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答弁本文情報

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平成十一年三月二日受領
答弁第一六号

  内閣衆質一四四第一六号
    平成十一年三月二日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出矯正施設の処遇に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出矯正施設の処遇に関する質問に対する答弁書



一の(1)について

 御質問に係る国際連合決議等には、被拘禁者処遇最低基準規則(千九百五十七年(昭和三十二年)国際連合経済社会理事会承認)、形態を問わず抑留又は拘禁されている者の保護に関する原則(千九百八十八年(昭和六十三年)国際連合総会採択。以下「保護原則」という。)及び拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰から被拘禁者及び被抑留者を保護することにおける保健職員、特に医師の役割に関する医学倫理原則(千九百八十二年(昭和五十七年)国際連合総会採択)があり、これらには、例えば、被拘禁者に対し、適切な医療措置が保障されるべきこと、入所時に医師の診断を行うべきこと等が規定されている。
 我が国の行刑施設においては、疾病の治療を行うことはもとより、生活環境についても衛生上の措置を講ずるなど、被収容者の健康管理及び医療に万全を期しており、国際的な基準を満たしていると考えている。

一の(2)について

 御質問のような事例は、調査した限り、六件あり、その概要は、別表一のとおりである。
 なお、弁護士会から警告や勧告があった場合は、その都度事実関係を調査し、必要があれば所要の措置を講ずることとしているが、別表一に掲げた事例については、いずれも当該施設の処置に不当な点はないと考えている。

一の(3)について

 平成十年度において、行刑施設に配置されている医療職俸給表(一)適用職員(医師)の定員及び医療職俸給表(三)適用職員(看護婦(士))の定員は、別表二のとおりである。
 また、いわゆる代用監獄においては、常勤の医師及び看護婦は配置されていないものの、各施設ごとに嘱託医が指名されており、月二回、嘱託医による被留置者の定期健康診断を行うとともに、被留置者が疾病等の場合には、必要に応じて病院等に護送するなど、被留置者が適切な治療を受けることができるようにしている。

一の(4)について

 行刑施設の被収容者に対する疾病の治療は、原則としてその施設の医師が行っている。また、治療の費用は、次に述べる自費治療の場合を除き、国が負担している。
 なお、監獄法(明治四十一年法律第二十八号)第四十二条は「病者医師ヲ指定シ自費ヲ以テ治療ヲ補助セシメンコトヲ請フトキハ情状二因リ之ヲ許スコトヲ得」と定めているが、これは、治療上重要な意味を持つと認められる場合等に、施設長の判断により、被収容者の指定する医師による自費治療を許可することができるとしたものである。

一の(5)について

 行刑施設においては、慢性疾患(生活習慣病等)の患者については、必要に応じて薬物療法や食事療法を実施し、また、高齢者のうち必要がある者については、例えば、柔らかく煮炊きした食事の給与、冬季の衣類寝具の増貸与、定期的な健康診断の実施、ゲートボール、輪投げ等の軽度の運動による運動量の確保、作業時間の短縮等の配慮をしている。

一の(6)について

 御質問に係る疾病は、通常、拘禁反応と呼ばれ、長期収容者等に限った疾病ではなく、その病態も多様であるが、行刑施設においては、同疾病患者に対し、精神療法、薬物療法等の治療を実施するとともに、症状が改善されない場合には、医療刑務所等に移送の上、更に専門的な治療を実施している。

一の(7)について

 熊本刑務所において、被収容者に貸与する毛布が年間を通して同一の規格であり、また、全国の行刑施設においても、ほぼ同様の状況であるが、各施設とも、時候により毛布や掛布団の貸与枚数を変更するなど被収容者の健康管理につき適切な取扱いがなされており、夏季用の寝具を貸与する必要はないものと考えている。
 また、熊本刑務所においては、同所における水道水の使用量を節約する必要性からタオルの洗浄に一定の制約を設けているが、被収容者から申出があり、必要性が認められる場合には、適宜洗浄を認めるなどの配慮をしており、特段の問題はないと考えている。

一の(8)について

 熊本刑務所を含め全国の行刑施設で、夜間、室内灯を点灯させているが、就寝時には睡眠の妨げとならないよう照度を落としている。このような取扱いは、職員が巡回視察等により被収容者の動静を的確に把握するために必要不可欠なものであると考えている。

一の(9)について

 御質問のような事例は、調査した限り、見当たらない。

二の(1)について

 総務庁からの受刑者の面会についての勧告を受け、調査時において、面会受付終了時刻を午後三時三十分としていた刑務所十施設につき、面会受付終了時刻を午後四時まで延長する措置が採られ、また、開放的処遇を実施している施設のうち、調査時において、休日における面会を制度的に実施していなかった十五施設につき、これを実施することに改める措置が採られた。

