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答弁本文情報

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平成十年九月四日受領
答弁第三号

  内閣衆質一四三第三号
    平成十年九月四日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出「警察が狙撃された日」などに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出「警察が狙撃された日」などに関する質問に対する答弁書



一の(1)について

 御質問の警察庁長官狙撃事件(以下「長官狙撃事件」という。)は、治安に対する挑戦ともいうべき極めて重大な事件であり、現在、警視庁において所要の捜査を鋭意推進しているところであると承知している。

一の(2)について

 都道府県警察の活動については、その時々の治安情勢等に応じ、関係所属間で総合的、弾力的な運用が行われているところであり、長官狙撃事件の捜査体制についても、警視庁において、当時の治安情勢等を踏まえ、総合的に判断した結果、公安、刑事両部門が合同して公安部長を長とする特別捜査本部を設置し、捜査を推進してきたところであると承知している。

一の(3)について

 御質問のような事実については承知していない。

一の(4)について

 警察庁長官については、警視庁において従前から所要の警戒を実施しており、地下鉄サリン事件が発生したことに伴い、警戒の強化を図っていたところであるが、長官狙撃事件発生後においては、警戒方法等の見直しを更に行い、警戒の万全を期しているものと承知している。

一の(5)について

 警察においては、当時の情勢にかんがみ、内閣総理大臣、国務大臣その他の要人について、警戒の強化を図っていたところであると承知している。

一の(6)について

 御質問のような事実については承知していない。

一の(7)について

 警戒の強化を図っていたにもかかわらず、結果的に事件の発生をみたことについては、警戒方法等が犯行を防ぎ得るものでなく、その間隙をつかれたと承知している。

一の(8)について

 警察庁長官を狙撃するという事案の重大性にかんがみ、警察においては、事件を未然に防止できなかったことにつき、警備上の責任者であった事件当時の警視総監及び警視庁警備部長を国家公安委員会訓戒、警視庁南千住警察署長らを減給とするなど、合計九名の関係者に対する処分を平成八年四月四日付けで行った。
 これらの処分は、今後の警戒の万全とこの種事案の再発防止を期するために行われた厳正なものであったと承知している。

二の(1)について

 確定した無罪判決については、これを謙虚に受け止めてきたところであり、一層緻密かつ適正に捜査を推進すべきものとの教訓を得てきている。

二の(2)について

 捜査を行うに当たっては、先入観等にとらわれることなく、証拠によって事案の真相を明らかにしなければならないと考えている。

二の(3)について

 長官狙撃事件は、オウム真理教関連事件の捜査が行われている最中に発生したものであり、警視庁においては、オウム真理教との関係も含めて、様々な角度、観点から捜査を行ってきたところであると承知している。

二の(4)について

 警視庁において犯行現場付近の目撃者等に対する聞き込みを実施していると承知しているが、捜査の具体的内容にかかわる事柄については答弁を差し控えたい。

二の(5)について

 長官狙撃事件については、警視庁において、様々な角度、観点から捜査を行ってきたところであり、現在においても、鋭意推進しているところであると承知している。

二の(6)について

 オウム真理教関連事件の全容及び長官狙撃事件とオウム真理教との関係の解明のため、警察において、平田信を始めとするオウム真理教関係警察庁指定特別手配被疑者三名の発見検挙に向け、追跡捜査を鋭意推進しているが、残念ながらいまだ検挙には至っていない。今後ともこれら被疑者の早期検挙に向け、警察においては所要の捜査を推進していくものと考える。

二の(7)について

 平成六年九月に警察庁科学警察研究所において、山梨県西八代郡上九一色村の土壌からサリンの副生成物を検出した事実はないが、同年十一月十六日に同研究所において、同村で採取された土壌を分析し、サリンの残渣物を検出している。
 このことを踏まえ、警察においては、引き続き情報収集等の所要の捜査に努めていたものと承知している。

三の(1)について

 御質問のような投書があったのは事実であると承知している。

三の(2)について

 警視庁においては、犯行を自認している警視庁の元警察官(以下「元警察官」という。)の供述の内容が目まぐるしく変遷し、あいまいな点や矛盾が多く、また、これを補強する証拠も得られず、いまだ報告できる段階にないとの判断をしていたため、警察庁への報告が遅れることとなったものと承知している。

三の(3)について

 警察においては、元警察官がオウム真理教に警察の内部資料を渡したこと、元警察官が長官狙撃事件の犯行を自認する供述をしていることについての警察庁への報告が遅れたことなどによって、警察に対する信頼を失墜させた責任により、これらの不祥事が発生した当時の警視庁副総監、刑事部長、公安部長、警務部参事官、本富士警察署長らを減給とするなど、合計九名の関係者に対する処分を平成八年十一月二十八日付けで行った。

