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平成十年四月二日提出
質問第二二号

ヤコブ病問題に関する質問主意書

提出者  寺前 巖




ヤコブ病問題に関する質問主意書


「わたしの ゆめを ぜんぶ けそうとしている
まっくらに なっていくのが こわい」
 滋賀県甲西町に在住しているヤコブ病患者の谷たか子さんの日記です。この日記をさかいに谷さんは話すことも書くこともできなくなりました。
 谷さんは、一九八九年一月に脊髄空洞症の治療でヒト乾燥硬膜を移植、一九九六年五月にヤコブ病と診断されました。
 医原性ヤコブ病は、角膜移植・脳硬膜移植・脳下垂体ホルモン製剤・脳内深部電極の使用等の経路から発病が報告されている。
 ヤコブ病は、悪性プリオンタンパクが正常なプリオンタンパクを悪性に変え脳細胞を破壊し痴呆症状が急速に進み、数ヵ月で無動・無言状態になり一〜二年で死亡するとされている。
 厚生省が一九七三年七月、ドイツのヒト乾燥硬膜ライオデュラを医療用具として輸入・販売承認してから一九九七年三月の使用禁止、回収命令までの期間、全国でヒト乾燥硬膜の移植件数は、年間二万人、合計約五〇万人ともいわれている。
 この病気は、感染から発症まで一〜一六年といわれており、多くの移植者は発症の恐怖にさらされている。発症者とその家族にいたっては、死の恐怖とともに患者が家族の中心であるという関係から、生活問題や看護まで極めて厳しい環境におかれている。
 病気を治すための治療によって不治の病にかかり、一〜二年で死にいたらしめる。このことに悲しみと怒りをおぼえるのは当然である。
 ヤコブ病は、非加熱製剤の使用によって、多数のHIV感染者をだし、エイズを発病して死亡させているのと全く軌を一にするものであり、国の責任が問われている。
 よって以下、質問する。

