衆議院

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平成七年三月六日提出
質問第一号

低用量ピルに関する質問主意書

提出者  横光克彦




低用量ピルに関する質問主意書


 平成五年十月に「低用量ピルに関する質問主意書」を、一.中央薬事審議会に関する件、二.エイズと避妊に関する件、三.人工妊娠中絶に関する件、四.避妊としてのピルに関する件の四項目十五の質問を提出し、更に、昨年六月にも同様の質問を国会の予算委員会の第四分科会にて行っているが、当局からの回答はいずれも中央薬事審議会で慎重に審議を継続しており未だ結論に至っていないというものであった。
 平成四年三月の「エイズ蔓延を懸念して、ピル解禁を凍結!」との報道に接して以来、中央薬事審議会での審議内容の情報公開もなく、もはや三年を経過している。また、昨年、日本で開催された「国際エイズ会議」やカイロでの「国際人口開発会議」で得られた成果から考えるに「低用量ピル」の認可をこれ以上棚上げにするのは、我が国女性のリプロダクティブ・ヘルスの見地から幾多の問題を残すことになるので、対策は緊急を要すと考える。
 従って次の事項について更なる質問をする。

一 中央薬事審議会に関する件
 1 厚生省は経口避妊薬の医学的評価に関する研究班を設置し、「低用量ピルの有効性が確立されつつある現在では、これを導入することが国民保健上からも望ましい」として、「経口避妊薬の臨床評価法に関するガイドライン」を発表しているが、これはいつのことかを確認致したい。
 2 実際に、いつ臨床試験が開始され、どれくらいの規模で試験が行われ、いつ試験が終了して申請されたかを確認致したい。また、その申請会社は何社であったのか。
 3 低用量ピルについての中央薬事審議会(以下「審議会」という。)での審議が、いつから開始されたかを確認致したい。
 4 審議会で審議中ということであるが、その審議内容の情報の公開をここに求める。
   なぜなら、ピルの認可が遅れている理由として、「エイズ蔓延を懸念して」、「出生数の減少に拍車を掛ける恐れ」、「性のモラルの低下を懸念して」など様々な憶測が見られ、国民に正しい情報を提供し公正なる判断を仰く必要があると考える。
 5 平成五年五月十二日に、日本産科婦人科学会、日本母性保護産婦人科医会、日本家族計画協会、日本家族計画連盟の四団体から、厚生大臣に「ピルの早期認可を求めて」の要望書が提出され、「その趣旨を審議会に伝達している」との回答を得ているが、リプロダクティブ・ヘルスについての専門家の集まりである各団体に対し審議会はどのような回答をされたのか、その内容の公開を求める。
 6 本年二月六日付けの東京新聞夕刊に当局の森課長補佐が「新しい薬剤を出すのには臨床試験の成績だけではなく、エイズ問題など環境整備をしなければ出せない時代だ」とし「添付文書などでエイズ予防対策がクリアできれば」とコメントしているが、その意味するところはなにかを確認したい。
 7 医薬品としての有用性や安全性の評価はすでに終了し、「エイズ予防対策」が残された問題となっているのかを確認したい。
   この問題は「性」に関するものであり、国民に妙な誤解などを与えることにより間違った方向で論議される恐れがあるので、正しい明確な情報の公開が必要と考える。
二 エイズと避妊に関する件
 1 平成六年のエイズ患者を含むHIV感染者数(血液製剤による感染者を除く。)は四百三十五名と報告され前年に対して十九・五%の伸び率であり、特に日本人感染者の増加が著しい。中でも、男性の感染者数が全体の五十二%を占めている事実と日本人女性は九・七%であるものの前年に比べ五十五・六%と、その伸び率が最も高いことが注目に値する。この現象は男性が海外、もしくは国内で感染者との接触、そして日本人女性へとピンポン感染の図式を提示しているようにうかがえる。この点について女性側の見地からどのように考えるかを問いたい。
   いずれにしても、エイズ対策については決して予断の許すところではない。
 2 日本でもHIV感染者の妊娠・分娩が三十四例報告されており、そのうち母子感染が九例、二十六・五%の感染率である。
   母子感染率がおよそ三十%と知りながら母となるHIV感染女性の胎内に宿る生命への思いはいかなるものであろうか。
   信頼性の高い避妊法としてのピルを考慮する必要があるのではなかろうか。
 3 先般の当方からの「エイズと避妊は別問題ではないか」との質問に対し、当局は「避妊は性行為に関して行われるものであり、その方法が性行為感染症としての性格を持つエイズの予防と関連する面があると考えられる」と回答されているが、昨年の国際エイズ会議のサテライトシンポジュウムの「エイズ時代の家族計画 ― ピルか、コンドームか」においてピルは避妊方法の中で最も確実な手段であり、またコンドームはエイズ予防に欠かせないものとして「ピルも、コンドームも共に必要である」とのコンセンサスが得られたと聞く。
   この点についてどのように考えるのか。
 4 同シンポジュウムで、神奈川県のある医師が「性産業従事者の調査ではコンドームの使用率が昭和六十二年で僅か十%であったのが平成五年では九十一%と七年間で著しく上昇し、梅毒は百%、淋病は八十%と大きく減少している。このような現状を見るにピルの認可は絶対に避けるべき」との発言があった。これはエイズ対策がハイリスクグループに対する啓蒙の成果だと考えられる。しかしながら、「彼女らのピル服用率も四十%に上っている」という実態から性感染症と避妊は別問題として捉えている女性がいるという事実をどのように考えるか。

