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平成九年九月三十日受領
答弁第三二号

  内閣衆質一四〇第三二号
    平成九年九月三十日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員山本孝史君提出臓器の移植に関する法律に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山本孝史君提出臓器の移植に関する法律に関する質問に対する答弁書




一について

 臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号。以下「臓器移植法」という。)第六条第三項は、臓器の摘出に係る脳死の判定は患者が臓器を提供する意思の表示に併せて脳死の判定に従う意思を書面により表示しており、かつ、その旨の告知を受けた家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときに限り行われることを規定しており、臓器の摘出に関係のない脳死の判定については規定していないところである。
 したがって、御指摘の臓器提供に関係のない患者が医師の判断により脳死判定を受けた場合については、臓器移植法の適用はなく、当該患者の死亡の判断については、従来どおり行われるものである。

二について

 臓器移植法第六条第一項においては、同条第三項に基づいて行われた脳死の判定により脳死に至ったと判定された場合にその身体を死体に含めることとされたところであり、それ以外の場合については、従来の取扱いに変更はない。
 政府としては、このような臓器移植法の立法趣旨を十分尊重し、臓器移植法の適正な施行に努めてまいりたい。

三について

 臓器移植に関係のない者に対して、その者が脳死判定を受けた後に継続して行われる処置は、公的医療保険の医療の給付の対象となる。

四について

 自動車損害賠償責任保険及び自動車保険は、交通事故と相当因果関係を有する治療費を保険金の支払対象としており、臓器移植法の施行により、交通事故の被害者が臓器提供に関係のない脳死判定を受けた場合の治療費の保険金の支払における取扱いについて変更はない。

五について

 臓器移植に関係のない者に対して、その者が脳死判定を受けた後に継続して行われる処置は、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)に基づいて行われる療養補償給付又は療養給付の対象となる。

六の@について

 平成八年十二月十一日に中山太郎議員外十三名の衆議院議員により提出された「臓器の移植に関する法律案」(以下「臓器移植法原案」という。)においては、御指摘のように、臓器提供者本人の脳死判定が行われる前にその家族に対して臓器提供を拒まないかどうかを確かめることとはされていなかったが、国会の審議の過程において臓器移植法原案に対する修正が行われた結果、臓器移植法第六条第三項において、臓器の摘出に係る脳死の判定を行うに当たっては、臓器提供者が生存中に臓器を提供する意思の表示に併せて脳死判定に従う意思を表示している場合であって、かつ、その旨の告知を受けた家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときであることを必要とすることが規定されたことから、臓器移植法原案における臓器の摘出に関する手順と臓器移植法に基づく臓器の摘出に関する手順とは異なるものと考えている。

六のAについて

 厚生省が設置した「臓器提供手続に関するワーキング・グループ」が平成六年一月六日に取りまとめた「脳死体からの場合の臓器摘出の承諾等に係る手続についての指針骨子(案)」(以下「骨子案」という。)は、平成五年十二月に「脳死及び臓器移植に関する各党協議会」において座長から提示された「臓器移植法案(仮称)要綱(案)」(以下「要綱案」という。)を前提として臓器摘出の承諾手続等の運用事項について取りまとめたものである。臓器移植法において規定された臓器摘出に関する手順と要綱案及び臓器移植法原案に示された臓器の摘出に関する手順は異なるものであることから、臓器移植法の施行に当たっては、骨子案に示された事項を基本としつつ、臓器移植法の内容に即してその運用に必要な事項について検討を行うことが必要と考えている。
 このため、本年八月十八日、八月二十五日及び九月五日に、別表の委員から構成される公衆衛生審議会成人病難病対策部会臓器移植専門委員会(以下「専門委員会」という。)において、臓器移植法の運用に当たっての重要事項に関する「「臓器の移植に関する法律」の運用に関するガイドライン(厚生省試案)」を示して検討を行ったところである。
 厚生省においては、専門委員会の検討の結果等を踏まえ、本年十月十六日の臓器移植法の施行までに「「臓器の移植に関する法律」の運用に関するガイドライン」を定め、関係機関に通知することとしている。

七について

 臓器移植法第六条第三項は、臓器の摘出に係る脳死の判定についてこれを行うのは、患者が臓器を提供する意思を書面により表示していること等の要件を満たす場合に限ることを規定したものであり、臓器の摘出に係る脳死の判定以外の脳死判定について、患者が臓器を提供する意思を有していることを必要とすることを規定するものではない。したがって、臓器の摘出に係る脳死の判定以外の脳死判定については、患者の臓器の提供の意思を確認しなければならないものではない。

八について

 脳死の判定を受けた患者に関する医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第二十一条の規定に基づく医師の異状死体の届出については、医師が当該患者が死亡した場合にその死体を検案して異状があると判断した場合に行うものである。御指摘の臓器提供に関係のない脳死判定を受けた患者の死亡に係る当該届出の取扱いについては、臓器移植法の施行により変更はない。

九について

 臓器移植法第六条第三項の規定に基づいて行われる脳死の判定以外の脳死判定が行われた場合、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百二十九条第一項の検視は、心停止を待って行われるものと考えている。

