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平成八年六月十八日提出
質問第二九号

東北の漁業に関する質問主意書

提出者  松本善明




東北の漁業に関する質問主意書


 東北地方の海域は世界三大漁場の一つであり、わが国の漁獲高の約二六%を生産し、国民への水産物供給に大きな役割を果している。しかし一方で、輸入水産物は毎年増加し、食用の魚自給率は六一%に落ち込み、国民の食べる魚の四割が外国からの輸入ものになっている。水産物の無秩序な輸入増加は生産者価格の低落をまねき、浜では「こんな値段ではとてもやっていけない」と激しい怒りが渦まいている。東北の漁業は後継者不足、生産者魚価の低落で漁家所得が減少し、経営がたちゆかないという事態に直面している。こうした東北の現状は、わが国の漁業の縮図でもある。東北の漁業の健全な振興をはかることは日本の漁業の発展をうながすことになる。
 そのためには、国内漁業に打撃を与える輸入水産物に対する適正な規制と魚価の保障、資源の保存.管理ができるように二〇〇海里の経済水域の完全設定、国内水産物流通への援助の強化、漁場環境を守るなど、大企業の無秩序でもうけ本位の経済活動を規制し、漁業の民主的な計画・管理を発展させるための積極的な対策が必要である。
 その立場にたって、当面の東北の漁業について以下具体的に質問する。

