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平成五年三月二十三日提出
質問第九号

リニアモーターカー山梨実験線に関する質問主意書

提出者  長谷百合子




リニアモーターカー山梨実験線に関する質問主意書


 一九九一年十月三日リニアモーターカーー宮崎実験線の実験用車両は全焼した。このことは、それ自体がリニアモーターカーの危険性を良くあらわしたものと思われるが、この原因についての調査報告の内容には不十分な点、また、不明な問題点が存在する。
 事故原因をはじめ電磁波を遮閉する方法や、不燃材についてなど、基本的なことがらを明らかにしないまま、新車両による実験、及び山梨実験線ルートのトンネル工事等を推し進めることは、予算の使い方においても、世論の理解を得るには問題が大きいのではないか。真に実現の可能性の高い計画であるのかどうか、山梨実験線ルートの沿線住民や地権者の方々をはじめ、広く国民全体の疑念が大きく沸き上がるところである。
 この疑念を晴らすため、明確に以下の質問に対する回答を求めたい。たとえ、研究中のものであろうと、技術的に専門分野に属するものであろうと、国会において決定し、予算を付けたものについては、国民に説明する義務がある。実験をする前に、リニアモーターカーに関するすべての情報を公開し誰でもが検討し議論しあえるようにすべきである。さもなければこの巨大なプロジェクトは莫大な国家予算の無駄使いになりかねない。

