衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十一年七月二十七日受領
答弁第三四号

  内閣衆質一四五第三四号
    平成十一年七月二十七日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員東順治君提出人権に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員東順治君提出人権に関する質問に対する答弁書



一について

 市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号。以下「自由権規約」という。)第二十八条1に基づいて設置された人権委員会(以下「委員会」という。)が我が国の第四回政府報告の検討を踏まえて千九百九十八年(平成十年)十一月五日に採択した最終見解については、今後ともその内容等を検討し、適切に対処していく必要があると考えている。

二について

 御指摘の選択議定書の定める個人通報制度については、当該選択議定書の締結が憲法解釈上必要となるとの御指摘は当たらないものと考えるが、自由権規約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えている。しかし、この制度については、司法権の独立を含め、司法制度との関連で問題が生じるおそれがあり慎重に検討すべきであるとの指摘もあることから、現在のところ当該選択議定書を締結していない。今後とも制度の運用状況等をみつつ、真剣かつ慎重に検討していきたいと考えている。

三について

 御指摘の嫡出でない子の相続分を嫡出である子の相続分の二分の一とする民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百条第四号ただし書の規定の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出である子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である嫡出でない子の立場にも配慮して、嫡出でない子に嫡出である子の二分の一の法定相続分を認めることにより、嫡出でない子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と嫡出でない子の保護の調整を図ったものと解されるのであって、嫡出でない子を合理的理由もないのに差別するものとはいえず、政府としては、自由権規約第二十六条が禁ずる差別には当たらないと考えている。

四について

 アジアにおいては、国際的な人権基準として最も重要である経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第六号。以下「社会権規約」という。)及び自由権規約の締約国も少なく、また、各国の政治、社会及び法体制が多様かつ複雑であるので、現状では各国によって受入れ可能な地域的な人権条約の作成、人権裁判所の設置等は容易ではないと考えている。
 我が国としては、アジアの各国において社会権規約、自由権規約等に規定されているような国際的な人権基準が受け入れられ、人権尊重につき共通の認識が得られることが必要であると考えている。そのためには、我が国としては、まず、人権に関するセミナーの開催等を通じ、人権分野における対話を深めていくことが重要と考えており、外務省と国連大学との共催で、過去三回、「アジア・太平洋地域人権シンポジウム」を開催してきている。

五について

 政府は、いわゆる従軍慰安婦問題は多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であるとの認識の下、これまでもおわびと反省の気持ちを様々な機会に表明してきている。また、元慰安婦の方々に国民的な償いを行うことなどを目的に平成七年七月に設立された「女性のためのアジア平和国民基金」に対し、政府としても、同基金が所期の目的を達成できるよう最大限の協力を行ってきているところである。政府としては、今後とも同基金に対し最大限の協力を行うとともに、同基金の事業に表れた日本国民及び日本政府の本問題に対する真摯な気持ちが各国及び地域の政府や関係者の理解を得られるよう種々努力していく考えである。
 なお、いわゆる従軍慰安婦問題を含め、先の大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題については、我が国としては日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)、二国間の平和条約及びその他関連する条約等に従って誠実に対応してきたところであり、これら条約等の当事国との間では既に法的に解決済みであることから、政府として元慰安婦に対して個人補償を行うことは考えていない。

六について

 被害者救済制度については、人権擁護推進審議会において、本年九月以降、本格的に調査審議される予定である。政府としては、その調査審議の結果も踏まえて、人権救済制度や救済機関の在り方について検討してまいりたい。

