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平成八年五月九日提出
質問第二三号

タクシー運転者の労働条件改善に関する質問主意書

提出者  寺前 巖




タクシー運転者の労働条件改善に関する質問主意書


 一九九三年度におけるハイヤー・タクシー(以下「タクシー」という。)の利用者は年間二十九億二千二百万人で、国民一人当たりの利用回数も二十三・五回とタクシーは公共輸送機関として国民生活に密着している。公共輸送機関の最大の社会的使命は、人命を安全に目的地まで輸送することだが、その安全輸送をはじめ利用者への接客サービスは、タクシー労働者の労働条件改善及び良質な労働力の確保と密接不可分の関係にある。
 このため政府は、労働条件改善による良質な労働力確保とサービス向上等を主要な理由として、一九九〇年以来ほぼ二年毎にタクシー運賃改定を認可してきた。しかしながら、この目的は果たされず、一九九四年度のタクシー労働者の年間収入は、三百六十万余円(労働省調査)と四年前の三百五十五万余円の水準にまで落ち込んでいる。
 営業収入の低下にともなう賃金の低下のみならず、明白な賃下げを強行する事業者も多く、一例を京都地区においてみると、同地区に多くみられるいわゆる「リース制」の賃金制度を採用する事業場では、「リース」経費を引き上げたり、運賃改定時に運賃メーター器の改造費用を労働者の負担として賃金から差し引くなどの不当な賃下げが行われている実態がある。
 こうした労働条件の低下は、運賃改定時にタクシー事業者が申請した理由が守られないことに起因するものであり、労働条件改善を利用者・国民に約束して値上げへの理解を求めたことを考えれば、運賃改定を認可した政府として、その完全な履行を確保する責任がある。
 よって、次の事項について質問をする。

一 一一九九五年二月認可の東京都特別区・武三地区タクシー運賃改定以来、全国各地で認可されたタクシー運賃の改定は、たとえば「運転者の人件費のアップ分については、賃金水準を上昇させることを目的としている」「時短が運賃の原資に含まれているので、時短を実施することにより、運転者の賃金を下げることのないようにすること」(一九九五年二月二十一日付け関自旅二第三八八号関東運輸局長通達)とされていることに代表されるように、運転者の賃金水準の改善と賃下げなしの時短が全国各地区に共通する主要な改定の理由とされていた。
  また、輸送効率向上への対応についても、一例として「曜日別に、また季節波動に即して、計画的な休車の実施など効率的な運用を図ること」「地域の需給動向に応じ暫定減車制度を積極的に活用し、経営の合理化を図ること」(一九九六年三月二十二日付け中運自旅二第八六号の二中部運輸局長通達)とされているように、需要波動に対応した休車、需給動向に対応した減車が認可に付する条件として全国各地に共通して求められていた。
(一) 運転者の賃金水準の改善、賃下げなしの時短の点につき、各地区において十分な実効があったと政府は認識しているのかどうか。不十分であるならば、今後、実効を確保するためにどのような措置を講じるのか。
    また、各運輸局は順次労働条件の改善状況を公表しているが、労働省においては「おおむね改定後三か月以上経過した時点及び一年を経過した時点において(中略)改善内容について報告を求める」「東京地区のタクシー運賃の改定と同様の趣旨のタクシー運賃の改定が行われた場合には、同様の対応を行うよう配意されたい」(一九九五年二月二十一日付け基賃発第一号及び同一号の二労働省労働基準局賃金時間部長通達)とされているにもかかわらず、東京地区の運賃改定から一年以上を経過した今日に至っても各労働基準局の改善状況把握の調査結果が公表されないのは、なぜか。政府として公表するべきであると考えるがどうか。
(二) 一九九五年六月六日の衆議院運輸委員会で運輸大臣は、各企業ごとに「目を光らして」と述べているが、例えば大阪のロイヤルタクシーでは一九九三年の運賃改定時にも労働条件改善がなく、行政指導による車両のグレードアップを実施することを理由に労働者一人当たり年間約三十万円の賃下げを強行して、これに反対する労働組合の委員長を不当に解雇する事例も起こっている。この企業を含め、賃下げをするなど運賃改定の趣旨に逆行する行為を公然と行っている事業者をどのように指導しているのか。
(三) 曜日波動に対応した輸送効率向上につき、関東運輸局は一九九六年三月二十二日付け関自旅二第八七四号通達で東京都特別区・武三地区を対象とした対策を講じることとしているが、東京以外の地区においても同趣旨の輸送効率向上が求められているところであり、これらの地区については今後どのような対策を講じるのか。
    また、タクシー運転者の労働条件改善のためには、タクシー一台当たりの生産性の向上すなわち運送収入が増加することが必要であり、曜日波動への対応のみならず、平日も含めた需給調整が求められる。現に運輸当局が公表した労働条件改善状況によっても乗務員の平均賃金支給額が運賃改定前と比べて減少している地区もあることを踏まえ、供給過剰となっている地区の減車の推進についてどのような措置を講じるのか。
二 安全な輸送は公共輸送機関の最大の使命である。ところが近年いわゆるアルバイト運転者を採用する事業者が増加し、これらのアルバイト運転者は、他職との兼職等による長時間・過労運転等から安全性の低下や乗客への接遇の面でのサービス低下などの問題を発生させている。
  こうしたアルバイト運転者の採用について、政府は実態をどのように把握しているのか。また、自動車運送事業等運輸規則に違反しているものはもとより、実態においてその趣旨を逸脱しているものについて違法行為排除と安全輸送確立の趣旨の順守をはかるため、どのような措置を講じるつもりか。
三 一九九七年四月一日より、タクシー運転者も含めて週四十時間労働制が実施される。労働基準法本法が法定労働時間を週四十時間と定めて以来、これまで長期にわたり実施が猶予されていたことを考えれば、同日より遅滞なく確実に完全実施が行われることが必要である。
(一) タクシー事業は、これまで労働時間の順守について労働基準法及び自動車運転者の労働時間等の改善基準告示違反が多発していること等に鑑みれば、これらの教訓を踏まえた特別に強力な指導が求められると考えられるが、政府はどのような対策を講じるつもりか。その対策の結果、一九九七年四月一日より確実に法定労働時間が順守される見通しとそれを可能にする具体策を明らかにされたい。
(二) 法定労働時間短縮にともなう人件費増の原資を償うためにタクシー事業者が運賃改定を申請することも予想されるが、前回運賃改定による労働条件改善が十分でないことを考えれば、今後予想される運賃改定については、その認可条件が確実に順守される担保措置が必要と考えられる。一九六九年十一月二十一日付け物価対策交通関係閣僚協議会の決定により実施された労使間の確認書の交換、改善状況を確認したうえで運賃改定時期を指定する等と同様の措置をとることが実効のある措置と考えるがどうか。

 右質問する。





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