一 マグロの輸入規制について
 1 世界のマグロの生産量は年間約一三〇万トン、このうち、日本に供給されるのが五四%の七〇万トンにのぼっている。日本の商社などは、国際協定にしばられない国に船籍を置く便宜置籍船というやり方で、ホンジュラス、パナマなどの諸国に日本の中古マグロ船を輸出し、低コストによるマグロを大量に輸入し続けてきた。便宜置籍船をはじめ無秩序な操業を行い、日本にマグロの輸出攻勢をかけているのが実態である。このように漁業の秩序が無視されたまま、マグロの乱獲がすすみ、マグロが陸上の冷凍庫や洋上の超低温運搬船に溜まり、陸揚げできない在庫は常時五万トンから一〇万トンに及んでいるといわれている。マグロ資源の枯渇が指摘されているなかでマグロ漁業の持続的な発展と安定供給、生産者価格の保障、漁業資源保護のうえからも、今国会で成立したマグロ資源に関する法律の制定を機に、便宜置籍船の規制など、実効あるマグロの輸入規制を行うべきではないか。
   また、北・中西部太平洋での国際管理機関を早急につくるため、政府は積極的に関係国へ働きかけるべきではないか。
 2 輸入マグロの増加を背景に、大型量販店の末端小売価格にあわせた卸価格・納入価格が押しつけられ、マグロの生産者価格の値崩れがおきていると指摘されている。
   政府は一定の流通段階別の価格調査を行っているが、こうした状況をどのように認識しているか。
二 サケ・マスのセーフガード発動について
 1 わが党が、水産物の輸入急増を指摘し、セーフガードの発動を求めたのに対し、橋本首相は「輸入急増の事実がない」(衆議院本会議九六年五月一〇日、参議院本会議九六年五月三一日)と答弁しているが、輸入水産物の急増によって、生産者価格の低落に苦しむ漁業者は到底納得できるものではない。
   政府は、セーフガード発動の要件となる水産物の「輸入急増」とはどのようなものか明らかにすべきではないか。
 2 サケ・マスの輸入は、一九八五年が約一一万六千トン、それが九〇年には一六万九千トン、九四年には二四万三千トンを超え、八五年の二倍以上になっている。九五年は少し減少しているものの、最近三年間の輸入の動向をみれば、明らかにサケ・マスの輸入は急増しており、サケ漁業への「重大な損害」は歴然としている。サケ・マスの輸入はアメリカから約五〇%、最近、急激に増えているのがチリやノールウェーの養殖ものである。無秩序な輸入が需給バランスを崩し、日本のサケ定置網や銀ザケ養殖は存亡の危機にたたされている。
   岩手県におけるサケの生産額は、九二年度二四一億円、九三年度二〇八億円であったものが、魚価の暴落で九五年度は八六億円どまりになっている。九五年度のサケのキロあたり単価が九二年度の三一%まで暴落し最悪の事態になっている。岩手県内の漁協経営はサケ定置網の収益が中心になっており、多くの漁協が赤字になるといわれている。岩手県水産審議会で「サケの価格問題が当面の最大の問題だ、このままでは漁村は崩壊する」と指摘されるなど深刻な状況である。
   宮城県志津川町、女川町の銀ザケ養殖も生産者価格が三分の一に下落し、経営体が急減している。輸入の規制をぬきにしてサケの生産者価格の安定をはかることはできないのが現状である。だからこそ、昨年一〇月、東北六県と茨城の県漁連が政府に対しセーフガードの発動を要請しているところである。
   政府は、わが国の漁業を守る立場からWTO協定にもとづき、サケ・マスに対するセーフガードの発動を検討すべきではないか。
   漁業関係者の強い要求にもかかわらず、政府が、サケ・マスに対してセーフガードを発動する状況にない、と判断するのであれば、セーフガードを発動する基準・要件を具体的に示すべきではないか。
 3 福島県の小名浜、江名漁港などから北洋サケ・マス漁業に一七隻が出漁している。しかし、昨年の平均魚価はキロあたり五八二円で二〇%も下落し、北洋サケ・マス漁業は四千万から六千万円の赤字になっている。昨年のロシア水域における入漁料はキロあたり二四五円であり、一隻あたり七千万円の負担になっている。このように北洋サケ・マス漁業は魚価の下落と入漁料の負担で経営が圧迫されきびしい状況にある。
   今年はロシア水域における入漁料の引き下げが行われたものの、赤字操業が必至とみられている。
   政府は、魚価の安定対策、経営対策を強化すべきではないか。
三 日本海沿岸のイソ焼け対策、藻場回復について
 秋田県八森町、青森県岩崎村、深浦町、鰺ヶ沢町の沿岸ではイソ焼け現象がおきている。八森町の沿岸ではイソ焼け現象が一〇八ヘクタールに及び、深浦町ではウニは増えているが空ウニになる被害も発生している。また、秋田県はハタハタの三年間の禁漁の条件として藻場造成を行うことにしているが、日本海沿岸のイソ焼け対策、藻場回復に対する国の対策を強化すべきであると考えるがどうか。
四 秋田県北部沖合のまき網の操業規制について
 秋田県北部沖合におけるテリ(メバル)漁場の約半分はまき網の禁漁区になっているにもかかわらず、まき網船が違反操業を繰り返している。テリ漁場は秋田県北部漁協全体の年間水揚げの約一〇%を占めている漁場であり、違反操業は漁民・漁協にとって重大な問題である。政府はテリ漁場の禁漁区におけるまき網船の違反操業について調査を行い、指導すべきであると考えるがどうか。
五 青森県西海岸沖合のトロール漁について
 日本海海域ではヒラメの中間飼育が順調に進んでいる。しかし、せっかく育てて放流したヒラメの幼魚を枯渇させるトロール漁の存在は資源管理型漁業と相いれないものになっている。資源管理型漁業を育てていく施策に転換するため、トロール船の船主に対する十分な補償、漁業労働者の小型船漁業への転換、他の仕事への転職など抜本的な対策をすすめ、日本海青森県海域におけるトロール漁については廃止を検討すべきであると考えるがどうか。
六 三陸沿岸におけるトロール漁の規制について
 三陸沿岸におけるトロール漁は、卵を抱えた親魚や稚魚をとりつくし、岩礁を破壊していることから、漁場が荒らされ沿岸漁業に被害を及ぼしている。資源管理型漁業を振興させるうえでも、政府は、トロール漁による被害についてきちんと調査を行い、関係者と協議のうえトロール漁を規制すべきであると考えるがどうか。
七 サクラマスの艀化放流事業の対策拡充について
 青森県深浦町の追良瀬内水面漁業共同組合は国の補助事業として、サクラマスの艀化放流事業に取り組み、二〇万尾の艀化、一年半にわたる幼魚育成、放流を行っている。いまこの事業の大きな問題はきれいな水、水量が不足していることである。その主な原因は追良瀬川流域の国有林のブナ伐採にあることは明らかである。サクラマスの艀化放流事業を成功させるためにはきれいな水と水量を確保することが欠かすことができないものである。従って、追良瀬川流域の国有林のブナ伐採を中止する対策をとられたい。
 また、サクラマスの艀化放流事業における施設整備の改善、拡張に対する国の補助や助成、種苗買い上げ費の嵩上げなどの援助を強化すべきと考えるがどうか。

 右質問する。





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