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平成八年二月十三日提出
質問第三号

人権問題に関する質問主意書

提出者  小森(注)邦




人権問題に関する質問主意書


 一九九五年十一月一日提出の「人種差別撤廃条約(第一条)に関する質問主意書」及び同年十一月九日提出の「部落解放基本法制定に関する質問主意書」に対し、政府の答弁になお不明確なところがあると思われるので、再度、次の諸点について質問する。

一 疑問とし、不明確と思われるのは、実体規定の第一条の部分にかかわってのことである。政府は、「人種、皮膚の色、門地又は民族的もしくは種族的出身に基づくあらゆる区別、除外、制約又は優先をいう」のところを「門地」という日本語にかえて、中国語の「世系」という言葉を使っている。
  日本国憲法の第十四条には、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とされ、わが国の憲法的感覚における平等実現の文言にある「門地」なる言葉をなぜ中国語の使用によったのか。
二 「門地」という言葉を使えば、同対審答申が「人間の自由と平等に関する人類普遍の原理」として、その解決を求めている部落差別の撤廃について、この条約に基づく国内法の関連に直結することを避けようとしたのではないかと思われる。従来政府は、条約批准のためには国内法の整備を前提としなければならないと答弁していた。今回の条約に関連して、国民運動として強くその制定が求められている「部落解放基本法」を切り離そうとの意図と思われるが、答弁をうかがいたい。
  なお、この答弁にかかわっては、「アイヌ新法」についての、さきの質問書に対する答弁も、条約にかかわって、国内法の整備というところを意図的に避け、「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」の結論というところに答弁のポイントをおいていることもあわせて、疑問としているところである。「アイヌ新法」は、この条約の国内法的性格をもつのかどうかも、あわせて答弁されたい。
三 政府の訳語が「世系」となったことについては既に承知しているが、日本語の「門地」を排して、わざわざ中国語の「世系」を使われたことについて、「人種差別撤廃条約」についての日本における関係学者はすべて「門地」なる訳語を使い解説書(文)を公刊されている。
  日本政府は「世系」という中国語が「門地」なる日本語の意味にかかわって、相違するところがあれば明らかにしていただきたい。なお、ほとんど同義語であるということになれば、なぜ日本語を使わずに中国語を使われたのかも、明らかにされることを求める。
四 このような条約の訳語については、広く関係者の合意が常識であるが、社会運動団体、とりわけ「門地」という訳語を使用することによって、部落解放のための国内法整備を強く期待していた部落解放運動団体との何らかのコンセンサスがあったのかということをうかがいたい。
五 政府のさきの答弁によると、この「世系」なる訳語をもってしても、究極は部落差別との関連が出てくることを考えたのか、「この条約の趣旨及び目的、審議経緯、各国の関連措置、各国の解釈等を踏まえれば、この『descent』の語は人種、民族の観点からみた系統を表すもの」と答弁をしている。
  ここにあげている「目的、審議経緯、各国の関連措置、各国の解釈」についても詳細の説明を願いたい。
六 政府の訳文によれば、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」と差別の撤廃…となっており、勿論、英文においても、そのような文章の構造になっている。そうなれば、ここでいう「世系」、日本語で言えば「門地」だが、政府答弁のように「人種、民族の観点からみた系統」ということにならない。どこまでも「人種」「皮膚の色」「民族的出身」「種族的出身」と、ここで言う「世系」は独立した概念であると考えられる。
  政府答弁のような解釈は、文理上成立しないが、真正面からの誠意ある回答を求める。
七 さきの衆議院本会議における橋本首相の、社民党・佐藤観樹議員の部落解放基本法にかかわる質問に対する答弁では、既に周知の前村山内閣における山口総務庁長官の談話にもあるように、「法的措置、行財政的措置の基本的あり方」という言葉が欠落していた。
  格別な意図があるのか、うかがいたい。なお、十二月一日付けの答弁書によれば、その文言はその時点では使われていた。
  従って、この際、その「法的措置、行財政的措置」なる言葉の正確な政策的意味も知りたい。「部落解放基本法」制定運動が急迫している時期でもあり、与党プロジェクトでも、この文言を使っていることを思えば、この際、「玉虫色」ならぬ、正確な政府のこの文言使用の意味をお知らせいただきたい。
八 万一、「部落解放基本法」制定要求国民運動の広範な願いが受け入れられないなら、政府の見識としては、いかなる方策をもってこの重大な社会的問題を解決されようとしているか、その方策も明示されたい。
  勿論、地対協の意見具申が三月中には出されることも承知している。だが、それは詳細にわたる方策についてであり、政府自体のこの問題に対する政策的方針がなければならない。よって、その方針の基本的な骨格のところをお尋ねしたい。

 右質問する。





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