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平成九年十二月十一日提出
質問第一九号

心身障害者扶養保険制度に関する質問主意書

提出者  枝野幸男




心身障害者扶養保険制度に関する質問主意書


 心身障害者扶養保険制度は、保護者の死亡後残された障害者に終身年金を支給するための制度である。地方公共団体が実施主体の共済を、厚生省所管の特殊法人である社会福祉・医療事業団が保険するしくみとなっている。
 九六年一月には、「安定化方策」の名のもと、保険料の改定、財政支援などが行われているが、この一方的な保険料の大幅値上げは保険が契約であるとの原則から考えて問題が多く、また制度そのものにも本質的な問題があると考える。自治体主体の任意加入の保険ではあるが、多額の財政資金が投入されており、厚生省所管の特殊法人が資金運用などを行っており、国も責任を負うべき事業である。
 したがって、次の事項について質問する。

一 保険料改定について
 (一) 今回のような一方的なかつ大幅な保険料改定(月額四一〇〇円の者の場合、段階的に八九〇〇円に値上げ)は、加入者の手元の約款のどの条項を根拠としているのか。
 (二) 約款に根拠があるとしても、一般加入者が加入時にこうした大幅な保険料の改定を想定できたと考えるか。また、当時加入を奨励していた自治体はそうした説明を十分行ったと考えるか。
 (三) 保険料改定の理由は何か。数字の根拠もあげて説明せよ。理由が複数ある場合は、それぞれの理由が、どの程度の割合で原因となったかも説明せよ。
 (四) 「障害者死亡率の低下」が理由であるとすると、よい方向にではあるがその見込みを誤った原因は何か。
 (五) そもそも、障害者死亡率の低下を行政目標とすべき行政機関が、こうした見込みを大きく誤った責任をどう考えるか。保険料改定の前に、まず自らのまちがいを認め説明すべきと考えるが、どうか。
 (六) 「運用利率の低下」も理由であるとすると、運用利率に上下があるという当然の事実を前提としなかったのはなぜか。
 (七) このような大幅な保険料引き上げに至る事態にいたるまで、各方面からの指摘にもかかわらず、何ら措置をとらず改革を先延ばしにしてきた理由は何か。責任をどう考えるか。
 (八) そもそも制度創設時に、福祉的な配慮等で保険料を安易に安く設定し、それが結果として今回のような加入者を裏切る大幅な値上げにつながったという要素はないか。九五年二月二三日付け毎日新聞夕刊の記事に、厚生省障害福祉課が「これまでの保険料が低過ぎ」との見解を示したとあるが事実か。こうした要素もあったことを素直に認めることが、保険料値上げの最低限の前提ではないかと考えるがどうか。
 (九) このような措置の後、さらなる保険料の値上げなどという事態はありえないと考えてよいか。値上げがありうるとするとどのような場合か。
二 財政支援について
 (一) 保険料納付不足分(約一二〇〇億円)を国及び県が二分の一ずつ二〇年間負担するとのことだが、「私的なものである」と国会答弁などで繰り返し述べているこの保険に財政支援する根拠は何か。
 (二) 九五年度以降に関し、国から地方公共団体及び社会福祉・医療事業団への事務費補助額とその使途、内訳をできるだけ詳しく述べよ。
三 制度の実施体制について
 (一) 地方公共団体主体の事業である経緯を述べよ。
 (二) 財政難の自治体にも財政負担をせまるなど、自治体と国、社会福祉・医療事業団の意思疎通が十分であるのか疑問である。加入者からも、「責任主体が明確ではない。県の窓口なども誠意がない。」との声がある。関係各者の連携をどのように図っているのか。
 (三) 社会福祉・医療事業団が運用することとなった経緯、根拠は何か。
 (四) この事業団の業務の内、この保険事業がしめる割合はどのようなものか。予算、職員の両面から答えよ。
 (五) この事業団の事務費、役員、職員給与などに、保険金が使われているというようなことはないか。
 (六) この事業団の役員、職員の総数と厚生省出身者数、占める割合を述べよ。
 (七) この事業団の九五年度以降の役員給与、退職金の平均額はいくらか。
四 加入者数について
 (一) この保険の対象となる障害者の保護者数と、加入者は現在何名程度か。
 (二) 加入者数が小さな割合にとどまっている理由をどう考えるか。
 (三) 九六年度新規加入者数がそれまでの四、五千人台から一四〇二名に急減した理由をどうとらえるか。
 (四) 新規加入者急減、累計加入者の漸減が保険の運営に及ぼす影響はないか。さらなる保険料値上げ、財政措置等への悪循環へとつながるおそれはないか。おそれがないとするとその根拠は何か。数的な分析をもとに答えよ。
 (五) 任意保険であるとしても、制度の存在を広報し新規加入者を見込まなければ制度の存続はありえない。「障害者の保護者の間でも認知率がそう高くない、広報に熱心さがない」との声もあるが、国、自治体、事業団はそれぞれどのような広報を行っているのか。昨年度を例にパンフレット、ポスターの作成など具体的に答えよ。
五 年金額、脱退一時金の金額について
 (一) 年金月額一口二万円、二口でも四万円との額は、現在の物価水準、他の障害者施策等との関連で、妥当な額と考えるか。その根拠は何か。
 (二) 保険料値上げなどによる脱退者のための一時金は、加入期間に応じて三万円、五万円、十万円となっているが、こうした一方的な保険料倍増に際し、継続の意思にもかかわらずやむを得ず長年加入の保険を脱退せざるを得ない方々への措置としてはあまりに不十分と考えるがどうか。考えないとしたら、その根拠は何か。
六 制度の抜本的見直しについて
 以上の質問へのお答えからも、この制度が政府の政策判断の誤り、過去の経緯、状況の変化等から様々な矛盾を抱えたものとなっていることは明らかになると思われる。この制度が、障害者をお持ちの保護者の方々に一定の安心を与えてきたものであることは認めつつも、今回の安定化方策のような小手先の改革ではやがて制度自体が行き詰まりかねないと考える。過去の政策判断の誤りを明確にし、かつ現在の加入者に迷惑がかからないことを前提に、制度の存続自体また国、自治体、民間なども含めた運営主体の明確化・一本化、他の障害者施策との統合なども含めた抜本的な改革の検討に早期に着手すべきと考えるがどうか。検討の必要すらないと考えるとするとその根拠は何か。

 右質問する。





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