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平成十一年六月二十三日提出
質問第三四号

人権に関する質問主意書

提出者  東 順治




人権に関する質問主意書


 [人権」とは人間が人間として人間らしく生きるために法的に保障された権利と言えよう。そして、それは日本国憲法第十一条 ― 第十四条をもって保障されたものであり、世界人権宣言も「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」と宣言している。人権の基盤には人間の尊厳がある。憲法第十三条に[個人の尊重]がうたわれているが、その根底にあるものは[個人の尊厳]であり[人間の尊厳]である。しかし、残念なことに人間が生きていくうえで、一番大切であるこの[人間の尊厳」について今まで個人として、社会として、国として真剣に議論、検討されてきているのだろうか。そのような観点より、人間の原点にもどり、重要課題である人権問題の次の事項について質問する。

一 一九七九年六月二十一日に日本が締結した市民的及び政治的権利に関する国際規約第四十条に基づき、一九九八年十月日本政府から国連人権委員会に対し、第四回報告書が提出され、委員会と日本代表団とで質問、返答、説明、解説など真剣なる議論がなされたが、委員会と日本代表団との間に人権に関する基本的な捉え方に相違があるのでないかと思われる。その審査結果として、委員会側より日本側に対し、三十項目に及ぶ主な懸念事項及び勧告がなされた。今回の第四回報告書に対する勧告を踏まえ、日本政府として人間が生きるうえにおいての根本をなすこの人権問題に対し今後どのように対応、取り組んでいくのか。
二 国際人権規約は、特殊な政治的配慮などから社会権規約と自由権規約に分けられているが、その自由権規約の第一選択議定書となる個人通報制度は個人の人権保護として非常に重要と思われる。一方、憲法第十三条では「個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重」が保障されているが、この条文から解釈すると日本政府として自由権規約の第一選択議定書の批准が必要となると思われるが、今までこの第一選択議定書を批准しなかった理由及び今後の対応についてどのように考えているのか。
三 憲法第九十八条第二項に「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」とある。しかるに日本の法律と日本が締結した条約との間に一部矛盾した条項が見受けられる。
  例えば、民法第九百条第四項に「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、」とあるが、日本が一九七九年六月二十一日に締結した市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十六条では法の前の平等がうたわれ、「出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する」とある。当然のことながら、人権の立場から出生などいかなる理由による差別にも法の下で平等に保護されるべきであり、この民法条文と国際規約との整合性についてどう捉えているのか。
四 一九四八年十二月十日国際連合総会で世界人権宣言が採択されてから、世界的、普遍的な国際人権保障が進められてきているが、平行して人権について非常に関心が深い地域レベルでの人権保障が広がりを見せ、欧州人権条約、米州人権条約が採択され、条約違反に対しては当事国に調停的な働きをする人権委員会を設け、更には当事国を拘束する判決を下すことができる人権裁判所を設置している。
  人権に関する問題は確かに地域、地域によってその感心の度合いも異なるはずだが、欧州、米州と同じように近い将来にはアジア地域においても人権条約のようなもの、また人権裁判所の設置等を日本がリード役になって検討していく構想はあるのか、否か。
五 日本は過去の戦争を通し、周辺の諸国の多くの人民に筆舌に尽くし難い、被害を与えた事実を忘れてはならない。そして、それに対する明確なる謝罪及び被害者に対する個人補償がされていないとの意見がある。一九九八年八月の第五〇会期国連差別防止少数者保護小委員会(人権小委員会)が開催され、「武力闘争時の組織的強姦、性奴隷及び奴隷類似慣行」についてのマクドウーガル最終報告書が公表され、戦争における過去の誤りについての厳しい指摘がされている。
  一九九三年八月には河野洋平内閣官房長官(当時)が、「従軍慰安婦」問題を重大な人権侵害と認める談話をしており、更に一九九五年には村山内閣が戦後処理策として「女性のためのアジア平和国民基金」を創設したが、韓国側から基金の支援を拒否する動きがあり、中断状態になっている。
  このような日韓間の従軍慰安婦問題の経緯、またマクドウーガル報告書の指摘を踏まえ、日本が行ってきた性奴隷いわゆる従軍慰安婦問題について、政府は将来どのように対応していくのか、心身ともに被害を受けた人達に対して国家補償をしていく考えはあるのか。
