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平成十年七月三十日提出
質問第一号

参院選公示日の死刑執行に関する質問主意書

提出者  保坂展人




参院選公示日の死刑執行に関する質問主意書


 総理大臣の交代という大きな政変につながった一九九八年の参院選が公示された六月二十五日、東京拘置所と福岡拘置所で、死刑確定者三人が処刑されたと報道された。
 いうまでもなく、国政選挙中は国権の最高機関である国会の一部が機能せず、閣議の回数も少ない。憲法で議院内閣制を選択している日本においては、国政にかかわる重要で、とりかえしのつかない案件処置については当然、こうした時期を選ぶべきではない。ところが、報道では、公示日に死刑が執行されたという。にわかに信じられない話なので、以下質問する。
 なお、これまで死刑については、法務省の原田明夫前刑事局長(現事務次官)らが「議論することは必要」と繰り返し述べてきた言葉を信用するとともに、誠意ある対応を期待して、質問主意書の答弁期間を法定の七日間から大幅に延長することに同意してきた。しかし、今般こうした信頼と期待を大きく裏切る事態に立ち至った可能性が強く、今回の主意書に対する答弁は法定期間内になされたい。

一 死刑執行の事実確認について
 (1) 九八年の参院選が公示された六月二十五日、三人の死刑が執行されたと新聞やテレビで報道されたが、事実か。
 (2) 報道によると、執行された死刑確定者は島津新治、村竹正博、武安幸久の三人とされるが、それぞれどのような罪で、死刑が確定したのか。詳細に示されたい。
 (3) 三人の執行に際し、下稲葉法務大臣は刑事訴訟法に従い、間違いなく執行命令書に署名したか。
 (4) 三人の執行命令書の決裁に際し、法務当局は刑の執行停止や再審、非常上告事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無などについて、慎重に検討するため、判決と確定記録の内容を精査したか。      どのくらいの時間をかけたか。
 (5) 三人の死刑執行命令書の決裁に際し、執行を停止しなければならない心神喪失の状態に陥っていないかどうか、各拘置所に照会したか。
 (6) 執行直前、三人が心神喪失に陥っていないかどうか、確認したか。
 (7) 各拘置所での執行に際し、刑務官らが三人の精神状態を乱したり、三人に暴行を働いたりしていないか。
 (8) 各拘置所での執行で、刑務官らが人を殺すことを嫌い、担当から外してほしいと願い出たケースはなかったか。
 (9) 三人の執行に立ち会った検察事務官は刑事訴訟法に従い、執行始末書を間違いなく作成したか。執行始末書に検察官と監獄の長は署名したか。
二 国政選挙について
 (1) 政府は国政選挙の重要性をどの程度認識しているか。
 (2) 国政選挙の期間中、改選を迎えた議員や現職議員は自分自身の選挙や自党候補の応援に没頭していることについて、どのように考えるか。
 (3) 国政選挙中、閣議の回数が少なくなるのはなぜか。行政に影響は出ないのか。
 (4) 国政選挙中、国会で意見が大きく分かれている案件が執行に移された過去のケースを示されたい。
 (5) 国政選挙中、国会で意見が分かれている案件はどのように取り扱うべきと考えるか。
 (6) 米国、英国、フランス、ドイツにおいて、国政選挙の期間中、行政の重要案件はどのように取り扱われているか。
 (7) 米国で、大統領や国会議員の選挙期間中、死刑が執行されたケースはあるか。
三 法務省の人事異動などについて
 (1) 六月二十三日付けで、法務省人事が発令され、松尾邦弘氏が刑事局長となったが、就任したばかりの刑事局長が死刑執行命令書の決裁を法務大臣に求めたのか。
 (2) 三人の死刑執行に際し、直前の人事異動で担当者が交代し、ミスが発生した事実はあるか。
 (3) 死刑執行にかかわる担当者の引き継ぎは十分になされたか。
 (4) 六月二十六日に松尾氏と面談した際、死刑問題に関する七通の質問主意書を提出してきた経緯、内容をほとんど把握していなかったが、引き継ぎは必要ないと判断したのか。
 (5) 六月二十五日から二十六日にかけて、原田前刑事局長に面談を求めた際、原田氏は「すべて後任に引き継いである」との理由で拒否したが、十分な引き継ぎがなされていると確信していたのか。
 (6) 六月二十五日夜、同僚議員らと法務省を訪れた際、省内で飲酒を伴う懇親会が開かれた様子がうかがわれた。あったとすれば、どのような懇親会か。また、死刑執行を担当する苦悩を訴える元刑務官らの書籍の出版が相次いでいる中、当局の法務省職員が執行当日に酒を飲むことは相当な行為と考えるか。
四 衆院法務委員会での質疑について
 (1) 五月十三日の衆院法務委員会で、六人の委員が死刑をめぐる問題を取り上げたことをどのように受け止めているか。
 (2) 五月十三日の衆院法務委員会で、下稲葉法務大臣は死刑の存廃について「一つの流れがあることは、私も感じないわけではございません」「これはやはり、日本国民である我々、そしてまた国会、政府、その辺のところで大いに議論してお決めいただかなければならない問題であろう、このように思います」と答弁しているが、国会議員が議論したくても物理的にできない国政選挙期間中や国会閉会中に死刑が執行された場合、議論そのものができないのではないか。それとも答弁とは裏腹に、議論できないように死刑は国政選挙期間中や国会閉会中に執行するのか。
五 質問主意書の答弁期間などについて
 (1) 六月十七日提出の「死刑制度などに関する質問主意書」に対する答弁期間は、「しっかり勉強して答えたい」などの理由で大幅に延長し、一ヵ月半近く経過した現在も答弁書は提出されていないが、本当の理由は「勉強」ではなくて、三人の死刑執行命令書の決裁に先立つ法務省刑事局の作業を進めるため、答弁を先延ばしにしたのではないか。
 (2) 国政選挙の公示日は、どの政党も候補も国民の間に広がる不安や不信に、明快な政策を提示することで安心と信頼をとりもどすために全精力を傾けて選挙運動をしている。そうした特別の意味を持つ日に死刑執行があり得るというなら、元旦や国民の祝日にも執行はあり得るということにならないか。
 (3) 今後も国政選挙期間中に死刑を執行する可能性があるか。あるなら「ある」、ないなら「ない」と答えられたい。

 右質問する。





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