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平成十年一月二十七日受領
答弁第一九号

  内閣衆質一四一第一九号
    平成十年一月二十七日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員枝野幸男君提出心身障害者扶養保険制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員枝野幸男君提出心身障害者扶養保険制度に関する質問に対する答弁書



一の(一)について

 心身障害者扶養保険制度(以下「扶養保険制度」という。)において心身障害者扶養共済制度(以下「扶養共済制度」という。)を実施する地方公共団体がその共済責任を保険する事業を行う社会福祉・医療事業団に対して保険契約者として支払う保険料の額の平成八年からの改定は、社会福祉・医療事業団法(昭和五十九年法律第七十五号)第二十一条第三項に基づいて同事業団と当該地方公共団体が締結した心身障害者扶養保険約款第二十六条に基づいて行われたものである。
 地方公共団体が実施する扶養共済制度の加入者である障害者の保護者等が支払う掛金の額の改定は、前述の保険料の額の改定と併せて行われた各地方公共団体における心身障害者扶養共済制度条例の改正により行われたものである。なお、扶養共済制度の加入者が加入の際に当該地方公共団体から受け取ることとなっている心身障害者扶養共済制度加入証書には、「掛金の額について、条例の改正があったときは、改正後の条例の規定を適用する」旨の記載があるところである。

一の(二)について

 御指摘の地方公共団体が支払う保険料及び扶養共済制度の加入者が支払う掛金の額の改定について、扶養共済制度の加入者がその加入時にどの程度想定できたか政府として答弁することは困難である。平成八年からの保険料及び掛金の額の改定については、改定が実施された平成八年一月までに、加入者に対し社会福祉・医療事業団が作成した扶養保険制度の改正等に関するパンフレットの配布、書面による掛金の額の引上げ等に関する通知、扶養保険制度の改正等に関する説明会の開催等により十分に説明を行ったものと承知しており、加入者はこれを了解の上加入を続けているものと考えている。

一の(三)について

 扶養保険制度は、扶養共済制度の加入者である障害者の保護者等が地方公共団体に扶養共済制度の掛金を支払い、地方公共団体がその共済責任を保険する事業を行う社会福祉・医療事業団に対して扶養共済制度の掛金を当該保険事業に係る保険料として支払い、同事業団は、当該保険料により加入者が死亡する等の保険事故が発生したときに同事業団が生命保険会社から保険金を受け取ることを内容とする生命保険に加入するものである。加入者の死亡等の保険事故が発生した場合には、同事業団が保険金を受け取り、これを信託銀行に委託して運用し、この保険金及び運用収入を原資として加入者と契約している地方公共団体に年金のための保険金を支払い、当該地方公共団体が、加入者が扶養していた保険対象障害者に一口につき月額二万円の年金を支給するものである。
 平成八年からの保険料及び掛金の額の改定は、年金の原資である社会福祉・医療事業団に支払われる保険金の額が将来の年金の支払に必要な額よりも低額になることが見込まれたことから、当該保険金の額を将来の年金の支払に必要な額に引き上げるため同事業団が生命保険会社に支払う保険料の額をこれに見合った額に引き上げ、加入者が支払う掛金の額をこれに伴って引き上げたものである。
 この保険料及び掛金の引上げの基礎となった保険金の額の引上げは、年齢階級別に平均して二倍を超えるが、その引上げの内訳は、障害者の死亡率の改善により年金の支給期間が延びたことによる部分が従前の保険金に対して二割程度、運用利率の低下に伴う予定利率の変更による部分が従前の保険金に対して三割程度である。また、これ以外の要因は、保険料及び掛金の額が、扶養保険制度の創設当初においてそれ以前に一部の地方公共団体が独自に実施していた心身障害者の扶養者に関する共済の制度の掛金の額の水準を考慮して設定された結果、平成八年までの間将来の年金の支払に必要となる原資を確保するために必要な額とはなっていなかったことによるものと考えられる。

一の(四)から(七)までについて

 扶養保険制度の保険金及び保険料の額等を設定する際に用いる障害者の死亡率については、制度創設時には他に参考とする資料がなかったこと等から、アメリカ合衆国における精神薄弱者の死亡率に関する調査資料等を踏まえ作成した数値を用いたところであるが、今回の保険金及び保険料の額の改定においては、扶養保険制度における障害者の死亡率の実績を踏まえた数値を用いたところである。
 また、社会福祉・医療事業団が信託銀行に委託した年金の原資となる保険金の運用利率については、扶養保険制度の創設当初から昭和六十二年まで予定利率である七・〇パーセントを超えた水準で推移しており、制度創設時に行政機関において近年の運用利率の大幅な低下を予測することは困難であったと考えている。
 扶養保険制度の安定的な運営を図るため、昭和六十一年には保険料の額の改定を行う等の措置を講じたところであるが、年金給付に係る収支の悪化等を踏まえ、扶養保険制度の在り方全体について採り得る様々な方策を検討した結果、障害者の福祉を増進する立場から一定の役割を果たす必要があること等を総合的に勘案し、国及び地方公共団体において平成八年からの改定前の期間に係る保険金及び保険料の不足分について財政支援を行うとともに、平成八年から保険料及び掛金の額を将来的に年金の支払に必要となる保険金の額に見合う水準に改定したものである。