一 一九九一年十月三日のリニアモーターカー宮崎実験線での全焼事故の後、翌年三月二十五日に宮崎実験線車両火災対策委員会により作成された報告書によると、車両火災の概況、2、1概要(3)発生状況、の中で「十四時五九分、三名を車両に乗車させたまま、車上から常時監視を継続させつつ、設定速度三十キロメートル/時で回送が始められた。しかし、速度超過(一二二キロメートル/時)が生じたので、緊急停止させた。」とある。
 この設定速度の四倍を超える速さになったという事実は、言い替えれば「暴走」と見られるものである。
 @ この原因はなにか。
 A この点が不明であるということは、再度暴走の危険をはらんだままだということであり、リニアモーターカーの実現性は疑わしいということにならないか。
二 前回平成三年五月七日提出の質問第一三号の三の3の回答で「ボーリング調査は、トンネル区間の地点及び主な構造物の設置が予定される地点において四十二本実施された・・・」とあるが、
 @ そのボーリング調査の行われた一本一本の調査は何年何月何日であったか。
 A その柱状図は存在するのか。
 B このボーリング調査について現在まで資料が公開されていない理由はなにか。
三 電磁波の人体に対する影響について、リニア宮崎実験線では車内の床から二百ガウスの発生が報告されていたのであったが、山梨県のリニア推進局は、「遮閉材は既に完成した」と言っている。
 @ その遮閉材とは材料は何なのか。
 A また、どのような形状で車体に組み込むのか。
 B 床においての磁場が何ガウス以下なら遮閉したと考えるか。
 C そしてまた、電磁波を遮閉したという根拠となるデータを示して頂きたい。
 D リニアモーターカーから発生する変動磁場の生体に対する影響を把握しているか。
 E この変動磁場の発生が人体に悪影響を及ぼさないという証明が出来るか。
 F ドイツで作られたリニアモーターカーは電磁波が外に出ない形になっているが日本のものは外に向かってむき出しになっている。この考え方の違いは何か。
四 リニアモーターカーや高圧送電線の発生する電磁波が人体にどのような影響を及ぼすかについて、
 @ 現在までどのような調査がなされているか。
 A 慈恵医大並びに山梨県が依頼し山梨医大にて進められているという調査を把握しているか。
 B この研究調査の現段階について報告をお願いしたい。
 C また、柏崎原発から大月変電所に至る初めての超高圧百万ボルトの送電線に関して、その電磁波が生態に与える影響について、安全性の基準をどの様に設定しているのか。
 D その高圧線からの距離ごとの電磁波の測定をしているか。
 E 高圧線により生じる電磁気がゼロになるには何メートル必要か。
 F 鉄塔直下からEの位置までの間を刻むそれぞれの距離の磁場は何ガウスか。
 G 以上のデータは天候、気温、湿度、通電量等の条件はどうであったか。
五 リニアモーターカー山梨実験線においては、実用化にとって不可欠であるという、いくつかの、実験が行われると聞いている。以下の事項のそれぞれについてどう判断するか。
 @ 変電所渡りの実験、すなわち、運転手のいない自動運転のリニアを一つの変電所が三十〜五十km区間制御し、次の変電所がこれを引き継いで走行する必要のために、車両の位置、速度を正確に把握し、電流の波形・周波数・位相をぴったり合わせなければならない、という実験が予定されていると聞く。この実験が成功しなかった場合は実用化出来ないと判断するか。
 A トンネル突入時の衝撃が大きく、騒音について、何ホン以上の音が出たら実用化出来ないと判断するか。
 B 電磁波の人体に対する悪影響について、TIME誌一九九二年十月二十六日号は、スウェーデンのカロリンス研究所の高圧電線付近の五十万人を対象にした調査研究を掲載している。それによると、白血病の発生率が一ミリ・ガウス以下の電磁界を常に受けている子供に対して、二ミリ・ガウスの電磁界にさらされている子供はその危険性が三倍になり、三ミリ・ガウスの電磁界にさらされている子供は、その危険性が四倍になると報告している。
 この調査研究に基づけば二ミリ・ガウス以上の電磁波は人体に悪影響があると判断出来ると思われるが、リニアモーターカー山梨実験線がこれ以上の電磁波を沿線に発生させるとするならば、悪影響は避けられない。その場合でも実用化しうるか。
 C 走行中、超電導磁石が突然磁力を失ってしまうというクエンチ現象が何時間に一回に収まれば実用化出来ると判断するか。
 D 安全性を追求した結果、車体が重くなり、使用電力が増大して、新幹線の三倍では収まらなくなってしまった場合でも実用可能と考えるか。
 E スレ違い時、スピードを出すことが危険であることが判明した場合、いかなる方法で対処していくことが出来るか。
六 リニアモーターカー山梨実験線のトンネル工事にさいして、現在までに使用した地盤凝固剤の薬品名、そして、今後使用を予定している薬品は何という名か。
七 宮崎実験線での炎上事故により、山梨県民特に山梨実験線沿線住民のリニアモーターカーに対する不安は大幅に増大した。再検討がなされて当然のことと考えられる。
 @ 利便性のみを宣伝するのではなく、その問題点も正確に住民に伝えた上で改めて住民に意志を問うべきであると考えられるが、そのつもりはないのか。
 A 地権者及び沿線住民の考えを運輸省が直接聞く場を作る考えはないか。
 B リニア実験線は運輸省の「超電導磁気浮上式鉄道検討委員会」が山梨を実験線建設地に選定したが、山梨における実験線沿線住民の反対意見を全く聞くことなく決定がなされた。その後、沿線住民はリニアモーターカーの危険性や騒音、電磁波公害などの事実を知るに及び、一九九一年十一月二十一日放送のNHKの番組「90年代山梨の選択」の世論調査においても五十二%が建設再検討を求めている。沿線の反対住民代表を右検討委員会に参加させて意見を聞く気はないか。
 C 宮崎実験線による実験は車両炎上事故により大幅に遅れてしまった。この期間に積み重ねられ、本来なら次の実験前に揃うべき必要なデータも出ないうちに、山梨に実験線を建設するのは実用化出来ることの根拠を欠いている。すなわち、この一年余りのブランクの時間は、山梨の建設を先に送り、宮崎実験線の安全性の確認と実験の成果を得てから次へ進むというステップを踏むべきであると思われるがその考えはないのか。
 D さらに、地元の根強い反対と費用の膨大さによって山梨実験線は距離を半分に短縮する計画であるという。このことによって実験内容はどの点が縮小したのか。
 E この短縮線で実用化に向けた本格的な実験が可能なのか。
 F また、今後事故等により、実験の継続さえ大いなる税金の無駄となることが判明する時、工事中止を決定するのはどの機関でどのような手続きによるのか。

 右質問する。





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