衆議院

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平成十年八月七日提出
質問第三号

「警察が狙撃された日」などに関する質問主意書

提出者  保坂展人




「警察が狙撃された日」などに関する質問主意書


 六月十六日提出の「日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する第三回質問主意書」で、国松孝次前警察庁長官狙撃事件の捜査状況から公安警察の現況や問題点を指摘したノンフィクション「警察が狙撃された日」の出版をめぐって、版元の三一書房の取引銀行に対する捜査照会をしたかどうかなどをただしたところ、政府は七月十七日付で、警視庁による照会の事実を認め、「犯罪捜査以外の目的でこのような照会を行うことはあり得ないものと考えている」と答弁した。
 日本共産党幹部宅盗聴事件などのように当然「あり得ないものと考えている」はずの違法捜査が過去に行われた事実があり、今回の捜査照会についても国政調査権に基づき、具体的な事実を確認しながら検証するため、以下質問する。
 国松前長官に重傷を負わせた狙撃事件は、空前の憎むべき犯罪であり、早急な真相の解明が待たれているが、「警察が狙撃された日」は警察内部の諸問題が事件の解明を妨げていると指摘している。それが事実とすれば、生命の危険にさらされながら職務を全うした国松前長官も忸怩たる思いであろう。
 なお、組織犯罪対策法案の国会提出以来、この法案の大きな問題点の一つとして、日本の警察や検察がこれまで違法な捜査や公正、適正を欠く事件処理を繰り返しながらも、十分な反省と体質改善をしてこなかったことを指摘してきた。今回もその観点から「警察が狙撃された日」以外の問題についての質問も一部付け加えた。