一の(八)について

 扶養保険制度の保険料及び掛金の額については、一の(三)についてで述べたとおり、制度創設時においてそれ以前に一部の地方公共団体が独自に実施していた心身障害者の扶養者に関する共済の制度の掛金の額の水準を考慮して設定された結果、将来の年金の支払に必要となる原資を確保するために必要な額とはなっていなかったものであり、これが、平成八年からの保険料及び掛金の額の改定の際にその引上げ幅が大きくなった理由の一つであると考えている。
 また、厚生省障害福祉課において、御指摘の記事にあるような見解を示したことは事実である。

一の(九)について

 扶養保険制度については、障害者の死亡率や年金の原資となる保険金の運用利率等の条件の推移を踏まえて、今後定期的に必要な見直しを行うこととしており、平成八年における保険料及び掛金の改正において用いたものと比較して障害者の死亡率及び保険金の運用利率等の変動がみられる場合には、保険料及び掛金の額を改定することもあり得るものと考えている。

二の(一)について

 扶養保険制度は、保護者の死後に残された障害者の生活の安定と福祉の増進に資するものであり、国は、社会福祉・医療事業団法第二十一条の規定に基づき社会福祉・医療事業団と地方公共団体が締結する心身障害者扶養保険約款等の認可を行うほか、当該地方公共団体に対して扶養共済制度に関する条例準則等を提示するとともに、扶養保険制度の実施主体である同事業団に対する指導監督を行う等、扶養保険制度の安定的な運営に関し、障害者の福祉を増進する立場から一定の役割を果たす責任があるものと考えている。
 また、地方公共団体は、扶養共済制度の実施主体として、条例に基づき心身障害者に対し年金を支給する責任を有している。
 これらの点を総合的に勘案した結果、国及び地方公共団体が扶養保険制度に対する財政支援を行うこととしたものである。

二の(二)について

 扶養保険制度に係る事務費補助金のうち、地方公共団体に対して交付したものは、平成七年度に千七百八十六万円、平成八年度に千九百三十七万千円であり、平成九年度は、二千二百七十八万九千円を予算上計上している。その使途は、諸届出様式に係る印刷代、消耗品費、通信運搬費等である。
 扶養保険制度に係る事務費補助金のうち、社会福祉・医療事業団に対して交付したものは、平成七年度に五千八百十六万二千円、平成八年度に六千八百五万二千円であり、平成九年度は、七千五百十八万千円を予算上計上している。その使途及び内訳は、同事業団担当職員の給与及び障害判定医に対する謝金が平成七年度に四千百九十一万千円、平成八年度に四千五百二十二万二千円であり、平成九年度は、五千百五十万五千円を予算上計上している。また、諸届出様式の作成費、消耗品費、通信運搬費、パンフレット等作成費、保険及び年金収支状況等の分析及び収支予測を行うための業務委託費等が平成七年度に千六百二十五万千円、平成八年度に二千二百八十三万円であり、平成九年度は、二千三百六十七万六千円を予算上計上している。

三の(一)について

 扶養保険制度は、昭和四十五年に社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律(昭和四十四年法律第八十九号)に基づいて、それ以前に一部の地方公共団体が独自に実施していた心身障害者の扶養者に関する共済の制度を、扶養共済制度として全国的に普及することを目的として創設されたものである。扶養共済制度は、創設当初、保護者の死亡後の心身障害者の福祉を図るため地域における福祉行政の実施主体である地方公共団体において扶養共済制度の年金の支払いと併せて心身障害者に対し適切な養育及び保護が行われることを確保するための指導が行われることが必要と考えられたことから、地方公共団体を実施主体としているところである。

三の(二)について

 平成八年から扶養保険制度における保険料及び掛金の額の改定に併せて、国及び地方公共団体が改定前の期間に係る保険金及び保険料の不足分について財政支援を行うことについては、平成七年度予算の政府原案の作成過程において、地方公共団体、社会福祉・医療事業団等の関係者と十分協議した上で決定したものである。
 また、厚生省及び社会福祉・医療事業団は、毎年度、地方公共団体の担当者が参加する心身障害者扶養保険制度担当者会議を開催し扶養保険制度の運営上の問題点等に対する意見交換を行っているほか、同事業団は扶養保険制度の収支状況を定期的に厚生省及び地方公共団体に報告しており、これらにより関係各者の連携が図られているところである。
 なお、地方公共団体においては、扶養共済制度の加入者に対して社会福祉・医療事業団が作成した扶養保険制度の改正等に関するパンフレットの配布、説明会の開催等により十分な説明を行っているものと承知している。