十について

 脳死判定を受けた患者に関する医師法施行規則(昭和二十三年厚生省令第四十七号)第二十条の規定に基づく死亡診断書に記載される死亡時刻については、医師が患者の死亡を判断した時刻を記載するものであり、臓器提供に関係のない患者について臓器移植法第六条第三項の規定に基づいて行われる脳死の判定以外の脳死判定を受けた場合の死亡時刻の取扱いについては、臓器移植法の施行により変更はない。

十一について

 臓器移植法第六条第三項においては、臓器摘出に係る脳死の判定を行うに当たっては、患者が臓器を提供する意思の表示に併せて脳死の判定に従う意思を書面で表示しており、かつ、その旨の告知を受けた家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときであることが必要とされている。したがって、臓器摘出に係る脳死の判定以外の脳死判定を受けた者が既に臓器を提供する意思及び脳死の判定に従う意思を書面により表示していたことが確認された場合には、改めて、同項の規定に基づく脳死の判定を行うこととなる。この場合の死亡時刻については、同項の規定に基づいて行われた脳死の判定の終了時となる。

十二の@について

 一般国際法上、駐留が認められた外国の軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令の適用はないものであり、御指摘の日本国内のアメリカ合衆国軍隊の施設及び区域内において行われる臓器の移植に関する各種の行為に係る手続、基準等については、それがアメリカ合衆国軍隊の構成員又は軍属により公務として行われる場合には臓器移植法及びこれに基づく法令の適用はなく、アメリカ合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族により公務としてではなく行われる場合にはこれらの法令の適用があり、罰則の適用については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)第十七条の規定に従うこととなる。

十二のAについて

 日本国内のアメリカ合衆国軍隊の施設及び区域内の医療機関から臓器が提供される場合の法令の適用については、十二の@についてで述べたとおりであるが、アメリカ合衆国の法令の定めるところに従って摘出された臓器が提供される場合にこれを実際に受けるかどうかについては、臓器移植法の施行に伴い現在の社団法人日本腎臓移植ネットワークを母体として整備される臓器移植ネットワークにおいて、日本国内のアメリカ合衆国軍隊の施設及び区域内の医療機関、移植施設等とも調整の上、適切に判断されるべきであると考えている。

十二のBについて

 日本国内のアメリカ合衆国軍隊の施設及び区域内の医療機関で死亡した患者から腎臓の提供を受けるために社団法人日本腎臓移植ネットワークがアメリカ合衆国軍隊の施設及び区域内の医療機関と結んだ相互協定等は、現時点において存在しない。
 臓器移植法施行後において、社団法人日本腎臓移植ネットワークを母体として整備される臓器移植ネットワークとアメリカ合衆国軍隊の施設及び区域内の医療機関との間で、御指摘のような臓器の提供を受ける場合の取扱いが定められることは適切であると考えるが、今後、当事者間で検討すべき問題であると考える。

十二のCについて

 臓器の移植を行うに当たり提供された臓器の安全性を確保するための基準について規定した特段の法令はないが、提供された臓器がウイルス等に感染していないかなど、安全性の確認が行われることが不可欠である。
 御指摘のアメリカ合衆国軍隊の施設及び区域内の医療機関又は外国の医療機関で死亡した患者から提供された臓器を日本国内で移植する場合においても、国内の医療機関から臓器が提供された場合と同様に、厚生省が設置した日本臓器移植ネットワーク準備委員会等において各臓器ごとに定められたドナー適応基準に合致していることが、社団法人日本腎臓移植ネットワークを母体として整備される臓器移植ネットワークのコーディネーターにより確認されることが必要であると考えている。

十三について

 臓器移植法第六条第三項の規定に基づいて行われた脳死の判定を受けた者からの臓器の摘出を中止した場合において、その身体に対して、医学的見地、社会的見地等から相当とは認められない行為を行うことについては、これに根拠を与える特段の法令の規定はなく、移植医療を適正に実施するために臓器の摘出に係る脳死の判定を規定した臓器移植法の趣旨からも適当ではないと考えている。また、このような行為に対しては、関係法令に基づく罰則が適用される可能性があるものと考えている。
 臓器移植法第六条第三項の規定に基づいて行われた脳死の判定を受けた者からの臓器の摘出を中止した場合、その身体に対する死体解剖保存法(昭和二十四年法律第二百四号)及び医学及び歯学の教育のための献体に関する法律(昭和五十八年法律第五十六号)の適用は、その目的からみて、ないものと考える。したがって、これらの法律に基づく解剖等は、従来どおり心停止後に行われるものと考える。

十四について

 臓器移植法第六条第一項においては、移植術に使用されるための臓器の摘出は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用するために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときに、行うことができることとされているところである。また、臓器移植法附則第四条第一項においては、臓器移植法第六条第一項に規定する場合のほか、当分の間、脳死した者の身体以外からの移植術に使用されるための眼球又は腎臓の摘出については、死亡した者が生存中に眼球又は腎臓を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該眼球又は腎臓の摘出について書面により承諾しているときにおいても、摘出することができることとされているところである。
 政府としては、このような臓器移植法の規定に従ってその適正な施行に努めてまいりたい。
 なお、臓器移植法附則第二条第一項において、この法律による臓器の移植については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、その全般について検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとするとされているところである。



別表(公衆衛生審議会成人病難病対策部会臓器移植専門委員会)

別表(公衆衛生審議会成人病難病対策部会臓器移植専門委員会)




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