衆議院

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平成八年六月十日提出
質問第二五号

「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」における地震動策定法と活断層評価法に関する質問主意書

提出者  今村 修




「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」における地震動策定法と活断層評価法に関する質問主意書


 「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(以下「耐震設計審査指針」という。)は、昭和五十三年九月二十九日に原子力委員会が決定し、昭和五十六年七月二十日に原子力安全委員会が決定している。しかし、基準地震動の算定法や活断層の考慮の仕方等に重大な疑問があるので、次のとおり質問する。

一 地震動の最大速度振幅を算定する「大崎の方法」について
 1 「平成七年十一月十日提出質問第一一号」に対する「平成七年十二月二十二日受領答弁第一一号」(以下「答弁一一号」という。)の三頁には、「耐震設計審査指針においては、基準地震動の策定に当たって、解放基盤表面の地震動の水平方向における最大速度振幅は地震動の実測結果に基づいた経験式等を参照して定めることができる等とされているが、当該経験式としては、昭和五十四年に大崎順彦氏が発表した基準地震動評価に関するガイドラインに示された評価方法(以下「大崎の方法」という。)が一般的に用いられている。」としている。しかし、このガイドラインと称される英文文書には、著者名がなく、大崎順彦氏がこのガイドラインを作成し発表したという証拠はない。このガイドラインは、昭和五十四年何月何日に、どの権威ある国際会議または学術雑誌に発表されたものか、「大崎順彦氏が発表した」という証拠となる資料を示して明らかにされたい。仮に、いずれの国際会議でも発表されず、どの学術雑誌にも掲載されていないとすれば、このガイドラインの内容が妥当であると、いつ、どこの権威ある学術機関が判断したのか、明らかにされたい。
   また、科学技術庁原子力安全調査室によれば、「当時の原子力委員会においては、本ガイドラインについて、決定、承認等は行われていない」というが、それに相違ないか。もし、相違ないなら、原子力委員会及び原子力安全委員会で「このガイドラインを一般的に使う」ことが決定、承認等されないまま、本ガイドラインが「一般的に用いられている」ということになる。これは、原子力委員会及び原子力安全委員会の職務怠慢であり、重大な責任放棄であると考えるが、どうか。また、いかなる文書をガイドラインとして一般的に用いても、原子力委員会及び原子力安全委員会はこれを放任すると解釈してよいか。
 2 答弁一一号では、「大崎の方法においては、評価地点における震央距離が一定の計算式を用いて求められる距離(以下「震央域外縁距離」という。)より短い場合には、当該地点の震源距離及び応答スペクトルは、震央距離にかかわらず震央域外縁距離に基づいて算定することとされている。」とあるが、先のガイドラインでは「算定する」とは書かれておらず、「打切距離内では最大速度を打ち切ってもよい( Within the trancation distance, the maximum velocity may be trancated. )」と極めて曖昧にしか書かれていない。この may be という表現は、根拠が曖昧で不確実なときに用いられるいわば文学的な表現であり、審査指針など厳格さを要する文書にはなじまない表現である。したがって、これを「打ち切る」または「算定する」という厳格な断定的表現に変えるには、原子力安全委員会等での決定、承認等が必要である。しかし、それがなされていないとすれば、「算定することとされている」と判断したのは、一体いつ、どこで、誰が、どのような根拠で、そのように判断したのか、明らかにされたい。