三の(三)について

 扶養保険制度の実施に当たっては、その運営の安定化を図るため地方公共団体が扶養共済制度の加入者に対して負う共済責任を保険する事業が必要であること、加入者が住所を移動した場合における事務等を全国的に処理する必要があること等から扶養保険制度の業務を行う中央の機関を設置することとしたものである。
 この中央の機関については、扶養保険制度が心身障害者の福祉の増進を目的とする社会福祉に関する事業であること等を総合的に勘案し、昭和四十四年度の予算の作成過程において当時の社会福祉事業振興会(昭和六十年一月以後においては社会福祉・医療事業団)が適当であると判断したものであり、社会福祉事業振興会法(昭和二十八年法律第二百四十号)の改正により同会の業務として扶養保険制度に関する業務が追加されたものである。その後、当該業務は社会福祉・医療事業団法により社会福祉・医療事業団に継承され、同事業団が実施しているところである。

三の(四)について

 社会福祉・医療事業団の行う心身障害者扶養保険事業に係る予算額及び職員数の同事業団の予算額及び職員数に占める割合は、平成九年度の収入支出予算の支出額の十七・〇パーセント及び平成九年十月一日現在の職員数の二・〇パーセントである。

三の(五)について

 扶養保険制度の保険金を、社会福祉・医療事業団の事務費並びに役員及び職員の給与費に使用していることはない。

三の(六)について

 平成九年十月一日現在の社会福祉・医療事業団の役員総数は十名であり、そのうちの厚生省出身者の数は五名、その役員総数に占める割合は五十パーセントである。また、同日における同事業団の職員総数は二百五十一名であり、そのうちの厚生省出身者の数は四名、その職員総数に占める割合は一・六パーセントである。なお、厚生省出身者は、厚生省に属する国の行政機関に常勤の行政職等として採用され、行政職等としての経歴が二十年以上あり、本省庁の課長相当職又はこれと同格の官職を経て退職し、退職から同事業団の役員又は職員に採用されるまでの期間が原則として十年未満である者とする。

三の(七)について

 平成七年度以降の社会福祉・医療事業団の役員給与の本俸平均月額は、平成七年度百八万五千円、平成八年度百九万円及び平成九年度百九万円である。
 また、平成七年度以降の役員退職金の平均額は千百七十四万円である。

四の(一)について

 扶養共済制度に加入することができる者は、身体障害者、精神薄弱者等を扶養している六十五歳未満の保護者であるが、その総数は把握していない。また、平成八年度末現在の加入者数は、八万六千七百七十人である。

四の(二)及び(三)について

 御指摘の加入者数の状況については、扶養保険制度はあくまでも加入者の相互扶助の精神に基づく任意加入の制度であり、地方公共団体の実施する各種福祉施策の充実、公的年金である障害基礎年金の充実、民間生命保険会社における各種保険商品の普及等の事情が影響するものと考えている。また、新規加入者数については、これに加え平成八年から扶養共済制度の掛金の額が引き上げられたことによる影響があるのではないかと考えている。

四の(四)について

 扶養保険制度は、平成八年からの保険料及び掛金の額の改定により、それ以後は、扶養共済制度の加入者が将来の年金の支払に必要となる原資を確保するために必要な額を掛金として支払い、加入者の死亡等の保険事故が発生したときに、当該原資から保険対象障害者に年金を支給することができるよう保険料及び掛金の額を設定している。このため、扶養共済制度への新規加入者の減少及びこれによる扶養保険制度の累計加入者の減少が、直ちに将来の保険料及び掛金の額の引上げや、国及び地方公共団体の扶養保険制度に対する財政支援の追加措置等につながることはないものと考えている。

四の(五)について

 扶養保険制度については、社会福祉・医療事業団が毎年広報パンフレット等を作成しているほか、地方公共団体においては、当該パンフレット等を担当部署の窓口等に配置又は心身障害者の保護者等に配布するとともに、地方公共団体の発行する広報誌及び新聞に扶養保険制度の概要及び加入の案内に関する記事を掲載する等により広報を行っているものと承知している。

五の(一)について

 扶養保険制度は加入者の相互扶助に基づく任意加入の制度であり、支払われる年金は、保護者等の死亡後における心身障害者の生活を支える収入の一部として意義を有するものと考えるが、公的年金である障害基礎年金等とは異なり、年金月額について、物価水準、他の障害者施策等との関連で一定の水準を確保することを求められるものではないと考えている。

五の(二)について

 扶養保険制度における脱退一時金は、一定期間以上加入した後任意に脱退した者に対しそれまでの掛金の納付実績を勘案して支給されるが、その額の設定については、扶養される心身障害者が死亡した場合に扶養保険制度における保険給付として支払われる弔慰金の額を勘案したものであり、保険制度を運営する
上で妥当なものと考えている。

六について

 扶養保険制度については、障害者の死亡率や年金の原資となる保険金の運用利率等の条件の推移を踏まえて、今後定期的に必要な見直しを行うこととしており、平成八年一月からの段階的な保険料及び掛金の額の引上げの効果等も踏まえながら必要な見直しについて検討してまいりたい。





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