と指定するケースが多いと聞いているが、それが事実であるならば接見時間は短すぎるのではないか。とくに、逮捕直後の接見の場合は極めて不十分な接見時間と言わざるをえないと思うがどうか。現状として、検察官が接見時間を指定するとき、どれぐらいとなっているか。
三 日本弁護士連合会の『国際人権(自由権)規約の日本における実施状況に関する報告 ― その1ー』(一九九一年十一月)によれば、「被疑者と弁護人との接見は、検察官が管理しており、刑事訴訟法39条3項の指定権を行使するかどうかについての検察官の判断があるまでは常に接見ができない状態にあり、また、取調中であるか取調予定がある場合(取調予定がない場合であっても、取調予定が口実にされることもある)には、そのことを理由に接見が15〜20分に制限されている実情にある。」このような接見妨害は、国際人権B規約14条3項(b)ならびに(d)に違反していると考えられるがどうか。
四 一九八五年四月におきたお茶の水女子大寮での強姦未遂事件では、同年五月二十八日にAさんが別件逮捕され、七月十七日に釈放されたが同日、警察はこの強姦未遂事件で再逮捕、弁護人が七月二十九日にA氏との接見を検察官に申し出たが、引き当たり捜査の予定があることを理由に接見が拒否され、さらに、同三十日、三十一日には、取り調べ予定を理由に接見を拒否された。この接見禁止中の七月三十一日に警察官が強要した自白に基づいてA氏は起訴されたが、裁判所は一九八七年十二月、「被告人が本件犯行の犯人であろうはずはなく、本件はずさん極まる見込捜査により公訴事実に証明がないことに帰したものである」と無罪判決を言い渡した。これは、検察官の接見妨害が冤罪をひきおこした要因と考えられるが、これについてどう考えるか。
五 狭山事件の捜査における弁護人との接見状況について尋ねる。
  狭山事件では、捜査に行き詰まった警察が、被差別部落に見込み捜査をかけ、一九六三年五月二十三日に、石川一雄氏を別件逮捕、さらに、六月十七日に保釈と言われ、狭山署から出ようとするときに、署内で本件での第二次逮捕がなされている。当時の石川氏にとっては、狭山警察署で接見した弁護士から、勾留理由開示公判がある旨知らされていたのに、いっこうに裁判は開かれず、保釈になったと思ったとたんに、狭山署内で再逮捕されるなど、通常、誰であっても精神的に大きなショックを受けるやり方であることは容易に想像される。ところが、この再逮捕後の石川一雄氏と弁護人との接見状況を見ると、公判での検察官、弁護人の供述によれば、
六月 十七日 再逮捕。接見できず
    (どこに留置されているかも弁護人には知らされなかった)
  十八日 二十分間
  十九日 五分間
  二十日 五分間
  二十一日〜 二十五日 接見禁止
  二十六日 十五分間
  となっている。
  狭山事件の第二審第十七回公判廷で、事件の取り調べにあたった原正検察官は、『毎日面会されたのでは捜査上困るから』『接見を指定した』と述べ、さらに、六月二十一日から二十五日まで一週間近く接見を禁止したのは『何か理由があったのではないか』と尋問され、『別にありません』と法廷で証言している。このような接見禁止はあまりに不当なものと思うが、どう考えるか。
六 この事件では、裁判でその信用性、任意性が問われている自白調書がこの接見禁止期間すなわち、六月二十三日に単独犯行自白が始まり、二十四日、二十五日、二十六日に、争点となっている自白調書が集中してとられている。
  とくに、重要な物証が発見される契機になった自白調書が、それぞれ、六月二十一日に鞄、六月二十四日に万年筆・腕時計、というように、いずれも接見禁止中の自白調書によって、物証が発見され、これがいわゆる『秘密の暴露』とされているのである。このような接見禁止のもとでの自白という事態は前記、お茶の水女子大寮事件と酷似している。
  これをもって、自白の信用性を担保する『秘密の暴露』と言えるか。
  一般的に、接見禁止中の自白調書の証拠能力についてどう考えるか。
七 最高裁は、一九七八年七月十日の判決において、「弁護人等と被疑者との接見は、原則として何時でも接見の機会を与えなければならない」と判示し、この主旨から、不当に接見禁止が行われたことに対する国家賠償を命じる判例がいくつも出されている。このような観点からも、前記、狭山事件捜査段階での接見指定、接見禁止は不当なものと考えるがどうか。
八 国際人権B規約14条3項(b)は「防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡すること」を権利として定めている。
  前記のような狭山事件の捜査段階での接見指定および接見禁止は、この規約に違反していると思われるが、どう考えるか。
九 前記国際人権B規約14条3項(b)および(d)にいう「弁護人を通じて防御する権利」「弁護人の援助を受ける権利」を具体化するものとして、密室で行われる取り調べを防御の側から規制する方策が各国で従来から論じられ、すでにイギリスやアメリカでは、取り調べへの弁護人の立会いやテープの設置が法律として確立している。とくに、取り調べへの弁護人の立会いは防御権として国際的にも承認されていると言え、わが国においても早急に保障する体制がとられるべきだと思うがどうか。

 右質問する。





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