六 国連人権委員会は日本政府に対し、人権侵害を調査し、不服に対し救済を与えるための制度的しくみが欠けていると指摘しているが、これは我が国において人権に関する思想が国民の間で十分いきわたっていないからとも言える。平成九年三月に法務省に設置された人権擁護推進審議会において今後の人権教育・啓発及び被害者救済制度のあり方について検討されているが、将来的に人権擁護の立場から人権侵害の申し立てに対する調査及び救済のための独立した機関の設置等の構想はあるのか、否か。
七 国連人権委員会は日本の裁判官、検察官及び行政官に対し、国際規約上の人権についての教育が何ら用意されていないことを懸念しているが、それは裁判官、検察官、行政官に限って言えることではなく、日本人全般に対して言えるのでないか。学校教育においても、人権についてしっかりした教育を受けた記憶がなく、恐らく教える立場にある教師等も同じことが言えるのでないだろうか。
  平成九年七月に策定した「人権教育のための国連一〇年に関する国内行動計画」にも家庭、学校、地域社会を通し、人権教育・啓発を行い、警察職員、検察職員、福祉関係職員等の人権に関係の深い職業の人達にも関係機関、NGOの協力を得ながら人権教育・啓発の強化をしていくとのことであるが、今まで具体的にどのように国内行動計画が実施されているのか。
八 人権擁護施策推進法の第二条に国の責務が明記され、その条文に「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策ーーーーーを推進する責務を有する」とある。
  一九九七年度の文部省における人権教育関係事業の実施状況からすると学校教育、社会教育ともに西日本に比べ、東日本がはるかに人権教育が遅れていることが示され、また六年前総務庁が調査した人権問題に関連する講習会、研修会への参加状況でも同じ結果が出ている。
  地域によって人権教育の普及度が異なることは問題であり、国の責務として今後の人権教育及び啓発にどのように公平なる施策がなされていくのか。
九 人権擁護施策推進法による「人権教育及び啓発に関する施策」「被害者の救済に関する施策」更には「人権教育のための国連一〇年に関する国内行動計画」を推進するに当たり、学校、企業、社会などの協力を得ての人権に関する各種情報の収集及び各種調査が必要になってくると思われるが、その点どのように考えているのか。また将来に向けて幅広くそして根強く人権問題を認識していくためにも定期的な情報収集及び調査等の実施もあるのか。
十 人権に関する各種調査を踏まえ、その状況に応じて対応策が計画され、それを実施していくわけであるが、国民に対してその実施結果も含めどのように経過を知らしめていくのか、人権擁護施策推進法による国の責務からして、国会等においてもその実施状況を国民に対して定期的に報告していく義務があるのでないか。
十一 一九九九年六月十八日、人権擁護推進審議会より「人権教育及び啓発に関する施策」についての答申案が発表された。答申案の第三章「人権教育・啓発の総合的かつ効果的な推進のための方策について」に人権教育・啓発のために行政、学校、民間等における支援・役割が記載されているが、それを具体的に実施していくための計画は「人権教育のための国連一〇年」の国内行動計画のなかで行われていくのか。
十二 上記、答申案の審議内容、審議委員メンバーからして、今後の審議については、もっと地方自治体、NGO、一般市民の参加を促し、人権の教育・啓発の方策が具体的実現へとつながる方策になるために、また新たな方策を見つけ出すことも考慮し、実際に現場で人権教育・啓発に携わっている人達の審議会への参加また意見、考え方を十分尊重すべきでないのか。
十三 答申案の「おわりに」のところで、「国を始めとするそれぞれの実施主体が人権教育・啓発を総合的に推進するための諸施策について、提言を行ったものであり、これを踏まえて、政府が速やかに所要の行財政措置を講ずることを望む」とあり、審議会のメンバーが、いかにこの人権教育・啓発についての速やかなる行財政措置が必要であることを切実に訴えているかがわかる。政府としては人権教育・啓発は勿論のこと人権問題全般にわたっての早急なる行財政措置を講じていく考えはあるのか、もしあるのであればその具体的措置を示されたい。
十四 子供、女性、高齢者、障害者、HIV感染者、ホームレス、同和関係者、アイヌの人々、戦争被害者、人種、民族等の諸問題への対処としての人権課題があり、差別があるところ人権問題がある。
  同和問題の解決に向けて検討してきた地域改善対策協議会は、同和問題の特別対策から一般対策として再構築されたことにより、平成八年十二月の人権擁護施策推進法の制定のもと人権擁護推進審議会として発足された。
  人権問題そのものは広範囲にわたるものであるが、少なくとも日本の人権問題を論じるとき、同和問題を解決することなくして、人権問題を解決したことにはならない。長い間、そして今でも続いている同和問題の解決には人と人とのいたわりのなかで、お互いに人間の尊厳を敬うことが必要であることは勿論のことであるが、国としての法的保障が必要となる。そのような観点より、遅すぎたかのように思えるが、政府としてはこの人間差別による人権問題に対し、法的措置を講じる考えはあるのか。そのうえで、同和対策の総合的、抜本的な解決のための基本法制定の考えはありや否や。

 右質問する。





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