七について

 政府は、「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画(以下「国内行動計画」という。)に沿って関連施策を推進しているところである。
 例えば、学校教育においては、日本国憲法及び教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の精神にのっとり、人権尊重を推進するという観点から各学校の人権教育の取組の一層の充実を図るよう教育委員会等への指導を行うとともに、人権教育研究指定校事業、教育総合推進地域事業等を通じ、人権意識を培うための教育や教育上特別の配慮が必要な地域における総合的な取組の充実に努めている。また、社会教育においては、幼児から高齢者に至る幅広い層を対象に、すべての人々の人権が真に尊重される社会の実現を目指し、あらゆる差別意識の解消を図り、人権にかかわる問題の解決に資することができるよう、公民館等の社会教育施設を拠点として行われる人権に関する学習機会の充実とそのための指導者の養成を図るなど、人権教育の充実に努めている。さらに、現職教員の研修については、教員の任命権者である各都道府県及び政令指定都市が実施する各種の研修や文部省が主催する研修において人権に関する内容が盛り込まれているところである。
 企業その他一般社会における人権教育等においては、「参加型人権教育・啓発ガイドブック」の作成等の人権啓発に関するプログラムの開発、世界人権宣言についての啓発冊子の作成等の国連人権関係文書の普及及び広報、「人権啓発担当者用資料集」等の人権擁護に関する資料、パンフレット、ポスター等の作成及び配布等による効果的な啓発活動に努めており、また、地方公共団体の人権啓発担当者に対する人権啓発指導者養成研修会等を行っている。
 また、国内行動計画においては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対して、人権教育に関する取組を強化する必要があるとされているところである。警察職員に対しては、警察学校において、新たに採用された警察職員や昇任した警察職員に対し、人権尊重に関する授業や訓育を行っているほか、犯罪捜査や留置業務に従事する者に対し、あらゆる機会をとらえて、被疑者等の人権に配意した適正な職務執行を期するための教育を実施している。検察職員に対しては、その経験年数に応じて各種の研修を実施しているところであり、人権を尊重した検察活動を徹底するため、これらの研修において、憲法及び人権に関する諸条約における人権保障、女性、外国人及び子どもの人権問題、同和問題等の各種人権課題等をテーマとする講義を実施しているほか、日常の業務においても、上司による指導を通じ、人権尊重に関する理解の増進に努めている。福祉関係職員に対しては、養成課程における人権教育の充実及び現任研修を通じた人権意識の高揚を図っているところである。特に、民生委員及び児童委員に関しては、各都道府県社会福祉協議会等が全委員を対象として福祉施策、人権の尊重等に関する研修を実施し、政府もこれを支援しているところである。
 なお、平成十年七月には、平成九年度における人権教育関連施策の実施状況を中心として国内行動計画の推進状況について取りまとめを行ったところである。

八について

 学校教育においては、全国的に一定の教育水準を確保するため、教育課程の基準として文部大臣が定める学習指導要領に基づき、各学校においては児童生徒の発達段階に即し、各教科等の特質に応じて学校教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高める教育が行われている。さらに、文部省においては、平成九年度から、学校教育における人権教育に関する指導方法等の改善及び充実を図るための人権教育研究指定校事業や教育総合推進地域事業を実施している。
 社会教育においては、生涯学習の視点に立って生涯の各時期に応じて各人の自発的学習意思に基づき人権に関する学習ができるよう、公民館等の社会教育施設を中心に、学級及び講座の開設、交流活動等人権に関する多様な学習機会が提供されている。さらに、文部省においては、平成九年度から、人権教育を担当する指導者の資質の向上を図るための研修、公民館を始めとする社会教育施設等における人権に関する学習機会の提供、人権に関する様々な問題をテーマとした住民相互の交流活動等の事業を総合的に推進する人権教育総合推進事業に取り組む都道府県及び政令指定都市に対して助成を行っている。
 人権啓発については、法務省において、全国的に一定水準の啓発活動を確保する観点から、地方公共団体に人権啓発事業を委託して啓発活動を実施しているほか、平成十年度からは、人権啓発活動を実施する主体の連携協力を強化するため、各都道府県単位で法務局又は地方法務局、都道府県及び都道府県人権擁護委員連合会が中心となって、人権啓発活動ネットワーク協議会を組織し、データベースを共同利用するとともに、啓発計画の共同策定、情報交換等を行う横断的なネットワークの整備を行っている。また、都道府県及び市町村の人権啓発行政に携わる職員を対象とした研修会を開催している。
 今後の人権教育及び啓発に関する施策の基本的在り方については、現在、人権擁護推進審議会において調査審議が行われているところであり、答申が出された際には、これを最大限尊重し、その提言を踏まえて、人権教育及び啓発に関する施策のより一層の充実を図っていきたいと考えている。

