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平成十年四月十七日提出
質問第二七号

子どもの国籍取得に関する質問主意書

提出者  保坂展人




子どもの国籍取得に関する質問主意書


 平成七年一月二七日の最高裁判決(無国籍児訴訟)や平成九年一〇月一七日の最高裁判決(非嫡出子の国籍取得)などの国籍裁判が注目を集め、また児童の権利に関する条約について日本政府が提出した第一回報告書の審査、ならびに市民的及び政治的権利に関する国際規約(いわゆる自由権規約)について日本政府が提出した第四回報告書の審査が今年行われることになっている現状を踏まえ、以下の点を質問する。

一 子どもの国籍取得に関する統計数値について
 (1) 「在留外国人統計」によると、四歳以下の無国籍児の数が急増しているが、その原因は何か。
 (2) フィリピンやタイなどの外国国籍として登録されている子どもが、本国政府から旅券の発行などを拒否されている例が見受けられるが、その数(二〇歳未満)は今年の三月三一日現在で何人か。
 (3) 日本でブラジル人夫婦から生まれた子どもは、ブラジル政府から旅券の発行を受けているが、ブラジル憲法によると、ブラジル国籍を取得しない。それにもかかわらず、ブラジル国籍として登録されている例が見受けられるが、このようにブラジル国籍として登録されている子どもと、無国籍として登録されている子ども(いずれも二〇歳未満)は、三月三一日現在でそれぞれ何人か。
 (4) 外国人母から生まれた子どもが、日本人父の認知を受けても日本国籍を取得しない例が見受けられるが、その数(二〇歳未満)は三月三一日現在で何人か。
二 出生後に外国人らしい母親が病院から行方不明になった子どもに対して、国籍法二条三号にいう「父母がともに知れないとき」に当たるとして、日本国籍の取得を認めた平成七年一月二七日の最高裁判決について
 (1) この裁判で、国側は、外国人出入国記録(EDカード)によって、「母が知れている」ことを立証しようとしたが、最高裁判決の後も、同じ方法によって、母親を特定することが可能であると考えるか。
 (2) 最高裁判決は、「ある者がその子の父又は母である可能性が高いことをうかがわせる事情が存在することを立証した」だけでは足りないと述べているが、EDカードによる調査は、この最高裁判決に反するのではないか。
 (3) この最高裁判決の事案では、子どもは、一旦フィリピン国籍として外国人登録されたが、フィリピン大使館が旅券の発行を拒否したため、無国籍として登録し直したという経緯がある。かようなケースにおいて、日本政府は、当該外国政府との間で、子どもの国籍について協議する必要はないと考えるか。
 (4) この最高裁判決の後、法務省は、「最高裁判決を真摯に受け止めて、今後の国籍行政に生かしてゆきたい」とのコメントを発表しているが、それにもかかわらず、無国籍児が急激に増えている現状は、どう考えるか。
 (5) ブラジル人夫婦から生まれた子どもは、無国籍になるが、国籍法二条三号の適用を受けない。日本政府は、在日ブラジル人の増加に鑑みても、かような子どもに日本国籍を与えるため、国籍法を改正する必要はないと考えるか。
三 日本人父と外国人母から生まれた非嫡出子について、出生後の認知によって日本国籍の取得を認めた平成九年一〇月一七日の最高裁判決について
 (1) 本年一月三〇日の法務省民事局長通達は、この最高裁判決と同様の事案について、子の出生後三か月以内に嫡出推定を排除する裁判が提起され、裁判確定後一四日以内に認知の届出等がされている場合には、原則として出生による国籍取得を認定するとしているが、かような期間を経過している場合には、民事局長の指示を求めるとしているだけであり、具体的な国籍認定基準を示していない。
     出生による国籍取得は、できるかぎり確定的に認定する必要があるが、政府は、この通達で十分と考えるか。
 (2) そもそも、民事局長通達が認定の基準とした「子の出生後三か月」「裁判確定後一四日以内」という要件は、平成九年一〇月一七日の最高裁判決で示された被上告人のケースとほぼ一致しているのは単なる偶然か。もし、「子の出生後四か月」で争われた事件であれば通達の基準は「四か月」となるのか。
 (3) この最高裁判決の補足意見は、嫡出推定を排除する裁判を提起する期間および認知届をすべき期間を、具体的数値によって示すために立法的解決が必要であるとしているが、政府は、かような法律案を作成する用意があるか。またあるとしたら、その内容はいかなるものか。
 (4) この最高裁判決は、同じく外国人母の非嫡出子でありながら、戸籍の記載いかんによって、子が生来的に日本国籍を取得する道に著しい差があることを不合理であると述べているが、そもそも嫡出子か非嫡出子か、胎児認知か生後認知かによって、国籍取得に区別があること自体が不合理であると考えられる。これらは「法の下の平等」に反するのではないか。
四 児童の権利条約および自由権規約の実施状況報告書について
 (1) 日本政府の報告書は、いずれも無国籍の防止について、国籍法二条三号を援用しているが、最近の無国籍児の急増ぶりをみても、この規定の運用ないしこの規定自体に問題はないと考えるか。
 (2) 日本政府の報告書は、いずれも「限られた範囲で」無国籍が生じる場合があることを認めているが、現行法のもとで、具体的に無国籍はどのような場合に発生すると考えるか。
 (3) フィリピンやタイなどの外国国籍として登録されている子どもが、本国政府から当該国籍を取得していないと認定され、事実上保護を受けない場合にも、児童の権利条約および自由権規約の解釈として、無国籍は発生していないと考えるか。
 (4) 日本政府の報告書は、いずれも無国籍児について、簡易帰化が認められているので、「日本国籍の取得が極めて容易になっている」とするが、簡易帰化が普通帰化よりも容易であるという根拠(法令、行政先例など)は何か。また帰化は、法務大臣の裁量による許可が要件とされているので、無国籍児であるからといって帰化が許可されるという保証はないはずであるが、日本政府は現状で十分と考えるか。
 (5) 児童の権利委員会は、日本政府の報告書に対して、非嫡出子の国籍取得に関する情報を開示するように求めてきているが、政府は、どのような回答を用意しているのか。
 (6) すでにイギリス人父と外国人母から生まれた非嫡出子がイギリス国籍を取得しないことについては、児童の権利委員会の審査で条約違反が指摘されているが、同様に日本の国籍法も、条約違反になるのではないか。
 (7) わが国の国籍法および戸籍法は、外国で生まれて重国籍になった子どもについて、出生の日から僅か三か月以内に国籍留保届をしなかっただけで、日本国籍を失うと定めている。そのため、日本人夫とフィリピン人妻から生まれた多数の子どもが日本国籍を失っているといわれているが、政府は、これが児童の権利条約および自由権規約に違反しないと考えるか。

 右質問する。





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