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平成十年十二月十四日提出
質問第一六号

矯正施設の処遇に関する質問主意書

提出者  保坂展人




矯正施設の処遇に関する質問主意書


 日本政府が一九七九年に批准した国際人権〈自由権〉規約七条には「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取り扱い若しくは刑罰を受けない」、一〇条一項には「自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる」とそれぞれ規定されている。また、一七条では私生活への恣意的な、もしくは不法な干渉を禁止しているが、現在の矯正施設では右規約や国連被拘禁者処遇最低基準規則に則った処遇となっているかどうか、疑問の声が寄せられた。日本国憲法が保障する基本的人権の侵害と思われるケースもあるという。本年一〇月、ジュネーブ国連代表部で、規約人権委員会が開かれ、日本の被拘禁者への処遇に対して改善勧告が出されたこと、拷問禁止条約の批准準備に入っていることなどを踏まえ、以下質問する。

一 健康管理と医療
 (1) 被拘禁者の健康管理と医療について、国連決議や被拘禁者処遇最低基準規則などで、国際的な基準は示されているか。その内容と日本の現状を説明されたい。
 (2) 被拘禁者が病気を訴えたが、診察などを受けられず、日弁連や地元の弁護士会から警告や勧告された事例は過去三年間に何件あるか。具体的にどのようなケースで、政府は警告などに対してどう考えているかを示されたい。
 (3) 各矯正施設には常勤医師、看護婦は何人勤務しているか。個別に答弁されたい。また、「代用監獄」の医師、看護婦はどのように確保されているか。
 (4) 被拘禁者が病気になった際の治療費は誰が負担するのか。また、被拘禁者は希望する医師の診断を受けられるか。
 (5) 慢性疾患(生活習慣病等)や高齢者の被拘禁者にはどのような配慮をしているか。
 (6) 長期収容者(死刑確定者を含む)には「拘禁症」と呼ばれる特有の神経症が発生するケースがあるようだが、どのように対応しているか。
 (7) 熊本刑務所では、夏期においても冬夏兼用の毛布を用いなければならないという。これでは体温調整が難しく、健康管理に問題が生ずるのではないか。夏季用寝具の支給はできないのか。全国の矯正施設でも、同じ処遇が取られているのか。また、夏季、身体洗浄用のタオルを洗うことが夕方六時に一回しか許可されておらず、翌日まで汗臭くなったタオルを使わざるを得ないそうだが、このような処遇にどのような合理性があるのか。
 (8) 熊本刑務所の独居房は、就寝時も監視のため室内灯がついているため、睡眠が妨げられるという収容者からの訴えがあった。他の矯正施設でも同じか。
 (9) 東京拘置所で心理状態が不安定な死刑確定者をより環境の悪い房に移し、さらに症状を悪化させたという訴えがあるが、承知しているか。
二 面会
 (1) 総務庁の調査によると、被拘禁者との面会は各矯正施設によって異なり、平日午後三時半で受付を締め切り、休日は面会させないところもあれば、休日の面会を認めるところもあるという。総務庁は一九九三年度の勧告書で、面会の機会を拡大するように提言したが、その後状況は改善されたか。
 (2) 未決の被拘禁者とその弁護人の通信が検閲され、文書の一部が削除されたケースがあるとの訴えがあった。承知しているか。
 (3) 被拘禁者や死刑確定者と弁護士との面会、通信には全面的に立ち会い、検閲が実施されている。再審請求のための接見も同様で、時間も一回三〇分に制限されている。こうした取扱いは、国際人権〈自由権〉規約の一四条三項、国連被拘禁者人権原則一八に違反していないか。
 (4) 国連規約人権委員会の日本政府に対する勧告(第二一)では「委員会は死刑確定者の拘禁状態に付いて、引き続き深刻な懸念を有する。特に、委員会は、面会および通信の不当な制限ならびに、死刑確定者の家族および弁護士に執行の通知を行わないことは、規約に適合しないと認める。委員会は死刑確定者の拘禁状態が、規約七条、第一〇条一に従い、人道的なものとされることを勧告する」としている。政府はこの勧告をどう受け止めたか。
