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平成十一年八月三日提出
質問第四三号

私立学校法人の収益事業およびその監督に関する質問主意書

提出者  保坂展人




私立学校法人の収益事業およびその監督に関する質問主意書


 バブル経済が我国社会に重大なる傷跡を残し、我国の金融システムが未曾有の危機に直面していることは、広く国民大衆の知るところである。昨年の臨時国会では、銀行への公的資金注入を軸に不良債権処理を進め、銀行経営の安定化と中小企業への銀行の貸渋り解消のため、いわゆる「金融再生関連法案」の成立をみた。しかし、国民世論はバブルに狂奔した借り手および貸し手の法的責任追及また大蔵省への行政責任の追及不徹底に疑義を抱いていると言わざるを得ない。
 こうした中で、バブル期には公益法人たる私立学校法人も投機的事業に業容を拡大し、経営破綻に陥っている事実が明らかになっているが、学校法人・駿河台学園および同南学園で生起している事態はとうてい看過し得ない。駿河台学園および同南学園について、学校法人が関連企業による「豪州のホテル・ゴルフ場事業」に巨額の債務保証を与えている事実や同南学園が共同経営する「神戸のホテルの閉鎖」などが昨年来報道され、駿河台学園、同南学園、同西学園が経営する駿台予備学校の経営危機が伝えられている。これらはバブルの傷跡が我国の教育界にも影を落としていることの明確な証左である。また学問の自由を逆手にとり極めて不透明な運営がなされている一部私立学校法人と銀行や金融機関が結託できる法制度上の問題点を指摘する声も大きい。
 駿河台学園および同南学園については、その教育事業体は駿台予備学校として我国受験教育の根幹をなしたことが広く一般に知られている。受験教育事業の是非は別として、駿台予備学校はその高い公共性を認められたが故に学校法人として認可され、安定的な教育内容と条件の実現のために、税制上およびその他の優遇措置の対象となったはずである。しかるに学校法人が前記のような収益事業をなし学校経営を逼迫させているとの巷間伝わる事態は、教育行政のみならず大蔵・金融行政から労働行政などにわたる深刻な課題となっていると考える。よって以下のとおり質問する。