二の(2)について

 御質問のような事例は、調査した限り、最近では次の二件がある。
 その一は、弁護人から被告人あてに送付された信書に新聞記事の写しが同封されていたが、当該同封物は、他の被収容者が施設内で自殺したことを報道したものであり、自殺についての具体的方法が記載されており、身柄の確保という未決勾留の目的を阻害するおそれが認められたことから、当該同封物の交付を不許可としたものである。
 その二は、裁判所から接見等禁止決定がなされている被告人が弁護人あてに発信を願い出た信書中に、接見等が禁止されている者にあてた内容であることが明らかな部分があったことから、当該部分の発信を不許可としたものである。

二の(3)について

 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三十九条第一項等の規定に基づき、被告人又は被疑者と弁護人等との接見については、立会を付さず、時間も制限していないが、その余の場合には、時間を三十分以内とした上、行刑施設の職員が立ち会うこととしており、これは、再審開始決定がなされる前の受刑者等とその弁護人等との接見においても同様である。また、監獄法第五十条及び監獄法施行規則(明治四十一年司法省令第十八号。以下「施行規則」という。)第百三十条第一項に基づき、被収容者が発受する信書は、所長がこれを検閲することとしている。このような取扱いは、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号。以下「規約」という。)第十四条3に違反するものではない。
 保護原則第十八を一部充足していない面はあるが、被収容者の身柄を確保し、その拘禁の目的に応じた処遇を行う等の行刑施設の責務を果たすためには、やむを得ないものと考えている。なお、保護原則は、勧告的な性格を持つものであり、法的拘束力はない。

二の(4)について

 死刑執行と法務省に関する質問に対する答弁書(平成十一年一月二十六日内閣衆質一四四第一号)三の(4)についてでお答えしたとおり、死刑確定者については、心情の安定に配慮しつつその身柄を確保するという収容の目的等にかんがみ、面会や信書の発受に一定の制約を設け、あるいは執行前ではなく、執行後速やかに家族等に連絡する取扱いは、規約第七条及び第十条1に違反するものではないと考えているが、御指摘の勧告は一つの意見として謙虚に受け止めており、引き続き、死刑確定者に対し適正な処遇を行ってまいりたい。

三の(1)について

 行刑施設における規約の実施については従来から適正を期しているところであるが、規約第二十八条1に基づき設置された人権委員会(以下「委員会」という。)の見解を一つの意見として謙虚に受け止め、改善すべき点があれば改善を図ってまいりたい。

三の(2)について

 熊本刑務所における御質問のような事例は、調査した限り、見当たらない。
 なお、一般に、行刑施設においては、被収容者が私物のノートに職員等の氏名等を記入することを原則として禁じている。

四の(1)について

 御質問に係る被収容者の領置物の管理に関する規則(平成九年法務省令第三十八号。以下「規則」という。)は、各行刑施設において、その限られた人的、物的状況の下で、被収容者間の処遇の公平に配慮しつつ、領置物の適正かつ良好な管理を図るため、被収容者一人当たりの領置物の総量並びに被収容者の自弁物品の購入及び差入れに関し必要な事項を定めたものであり、次の理由から、御指摘の監獄法等には違反しないものと考えている。
 御質問に係る在監者が使用する訴訟関係資料のうち、監獄法第四十八条に規定する「裁判所其他ノ公務所ヨリ在監者二宛テタル文書」については、同法第四十九条が「本人閲読ノ後之ヲ領置ス」と規定している趣旨を勘案し、領置物の保管量にかかわらず領置することとしているが、それ以外のものは、一人当たりの領置物の総量の中に含めて取り扱うこととしている。
 規則は、領置物を保管、管理するための領置倉庫の保管能力やその保管、管理に従事する職員数には限界があり、特に、特定の被収容者が多量の領置物を有するため領置倉庫の保管能力が限界に達し、領置物の適正かつ良好な管理に支障を来たしている行刑施設もあるという実情にかんがみ、監獄法第五十三条第一項の委任の下に、所長が各施設の領置倉庫の保管能力の状況に応じて被収容者一人当たりの領置物の総量を定め、その量を超えた場合に、その者の購入又は差入れを許さないことができることとしたものであり、限られた人的、物的条件の下で被収容者間の処遇の公平に配慮しつつ、領置物の適正かつ良好な管理を図るため、必要かつ合理的な制限を課すものである。規則に基づき各行刑施設において定められた被収容者一人当たりの領置物の総量は、相当量の保管を可能とする合理的なものとなっている。このように、規則は、監獄法の委任に基づき領置物の適正かつ良好な管理を図ろうとするものであり、また、総量を超える場合について自弁物品の購入又は差入れを制限するというものであって、領置物を強制的に廃棄することを規定したものではないのであるから、監獄法第五十一条に違反するものではない。
 御指摘の保護原則第三十六2は、捜査中又は公判中の者で逮捕又は抑留下にある者に対して、「抑留の目的のために、捜査の過程若しくは裁判の実施に対する妨害の防止のために又は抑留の場所の安全及び秩序の維持のために厳密には必要とされない制限を課すことは禁止されなければならない。」としているが、規則は、前記のとおり各行刑施設の具体的必要性に応じた合理的制限を行うものであり、保護原則に違反するものではない。
 次に、御指摘の規約第十四条3(b)に規定する「防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡すること。」との関係については、規則は、訴訟関係資料を閲読し検討すること自体には何ら制限を加えるものではないこと、一人当たりの領置物の総量の範囲内で必要な訴訟関係資料の保管をすることができ、また、その総量を超える場合であっても、他の領置物を宅下げすることなどにより領置スペースを空けて新たに訴訟関係資料の保管ができること等を考慮すれば、規約第十四条3(b)に違反するものではない。
 規則の運用に当たっては、防御権に不当な制限を加えることのないよう配慮してまいりたい。