   また、ガイドラインを発表したとされている大崎順彦氏は、最近の著書「新・地震動のスペクトル解析入門」(一九九四年五月二十五日発行、鹿島出版会)の二百七十四頁〜二百七十九頁に、地震動の最大速度と大崎スペクトルを求めるコンピュータ・プログラムを掲載しているが、そこでは、震央域外縁距離内で最大速度を一定にするようにはなっていない。つまり、大崎順彦氏は、ガイドラインで曖昧に提示された「大崎の方法」と呼ばれる方法とは異なる方法で最大速度を求めている。大崎順彦氏の最近の著書と、著者不明の曖昧なガイドラインと、いずれの方法が正しい「大崎の方法」なのか、明らかにされたい。
 3 耐震設計審査指針では、活断層を見逃す恐れがあることから、設計用限界地震の一つとして全国一律に、マグニチュード六・五、震源距離十キロメートルの直下地震を想定している。前述のガイドライン及び大崎順彦氏の著書に記載されている方法によれば、マグニチュード六・五の震源深さは七・二キロメートルであり、十キロメートルではない。答弁一一号では、直下地震の「震央距離が震央域外縁距離より短いことから、大崎の方法に従えば、耐震設計審査指針に示されているマグニチュード六・五の直下地震の震源距離は約十キロメートルと算定される」としている。つまり、当時の原子力委員会で決定、承認等されていないはずのガイドラインを根拠に、しかも、極めて曖昧な文学的表現を断定的表現に直して用い、耐震設計審査指針を作成したことになるが、それに相違ないか。
   原子力委員会が耐震設計審査指針を決定した昭和五十三年九月二十九日の時点では、昭和五十四年十月付けガイドラインは発表されていない。マグニチュード六・五の直下地震の震源距離を十キロメートルと決定したのは、いつの原子力委員会または専門家会議か、また、どのような根拠に基づいて決定されたのか、会議録など具体的な資料に基づいて明らかにされたい。
二 耐震設計上考慮すべき活断層について
 1 答弁一一号によれば、耐震設計審査指針で考慮すべき直下地震をマグニチュード六・五とするのは「マグニチュード六・五以下の地震では地表に断層が現れない場合もあり最悪の場合にはこのような地震を引き起こす活断層を見逃す可能性があるとの地震学、地質学等の知見を工学的に判断して定められたものであり、少なくとも現段階においては、基準地震動S2の決定に際して想定すべき直下地震の規模をマグニチュード六・五からマグニチュード七に引き上げるべき新たな知見等は得られていない。」としている。この答弁によれば、耐震設計審査指針では、「地震のマグニチュードが六・五を超えれば、地表に断層が現れる」と想定していると考えられるが、それでよいか。
   科学技術庁からの提出資料によれば、この判断のもとになったのは、松田時彦氏による論文「活断層と地震発生に関する六つの経験則」(一般商業雑誌「地理」第二十四巻、一九七九年九月)であるが、原子力安全委員会が耐震設計審査指針を決定した一九八一年七月二十日以降、一九八五年には、山科健一郎、松田時彦、有山智雄らの共著論文「一九八四年長野県西部地震による地変」(地震研究所彙報、六〇巻、一九八五年)が出され、マグニチュード六・八の長野県西部地震で地表に震源断層が現れていないことが明らかにされた。また、この論文には、明治以降内陸で起きたマグニチュード六・五以上の地震二十三例のうち、マグニチュード六・五以上七・〇未満の十一の地震で地震断層が現れたのは四例にすぎず、残り七例では地震断層は現れなかったと明記され、マグニチュード七・〇以上七・五未満の十一の地震でも地震断層が現れたのはほぼ半数の六例にすぎないと記載されている。このような知見に基づけば、「マグニチュードが六・五を超えれば地表に断層が現れる」という現行の耐震設計審査指針の想定は科学的根拠に乏しいということになるが、これに相違ないか。それでもなお、考慮すべき直下地震のマグニチュードは六・五でよいとする根拠は何か、説明されたい。
