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平成九年六月十八日提出
質問第三二号

臓器の移植に関する法律に関する質問主意書

提出者  山本孝史




臓器の移植に関する法律に関する質問主意書


 今般、臓器の移植に関する法律(以下、法)が大幅修正の上成立した。しかし、修正内容が極めて根本的であったにもかかわらず、審議において担保されていない点が多く存在するので、適正な移植医療の実施に資するため、以下質問する。

一 法では、臓器提供の意思が確認された者だけが脳死判定を受けた上で「死体」となると規定されている。つまり、臓器提供とは関係のない患者が、医師の判断により仮りに脳死判定を受けても、それは死体ではなく「生体」または「基本的人権の享有主体」と認識して良いのか、答えよ。
二 法律案審議終盤の修正案の審議において、この法は立法府の意思として、脳死臨調の否定した死の二元論に立脚しているということが明確になったが、このような立法意思を政府はどう受け止めているか。
三 法の附則第十一条では、臓器を提供する意思を有し、脳死判定を受けた者が公的医療保険の給付を受けても、その措置を医療の給付とみなすという規定になっている。
  では、臓器提供とは関係のない患者が、仮に脳死判定を受けても、公的医療保険の被保険者資格を失うことはなく、その脳死判定後に継続される治療は、当然に公的医療保険給付の対象となると考えて良いか。
四 交通事故などにおいて、被害者の治療費用は、被害者の公的医療保険を利用せず、加害者などの自動車損害保険があてられるのが通例である。では、その被害者が仮に臓器提供に関係無く脳死判定を受けた後も、その治療について、任意保険や自動車損害賠償責任保険などは、交通事故との相当因果関係が従来通り存在し、「通常生ずべき損害」として給付が継続されるものと理解して良いか。
五 労働災害保険関係法令等が適用される場合において、臓器提供と関係のない脳死判定を受けた患者が、療養の給付が継続されるものと考えて良いか。
六 法第六条第三項では、臓器提供者本人の脳死判定が行われる前に、その家族に対して臓器提供を拒まないかどうかを確かめることとされている。つまり、脳死判定前に臓器あっせん機関の職員や、移植コーディネーターなどが、家族に臓器提供の同意を求めることになる。
 @ これは、脳死判定後に提供意思を家族に確認するとしていたこれまでの法案審議での手順と根本的に異なると理解して良いか。
 A 法の成立によって、平成六年一月の「臓器提供手続に関するワーキング・グループ」の指針骨子は、抜本的に見直されるものと解して良いか。今後の検討機関、検討日程、メンバー等についても答えよ。
七 法第六条第三項で、臓器提供意思と脳死判定が手続上一体となったことから、移植医療とは無関係でも脳死判定を行おうとする全ての医師は、その患者が臓器提供意思を有しているかどうか、必ず確認せざるを得ないということにならないか、という救急医療現場の混乱の懸念がある。この点についての見解を伺う。
八 医師法第二十一条は、医師の異状死体の届け出義務を定めているが、臓器提供に関係のない脳死判定を行われた患者については、いわゆる三兆候死をもって届け出義務が生じるという理解でよいか。
九 刑事訴訟法第二百二十九条の検視については、臓器提供に関係のない脳死判定を行われた患者については、いわゆる三兆候死をもって行われると理解してよいか。
十 臓器提供とは関係のない患者が脳死判定をされた場合において、死亡診断書に記載される死亡時刻は、心停止時刻と考えて良いか。
十一 臓器提供意思を確認せずに法に準拠した脳死判定が済んでいた患者が、臓器提供意思を持っていたことが判定の後で確認され、その後移植術が行われた場合、その者の死亡時刻は、予め終了していた脳死判定時刻の第二回目となるのか。または、その者についての脳死判定を改めてしなおすことになるのか。答えよ。
十二 日本国内の米軍基地内の医療機関からの協力で、何例かの死体腎移植が行われているが、これまでの場合でも、ドナーが存在するという情報が日本のネットワーク側にもたらされた時点では、ドナーは脳死状態であったと聞いている。
 @ 米軍内の医療機関からの臓器提供において、法に定められた諸手続き、罰則、各種基準等は一切、適用を受けないと考えるがどうか。根拠法令と共に答えよ。
 A 法施行後において、法に定める臓器提供要件を満たさないドナーからの臓器提供の意思が米軍基地内の医療機関からもたらされた場合、脳死判定の家族の承諾等の規定や脳死判定の書面の作成をはじめとする法との整合性をどのように考えているのか。また、その臓器の提供を受けるのかどうか。
 B 不足する臓器の公平な配分に資するため、ネットワークが提供を受ける場合の統一された相互協定等が存在するのか。存在しないのであればそのような協定等を整備すべきと考えるがどうか。
 C 米軍基地や外国からの臓器の輸入については、ウイルス感染等の安全性も含めてどのような基準を適用し、どのような規制を行うのか。
十三 法の臓器提供の要件を全て満たして脳死判定を受けた者からの臓器提供を何らかの理由で中止した場合、その身体を利用した人体実験は現行法に照らして法的に可能であるか。また、そのような行為をどう考えるか。それを防止するための具体的施策を明らかにせよ。並びに、そのような状態において、死体解剖保存法や献体法の適用はないと考えるが、見解を伺う。
十四 法案審議終盤の修正案審議において、法の立法趣旨として臓器提供は本人意思に基づく自己決定権に依拠しているということが明らかになったが、この法は今後も患者の自己決定権を基本にして、臓器提供要件として家族の忖度を許すことにはならないと理解するが、認識を伺う。

 右質問する。





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