三 言論の自由
 (1) 国連規約人権委員会の日本政府に対する勧告(第二七)は「日本の矯正施設の制度の多くの側面に深い懸念を有しており、これらは、規約第二条三(a)、第七条及び、第一〇条との適合性に重大な疑問を提起するものである」としているが、この勧告をどう受け止めるか。
 (2) 熊本刑務所で、被拘禁者が私物のノートに職員らの氏名などを書き込もうとして禁止されたとの訴えがあったが、事実か。他の矯正施設でも同様か。
四 領置物管理規則と外国人被拘禁者の処遇
 (1) 一九九七年一〇月から、全国の矯正施設で施行された「領置物管理規則」に基づく領置物の規制は在監者が居房で使用する訴訟関係資料を収容期間等を考慮せず、総量規制の対象としている。現行監獄法は被拘禁者本人の意志によらない領置物の処分は、それが保存に適さない場合においてやむを得ず破棄することを認めているにすぎず、領置物の制限は設けていない。同規則は、監獄法五一条に違反するのではないか。また、国連被拘禁者人権原則三六、自由権規約一四条三項Bにも違反しているのではないか。
 (2) 国連規約人権委員会への第四回報告書では、刑事施設にCD ― ROM翻訳機を導入したこと、食事に宗教上の配慮を行ったこと以外言及がないが、その他に改善点はないのか。
 (3) 外国人被拘禁者のため、外国語を話せる職員は各矯正施設に何人いるか。施設ごとに外国語の種類、人数を明らかにされたい。国連被拘禁者人権原則一四では、自国語での権利義務の告知を保障しているが、同原則に違反する状態によもやなっていないか。
五 懲罰
 (1) 国連規約人権委員会は日本政府に対し「革手錠等、残虐かつ非人道的取扱いとなり得る保護措置の頻繁な使用」の改善勧告を行ったが、この勧告をどう受け止めているか。
 (2) 厳正独居処遇は諸外国において存在しない制度とされる。拷問または、残虐な、非人道的な、もしくは品位を傷つける取扱いを禁止している国際人権〈自由権〉規約七条、自由を奪われたすべての者に対して、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重した取扱いを保障した同規約一〇条に違反したものではないのか。
 (3) 懲罰は、国連被拘禁者処遇最低基準規則二九や国連被拘禁者人権原則三〇は、規律違反となる行為を、法律または行政庁の定める規則で定められ、公表されるものとしている。しかし、わが国の監獄法は、五九条で「在監者紀律に違いたるときは懲罰に処す」と定めるだけで、同法の施行規則にも懲罰の要件の定めはない。実際には、各刑事施設ごとに、その長が定める「所内生活の心得」のなかの遵守事項によって定められているが、現在、各刑事施設でどのような懲罰の規定が定められているのか述べられたい。
 (4) 被拘禁者が居房内で、瞬時「あっ」ないし「あー」と声を発したことが大声を出したとして、一〇日間の軽屏禁とされたとの訴えがあるが、そのような措置が取られているのか。
 (5) 被拘禁者が処遇問題に関する請願を取り下げるよう職員から要請され、また、このような行為を行うことは「仮釈放がなくなる」などの圧力を受けたとの訴えがあるが、事実か。刑務官に対して、被拘禁者の権利についての教育は行われているのか。
 (6) 革でできた特性の手錠を革帯に固定し、苦痛を増すような使用方法がとられ、手錠部分にも、金属手錠やビニール紐と併用してわずかな遊びの部分をなくし、緊縛度を高める使用方法が数日以上も継続され、その間、食事・排泄は介添え人に頼るか、口だけを用いる、犬食い、垂れ流し状態となることがあるといわれるが事実か。故意に苦痛を増すような使用方法は法務省の一九五七年一月二六日付の通達でも厳しく禁止されているが、通達以降に問題となった例はあるか。
 (7) 一九九八年一月二一日、東京高等裁判所は、千葉刑務所の被拘禁者が、革手錠・保護房懲罰を受けたことに対して、行き過ぎとして賠償を命ずる判決を言い渡し、国側が控訴せず、判決が確定した事例があるが、国がなぜ控訴を断念したのか理由を明らかにされたい。

 右質問する。





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