 エイズ予防と次に述べる人工妊娠中絶を回避する方法(避妊法)は問題として対策を講じる必要があると考えられる。
三 人工妊娠中絶に関する件
 1 昨年九月に開催された「国際人口開発会議」では、人工妊娠中絶是非論の渦巻く中でこの人口問題は女性のエンパワーメント(地位向上)の強化を通して、「いつ、何人の子どもを産むかの女性の自己決定権をまず担保しなければ人口の安定化につながらない」と結論付けられたものと考える。
   しかしながら、我が国女性のリプロダクティブ・ヘルスを考えるとき、世界の先進諸国を見ても決して人工妊娠中絶が少ない国とは言えない現状にある。
   平成五年の中絶件数は三十八万件であり、同年の出生数の百十九万人とこの中絶件数を合わせたものを全妊娠とすると、中絶の占める割合は二十五%で四分の一が望まない妊娠の帰結として中絶をしているのである。
   同様に平成二年時の各世代別全妊娠のうちの中絶の占める割合を見ると、四十歳以上では八十%以上が中絶を行っており、十歳代で六十五%、三十歳代後半で五十二%が中絶を行っている。
   また、毎日新聞社が昨年発表した「全国家族計画世論調査」の報告によると、既婚女性の二十五・九%が中絶を経験していると述べており、しかもその内二回以上の経験者は三十八・九%という驚くべき数値が示されている。
   このような実態に接するとき、現在我が国で行われている避妊法だけでは問題があるように思われるが、この点についてどのように考えるか。
 2 先の毎日新聞社の調査による「避妊法の実態」について見ると、既婚女性でコンドーム法が七十七・七%で、他の方法はすべて十%以下であった。未婚女性ではコンドーム法が九十二・七%と圧倒的にコンドームで避妊が行われている。次に、基礎体温法が十二・五%であり、他はすべて十%未満であり「避妊の選択肢」が局限されている実態が明らかにされている。
   先の当局の回答によると、「我が国においては、避妊法として、コンドーム、IUD、ペッサリー等が使用されているが、これらは適切に使用すれば、十分な避妊効果が得られるものと考えている」と述べているが、実態はコンドーム一辺倒のものである。
   更に、都内病院の産婦人科医・木村氏は「中絶実施女性の実態調査」の報告の中でコンドームで避妊をしていたつもりで失敗していたのが二人に一人の割合であったと指摘している。
   コンドームは男性の協力のもとで行う避妊法であり、その信頼性はピルの避妊効果に比べて二十〜百二十倍のリスクがあるという。この乖離幅は男性の協力度に左右されるとしている。この現状をどのように考えるか。
   女性が自ら行使し、失敗することなく行える確実な避妊法はなにか、当局の見解をうかがいたい。
 3 昭和六十三年の国連報告によると、現在、女性側の避妊法として不妊手術が二十六%、IUD(子宮内避妊用具)十九%、ピル十五%、男性側のものは不妊手術十%、コンドーム十%と報告されている。いずれにしても、避妊効果の高いもので女性自身による避妊法が主体となっている。
   一方、日本ではコンドームが八十%近くを占めている。この違いについてどのように考えるのか。
四 避妊としてのピルに関する件
 1 世界で信頼性の高い避妊法として九千万人以上の女性がピルを選択し服用している事実がある。日本では確実に避妊をしたいとしてホルモン量の多い治療用の配合剤で代用を余儀なくされている女性が二十万人いるという現実がある。有用性と安全性がすでに確認されたという「低用量ピル」は、エイズ問題のため、すでに三年間も棚上げされている。
   この事実についてどのように考えるか。
 2 いま、認可が待ち望まれている「低用量ピル」には、性感染症に起因するといわれる骨盤内感染症の予防効果、子宮体癌・卵巣癌の予防、良性乳腺腫瘍の予防や月経困難症の改善など女性のリプロダクティブ・ヘルスケアーにつながる避妊効果以外の副効用が多くあるといわれている。
   この点についてどのように考えるのか。
 3 ピルが認可されていない国は、以前は十一力国と報道されていたが、当方の調査では朝鮮民主主義人民共和国以外はすべてその使用が認められている。しかも、朝鮮民主主義人民共和国でも現在許可を検討しようとする動きがある。事実上、日本だけがピル未認可国となりつつある。
   この状況をどのように考えるか。
 4 我が国では、地球規模問題イニシアティブ(人口・エイズ)として、政府開発援助(ODA)総額三十億ドルを開発途上国に対して拠出するとのことであるが、人口問題の一環としてコンドームの供給が含まれているようである。現在、途上国でのピルの絶対数は明らかに不足しており、そのニーズはきわめて高い。ピル未認可の日本はそれを提供することができない国であることは、効果的な人口施策の推進援助に大きな弊害になると思われるがどうか。
 5 先に述べた毎日新聞社の調査から、ピルが認可されたら使用したいと考える女性が十二・八%であり、二年前の調査の六・九%から五・九ポイント上昇している事実がある。女性は、通常の生活におけるエイズ感染よりも、望まない妊娠の恐れを強く危惧しているのである。彼女らの「中絶はもうしたくないという切実な思いと願い」がこの数値に現れているようにうかがえる。男性には計りしれない、もっと身近な、より深刻な問題である。もしピルの認可が一日も早く、また一年でも早ければ、一年間におよそ四十万件の中絶を受ける女性の悲劇を少しでも防げたはずである。
   この点をどのように考えるか。