三の(4)について

 平成九年一月十七日に東京地方検察庁次席検事が御質問の趣旨の見解を発表した事実はないが、同年六月十七日に同検察庁次席検事が行った記者会見の際、御質問の趣旨の発言をした事実があるものと承知している。
 また、同記者会見においては、同次席検事が記者からの質問に答え、おおむね次の発言をしたものと承知している。
 @ 警視庁から送致を受けていた元警察官による地方公務員法違反被疑事件については、同人が懲戒免職処分を受けていることなど諸般の事情を勘案して、起訴猶予処分とした旨
 A 元警察官が、長官狙撃事件に関して犯行を自認する供述をしているとの報道がなされたことなどから、事案の重大性や特殊性にかんがみ、地方公務員法違反被疑事件に関する捜査と並行して、同人の当該供述の信用性を検討するとの観点から、所要の捜査を実施した旨
 B 元警察官の全供述について、警察における取調べの過程で当該供述が形成された具体的経緯の検討、同人の供述と裏付け捜査の結果との突き合わせ等を詳細に行ったところ、警察の取調べについては供述の任意性に影響を及ぼすような特段の事情はなかったと認められるものの、同人が犯行についていったん失念していたものをその後突然思い出したと供述していること、けん銃の処分など基本的かつ重大な点において供述に不可解な変遷があること、神田川に投棄したとされるけん銃について徹底的に捜索したにもかかわらず未発見である上、犯行に使用したけん銃の試射を行った旨供述するものの、その試射場所が特定されないなど重要な点につき供述の裏付けが得られていないことなど不自然、不可解な点があることから、同供述の信用性には疑問を抱かざるを得ない旨
 C 学問上は、自らが行っていない行為について、あたかも自らが本当に行ったかのような供述をする事例があるとの指摘がある旨
 D テレビ報道では、元警察官の狙撃状況に関する供述が「秘密の暴露」に該当するとされているようであるが、同供述は「秘密の暴露」には該当せず、このような誤った証拠評価が一般視聴者に誤解を生じせしめたとすれば大変残念なことである旨
 E 元警察官について長官狙撃事件と全く関係がないと結論付けたわけではない旨
 F 今後の捜査については、引き続き警視庁において鋭意推進するものと承知しており、同検察庁としても、その真相解明に向け、警視庁と協力して適切に対処していきたい旨

三の(5)について

 当時、元警察官の供述が非常にあいまいであったことから、警視庁においては、同人がオウム真理教に警察の内部資料を渡した具体的な状況について引き続き所要の調査を行っていたものであると承知している。

三の(6)について

 御質問のような事実については承知していない。

三の(7)について

 警視庁においては、元警察官の供述の内容が目まぐるしく変遷し、あいまいな点や矛盾が多かったことから、捜査手段等を選びながら慎重に裏付け捜査を進めていたものと承知している。

三の(8)について

 長官狙撃事件に関し、当時の倉田国家公安委員会委員長と警察庁との間で行われた質問及び報告の内容等については、捜査の具体的内容にかかわる事柄であるので、答弁を差し控えたい。
 また、平成七年三月二十三日に滋賀県警察においてオウム真理教のフロッピーディスク等を押収したところであるが、その解読、分析等に時間を要したことから、警視庁において、オウム真理教関係者である疑いがあるとして、元警察官の地下鉄サリン事件特別捜査本部への派遣を解除したのが同年四月一日になったものであると承知している。

三の(9)について

 警視庁においては、元警察官の供述の裏付け捜査と並行して、同人の精神状態、健康状態を把握する必要があったことから、同人の同意を得て複数の専門家に面接を依頼し、所見を求めていたものであり、御指摘の「民間人のカウンセラー」は、そのうちの一人であると承知している。
 過去におけるこれに類する事例については承知していないが、当該専門家による面接活動を含め、元警察官に対する捜査は適正に行われたものと承知している。

三の(10)について

 警視庁においては、元警察官に対して、任意で事情聴取を行っていたものと承知している。

三の(11)について

 御質問のような事実はないものと承知している。

三の(12)について

 御質問のような「人事抗争」については承知していない。

四の(1)について

 警察庁警備局警備企画課の所掌事務は、警備警察に関する制度及び警備警察の運営に関する企画及び調査に関すること、局の事務の総合調整に関すること、警備警察に関する法令の調査及び研究に関すること、警備警察に関する資料の整備及び保存に関すること、警備情報の総合的な分析及びこれに関する調査に関すること並びにこれらのほか局内の他の所掌に属しないこと(警察庁組織令(昭和二十九年政令第百八十号)第十四条の二)である。

四の(2)について

 警察庁においては、局部単位の定員は定められているものの、局部内における各課への人員の配置については、その時々の治安情勢、行政需要等に応じて総合的、弾力的な運用が行われており、各課への理事官の配置についても弾力的な運用が行われているところである。
 また、警察庁の課に置かれる理事官は、命を受け、課の所掌事務のうち重要事項に係るものについての調査、企画及び立案に参画し、並びに関係事務を総括整理している。

四の(3)について

 警察庁警備局警備企画課には、「裏理事官」と呼ばれるポストはない。なお、御質問の六人の警察庁職員の経歴は、別紙のとおりである。

四の(4)について

 警察庁警備局の所掌事務のうち、警備情報に関すること及び都道府県警察が行う警備警察に関する事務の調整に関することは、警察庁組織令第十四条の二から第十七条までの規定に定めるところにより、同局の各課において分掌している。