一 国松孝次前警察庁長官狙撃事件の発生について
 (1) 東京都荒川区南千住で、一九九五年三月三十日に発生した国松孝次警察庁長官(当時)狙撃事件の捜査は現在、どうなっているか。
 (2) 「警察が狙撃された日」(以下「同書」とする)によると、捜査は警視庁公安部が主導しているようだが、殺人未遂事件でもあり、本来強行事件の捜査に当たる刑事部の捜査一課などが中心にならなかったのはなぜか。初期段階で、公安事件と判断する要素があったのか。
 (3) 同書によると、報道機関に現場で簡単な事件の概要説明をしたのは警視庁捜査一課長で、同庁公安一課長は発生から約一時間半後、「ウチのお客さんじゃないよ」と言い残し、いったん所轄の南千住署から立ち去ったとあるが、事実か。
 (4) 同書によると、国松長官には本人の希望で、SPは付いていなかったが、最重要警護対象の「特A」ランクの要人だったという。当時の警備態勢はどうだったのか。事件後、どのような検証と反省をしたか。
 (5) 事件十日前に地下鉄サリン事件が発生し、現場となった東京都内はもとより、日本全国がテロの再発を警戒していた当時、警察組織のトップを含む要人の警護態勢全般について、繰り返しチェックしていなかったのか。
 (6) 同書には、国松前長官の自宅を管轄する南千住署の署長は警護態勢をただす報道機関の取材に対し、「ちゃんとやってましたよ」と笑顔で答えていたとあるが、事実か。事実とすれば、ちゃんとやっていた警護態勢の下で、事件が発生した原因は何か。
 (7) 同書によると、犯人は国松前長官の自宅マンション内に侵入し、約二〇メートル離れたところから、拳銃で要人を狙撃し、自転車で逃走したようだが、こうした犯行が可能だった要因をどのように考えるか。
 (8) 同書によると、事件を防げなかった警備態勢については約一年後、警視総監らが訓戒の処分を受けたが、同書は「あまりに甘かった」と論評している。実際のところはどのような処分がいかなる理由で、それぞれなされたか。その処分が責任の所在を明らかにし、今後の同様な犯罪を抑止するために必要十分な処分だったと政府は確信しているか。
二 事件とオウム真理教などについて
 (1) 死刑確定者が再審で無罪になるなどの「冤罪」事件から、捜査当局はどのような教訓を得てきたか。あるいは、裁判所との見解の相違と考えているのか。
 (2) いわゆる「見込み捜査」について、どのように考えるか。
 (3) 国松長官狙撃事件発生直前には、オウム真理教前代表の松本智津夫被告らが現在公判中(一部有罪確定)の地下鉄サリン事件や目黒公証役場事務長拉致事件が起こり、教団に対する強制捜査が継続していた。長官狙撃事件も教団と関係があるのではないかと考えたか。
 (4) 同書によると、警視庁公安部は事件発生直後の聞き込み捜査から、オウム真理教関係者の写真を持って回っていたというが、事実か。
 (5) オウム真理教関係者以外の犯行の可能性があるかどうか、十分に捜査したか。今後、どのような事態が起ころうとも、教団以外の捜査は尽くしたと言い切れるか。
 (6) 同書によると、警視庁公安部はオウム真理教幹部らの事件への関与を捜査し、現在逃亡中の平田信も捜査対象に入っているようだが、平田らを発見、逮捕できない現状について、政府はどのように考えるか。
 (7) 同書には、松本サリン事件から約三ヵ月後の一九九四年九月、警察庁科学警察研究所はオウム真理教の教団施設が集中していた山梨県上九一色村の土壌から、サリン製造過程で副次的に派生する物質が検出されたとあるが、事実か。事実とすれば、地下鉄サリン事件が起こる九五年三月までの捜査は十分だったか。
三 警視庁巡査長の「自供」について
 (1) 同書によると、事件から約一年半が経過した一九九六年十月、警視庁記者クラブに加盟するマスコミ各社に宛てて「犯人は警視庁警察官(オーム信者)。既に某施設に長期間監禁して取り調べた結果、犯行を自供している」などと書かれた告発文書が二度送り付けられたとあるが、事実か。
 (2) 同書によると、告発文書が送付された当時、指摘どおり、警視庁本富士署の巡査長が犯行を自白していたが、警視庁は国家公安委員長や警察庁に報告していなかったとされる。それは事実か。事実とすれば、なぜそのような事態に立ち至ったのか。
 (3) 同書によると、井上幸彦警視総監が辞意を表明した一九九六年十一月二十八日、巡査長の自白をめぐる警察庁と警視庁幹部らの処分が発表されたというが、どのような処分がいかなる理由で発令されたのか。
 (4) 同書には、東京地検の次席検事が一九九七年一月十七日、巡査長の自供について「元警視庁巡査長の当該供述の全体としての信用性には、重大な疑問を抱かざるをえない点があり、現段階では、同人の供述に基づいて狙撃事件の被疑者として手続きを進めるのは適当でないと判断するに至った」との見解を発表したとあるが、事実か。事実とすれば、同書からの引用した前記部分以外に詳細な発表はあったか。
 (5) 同書によると、井上総監の辞意表明後、巡査長の懲戒免職処分などを発表した警視庁の滝藤浩二副総監は、記者の「巡査長が(オウム側に)情報を漏らしたと供述し始めた時期はいつなのか」との質問に、「最初に確認したのは平成七年(一九九五年)五月中旬ごろです。極めて軽微な一部の情報提供という感じでした」と答えたという。巡査長の情報漏洩を最初に確認した九五年五月中旬に巡査長を懲戒処分としなかったのはなぜか。
 (6) 同書では、九五年七月に毎日新聞などが警視庁の現職警察官にオウム真理教の信徒がいると報じた際、警視庁は「情報漏洩はない」と公式コメントしていたというが、事実か。事実とすれば、滝藤副総監の「最初に確認したのは平成七年(一九九五年)五月中旬ごろです」という話と矛盾するが、なぜそのような事態が起こったのか。
 (7) 同書には、巡査長が一九九六年五月、国松前長官の狙撃を自供した後、警視庁内では、凶器の拳銃を捨てたと供述した神田川の捜索など、自供の裏付け捜査を求める意見があったが、警視庁首脳は同年十月に巡査長の自供が報道されるまで、裏付け捜査を見送っていたとあるが、事実か。事実とすれば、首脳はなぜ裏付け捜査を見送っていたのか。