九について

 人権教育及び啓発に関する施策と人権侵害による被害者の救済に関する施策の推進を図るために、平素から、学校、企業等の協力を得て、人権に関する各種の情報の収集及び調査に努めているところである。
 また、国内行動計画においては、「我が国において人権という普遍的文化を構築することを目的に、あらゆる場を通じて訓練・研修、広報、情報提供努力を積極的に行うことを目標とする」とされており、これを踏まえて、関係省庁において、国内行動計画関連施策を推進するに当たっては、人権に関する各種の情報の収集及び調査に努めているところである。
 今後とも、必要に応じて各種の情報の収集及び調査に努めてまいりたい。

十について

 国に人権教育及び啓発に関する施策並びに被害者の救済に関する施策を推進する責務があることから、直ちに、御指摘のような義務があるものと解することはできないと考えるが、人権に関する各種調査の結果、それを踏まえた各種施策の実施状況及びその実施結果については、これまでも、必要に応じ、資料の作成及び配布、刊行物、マスメディア及びインターネットを通じての広報等様々な方法で周知を図ってきたところであり、今後とも、効果的な周知に努めてまいりたい。

十一について

 政府は、現在、国内行動計画に沿って、行政機関相互の緊密な連携を図りつつ、関係省庁において関連施策を推進しているところであるが、国内行動計画において「本行動計画の実施に当たっては、人権擁護施策推進法に基づき法務省に設置された、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項等を調査・審議する人権擁護推進審議会における検討結果を反映させる。」とされているところであり、今後、同審議会の答申を受けて、関係省庁においては、答申を踏まえた一層効果的な取組を推進していくこととしている。

十二について

 人権擁護推進審議会においては、これまでの審議の過程で、各種の人権課題に関し、多くの関係団体からヒアリングを実施するとともに、地方公共団体を含む各種の団体等から種々の意見の提出を受けており、人権教育及び啓発に携わっている方々の意見を広く聴いている。
 さらに、同審議会においては、本年六月十八日、答申案を公表し、現在、各方面からの意見の募集を行っており、今後、これら各方面からの意見も踏まえて、最終的な審議を行い、本年七月末ごろをめどに答申を取りまとめる予定としている。

十三について

 政府は、現在、国内行動計画に沿って、行政機関相互の緊密な連携を図りつつ、関係省庁において関連施策を推進しているところであるが、本年七月末ごろをめどに取りまとめられる予定の人権擁護推進審議会の答申において、人権教育及び啓発の総合的かつ効果的な推進のための施策についての提言がなされた際には、これを最大限尊重し、その提言を踏まえて、人権教育及び啓発に関する施策のより一層の充実を図っていきたいと考えている。

十四について

 同和問題に関する差別意識の解消を図るため、地域改善対策協議会意見具申(平成八年五月十七日)を尊重し、差別意識解消のための教育及び啓発については、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育及び人権啓発として発展的に再構築したところである。
 これを受け、現在、人権擁護推進審議会において、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項並びに人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項について調査審議が行われているところであり、御指摘の法的措置の問題については、その答申等も踏まえ、今後、適切に対処してまいりたい。
 また、同和対策の総合的かつ抜本的な解決のための基本法制定の問題については、これまで三度にわたる特別法の制定等により必要な施策を講じてきているところであり、現在、新たにそのような同和対策についての基本法を制定することは考えていない。





経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.