四の(5)について

 警察庁には、「チヨダ」という組織はない。

四の(6)について

 警察庁の予算は、各局別に区分されていないので、警察庁警備局の平成十年度予算については答弁することができない。

四の(7)について

 警察当局が組織的に警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第二条第二項の規定に違反するような権限の濫用に及んだ事例については承知していない。

四の(8)について

 警察においては、職員に対して、基本的人権を尊重した適正な警察活動の重要性について、会議、通達等により必要な指導を行うとともに、採用時教養、職場教養等の機会における教養を行っているところである。

五の(1)について

 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第百九十七条第二項の規定に基づく照会の件数については、統計がないので答弁することができない。

五の(2)について

 刑事訴訟法第百八十九条から第百九十一条までの規定においては、検察官、検察事務官及び司法警察職員が犯罪の捜査を行うものと定められており、これらの者が同法第百九十七条第二項の規定に基づく照会を行うこととなる。

五の(3)について

 捜査の過程で得られた資料の取扱いについては、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)のほか、犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)に、秘密の保持に関する規定が置かれている。また、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上知ることができた秘密を漏らした場合は、刑事罰や懲戒処分の対象となる。

五の(4)について

 刑事訴訟法第百九十七条第二項の規定に基づく照会は、犯罪捜査の必要性から行うものであり、犯罪捜査の必要性がないのにこのような照会を行うことはあり得ないものと考えている。

五の(5)及び(6)について

 日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する第三回質問に対する答弁書(平成十年七月十七日内閣衆質一四二第五八号)四の(3)についてで答弁した「犯罪捜査の必要性」があることの根拠及び当該必要性の内容については、捜査の具体的内容にかかわる事柄であるので、答弁を差し控えたい。
 また、「同様の内容の書籍や同書の続編が出版された場合」については、仮定を前提とした御質問であるので、答弁を差し控えたい。

六の(1)について

 我が国においては、いわゆる「司法取引」の制度を定めた法律はない。

六の(2)について

 林郁夫被告人に対する無期懲役の求刑については、組織犯罪対策法案と死刑に関する質問に対する答弁書(平成十年五月二十九日内閣衆質一四二第二八号)四の(2)についてで答弁したとおり、いわゆる「司法取引」によるものではない。
 大蔵省職員をあぐる贈収賄事件における贈賄被疑者の処分については、検察官において、各被疑者ごとに、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況等の各般の事情を考慮して行ったものであり、いわゆる「司法取引」によるものではない。

六の(3)について

 御質問の「拳銃共同所持」、すなわち、けん銃所持罪の共同正犯として起訴された被告人の数については、統計がないので答弁することができない。

六の(4)について

 御質問の「「山口組」幹部の中野太郎」が襲撃された事件は、平成八年七月十日、京都府下において、中野太郎中野会会長が襲撃された事件と考えられるが、現在までのところ、同事件に関して、同人が銃砲刀剣類所持等取締法違反の共同正犯として送致ないし起訴されている事実はないと承知している。なお、同事件に関しては、京都府警察において暴力団員等被疑者八名を殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反等で逮捕し、京都地方検察庁においていずれも起訴しているところであるが、他の者の関与については、京都府警察において引き続き捜査中であると承知している。

六の(5)について

 警察及び検察においては、平素から、適正捜査の推進及びそのための指導等に努めてきたところである。

七の(1)について

 個人の著述の内容については論評する立場にない。なお、我が国の警察は、公共の安全と秩序の維持という責務を果たすため、不偏不党かつ公平中正を旨として、法令に従い、適正な職務執行を行っているところである。

七の(2)について

 御質問の通信傍受は、犯罪捜査のために行われるものであり、具体的な事件の内容、その時々の治安情勢等に応じ、当該事件の捜査を担当することとなる部門が実施することとなる。したがって、警察の各部門がどのような場合に通信傍受を担当するかについては、具体的な事件の内容、その時々の治安情勢等により異なるため、答弁することができない。

七の(3)について

 検察官、検察事務官又は司法警察職員が、国家公務員法第百条第一項、地方公務員法第三十四条第一項等の守秘義務に違反して、その職務上知ることのできた秘密を漏らした場合には、国家公務員法違反、地方公務員法違反等の罪として処罰の対象となるものとされている。

七の(4)について

 国家公安委員会は、警察法第五条第一項の任務を遂行するため、同条第二項に掲げる事務について警察庁を管理することとされており、また、警察庁長官は、国家公安委員会の管理に服し、警察庁の所掌事務について都道府県警察を指揮監督することとされ、必要に応じ、都道府県警察から報告を徴するなどして都道府県警察の事務執行の実態を把握し、その活動が適正に行われるよう指導、調整等を行っているところである。

七の(5)について

 我が国の捜査機関は、法令に従った適正な職務執行に努めており、また、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案においては、傍受令状の請求をすることができる者を限定するなど、関係者の権利保護及び処分の適正な実施の担保に十分に配慮しているところであり、同法案による通信傍受の制度は適正に運用されるものと考えている。



別紙

別紙

別紙
(注)上記の経歴は、平成10年8月10日現在のものである。





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