 女性のリプロダクティブ・ヘルスとは、「性感染症の恐れなしに性的関係を持ち、いつ、何人の子どもを産むかが自由に選択でき、妊娠と出産が安全に行え、しかもその子を健全で豊かな環境下で育むことができること」と言われている。
 我が国のリプロダクティブ・ヘルスに関連した問題は女性の立場から常に取り残されている。この「エイズとピルの問題」を通して多くの男性が目覚め、男性のエゴを押しつけるのではなく、男女の性差を理解し、女性の立場を考えエイズの問題のみならず豊かなる性の営みを論じるようにしなければならない。
 最後に、ヴァン・ウォルフレンの「人間を幸福にしない日本というシステム」(毎日新聞社発行)の一節を紹介する。「…欧米の女性解放において、単独の一要因としては、避妊用ピルが手軽に入手できるようになったことほど役だったことはない。これは広く認められているところだ。ピルのおかげで女性たちの人生が変わった。彼女たちの男性への経済的依存を大きく軽減することができたからである。・・・・」
 政府は女性のリプロダクティブ・ヘルスの選択の自由を奪ってはならない。
 そうすることにより、「すべての女性は望まれた妊娠を享受し、すべてのカップルに望まれた子を享受することができる」理想的な家族計画を構築することができるのではないだろうか。

 右質問する。



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