(1) 厚生省の緊急調査研究班及び公衆衛生審議会成人病難病対策部会専門委員会の調査によれば、ヤコブ病患者八九一人のうち五四人が、ヒト乾燥硬膜の移植者であることが明らかになった。しかし、この患者数はヤコブ病患者を対象にした調査である。
    全国でヒト乾燥硬膜の移植件数は、年間二万人、合計約五〇万人といわれている。ヒト乾燥硬膜について、政府が承認した一九七三年七月以降、毎年の販売量、販売金額及び移植件数は何件と政府は掌握しているのか。また、この移植者全体について追跡調査をすべきと考えるがどうか。
    とりわけ、緊急を要する問題として患者を発症させたのと同じロット(プリオンにより汚染されたと疑われる原材料を用いた、あるいはそれらと混合した可能性のあるもの)を用いた患者の追跡調査をすべきだと考えるがどうか。
(2) 医原性ヤコブ病は硬膜以外からも発症している。その面からの調査も必要だと考えるがどうか。
    米・英・仏などの各国では、ホルモン製剤についてのヤコブ病発症の報告があるが、日本では文献も、また厚生省緊急調査班の調査でも報告がないが、これは何故か。
    日本でのホルモン製剤使用者の追跡調査は、どのようにされているのか。その結果はどうか。日本では、外国で発症したのと同じ製剤は使われていなかったのかどうか、使用実態はどうなっているのか。
(3) 患者にとってヤコブ病の早期診断、発症予防、治療法の解明は、緊急で切実な要求である。また患者の医療、看護、介護、福祉面の研究も含め研究体制の強化が必要だと考えるがどうか。
    厚生省の緊急調査班は解散したと聞くが何故か、むしろ再編強化すべきではないか。
(4) 無動・無言という患者の病状からみて家族の介護は、厳しい状況におかれている。この面からの支援と援助が必要だと考えるがどうか。
(5) 日本における硬膜移植によるヤコブ病患者は、世界の患者の約七割を占あている。なぜ、日本における発生率が高いのか。以下の経過がそれを示している。
    一九七三年七月、厚生省がドイツB・ブラウン社のヒト乾燥硬膜ライオデュラを、医療用具として輸入・販売の承認を行った。
    一九八七年二月、米国疾病管理センター(以下「CDC」)が、国内女性をB・ブラウン社製の硬膜移植によりヤコブ病に感染したとする世界初の症例を報告。
    一九八七年四月、米国食品医薬品局(以下「FDA」)が、B・ブラウン社製品は、消毒が不十分で安全管理がズサンであるとして、米国内の病院に対し廃棄警告をおこない、同社製品を事実上輸入禁止にした。
    一九八七年五月、B・ブラウン社が安全性を高めるためアルカリ処理(不活化処理)をした。
    一九八七年、CDCが発行している「MMWR」というウイークリーレポートをCDCが全世界に送付。レポートの内容は、移植をうけ二二ヵ月後にヤコブ病で死亡した、二八才の女性についてCDCとFDAが調査。移植材料は、B・ブラウン社のライオデュラという商品で、同社は複数の個体から製造しているので、提供者が固定できない。一九九七年四月、FDAはB・ブラウン社に対し、2000台のロットのライオデュラの廃棄を命令した。
    一九八七年八月、JAMA(日本語版)ウイークリーレポートを翻訳紹介している。
    一九八七年、国立予防衛生研究所の北村氏(当時・腸内ウィルス部長)が、日本の医学雑誌「臨床とウィルス」に、JAMAウイークリーレポートを連載で翻訳紹介している。
    一九九一年、新潟大学付属病院の医師が、硬膜移植感染の疑いがある国内初症例を論文発表。
    一九九七年三月、WHOがヒト乾燥硬膜を使用しないよう勧告した。
    一九九七年三月、厚生省がヒト乾燥硬膜の使用中止、回収命令をだした。
    厚生省は、国際的に権威のあるウイークリーレポートやJAMA、「臨床とウィルス」などを講読しており、ヒト乾燥硬膜ライオデュラが危険な医療用具であることを、以上の経過をみるまでもなく充分知りえていたはずである。
    一九九一年には、日本国内で初症例も発表されている。それにもかかわらず一九九七年三月、WHOの勧告まで何ら処置を取らなかった責任は大きい。
    アメリカでは一つの症例で廃棄処置をした。ところが厚生省は、アメリカの廃棄処置から九年間、見直し機会が何度となくあったにもかかわらず、何ら手をうたず放置したことが、日本での硬膜移植によるヤコブ病患者が世界の七〇%という最悪の結果を生み出した原因である。
    これは、サリドマイド、スモン、HIV等これら薬害発生の構図と何ら変わらない。
    HIV和解後の「医薬品による健康被害の再発防止対策について」という厚生省プロジェクトチームの報告書にも、「国民の生命や健康に直結する分野ではつねに鋭敏な危機管理意識をもち国民の視野に立って、政策決定に最善を尽くすとともに、その後の知見の蓄積や状況の変化等があった場合には政策を機動的、弾力的に見直すことや米国のFDAやCDC、WHO等との連携と迅速な情報収集の必要性」を明確にしている。
  @ 医療用具として輸入・販売承認した時点でどのような審査をしたのか、この製品が臓器の一部であることのリスクをなぜ考えなかったのか。
  A B・ブラウン社のライオデュラは製品ロット番号不明などズサンな製品管理が指摘されている。承認したのちの指導責任をどう考え、どう改善するのか。
  B B・ブラウン社のようなアルカリ処理では、プリオンが完全に不活化されないという九州大学の立石教授らの実験報告がある。そのことについてどう考えるのか。
  C 厚生省の関係者は、MMWRやJAMA、「臨床とウィルス」に掲載されているヒト乾燥硬膜によるヤコブ病の危険性をいつ、誰が知ったのか。知った時点で、どのように考えたのか。一九八七年、CDCの報告のあった時点で、厚生省の内外にヒト乾燥硬膜によるヤコブ病の危険性を指摘する人はいなかったのか。
  D 政府は、乾燥硬膜ライオデュラを医療用具として輸入・販売の承認をした以上、その結果生じた被害に対し、責任を認め被害者に謝罪し、完全な救済を行う立場で解決すべきだと考えるがどうか。

 右質問する。



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