 (8) 同書によると、一九九六年十一月、当時の倉田寛之国家公安委員長が警察庁幹部に「ずっと気になっていたこと」として「長官を狙撃したと言っている警察官がオウム信者だということは(九五年)三月二十三日にどこかで押収された光ディスクで判明したにもかかわらず、なぜ三月三十一日まで、地下鉄サリン事件の特捜本部にいることができたのか」と質問したというが、事実か。事実とすれば、警察庁は倉田委員長にどのように回答したか。また、信者ということが発覚してから巡査長を特捜本部から外すまで、約一週間の時間がかかったのはなぜか。
 (9) 同書や昨年二月十八日の日本テレビ「きょうの出来事」によると、警視庁公安部は巡査長の捜査に民間人のカウンセラーを関与させたようだが、こうした捜査手法はこれまでにもあったのか。政府はこうした捜査を適正と断言できるか。
 (10) 巡査長の取り調べは逮捕令状に基づいて身柄を拘束して行われたのか、それとも任意の事情聴取だったのか。
 (11) 同書によると、巡査長の取り調べは「完全なる違法逮捕状態(よくいって軟禁状態)」で続けられたとあるが、事実か。事実とすれば、この違法捜査に対する処分はどのようになされたか。
 (12) 同書は、警察庁の菅沼清高官房長の勇退、垣見隆刑事局長の更迭、大森義夫内閣情報調査室長の勇退などについて「警察官僚の人事をめぐる陰湿な力学は、われわれを身震いさせるほどに謀略の臭いをまきちらしている」と指摘しているが、オウム真理教事件の捜査の最中、そうした人事抗争があったのか。
四 「チヨダ」について
 (1) 警察庁警備局警備企画課の職務は何か。
 (2) 警察庁警備局警備企画課の理事官は何人いるか。また、職務は何か。
 (3) 同書によると、警察庁警備局警備企画課には「裏理事官」と呼ばれるポストがあり、伊達興治、石川重明、伊藤茂男、高石和夫、石川正一郎、安村隆司の各氏らが就任していたとあるが、名前の挙がった六氏の警察庁入庁以来の経歴を明らかにされたい。
 (4) 左翼系組織、新左翼セクト、右翼団体、朝鮮総連などを対象とした公安活動のうち、協力者作りや各都道府県警察の公安当局間の調整などは警察庁のどこが担当しているか。
 (5) 六月十六日提出の「日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する第三回質問主意書」で、同書に書かれている公安警察の「チヨダ」についてただしたところ、政府は七月十七日付けで「『チヨダ』というものを承知していない」と答弁した。「承知していない」とは、「チヨダ」という組織はないということか。
 (6) 警察庁警備局の一九九八年度予算はどれだけか。
 (7) 警察法第二条第二項は「警察の活動は(中略)その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない」と定めている。政府は警察当局が同法に違反するような権限の濫用に及んだケースを承知しているか。承知しているとすれば、具体的に明らかにされたい。また、その際の関係者の処分についても示されたい。
 (8) 前記警察法第二条第二項の規定を徹底するため、政府および警察内部において、どのような努力が続けられてきたか。具体的に明らかにされたい。
五 捜査照会について
 (1) 刑事訴訟法第百九十七条第二項に基づき、警察や検察が捜査の必要から公務所又は公私の団体に報告を求めるケースは、一九九七年度に何件あったか。
 (2) 公務所又は公私の団体に報告を求める際、照会は司法警察員、検察官、検察事務官が行うのか。それとも警察署、検察庁名か。
 (3) 公務所又は公私の団体からの報告文書などの取り扱い、秘密保持について、内規はあるか。報告文書などを外部に漏らした場合、どのような処分があるか。
 (4) 捜査の必要もないのに公務所又は公私の団体に報告を求め、憲法が保障する「言論の自由」「出版の自由」を侵害した場合、憲法違反はもとより、警察や検察にかかわる法令の重大な違反となるが、その責任は政府と担当部局がどのような形で負うのか。
 (5) 七月十七日付け政府答弁書によると、警視庁は犯罪捜査の必要性から「警察が狙撃された日」を出版した株式会社三一書房の取引銀行に対する照会を行った。本当に「捜査の必要性」があることを何らかの根拠に基づいて明らかにされたい。
 (6)「捜査の必要性」は同書の内容から生じたのか、それとも出版したことによって生じたのか。また、同様の内容の書籍や同書の続編が出版された場合、また「捜査の必要性」が生じるのか。
六 捜査の公正について
 (1) 日本にいわゆる「司法取引」を容認する法律はあるか。
 (2) 報道によると、オウム真理教の林郁夫受刑者に対する無期懲役の求刑や大蔵省接待汚職事件での贈賄側の略式起訴などを「司法取引」と指摘する意見があるが、政府はどのように受け止めているか。
 (3) 銃砲刀剣類所持等取締法(以下、銃刀法)違反の拳銃共同所持で起訴された被告はこれまで何人いるか。
 (4) 報道によると、捜査当局は銃刀法違反の拳銃共同所持で、指定暴力団「山口組」の桑田兼吉ら幹部を逮捕・起訴または指名手配した。しかし、同じ「山口組」幹部の中野太郎は、別の暴力団に襲撃された際に護衛が襲撃犯を逆に射殺しているのに、共同所持に問われていないというが、事実か。事実とすれば、それはなぜか。
 (5) 政府は警察や検察が公正を疑われるような捜査をしないように、どのような努力を続けてきたか。
七 組織犯罪対策法案と「警察が狙撃された日」について
 (1) 「警察が狙撃された日」の内容が事実であれば、日本の警察はたださなければならないあまりに多くの課題を負っているように考えるが、政府はどう考えるか。
 (2) 組織犯罪対策法案に盛り込まれている通信傍受は、警察の刑事部門と公安部門のうち、どちらが担当することになるか。ケース・バイ・ケースとすれば、刑事、公安が担当するケースをそれぞれ明らかにされたい。
 (3) 金融機関に対する「疑わしい取引」の届け出義務について、捜査当局が届け出られた内容を悪用した場合、処罰はどうするのか。
 (4) 公安警察の活動は性質上、秘密の内容も多いと推察され、公平かつ正確に実態を把握するのは難しいと考えるが、政府は適正に活動しているかどうか、どのような方法で監督しているのか。
 (5) 組織犯罪対策法案を国会に提出した政府が、現在の警察に通信傍受などをまかせて適正に運用されると確信した根拠は何か。具体的に明らかにされたい。

 右質問する。



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