四の(2)について

 外国人被収容者処遇の改善を図るため、例えば、次の措置を講じている。
 平成七年、新たに、法務省矯正局総務課に国際企画官を置き、国際関係事項に係るものの調査及び企画に関する事務に当たらせている。
 同年、府中刑務所に、また、平成九年、大阪刑務所に、それぞれ国際対策室を置き、外国人被収容者の処遇に関する翻訳及び通訳に関する事務並びに外国人被収容者の処遇に関する調査及び関係機関との連絡調整に関する事務を行わせている。

四の(3)について

 行刑施設における日常会話レベル以上の外国語の能力を有する職員数は、平成十年四月一日において、別表三のとおりである。
 被収容者に対する本人が理解できる言語による権利義務の告知については、別表三に計上したような外国語の能力を有する職員に通訳させ、当該施設に通訳できる職員がいない場合には、府中刑務所及び大阪刑務所の国際対策室や近隣施設の応援により通訳を行い、また、在日外国大使館職員等外部協力者の確保に努めて職員が対応できない部分を補完すべく配慮しているほか、被収容者の権利義務について外国語に翻訳した冊子を数箇国語分用意しておき、これを交付するなどし、その徹底を図っているところであり、御指摘の保護原則第十四に違反する状態にはないものと考えている。

五の(1)について

 三の(1)についてでお答えしたとおり、行刑施設における規約の実施については従来から適正を期しているところであるが、委員会の見解を一つの意見として謙虚に受け止め、改善すべき点があれば改善を図ってまいりたい。

五の(2)について

 監獄法第十五条は「在監者ハ心身ノ状況二因リ不適当ト認ムルモノヲ除ク外之ヲ独居拘禁二付スルコトヲ得」と定め、施行規則第二十三条は「独居拘禁二付セラレタル者ハ他ノ在監者ト交通ヲ遮断シ召喚、運動、入浴、接見、教誨、診療又ハ巳ムコトヲ得サル場合ヲ除ク外常ニ一房ノ内ニ独居セシム可シ」と定めているが、これらに基づく処遇は、被収容者の人格等を十分尊重して行われており、規約第七条及び第十条1に違反するものではないと考えている。

五の(3)について

 遵守事項は、各行刑施設において、その長が定め、当該施設の被収容者に対し告知し、冊子にして居房内に備え付けているものであるが、その内容は、例えば、「逃走し、又は逃走を企ててはならない。」、「他人とけんか若しくは口論し、又はすることを企ててはならない。」など、行刑施設の規律及び秩序を維持し、被収容者の安全で平穏な生活を確保する上で、被収容者に遵守させることが必要不可欠な事項を分かりやすく列挙したものである。

五の(4)について

 各行刑施設においては、遵守事項として、大声や騒音を発するなどして静穏を害してはならない旨を定めており、被収容者の声を発した行為が、これに反する規律違反行為に該当すると認められる場合には、御指摘のような懲罰が科されることもあり得る。

五の(5)について

 御質問のような事例は、調査した限り、見当たらない。
 なお、刑務官に対しては、被収容者の人権の尊重を図る観点から、各種の研修において、被収容者の権利保障及び権利制限に係る研修、被収容者の人権に関する条約等に係る研修及び主な人権問題に係る研修を実施している。

五の(6)について

 監獄法第十九条に定める「戒具」の一種である革手錠を被収容者に対して使用する際、革手錠の腕輪が脱落するのを防止するために金属手錠を使用したり、腰部に使用するバンドがぶらつくことがないようビニールひもで固定することはあるが、これらは苦痛を増すために行われているものではない。また、革手錠の使用が数日以上に及ぶ事例もあり得るが、食事や排せつの際には、革手錠を一時解除したり、緩めるなどの措置が採られ、あるいは、そのような措置を採ることが不可能な場合には、職員が介添えしており、御質問のような「口だけを用いる、犬食い、垂れ流し状態となる」ことは通常あり得ない。
 なお、御質問に係る通達の発出以降、故意に苦痛を増すような使用方法を行った事例は、調査した限り、見当たらない。

五の(7)について

 御質問に係る判決は、当該事案において、保護房内で、両手後ろの方法により革手錠及び金属手錠を使用する必要が認められないとして、賠償を命じたものである。そして、これに対して上告を提起しなかったのは、平成八年法律第百九号による改正前の民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第三百九十四条及び第三百九十五条第一項各号に定める上告理由が認められなかったからである。



別表一



別表二













別表三












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