   また、明治以降内陸で起きたマグニチュード六・五以上の地震二十三例のうち、長野県西部地震を除く二十二例の地震のうち過半数の十二例で地表に断層が現れていないという事実については、原子力委員会及び原子力安全委員会がそれぞれ耐震設計審査指針を決定する段階ですでに明らかであった。耐震設計審査指針策定時に、原子力委員会及び原子力安全委員会はこれらの事実を検討したのか。もし、検討していなかったり、検討はしたが無視したとすれば重大な職務怠慢であると言わざるを得ないがどうか。また、一九八四年の長野県西部地震は「マグニチュードが六・五を超えても、多くの場合には地表に断層が現れない」ことを改めて事実で示したものと言える。さらに、平成七年兵庫県南部地震では、野島断層に沿って地震断層が現れたが、神戸側の震源断層は未だに特定されていない。これらの事実も「マグニチュードが六・五を超えると地表に断層が現れる」という想定に重大な疑問を呈している。この上、どのような「新たな知見」があれば、耐震設計審査指針における「マグニチュードが六・五を超えれば地表に断層が現れる」という想定を見直し、考慮すべき直下地震のマグニチュードを六・五から七・〇以上に引き上げることになるのか、具体的に説明されたい。
 2 答弁一一号では、「想定される地震を引き起こす活断層は繰り返し活動してきているものであり、一般に、その活動の結果が地表又はその付近の地形及び地質構造に何らかの痕跡として認められることとなる。」「したがって、地下十数キロメートルの活断層を直接確認できないとしても、地表又はその付近の地形及び地質構造に関する十分かつ詳細な文献の調査及び現地調査の結果に基づき、当該活断層の活動による痕跡を慎重に評価することにより、当該活断層による原子力発電所等への影響が適切に評価されることとなる。」としている。しかし、質問二の1に記載したとおり、歴史的文献にたまたま記載されていても地表に全く痕跡を残さない地震が大半である。質問二の1に記載したマグニチュード六・五以上の二十三例のうち地表に地震断層が現れなかった十二例のそれぞれについて、「その活動の結果が地表又はその付近の地形及び地質構造に何らかの痕跡として認められる」という具体的な証拠を示していただきたい。また、その「地表又はその付近の地形及び地質構造に残された痕跡」から、実際に生じた歴史地震のマグニチュードをどのように推定できるのか、具体的に説明していただきたい。
 3 耐震設計審査指針によれば、「基準地震動の策定に当たっては、地震のマグニチュード及びエネルギーの放出中心から敷地までの距離を十分考慮するものとする」となっている。ところが、指針にはエネルギー放出中心の位置の決定法は記述されていない。先のガイドラインにもこの点に関する記述はない。しかし、実際には、例えば「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」(以下「検討会」という。)の報告書においても、既知の活断層及び活断層群をつないだ全長の中央をエネルギー放出の中心としている。非常に長い活断層の一部や複数の活断層群が地震を起こす場合には、このような「全長の中央」にエネルギー放出の中心はこないと考えられる。既知の活断層及び活断層群をつないだ全長の中央をエネルギー放出の中心とする評価法はどのような根拠に基づくものか明らかにされたい。また、平成七年兵庫県南部地震をはじめ内陸部地震のエネルギー放出中心が既知の活断層及び活断層群をつないだ全長の中央になっているという具体的な証拠を示されたい。
   また、答弁一一号でも確認されているとおり、地下十数キロメートルでの活断層の有無や活断層の間の連結状態を調査できる技術は現在存在しないが、それならば、地表及び浅層探索等で明らかにされている活断層データに基づいて、既知の活断層及び活断層群をつないだ全長の中央が震源になるという現行の耐震設計審査指針の評価法では震央を正しく評価できないと思われるがどうか。
 4 松田時彦氏の一九九〇年の論文(地震研究所彙報、六五巻)では六甲断層帯としてマグニチュード七・六の地震が想定されている。この地震の神戸大学の評価地点からの震央距離は数キロメートルである。この地震の方が検討会報告書のマグニチュード七・七五の地震より評価地点に対する影響は大きい。検討会では松田時彦氏によるこの想定地震は検討されたのか、また、これを考慮すべき地震の一つに採用しなかった理由は何か、会議録など具体的な資料を用いて明らかにされたい。

 右質問する。



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