一 学校法人・駿河台学園および同南学園の収益事業と債務保証に関する政府の見解および東京都学事部への指導について
 (1) 私立学校法第二六条一項ないし二項に言う収益事業の目的と種類とは何か。政府の見解を問う。
 (2) 学校法人・駿河台学園および同南学園が大半を出資する国内法人および豪州現地法人による「豪州でのホテル・ゴルフ場事業」などの収益事業は、前記(1)の収益事業の範囲に含まれるのか。また私立学校法人の収益事業として適法か。
 (3) 学校法人・駿河台学園および同南学園による(2)の収益事業に対する東京三菱銀行への三〇〇億円と言われる債務保証に、教育行政の統括者として文部省はいかなる見解を有するのか。
 (4) 学校法人・駿河台学園および同南学園の収益事業の実情が、私立学校法第六一条一項の一ないし三に該当するか否かの調査報告書を、私立学校法第六条に基づき両学校法人に求めるように文部省は東京都学事部を指導したか。また指導予定がないのならば、それは何故か。
 (5) 文部省は、学校法人・駿河台学園および同南学園の理事会および評議会が(2)の収益事業への出資および(3)の債務保証について、いかなる経過で決定するに至ったのかを把握しているか。また私立学校法第三六条および第四二条五項の遵守確認のための議事録および報告書を、私立学校法第六条に基づき両学校法人に求めるように東京都学事部を指導したか。また指導をする予定があるか。また指導予定がないのならば、それは何故か。
 (6) 先に通産省の諮問委員会は「公益法人の財務・情報の開示」に積極的な内容を示したが、私立学校法人の「財務・情報開示」について政府はいかなる見解を有するのか。
二 私立学校法人を含む公益法人およびその関連企業への銀行等金融機関の融資の不良債権化に関する政府の見解について
 (1) 大手ゼネコン等への銀行等金融機関の融資の不良債権額は公表されているが、私立学校法人を含む公益法人およびその関連企業への銀行等金融機関の融資の不良債権額の実情を、政府は調査・把握の上で公表の用意はあるか。
 (2) 政府は学校法人とその関連企業への銀行等金融機関の融資の不良債権額について、来年三月期よりの金利減免債権の厳格基準を前倒しして、銀行等各金融機関に報告を求め指導をする予定があるか。また指導予定がないのならば、それは何故か。
三 学校法人・駿河台学園および同南学園の収益事業への東京三菱銀行の融資、また両学校法人による東京三菱銀行への債務保証に関する政府の見解について
 (1) 学校法人・駿河台学園および同南学園とその関連企業への銀行等金融機関の融資は、巷間前記二の(1)に該当すると言われているが、金融当局はこうした私立学校法人への銀行等金融機関の融資の不良債権について報告を求める予定があるか。また指導予定がないのならば、それは何故か。
 (2) 学校法人・駿河台学園および同南学園が出資し経営する現地法人、サン・ホールディングス社が豪州証券監視委員会(現ASC)に提出した会計報告によれば、同会社が恒常的赤字経営で債務超過を急増させているにも拘らず、東京三菱銀行は九八年度より駿河台学園の債務保証を条件として同会社に追加融資をしていることが記載されている。かかる銀行融資や債務保証は銀行および学校法人の公共性に鑑みて許されざるものではないのか。政府の見解を問う。
 (3) 前記(1)の融資および債務保証の内容と経過について、金融当局は東京三菱銀行に報告を求め、指導する予定があるか。また指導予定がないのならば、それは何故か。
四 いわゆる予備校事業および学校法人理事、関連企業役員の便宜供与への課税について
 (1) 八四年の税制改正において大蔵省主計局は、予備校の「収益事業」の範囲を見直して「短期間の授業」を課税対象とした。更に主税局は「収益事業の範囲」の拡張に前向きであったと聞くが、この問題の経過と現状認識を尋ねる。
 (2) 学校法人・駿河台学園および同南学園では理事に対する居宅の提供が行われている。両学園の関連子会社からの理事居宅の借上げ家賃は、一例では月額で一一〇〇万円に上る。これらは昨今の「日銀問題」でも「報酬」と世論に指弾され、課税対象との論議がなされたものと内容を一にする。税務当局においては、学校法人・駿河台学園および同南学園の理事そして両学園の関連子会社の役員の「居宅便宜供与額」を過去にわたって調査し、課税を検討する考えがあるか。またないのならば、それは何故か。
五 駿河台学園・理事長の豪州現地法人との金銭バーター取引きについて
 (1) 三の(2)に述べたASC調査資料によれば、学校法人・駿河台学園の理事長でありサン・ホールディングス社の取締役会長である人物が、九八年三月期には七〇億円近い債務超過を起こしているサン・ホールディングス社との間で、金銭のバーター取引きを行い、その利率の差額を八年にわたり総額約七千万円を受領している事実が記載されている。こうした取引きは豪州国内法では明確な背任となると豪州の現地弁護士は述べている。我国の法務当局は、こうした事案についていかなる見解を有するか。
六 学校法人・駿河台学園および同南学園および同西学園の経営するいわゆる「駿台予備学校」の教員に対する雇用保険の適用に関する政府の見解について
 (1) 駿台予備学校は実質一つの事業体だが、学校法人は三つに分かれている。それ故に講師の就業時間数も三分され、職業安定所が言う週二〇時間の継続雇用の要件を逃れ、本来なら雇用保険の対象となるべき非常勤講師の保険適用が妨げられている。これらは明白な学校法人による脱法行為ではないのか。政府の見解を問う。
 (2) また教員という職業上からは週二〇時間との就業時間基準の短縮も考慮されるべきではないのか。労働省においては高校・予備校・短大・大学などの非常勤講師の雇用保険適用について、その就業時間数の短縮を含めて指導する予定があるか。指導予定がないのならば、それは何故か。

 右質問する。





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